この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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区切りが着きにくかったので、長いです。


万能金属アダマンタイト

今日も今日とて、指導だ、そんなことを考えてギルドに入ると、周りの空気に違和感を感じる。気色ばむと言うか、浮き足立つと言うか、いい知らせに浮わついているような、

「景気のいい話でも有りましたか?」

「うぉ!全然気付かなかった、………実は、人探しの依頼なんだが、」

 

………ただ後ろから話し掛けただけでそんなに驚かんでも、…………にしても、人探し?

 

「何でも鍛冶屋の工房を借りたいって来た男が、アダマンタイトを飴細工みたいに加工したとか、精巧な刻印を施したとか、燃えたぎる炉に腕を突っ込んだとか、…………情報は定かではないが、報酬をかなりかけてるし、嘘ではないだろう、どうやって探すか考えてる所なんだ、」

 

………何も聞かなかったことにしよう。報酬等は依頼を出す時に、ギルドに預ける。嘘やいたずらを防ぐとともに、冒険者の報酬の取りっぱぐれを防ぐ目的がある。頭を抱えたい衝動を抑え、庭に向かうがあの依頼のせいか、庭に男女が一人づつしかいない(昨日結構な人数が集まったのに)。しかも子供、逆に言えば彼らは、人探しの報酬より、こっちを優先したのだろう。(力が欲しいとか)そんなことを考えていると、

「………なぁ、こんなことしてて強くなんかならないぜ、」

「人探しでも、みんなが血眼になって探したら、私たちが見つけるのなんて無理でしょ、終わったらギルマスがご飯奢ってくれるって言ってたし、そっちの方が確実でしょ、」

「……………」

ほら、後ろ後ろ、ギルマスいるよ窓のとこ、あっ、目が合った、逃げるなコラ、

「はい、これから指導を初め…………」

「めんどくさい素振りはいいから、実戦やってさっさと終わらせようぜ、」

昨日も居たのか?代行者確認できるか?

 

《指導はしていませんが、見学者にはいました。》

 

「取り合えず、振る形を一度見せてくれ、」

「えー、やだよ、見てたけど何の意味があるの?時間の無駄だよ、」

「素振りしか教えてないって聞いたけど、大したことないじゃないかなー?」

 

ぷちっ、

 

恐らく俺は周りから非常にいい笑顔をしているように見えている事だろう。人当たりが良さそう笑みをうかべながら、諭すように、

 

「じゃあ、実戦形式でいこう、俺は刀は使わない。そっちの武器はなに?」

刀を隔離しながら聞く、

「俺は剣だ」

「私は短剣と土魔法を、」

「よし、じゃあ全力で来い、俺は魔法は使わない、後は、………俺は囲んだこの円から出ない、使うのは右手一本だけだ、そっちは何をしてもいい、触れるなり、攻撃を当てられればそこで終わりにしよう。」

地面に円を描きながら、ルールの説明をする。…………よし、できた。

「二人同時でもいいよ、」

円の大きさは大体二メートルだろうか、さて、ここからは結構本気で行かないとな、

「俺一人で十分だ、どりゃあぁ!」

ああ、これは剣に振り回されてるな、持ち上げるのでさえやっとみたいだな、右手の平を胴に添えて、そこから押す。ここから引く、勁力を用いた内蔵にダメージを与える技、八極拳や太極拳にある、俺が使ったのは八極拳の方、射程距離は短いが威力はバカみたいに強い、なんせコンセプトが相手の防御を突き破る、である。防御の上からでも通る攻撃、または超至近距離で防御の意味を無くし、流れるような連続攻撃で急所を様々な角度から攻撃できる。勿論、加減しないと死ぬ。

 

「………え、ほぅ、…………えっ、あ、……か、」

その場で膝をついて蹲る。

「基本からやり直せ、………お前に一番必要なのは素振りだな、さて、」

背後からの短剣の攻撃を避けて、手首を掴み、向き直る回転を利用して捻るように回して、短剣から手を離させると当時に投げる。要領は、合気道だけど、

「背後を取るのは悪くないが、もっと狙う場所を考える、さて、………アナスタシア、回復してやってくれ、」

さーてと、根性から叩き直してやらんとな、武道には地力や技も大事だが心構えは効率化のためにもある。心・技・体揃ってこそ最大のパフォーマンスが発揮できる。練習する機会がなかったか、練習する気がなかったのか、どっちにしろ、俺がやることは変わらない。経験が足りないのならば今つけてやればいい、

