この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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ピンクの化け物

さぁって………と、エドガーのところに行きたいのだが、今更ながら服装を整える必要がある。流石に農作業服や、来たときのシャツとズボンと薄い上着でいくのは、一回行って見た感想としてはアウトだ。正装とはいかないまでも少しマシな服装にした方がいいが………

「こちらはどうでしょう。」

「あっちの方が、いい」

店選びの段階でこれだ、このままだとまた揉めそうだ、ただ服装を見直す必要性はいろんな意味でありそうなので思い耽り、行き交う人を観察する。

「…………どうするかな?」

元の世界と同じ感覚で着るものには、こだわりがなく農作業用の飾り気のない服を選んだが、元の世界程治安も良くない、絡まれるリスクも高くなるし、何かと不利になる。某国の例だが、肌の色の違いだけで銃を向けるだけか、即発砲かが変わる。警察も法の元に公平に見るとか姿勢ではいうが、結局一人の人間、極端な話、片方が権力者で、片方が、農耕夫で、揉め事があったとし、権力者に非があったとしても、必ずこちらに味方してくれる保証がどこにある?勝てなくても責めてイーブンに持ち込める、話をまともに聞いてもらえる職業に見える格好、が理想、いろいろな街を行き来する点から、第一が冒険者や旅人だが、前者は揉め事が多そうという印象で話を聞いて貰えない可能性がある。後者は立場が悪い、根なし草だ何だとかで追加で話を聞いて貰えない可能性もある。冒険者はその辺り、魔物を狩るので目的は事欠かないが、旅人の目的はなんだ?それによっては要らぬ疑いを生む。生まぬために調べることも出来るが、いろいろはしょると面倒臭い。手間に見会わない。まあ、それらの立場が逆に有利になることも有るかもしれないが、そんな希望的観測で決めるには楽観的過ぎる。

「………静かにして貰えないかな?」

考えながら、人間観察しながら、会話を聞き流しながら、ちょっとイラつきながら、近くの……………って、藤白がいねぇ!また変な物買わされそうになってる。あいつには世間には、どういう人間がいるかを教えながら、やっていくしかない。俺大忙し、えっ?そんなに忙しくない?まさっかー、五つのながらだよ、(実質三つ)

「小物は最悪作るとしてもベース………」

その時、荷車の影から出てきた人物に目が止まった。予想が正しければ商人だが、ただの商人ではなさそうだ。使い込んだ外套、細かな彫刻が入った細剣、それらのバランスを乱さず動きやすい靴、鑑定と真理を発動させる。

 

名前 ブライアン

種族 人

スキル 剣術3 投擲3 体術3 鑑定3 水魔法2

耐性 毒物耐性2

 

代行者経歴は?

 

《元冒険者で3年前に旅商人なっています。》

 

旅商人の立場は?

 

《上は国と取引で引く手数多ですが、下は行商人です》

 

ふむふむ…………、それなら悪くないかもしれない。まずは外套を探すべく、藤白を回収、残りは首根っこを掴んで目的地に引っ張っていく。これ以上、引っ張る奴が増えないといいのだが………

 

まあ、最低限は揃ったので、これで行くとしよう。黒い外套、帽子、靴に、ズボン、あとシャツ、合計金貨3枚で銅貨二枚のお釣りが帰ってきた(2キュパ)。

「ふう、これなら大丈夫だろ、多分後は、と、」

やるべきことを思い出しながら、最優先事項から実行していこう。

 

1 ギルドでカメムシの討伐報告と魔石の換金(足りない場合は仕事を探す)

 

2 プレゼント用の人形作り、外套に防御式の刺繍と小物作り、

 

時間は有限である。ギルドに入る。直後、

「死ねや!」

と言う声と共に斧が、降り下ろされた、が

 

バキッ、

 

頭に命中した、ように周りには見えただろうが実際は違う。柄のひびの入った箇所に当たるように結界を張り、そこで折った。そしてその刃先は………

 

バタン!

 

半裸の男の眉間に命中。脳に達しているので死ぬだろう。代行者と未来視によって導いた結果だ。事故死なら怪しまれないし、しつこそうだから警戒はしていたが、………ここで仕掛けるか、まあ、………おっとと、

「大丈夫ですか!」

立ち眩みか?攻撃は当たる前に防いだ筈だ、

 

《未来視を使用した影響です。完璧なシミュレーション結果を出す事が出来ますが、演算能力を酷使するので、倦怠感や眠気に襲われます。代行者にリンクすれば負担を大幅に減らす事が出来ます》

 

………次からお願いします。

 

「大丈夫だ、」

不安そうな顔の藤白に声をかける、ただよろけたお蔭と言うのもなんだが、周りには俺に攻撃が当たってフラついているように見えるようだ。若干頭が重く感じるが、まともには歩けるので、受付に行く。ただ、初めてみるな獣人さん、犬か?狼か?赤髪のまだあどけなさの残る顔立ちの少女と言えるだろう。

「討伐証明がしたいんだが、この受付で合ってる?」

「はい、ではカードを」

「………カードは無いんだけど、ないと駄目?駄目だったら登録したいんだけど?こいつも一緒に、」

 

後ろの藤白を指差す、

 

「はい、わかりました。では、お手数ですが、登録の方を………」

「わかった、」

渡された紙を見ると、項目が二つ、名前と特技だけ、が、問題に直面した。字が書けない。代行者なんとかならんか?

 

《わかりました。特技の欄はどうしましょう?》

 

剣と風魔法にしといて、

 

《わかりました》

 

右手でペンを握ると後は、代行者が手を動かす、………なんか変な感じだな、勝手に手が動いてるのって、書き終わったら紙を渡す。あっ、藤白は大丈夫かな?

