この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

32 / 86
報酬のお話。

「…………それで、三人のランクをDに、お嬢様方をギルドの冒険者に登録していただきたい、」

どうしてこうなった?いや、ギルマスに呼ばれ、応接室に来る所までは俺も用があるし、賛成だったが、とにかく聞いてみるか。

「…………理由を伺っても?」

「街の防衛、危機から救った冒険者の功績を評価してのランクの昇格、実力はもっと上だろうが、権限や制度の都合で上げられない。」

あー、なんか最初の時聴いたな、Cに上がるときは一定数のDの依頼を達成しなければならないとか、実力があっても信頼出来ないのを上に上げないためらしい。で、もう片方は?多分、言いにくい事なんだろう。間が長いので、笑顔で続きを促す。

「…………実は、魔法を使える者がこのギルドに片手で数える程しかいない、」

話を聞いてみると魔導ギルドに魔法が使える者が流れている上に最近護衛の依頼で街の外に冒険者が出てしまっているのだそうだ、…………魔導ギルドってなんぞ?

 

《魔道具の制作開発を行ったり、魔法を使える人間を派遣する。魔法職限定のギルドのようなものです。》

 

…………もしかして、そう言うギルドみたなのっていっぱいあるの?

 

《冒険者ギルドに準ずる役割を持つ組織、または団体は100以上存在します。》

 

破綻の原因の一端がこんなところにも…………、いやその前に確認、そう言った組織が複数ある町は幾つぐらいある?

 

《ほぼすべての街に有ります。多い街には、17の団体が存在しています。》

 

これはあかんわ、街の人間を100人と仮定して、非戦闘員を30人としたとしても17で残りを割り、小数点以下を切り捨てると一つの組織に4人しかいない事になる。実際平等に割り振られる事はないが、常に人員不足になるはずだ。そして、こういった防衛戦の時、組織ごとに方針、意見が異なったり、人員を出し渋って参加しない所があったり、全員で当たれば勝てる敵に戦力不足や、足の引っ張り合いで負ける、なんて事がある。実際、防衛戦に冒険者ギルドの討伐隊?以外は当直の門番やら、砲撃手以外いなかった。門番は戦ってないし、多分たが、魔物の討伐は冒険者の仕事だろう、みたいな姿勢なのだろう、この街の魔導ギルドは、派閥争いだの、覇権がなんたらだの、この手の争いは始末が悪い。正直、巻き込まれたくない。仕方ないし、断る方向でいくか、

 

「彼女達は人形、オートマタです。私の言うこと以外は聞きませんよ?」

「?…………本当ですか?」

凄い疑われてる。クロエとかライフル出してたじゃん。

「クロエ、ショットガンで頼む。」

「わかりました。」

ライフルはデカ過ぎ、翼は部屋を突き破る。拳銃は分かりにくい。丁度良いところ、ショットガンだろう。黒曜の輝きを放つ、芸術的な銃身が形造られていく。

「これは?」

「鑑定すればわかりますが、それ以外だと機能を見てもらうしかないので、私も多少使えますけど、それでは証明にならないでしょう?」

ちなみに鑑定対策で特殊なスキルや高いレベルのスキルは冒涜で偽装している。パーソナルスキルは見られないが、一応隠蔽の効果を掛けてある。見破られないか多少心配だ、なんせ真理にはまるで効果がなかった。藤白のステータスで実験したが、偽装も隠蔽も効果を成さなかった。過信は禁物だ、

「………だったら、依頼してもいいか、怪我をした冒険者の治療をしてほしい。勿論タダではない。値段は追々相談させてもらう。どうだろう?」

「悪くないですが、その辺りは打ち合わせをしてからきめましょう。その時は頼むぞ、アナスタシア、」

「………わかった、」

条件におかしな所はない。が安請け合いもしてはいけない。

「それと今回の報酬についてだが、……」

「それは出来るだけお金にしてください。素材やら魔石はいらないので、」

前の金属在庫補充でかなり少なくなってたのだ。素材とかいらんし、何故か、デフレを起こした街に、一級品の品物が流れ着いている。安くなっていると言っても金がなければ買えない。こういった街単位のデフレとインフレの中心には大体大金を手にした異世界人やら、この時代に成り上がったこっちの住民が金の使い方を誤ったというか、なにも考えず馬鹿みたいな額を動かしているからだ。

「それは少し勘弁してもらえますか?キタガワさんの全部買い取ったら、他の冒険者の支払いが出来なくなりそうで………」

 

え?俺そんな変なもん狩ったけ?リザードマンしかいないよね?

 

《ジェネラルを除く上位個体はすべて討伐しています。メイジは魔石が高く、ガードやキングは防具の素材として人気です。》

 

………ごめん、全然記憶にない。あのムキムキがキングだったのか?王冠とか被っとけよわかりにくい、ガードとかメイジとか思い当たる節さえない。

「無理のない範囲でお願いします。余ったら別のところで買い取ってもらいますから、」

「でしたら、魔石はこちらで買い取りますので、素材は、鍛冶屋、防具屋に売ってもらえませんか?手紙を書くので、」

「ありがとうございます。………それと、少し聞きたい事が、」

「何でしょう?」

「掘り出し物とかがありそうな所ってわかりますかね?」

「物にもよりますねー、………武器なら大通りの雑貨店、酒なら同じ通りの酒屋に、魔石なら帽子屋の角を曲がった外れの道具屋がいいと思う。」

なるほど、代行者はどう?