 

「今日はこれで終わりにするか、ほらギルマスに飯奢ってもらえー、食えるかどうかは知らんけど、」

あれだけの運動とダメージは確実に尾を引く、飯は、食えなくても、確実に強くなれるだろうが、

「次は、程ほどにな、」

「あんたには聞きたい事があるし、手合わせしながらでもゆくっり喋ろうや、明日」

笑顔そのままに、声に威圧感を添えて、はっきりと言う。

 

さてと、一日も残り僅かだ、宿のベットで考え込む。代行者と情報を擦り合わせる。今日は錬金術についてだ、まず、対価が必要な方法と材料を集めて一気に形にする方法、そして、魔力を注ぎ込んで土塊から作る方法、様々だが、上から順に説明する。

 

生物の素材と魔力を用いる方法、儀式や祭壇等規模が大きい上に、時間もかかるが、消費魔力が少ない。後は生物の素材(生贄次第)による。結果は運次第。(最悪発動するかさえも運)

 

武器、製鉄、料理等、用途が幅広く、一番よく知られている方法らしい。が、やるのはかなり難しい。完成形のイメージが必要で、知らない物は作れない。そのため複雑な物はかなり難しい。釜や器、壺の用な容器が必要となる。完成度は用いた容器に影響される。

 

そして最後、魔力をバカみたい使うが、なんでもない土を金に変える事もできる。ただし、魔方陣や、詠唱で何に変化させるのか、決める必要がある。使用者の能力に応じて作れる種類、完成度が上がる。

 

土魔法の習得は急務だが、どういう物かは知っておきたい、ニーズに合うのは最後の奴、それ以外はなんか微妙、共通なのは何らかの形で準備が必要なことだが、

「早いとこ、何とかしないとな、」

そこでふと、思ったのだが、俺は自力で魔法を習得した訳ではない、本来はどうやって習得しているのだろうか、ギルドの庭で指導(三十人程しめた)時に使われた魔法、の前に何か言ってた、内容はわからんがあれが詠唱なのだろう、だが俺は一言で発動する。

 

《魔法はイメージによって形や効果を変えますが、イメージの構築には時間が掛かります。初めて発動した際の感覚、それを元にするため、詠唱なしのイメージが固まりにくくなる傾向があります。》

 

?………よくわからんが、詠唱が魔法を発動させる課程に必需のものとなり、詠唱なしでは発動しなくなるってことか?差し詰、技を使う前に型をとったり、所定の動作(癖を出したり)をとり、成功のイメージを固めるルーティーンのようなものか?

 

《それと、指向性や威力を決めたり、空間に漂う魔力の使用にも関係します。》

 

あー、何かたまに漂ってる青い奴の事か?

 

《…それは、精霊です》

 

マジか………、衝撃の事実だわ、何だろうとは思っていたが、精霊だったのか………アレ、結構ウヨウヨいるし、………ん?アナスタシアは精霊魔法を使えるみたいだけどどういう魔法なの?

 

《付近の精霊の力を借りて魔法を使います。使う魔法は付近の精霊の属性によって変わります。》

 

何そのランダム要素、怖い、

 

《精霊は土地によって、住んでいるものが違います。水辺には水精、洞窟や鉱山には土精、高い山等に風精、火山や砂漠には火精、他にも雪山等には雪精、強力な力をもつ海精、光精、闇精、がいます。》

 

あー、情報が多すぎ、今日は寝るわー、海精が何かは気になるけど、

 

「暫く、図書館にいようと思う明日には帰るから、弁当頼めるか?」

代行者に調べさせてはいるが、いかんせん情報の集まりが悪い、自分でも調べるついでに、色々勉強しようと思ったのだ。

「御一緒します!」

「着いていく、」

「わ、私も………」

お前らは留守番、と言いたいところだが、一人は連れていった方がいいだろう。アナスタシアは食事の意味で置いていった方がいいとして、向日葵は俺の事に関しては全力(フルパワー過ぎて空回りするぐらい)だが、その他の事に関しては幼稚園児並みの集中力しかない。その為本人が乗り気で無いときの魔法の制御は危険極まりない。やる気を出せば出来る女なのだが、対してクロエはまだ性格が分からないもののかなりネガティブ、置いて行った時どうなるかわからない。……消去法でクロエか、