「僕も書けました。」

一応確認………特技は、毒が効かないって、まあ、本人がいいならいいか、………と言うか、何故書ける?

「こちらがカードになります。」

早!もっと手続きとか、時間が掛かると思ってた。ポイントカードと同じくらいの感じだ、

「これで討伐証明ができるな、」

この時俺は、完全に忘れていた。失念していたと言うべきだろうか、さて、ここで問題です。

 

Q、スティンクバグの排泄物臭は通常の100倍ですが、触角は臭いが半分になります。犬は人間の10倍の嗅覚をもっています。

 

「うっ………」

※しばらくお待ちください。

 

何があったかは彼女の名誉のために言わない。例え部屋の隅で、虚ろな瞳で桶を覗き込んでいようとも、

「…………」

困ったのは、彼女以外の冒険者や、ギルド職員が、蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまった。触角は閉まった、藤白は臭いには強いようで鼻を摘まんで顔をしかめている。残り二人は………

「すぅー………、はぁー………、」

「んっ、うんん、………ふぁ……、」

外套をマスク代わりにして、呼吸をしている。五感については、onoff可能なようにしておいた筈だ、呼吸も本来要らないので、同じ仕様にしてある。

「………ぐぷっ、」

※しばらくお待ちください。

 

いや本当、悪いと思ってるよ。だから、たまにこっち見るの………

「う………」

※しばらく(以下略)

 

 

このやり取りを何度か繰り返した後、奥から宇宙服のようなものを着た、ギルドマスターを名乗る人物が出てきたのでそちらに引き継がれた。

 

帰りに受付カウンターのケモミミさんの所に少し金貨を置いておく、以外と金になったな、カメムシ、ただ出す時は注意しないといけない。茶に至っては街の入り口で報告するのが基本だったらしい、持ち込み禁止とかではないのが助かったが、

「今度は裁縫系の工房探しだな、」

藤白はあれ以降一言も喋っていない。まあ無理もないか、自力で、激臭に長時間耐えたのだから、時間としては晩飯時だが、食欲が湧きそうな者がいないのでそのまま工房を目指す。勿論、代行者ナビだ。

 

《ナビではありません》

 

じゃあ、G○○gleだ、

 

《違います》

 

まあいい、移動中に説明しておこう、未来視の能力だが、無駄にハイスペックで、燃費の悪い能力だ、現在の状態から、何日か先の天気や、何十年後の街の栄枯盛衰に至るまでスーパーコンピューター並みだが、人の身には余る力だ。現在かなり眠い。だが、役に立たない能力ではない。演算能力を高まることで、思考速度をあげ、反応速度をあげることができる。雨の日に使えば、雨粒一粒一粒が止まっているように見える。いつ未来視を使ったかって?列車の移動中、人形作りの休憩がてらに一回試したのだが、使いすぎてそのまま寝落ちした。起きたときの気だるさときたら………

《………着きました》

なにその呆れた感じ、間の部分にため息的なものを感じたんですけど?

《気のせいです》

…………なんぁんですかぁー!このどピンクの建物は!お邪魔しまーす。

 

「あーらー、いらしゃ………、」

 

名前 黒田 源次

種族 人

スキ………

 

お邪魔しましたー。

 

「ちょっと!待ちなさいよ!」

鑑定を中断するくらい見た目でごめんさいなピンクの化け物。それが目の前にいれば、逃げるよね、普通、

「はぁ…………………、工房を借りたい。」

本音は帰りたい。マジで、…………寄るな!モザイク物体!

「工房は今は1時間で銅貨七枚、糸や布はここで買ってもいいし、持ち込みもOKよ、工房の機械は使ってもいいけどくれぐれも壊さないでね、」

「………わかった。」

糸と布、綿も吟味して選ぶ。その値段と三時間分の料金を渡し、さっさと作業に掛かる。時間は有限である。人形だが、くまのぬいぐるみにしよう。ついでに防御式の刺繍を入れよう。綿も魔力が多く溜められる物、それと、外套の裏、背中に当たる部分に刺繍を5つ、向日葵の髪の毛を作った時の余りを使い、切った分は襟や袖の装飾に使えそうな物を代行者に出させる。まともな方法だと間に合うはずがないのは明白だが、何も全てやる必要はない。後で出来ることは後に回せばいい。ピンク色の装飾の鬱陶しいミシンを睨みながら、作業を開始する。………その前に、

「藤白、向日葵、宿押さえといてくれ、」

藤白に金貨を放り、ピンクのミシンに向き直る。一定の間隔で布を針が貫く音だけが聞こえる。その単調さ故に、眠気が……………いかん、いかん、なにか別の事を考えねば、………作業に集中しろと?やってますよ。手は動いてるよ、寝たら止まるけど、所持金については、保釈金は足りている。盗賊から回収した宝は、金貨68枚分は直接使えるが、残りは売却、換金する必要がある。だが、この街では何かと問題になりそうなので、置いておく。あっ、そうだ、

「エーデルワイス、こっち、」

「何………マスター、」

頭に手を置くと、念じる。『汝、我主トスルナラバ、汝、奇跡ノ使徒ニ任ズル』

 

奇跡ノ使徒 内訳

 

体現セシ者 魔法の効果を2倍にし、演算能力、情報処理能力を大幅に引き上げる。

 

宣言スル者 効果範囲や射程距離を大幅に延ばす。

 

えげつない魔法特化だ、しかし、近寄られた時の戦い方は、教えておかないとならないだろう。体格的にも、重要になるだろう。さて、作業の続きだ。




A、500倍

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