 

《このギルドにも特殊な魔石が二つ有ります。》

 

どれどれ?一角竜の魔石と月光獣の魔石か、どう交渉するか、

「では、道具屋の方に行ってみたいと思います。ギルドでも魔石とか買い取ってますよね?後で見てもいいですか?別で買いますし、」

「あまり良いものはありませんが?」

非売品的な扱いか?それとも知られていないのか?いや、その割りには棚でしっかり管理されてるし、………代行者の見解は?

 

《一角竜の魔石は商会に売約が入っています。月光獣には魔導ギルドから売約が入っていますが、商会は手付金を払っていますが、魔導ギルドは手付金払っていない口約束の状態です。月に一回程、催促に職員が訪れています。商会の方も手付金を払ってから半年が経過しています。》

 

迷惑なやつだな、絶対関わらないでおこう。魔導ギルド、ただ商会か、こっちはちょっと厄介だな、何故買うのか、と言う点と、手付金がいくらだったか調べてくれ、

 

《手付金についてはギルドの記録に残っています。なお、払った時期についてもこちらを参考にしました。》

 

半年前って言ってたからどうやって調べたのかと思ったらそういうことか、記録を漁るのはいい手かも知れないな、本とかじゃない機密文書とか、うーん、さて、………商会は穏便に交渉で解決出来るだろうし、魔導ギルドは無視でいいだろう。

 

取り敢えず報酬を受け取り、防具屋や鍛冶屋を巡る。一ヶ所では買い手が付かなかったので結構歩いたが、資金は集まった。藤白と芦原さんも報酬を受け取り、目ぼしい物がないか散策している。それを見送り、帽子屋の角を曲がると、一気に風景が変わった、さっきまでは元いた世界の一昔前くらいの風景が広がっていたが、中世ヨーロッパを思わせるそり立つ壁のような建物が道幅をより狭く感じさせる。日が差さないことも拍車をかけているだろうが、

「ここか、」

魔女でも住んでいそうな狭そうな店の扉を開ける。

「いらしゃいませ、きょうはなにをおさがしでぇ?」

舌足らずの子供が対応に出てきた。店主は留守なのだろうか、

「少し魔石を見せてもらっていいかな?」

「どうぞ!…………うーん、あっちー!」

「うん、ありがとう、」

さてと、どんなのがあるかな?と、

「ねえねえ、お兄さんはませきのいいやつわかる?」

「ん?多少鑑定ができるからな、」

「えー!すごい!レベルは?」

「5」

「お婆ちゃんより上だ!ねえねえ、どうするの!どうやったら上がるの?」

お、おう、わからん、こっち来た段階で5だったしな、5でも十分レベルが高すぎるのか?真理がある俺としてはあまり使わないのだが、それとなく聞いてみると、鑑定を取得しようと頑張っても、目利きと言うスキルになることが多いそうだ、代行者の見解を聞くと、

 

《金銭的価値を見極めるため、取得しようとすると、価値を見抜く方に傾くので目利きになるのでは?》

 

とのこと、分かりやすく例えるなら絵を見るとき、その絵を学術的、または芸術性を重視して見ていると鑑定、金銭的価値で見ていると目利きになる、実際商人が頑張って取得しても大半が目利きになってるのがいい例だ。まあ、吹っ掛けられたりを防ぐ意味では有用なようだが、このインフレ、デフレを繰り返しているこの現状ではあまり役に立たないだろうが、見極め方はわからないのでいい魔石とあまり良くない魔石を比較して見せることでスキルの取得を手伝うことにした。魔石とにらめっこしてる間に珍しい魔石を見ていく。物によっては箱に乱雑にぶちこまれている。ただこの箱にはないな、………と、壁と棚の隙間に珍しい魔石が、大分汚い、触りたくないので一端隔離して棚の上に出す。

 

花竜の頭魔晶

 

風と土を司る竜のようだ。しかし、魔晶か、なんでも代行者の話だと、竜の魔石は一つではないらしい。その上場所、数まで個体や年齢によって差が出る。頭にできるものもいれば、体の中心に一つとか、両手に一つづつとか、身体中いっぱいできるやつとか様々なようだ。そして魔晶、これは長い年月生きた魔物などの魔石が結晶に至ったものらしい、値段わからんし、一端置いとこ、いくつか目ぼしい物を見繕って行く。それでも店主は帰ってこないので鑑定が習得できるか様子を見ておく。最悪、目利きになったとしても、冒涜で鑑定にねじ曲げるくらい近いスキルなので簡単だ。

「珍しいね、ダイン以外のお客さんは、」

「あ、お婆ちゃんおかえり!」

「どうも、そのダインさんからここにいい魔石があると言われたもので、」

「あら、そうだったの、」

そんな世間話を交わしながら魔石、魔晶の値段を聞く。適正な値段とか未だにわからないが、安いと思う。金貨20枚で全部買えた。10個ほどだが、どの魔石を使うか、よく考えて決めよう。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。