「クロエだけ連れてく、その間はゆっくりするなり、好きなようにしててくれ、」

「は、はい!」

「むぅ………」

「………」

いい返事だクロエ、膨れたって、催淫使っても連れていかないからな、

 

………着いたはいいのだが、本がいっぱいだ、その上、

 

《ここにある本は間違った歴史や、知識が多いようです。保存状態も悪く、読書にはむかないでしょう》

 

…………読書にむかない本って、鈍器とか、押し花する時の重りぐらいしか用途ないし、本は本来読むものだしな、そんなことを考えながら本に手を伸ばす、手に取ったのは戦争の歴史物、分厚いその本をパラパラ漫画でも見るようにページを表紙からあとがきの方向に流す。…………うん、読めねぇ、忘れてわー、どうしょう、

 

《…目で見た文を音声翻訳しましょうか?》

 

うーん、それだと効率がな、…………奥の手でいくか、文の配置に目を通す。気になる一文を代行者に訳させる。一時間は経っただろうか、内容は概ねわかった、いつ、どういう理由で、戦争が始まり、相手国の非難や、いかに自国が優れているか等をつらつらと並べているのだろう。所々訳させただけなので全部がわかる訳ではないが、恐らく自国民向けのプロパガンダの為に作られた本だろう。背景を読むならかなり切迫していたと見られる。守秘義務があったにしても、奮闘多いし、勝ったかどうかがかなり曖昧に表現されている。

「はぁー、」

早速、一時間も無駄にした。次に魔法関係の本、同じ要領で目を通す、いかに詠唱が大事かだの、著者の体験談(ムカつく自慢話)、あと根拠のない仮説、わかった事はこの本はごみ箱に捨てた方がいいと言うことぐらいだ。今度は三十分無駄にした。

「クロエ、気になることとか、読みたい本はあるか?」

声を掛けて気付いたが、絵本読んでた。字が読めなくても絵でわかる本を選んだのだろう。声を掛けたが気付いていないようだ。そっとしておこう。

 

いくつかの文字が読めるようになり初めた頃には大分暗くなっていた。成果はほぼ無し、他に本のある場所なんかあるか?

 

《王都等の宝物蔵に、かなり古い本ならたくさんありますが?情報はかなり正確なものです。》

 

そうですか、………多少言いたいことはあるが、情報が得られるなら問題ない。千里眼があれば場所なんてどうでもいい。

 

ミレの図書館内で一夜を明かす。この図書館から王都の宝物蔵の本を千里眼で読みながら、考える。この図書館、一人の職員もいない。結果泊まれた。まあ、クーラー等もないので快適かどうかはアレだが、成果は上々、まだ調べなければいけないが千里眼で見るのにこの場所に拘る理由はない。宿に戻るか、

「クロエ、帰るぞ、」

利用者が他にもいないので大声を出すのも気にしない。外套のポケットに手を突っ込み出口へ進み、出口が見えてきたところで足を止める。

「どうかしました?」

「…………待ち伏せだな、隠れきれてないが、」

一人は日射しで影が見えてる。もう一人に至ってはつま先が出てる。寝込みに来なかったことを考えると張り付き始めたのはついさっきか?たいした相手ではないのだろうが、しかし、クロエの能力を考えると直接姿が見えないのはやりにくい。誘き出すのも手だが…………ここは撒くか、

「クロエ、頼めるか?」

 

張り込み始めて12時間以上の時間が経っていた。報酬に文句はないが、この状況はきつかった、つま先が見えてる男、ウィロは、眠気と戦いながら向かいの影が見えてる男を見る。無愛想な上に無口、取っ付きにくいが、腕だけは確ね、喋り掛けても返事は無し、味気ない携帯食料、少し気が滅入ってなった。そんな時何か違和感を感じた。図書館の奥で何かが動いている。人の発する音ではない。ただ何なのかがわからない。しかし、その音はどんどん大きくなっていき、覗き込もうと顔を近付けた瞬間、とんでもない速度の物が通り過ぎ、その後襲ってきた風圧に吹き飛ばされる。

