いつも通り、代行者にエドガーの家を探させ、発見したのだが、
「豪の邸じゃん、」
「えーと………ここに入るんですか?」
尻込みしてるのをよそに正面から普通に入っていく向日葵、待て!こっちの心の準備が出来とらん!
「こらーーー!戻ってこい!」
「不味かったですか?」
絶句、気品ある美少女に作ったのだが、外見に反して中身が脳筋な気がする、首を傾げ人差し指を唇の下に当てて考えるような仕草は絵になるが………
「中身は思うように作れないからな」
不可能ではないが、無理だ。人形を作るのは簡単、だが人間を思い通りに作ることは例え神でも無理だ。それに自分の思い通りになる、そんな人形と一緒にいても気が滅入るし、つまらん、第一に俺の意思が少しでも入った物を人間と呼ぶ事は出来ない。だから、ゼロから本人に作らせる。本来機構精霊は、命令遵守や忠誠等をランタンのような器に刻印するのだが、性格には一切手を付けず造り出した。その分安定しないので、精神の安定と成長の促進を刻んである。
「まっ、いっか、張り合いがあった方がいいし、」
ちなみに今は機構精霊も出してある。この方がすぐわかると思う、そんな機構精霊達の会話は完璧に現状を無視している。
『体、羨ましいですわ。』
『調子はどうですか?』
「とーーーーってもすごいの!ご主人殿に髪の毛を切ってもらったりー、ご主人殿と一緒に歩いたりー、あっ、服も買って貰いました。」
『『………いいなあー、』』
戻ってきたがこんな感じで、楽しそうに会話している。エーデルワイスは俺の頭の上、こいつはこういう奴だ、大人しい性格でマイペース、あまり喋らない、だが、少し頑固な、いや我が儘と言うべきか、
『今、作ってるのって誰の?』
嫌な予感……………
「………一応お前のだが、準備を考えるともう暫くかかるぞ。」
『明日…………』
はい?まさか、それまでに作れと?いやいや、まだ中枢の作成も刻印も途中、頭は作ったが、髪の毛はまだ、手足に至っては手付かず、体の外装は中途半端な状態、髪の毛その物を作るのは前に作ったので問題ないが、その後の事を考えると…………死ぬんじゃないだろうか。
『頑張って、マスター、』
俺この交渉が終わったら死ぬかもしれない。と言うか、死ぬ気でやらなきゃ間に合わねぇ、ここでくだぐだしてても始まらないし。
「よし、行くぞ、」
あっさり通された。大丈夫なのだろうか、セキュリティとか警護の観点から見るとアウトだろう。面倒がないので良いが、周りの調度品には目を惹かれるが、人の家の応接室でキョロキョロしてるのは行儀が悪いし、良い印象を持たない。俺もそうだし、さっさとソファーに座る。それに続いて藤白と向日葵が座った。で、千里眼で、調度品を見る。これなら視線を動かさない、一つずつ見ていくと、選りすぐりの品のあるものばかりだ。数は多くないが、自然と寂しいと感じない。配置も工夫されている。エドガーはかなり位の高い人物だろう。さて、気を引き締めるか、
暫くして、おっさん改め、エドガーが入ってきた。話が長くなるかと覚悟していたが、すぐに進んだ。ただ、人形を作って欲しいと言われた。子供の贈り物にしたいそうだが、裁縫とか学校の授業でしかしたことないぞ、だが、代行者曰く、人形作成は、どんな人形にも適応されるらしく、全然問題ないそうだ。実験の意味も含めて引き受ける事にした。そして工房に直行、テキトウに何枚か金貨を藤白に渡す。
「明後日、ここに来てくれ、俺は人形を作る。その間その金で好きにしててくれ、」
「え?あの、」
「じゃ、」
「あの、私は?」
「明日、完成予定の人形の服を買ってきて欲しい。明日頼むと思うから、今日は自由にしてて良い。」
まず中枢、これは機構精霊の器、それと人と同じく食事等を取るための胃と会話に必要な肺がこれに当たる。そしてそれに刻印をしていく、これについては代行者が最適かつ効率的な物を作れと言ったら、これを提案された原理は知らん、少しずつ勉強しているが訳わからん、器に3つ、肺に一つづつ、胃に4つ、合計九種類の刻印を指定の場所に刻む、緋緋色金なので加工はしやすい。大体1つ彫るのに30分なのだが、あと5つある状態で辺りはもう真っ暗…………寝なきゃ行けるか?
さて、現在10時くらい、途中から記憶がありません。………ヤバい、マジでヤバい、何がヤバいって時間だ、もう1つおまけに材料もヤバい、完成だけ考えるなら間に合う、が中途半端なものなど作りたくない。代案の模索をしながらオリハルコンで髪を作っていく。前は余り長く出来なかったが、2メートルくらいは伸ばせるようになった。見た目は透明だが、金属特有の光沢(光ってるようにも見える)がある。光の当たり方によって銀や白っぽく見える。後手触りがいい。
代案は決まった。文句とか言われないと良いが(後々の話だが)、芯に今回手に入れたオリハルコン(前回はアダマンタイトと緋緋色金の合金)、表面等強度が必要な箇所はアダマンタイト、今回向日葵と違い体の中には緋緋色金を入れることにした。武器にする訳ではない、魔力の貯蔵用である。エーデルワイスに作った目の魔石なのだが、両方聖光属性で、魔法(回復等)に特化している物だ。そのため貯蔵出来る魔力量が多い緋緋色金をいれるのだ。さてと、ラストスパートだ。
辺りは真っ暗、月は満月、眠気も限界、ついに完成した。
『これが、私の、体?』
「ああ、」
『………なんか、小さくない?』
「ああ………」
だってしょうがないじゃないかー。むしろ完成に漕ぎ着けたことを褒め称えて欲しい。
比較
向日葵
身長 156
エーデルワイス
身長 127
代案、それはサイズを小さくすることだ。手足等の製作に掛かっていなかったからこそ出来る方法だ、うんうん、
『こっち向いて、』
目が泳いでたか………と言うか俺はよく目が開いてるかどうかわからんと、子供の頃から言われてきた、読まれた理由は簡単、思った通りに作ることが出来なかった事に対する不安、気に入らないのではないか?もっと大きく作ってほしかったとか、自分の都合で変えた、その負い目がある、代案でも全力で作った、だがそう言う問題ではない。そんな不安定な感情を持っているため、表情にも動揺が大きく現れたんだろう。
「………やっぱり、嫌か?」
『嫌じゃない』
即答された。それでも不安は晴れない。
『マスターが私のために作ってくれた体、こんなに嬉しい事はないです。』
笑っていると思う。声だけだが伝わってきた、不安はいつの間にかどこかに消えていた、
「………さて、お前はこの体でいいのか?」
『早く、』
ランタンを開けると、白い光が人形に入って消えた。
「どうだ?」
倒れかかるように抱きつくと、消え入りそうな声で、
「………嬉しい、」