盗賊関係の宝は一部売れたようだがまだ残っている。後は、前倒したゴブリンの魔石と耳を出して、買い取ってもらう。その間に指導をする事にした。いつものように庭の方に足を進めると、素振りしてるやつがいっぱいいた、
「「「宜しくお願いします!」」」
昨日とは打って変わったな、これでマシな指導が出来るだろう。
「初めの指導だ、素振りからなってない、一人づつ治す場所を指摘する。全員終わるまで、素振りだ、サボんなよ、全部見てるからな、」
冒険者と言うだけあって、体力は問題なさそうだ、後は技術だ、今日が一番長かったが、不思議と充実している。…………さてと、帰るとするか、
ガシャン!!
まだ、辺りが暗い早朝に何かの割れる音が聞こえた。がそれに続いて、
「ひゃああああ!!」
ガシャャャ、バリバリパリン!!
複数の何かが割れる音がした。多分、棚が倒れたんだな、食器は全滅だろう。布団から出たくないので千里眼で見てみる。あー、これはひどいな、……………あっ、部屋の隅でクロエが三角座りしてる。今更だが、クロエはメイド服を着ている。実利的なものと同じスカートの長さだが、袖は半袖くらい、背中はかなり空いている。これらは作った機能に関係しているのだが、あっ、忘れてた、
「……うっ、えぐっ、すん、」
駆け付けてみれば泣いてるし、隅に居ないでこっちきなさい、藤白以外は集まっていた、さっき見たが、まだ寝てた、後で素巻きにしてやるつもりだ、
「何があったんだ、話してくれるか?」
「………料、理を、作ろ、うとしててぇ、転け、て、…すん、全部割っ、ちゃった…………」
「気にするな、それに、料理は何故作ろうと思ったんだ、」
予想は付いてるが、それよりも今なお、火にかかっている鍋の方が気になる。
「みんなもご主人様に料理を食べてもらってるから、私も作ろうと………」
まあ、鍋の火を止めよう。…………うん、見た目は普通、の味噌汁?皿はないので結界で掬って、それを口に流し込む。
味薄っ、
「………ど、どうでしょうか?」
皿やらを大量に割った事も相まってかなり不安そうな顔をしているが、気になるのだ、期待も相まって複雑な心境なのだろう。
「…………もう少し濃い味付けの方がいいかな、次作る時はみんなで作ろう。味噌汁は結構好きだし、」
「………濃く、ですね、分かりました。」
「マスターの、好きな物」
「私も作りますよ。味噌汁!」
うん、お前らはいいから、クロエはなんかネガティブだな、もう少しフォローしてみるか、
「どんな料理にして、相手好み作るのは難しい、焦らずやっていこう。」
「………はい、」
あれー、まだ暗いなー、でもこれ以上言うとなんか拗れそうなのでやめておこう。
さて、弁償と迷惑料を混ぜた金貨をクロエに見つからないようにカウンター越しの店員に渡すと、今日は指導だのには行かなくていいので、本格的にクラハに行く準備を進めようと思う。纏まった時間が無かったので食料等を余分に買い込む。移動手段等は結界で事足りるので問題ない。他に必要な物は、と考えていたら、ピンクの化け物が正面に出現した。
「あら~、久し振りねぇ、」
思わず身構えてしまった、大体街中でこんなのと遭遇すること事態がホラーである。と言うか何故ここにいる?
「な、なんやこのけったいな化けモンは、」
「…………(絶句)」
「………どうしてここに?」
「仕入れよ、し・い………」
「あっ、そう、仕事の邪魔だろうから俺達はこれで、」
「釣れないわねぇ、もう~、」
熊みてぇな体格でそんな動作をとるな、素早く撤退する。警戒を怠るな、代行者、
《怠っていません》
次からは教えてくれよ。心臓に悪いからな、
《わかりました。》
んー、あれ見て思い出したけど、服やらと言ったものが最低限は不安だな、それに個人で必要な物も変わってくるだろう。
「………これを予算として渡しておくから、これで長旅に必要そうな物を見てきてほしい、個人の服でも構わないし、自由に使ってくれ、」
「わかりました。」
「うん、」
「が、頑張ります。」
クロエ?何を頑張るの?
「勿論、お酒やタバコでもいいですよ、藤白は買う前に相談な、」
中古のナイフを買わされている前科もある。しかも脅されてとかじゃなく普通に騙されて、引率なんかは結構慣れてるので苦はない、それに千里眼があれば目の届かない場所はない。昔は苦労したのだ。しかし、俺はどうしよう。代行者とお話でもするか、まだ理解出来てないことが多そうだし、立ち去る背中を見送った後、一吸収ついてから聞こう、………まず簒奪と何が違う?