「何が…………」

辺りを見渡すが、それらしき物は見当たらない。そこでもう一人の無事を確認すべく視線を走らせると、かなり驚いた様子で上を見上げていた。

 

「えー、あの、…………何をすればいいんでしょう。私に出来るでしょうか………?」

「ぶっつけになったのは本意じゃないが、クロエ、お前を作ったのは俺だ、これは向日葵やアナスタシアには出来ないことだ、」

「………そっ、そうですか、ど、どうすれば……!」

 

まず、落ち着こうか、

 

「図書館の奥に少し下がろう。そこから説明していく。」

「は、はい!」

 

ん?何か顔色悪くない?人形なのに、もしかしてあの称号の影響?

 

《正解です。あまりに精巧な上に、称号の効果で人間にかなり近いため、精神状態が身体に影響しているようです。なお変調には個体差があります。》

 

うーん、この状況で問題発覚、大丈夫だろうか、まあ、やることは変わらない。不足の事態に備えるのは常に必要なことだ。

「背中に集中、翼をイメージしてみてくれ、」

「はい!うぐぐぐぐ………、」

暫くすると背中から黒い羽根が生え始めそれが翼を形作っていく。苦労した甲斐があった。この形態をウィング、他にも、直進時のスピード、推進力の高いブースト形態もある。今回はブーストを使う、ただ出る前にスキルを渡しておく。飛行8だ。俺が持ってても仕方ないし、この為に分解せずに持っていたのだ、………渡し損ねてはいたが、

「さて、もう一つのブースト形態にして、出発準備をしてくれ、最速で出れば、振り切れるだろう。」

 

一番苦労したのは代行者でも難航したブースターの動力、水を使うのだが、原理を聞いても魔法の要素があるせいか、作り出した水を云々言われてもさっぱりだ、真空だ、水蒸気爆発だ、言ってたので、危険がないか、心配で仕方ない。

 

《ブースター内に複数の………》

 

説明はいいから、わかってる事は魔法で水を供給するために出来ると言うことぐらいだ。はい、この話終わり!

「準備できました。次はどうすれば、」

「よし、じゃあ行こうか、」

「はい?」

「持ちやすいように抱えてくれ、結界に乗れば空を飛べるが、速度はでないしな、」

「………そ、それでは!………失礼して………」

声が上擦ってる、その後の言葉はしりすぼみに小さくなって聴こえにくい。ゆっくりと後ろから手を回すクロエ、

「………そんなんじゃ、俺落ちるんじゃないか?」

力が弱い、これだと冗談抜きで落ちる。

「しっかり身体を密着させるように固定してくれ、力は少し入れ過ぎても気にしなくていい。」

「………で、では、」

手の力が強くなると同時に背中に弾力のある物が押し当てられ、元の形に戻るべく激しい主張を圧力で訴えかけてくる。………意識を逸らせ、背中に集中するな、よし、落ち着け、一旦落ち着こう、な、まず、……………

「ど、どうでしょう………」

「だ、大丈夫だと思う!」

 

無駄にデカイ声出た………

 

落ち着け、別の事を考えるんだ、………アダマンタイトは硬いが武器に使うと所有者の意思によって形を変える。どの人形も表面に薄く伸ばしたアダマンタイトを使っている。質感の難しい箇所、中枢を守るためにも使っている。その為、俺が作る人形はアダマンタイト無くしては完成しない。金属では無理だろうと言うところもアダマンタイトを使えば、弾力のあるバ………やべぇ!!ループが思考してる!!

 

「そ………そろそろ行こうか、」

なんとか声から焦りを消す。後ろから抱き付いてるから誤魔化せるだろうけど、

「へ?…………あっ!はい!」

ぼーっとしてたみたいだ、助かった………、

「さて、………カウントするぞ、5、4、3、2、1………ゴー!」

爆発音と共に、加速特有の圧力を受けながら、高速で移動し、図書館を抜け、空へと飛んでいく。かなり上がった所で追っ手の確認、…………こっちを見てはいるが、追ってくる様子も無し。ふう、帰ろ、


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