《吸収はゆっくり浸食するように行うため防がれにくいですが、時間がかかります。簒奪は一瞬で奪えますが、失敗や抵抗の影響をよく受けます。なお、簒奪は自分と相手の力量の差や、スキルの差によって、奪えるスキルのレベルが変動します。》
吸収の場合は?制限なし?
《吸収の場合は抵抗は出来ますが、完全に防ぐことができません。ただ、吸収対象のスキルによっては吸収出来ないものがある可能性があります。》
んー、防げないのと、吸収出来ないスキルがあることはわかったが、他には?
《スキルの元となる物を吸収しているので、持っているスキルならそこに還元、強化されます。スキルの元を変換することで別のスキルを強化することも出来ます。なおこれらには上位下位があり、スキルの元<存在値<パーソナルスキルの順になり、パーソナルスキルや存在値は差があります。》
えーと?…………
《スキルの元、スキルポイントとしましょう。スキルポイント1000でレベル1のスキルが習得できます。存在値は1にあたるポイントが5場合や10の場合があります。パーソナルスキルは一つの塊となっているので、最大吸収量を上回る場合吸収できません。なお………》
ちょっ、ストップ!!…………えーと?どう言うことだ?うん、………スキルポイントは一律で、存在値は個人差がある。でパーソナルスキルはスキルの発現に至るポイントが一塊になっているから最大吸収量?を越えない限りは吸収可能ってことか?
例えは悪いが掃除機の吸い込み口以下の塵(後、G)やらウォークマン(ゴォ、カラッ、あっ、ってなった時にはもう遅い)は吸い込めるが、ティシュ箱のような物、吸い込み口より大きい物は吸えない。
《パーソナルスキルは、その大きさにばらつきがあるため、小さい物は吸えます。100が最大吸収量なのでこれを越えると吸収できません》
小さいスキルは、コォッ、って吸えばいいと?
《擬音の意味は理解しかねますが、そういうことです。》
後半投げやりじゃないですかね?後は、今後の方針について、だな、
………ケツ痛い、あんまり長いこと考え込みながら座ってるもんじゃないな、今後についてだが、俺自身は人形師でいいが、藤白達をどうするかだ、理想としては団体、組織なりを作り、そこに所属してもらい、こっちに来ている悪質な連中の捕縛なりを手伝ってほしい。が資金も無ければ情報もない。情勢も不明、二人の意志も未確認、こんな状況での旗揚げはいいことがない。どっかで問題が起きる。そうでなくとも衝突や摩擦は発生するのだ。そんなことを考えながら、藤白の実践形式の練習をやっていた。メイスを避けて、ケツやら背中やらを蹴る。
「まだ基礎が出来てないからな、………よし、次は攻撃の時、隙のあるところ後緩んでる所を注意しろ、蹴るからな、」
「………まだ……やるんですか、」
「とにかく隙が大きい、次で終わりにするか………、こっちもある程度本気で行くから、死なないように、」
「え!、死ぬんですか!?」
「早く来い、でないとこっちから行くぞ、5、4………」
「えっ、ちょっ、待っ、………りゃあ、」
「胴ががら空きだ、」
しかも緩んでる、モロに入ったな、
「ごはぁ!………」
「………あんた、ホンマに美術の教師か?体育のセンコーでも、あないな動きできへんで、」
「はっはっはっ(棒)」
藤白はまだまだだがそれ故に伸びしろはある、本来長い目で見て行かなければならないが、5年しかないのだ、最低でも、自分の身は自分で守れるくらいにはなってもらわないと、こっちも足手纏いを抱えていては、もしもに対処が出来ない可能性が出てくる。さて、ここで話題を変えよう。
「クラハでドラゴンを解体した後はどうします?」
「そりゃあ、ステーキにでもして、」
「いや、そうじゃなくて、」
「………まあ、小難しいことは任せるわ、」
ええー………、代行者さん、代行者さん、また調べてほしい事がて来たんだけど、頼む。
《わかりました。少し遅延が発生すると思いますがよろしいですか?》
仕方ない。かなり頼んだ事がある気がするが、あまり思い出せない。調査でき次第、報告してくれ、
「………まぁ、しいて言うならうまい酒が飲みたいな、」
そんなことを言いながら煙草をふかす芦原さん、若干だが頭が痛くなってきた。