初めての食事は、あまりいい思い出にはならなそうだ、悪い事をした、何処かで埋め合わせを出来るよう考えておこう。で、現在馬小屋(自警団詰所)前である。
「懸賞金って、なんのですか?」
「列車を襲撃した賊だ、その頭目が、俺達と同じ世界の奴だった。そいつの首に懸賞金が懸かってた、額が多いらしくて、で二日後に来いと言われてまだ一日しか経ってないが、用意出来たとしても探さなくてもいいと思うんだが?」
「額が額ですし、関係ない僕まで駆り出されました。もし、盗まれでもしたら………考えたくないですね。」
え、そんなに?
「…………額聞いてる?」
「聞いてないです。ただあの慌てようだと金貨100枚は超えてるでしょうね。」
足りそうだな。無かったら別の町まで魔石を売りに行くつもりだったが、まあ、何よりだ、が中に入ると、誰もいなかった、まさか、あいつ等も探しに出てんの?一人は残れよ、
「あー………どうしましょう?」
知らんがな………まあいい、藤白と話すか。
「藤白………どう呼べばいい?」
「え?ああ、呼び捨てで結構ですよ。北川さんの方が年上ですし。………でも、僕名前言いましたっけ」
「俺には鑑定とかあるから名前くらいは余裕だ。」
「へー、他にはどんなスキルがあるんですか?」
「剣術とか体術みたいな戦闘系もある。スキルと言えば、藤白は1つもなかったな、」
「ははは…………僕、寝たきりだったせいで、なにもできなかったので、そのせいだと思います…………」
ん?だとするとあの称号は?
「それで、二日前意識がはっきりした時には、横に彼がいました。彼は事故で死んだそうです。」
はっきりしないな、確証もないし、突っ込むべきではないだろう。彼は二日前と言う所で嘘をついている。恐らく死ぬ直前の記憶が曖昧ながら有るのか、あるいは言いたくない理由があるのか、それとも…………、まあ、人形を作るか、時間は有限である。
一時間後、あの三人の内二人が戻ってきた。人形の方は…………今からがいいところだったんだよ、コンチクショウ、調子出てきたなと思ったときに呼ぶ母親と同じくらい邪魔になるタイミングだ。向日葵は頬膨らまし退屈そうだが、ずっとこっちを見ていた。作業中は気が散るのでやめてほしかったが、
「他に時間を潰す方法ありますか?」
威圧付きでこう言われてどうしようもない。と言うより、俺なんか見てて暇潰しになるのだろうか?まあ、人形作ってたのは物珍しいかもしれんが、
「ん、………ああ、で?懸賞金っていくら?」
背伸びをしてから本題を切り出す。
「金貨二百枚だ。」
おお、あいつ相等荒らし回ってたんだな、
「………で、良い知らせと悪い知らせがあるんだが…………」
「良い知らせから頼む。」
悪い方は予想がつかない程多いので、良い方から聞こう。
「引き渡された奴らを尋問してたんだが、拠点がわかったんだ、そこにはいろいろ溜め込んでるらしくてな、それの所有権があんたにある。多分こいつの懸賞金の倍はあるだろうぜ。」
「で?悪い方は?」
まあ、この流れだと貴族絡みだろう。問題はここからどう来るかだ、俺の取る手段が変わる訳じゃないが、
「この辺じゃあ聞かない、………要するに金に困った木っ端貴族が、国に納めるべきだとか叫びながら私兵を動かして、自分の懐に、金を入れようって寸法だ、」
はしょりすぎだろう。わかりわやくて助かるけど、モロに木っ端っていたな、何処の世の中も虎の威を借る狐は疎まれる。この場合虎は国で、狐は貴族だな、例え木っ端でも、貴族は貴族、血縁、私兵の数、領土を調べて対応を決めよう。情報収集を頼む代行者。まず、三つ、私兵は動いているかと、賊の拠点の位置情報、とその距離、そこから到着時間の予想、動いていない場合。いつ出発するか、わかるか?
《検索します。終了。結果を報告します。私兵は既に出発しています。規模は50人程度、なお、私兵は20人、残りは武装した領民です。目的地までの到着予想時間は、18時間6分37秒後です。位置情報は千里眼で映像を出します。目を閉じてください》
どれどれ………デカ!ちょっとした砦じゃん、木製では、あるが五メートル程の塀が建物を囲っている。地下は三階まであり、隠し扉に、抜け道が複数あった。罠の類いはないが、ただこれ専門家いるぞ、作る方はこの際置いておくが、今行く50人が、隠し扉を見つけられるか、まあ無理だ。俺には関係ないが、まず、地下を発見しなければ行けない。出来なければ天井裏の量は多いが価値のない物を宝だと思って持って帰る事になる。例えば鍍金の金貨や、宝剣のレプリカ、盗賊が盗んだ物だって価値のあるものばかりではない。相手が本当に価値のある物を持っているかどうかである。転売目的でいろいろ買い込んだ荷車なりを襲撃しようとも偽物を掴まされている場合、得をするのは売り付けた者だけである。そんなこんなで溜まったこれらが天井裏で有効活用されている、と言う感じだろう。放っといても平気そうだな。後から回収すれば良いだろう。何があるかと総額を報告してくれ。
《オリハルコンが………》
よし、回収だ。と言うか今すぐ手元に欲しい。
《では、万能結界の隔離を推奨します》
…………マジっすか?
《結界を張るためには正しい認識が必要です。今千里眼で見えている範囲内には結界を張ることができます》
あー、ゴブリンやら、オークやら、これで運んでたな、今更だったわ、そして、オリハルコンGET!面倒くさいし、金目の物も全部回収するか、ふう、大漁、大漁、少しにやけていたであろう顔を引き締める。貰うものは貰ったのだ。
「盗賊の拠点については、何も知らないことにしてください。場所も結構です、権利については譲ると伝えてください、私としては少しでも国の繁栄に貢献できればと思います。」
笑顔を作り抑揚を抑えてゆっくり喋る。まあ心にもない嘘だ。
「いや、でも、………そうか、わかったよ。」
「じゃあ、受けとるものも受け取ったし帰るか。」
「はい?」
「え、あのどういう事ですか。」
藤白と向日葵は理解出来てないだろうな。あとで説明してやるか。まあ、これからの流れだけどな。
「それと聞きたいんだが、二日前に町中に全裸で現れて連行された奴を知ってるか?」
「あいつの知り合いか?」
「ああ、こいつが、」
適当に後ろの藤白を指差す。
「そりゃあ、よかった、捕まえたは良いけど身元もわかんねぇし、引き取ってくれる知り合いもいねぇし、かと言って何もなしに外に出すわけにもいかねぇし、こっちも困ってたんだ。金はあんたが出すんだろ?」
「ああ、問題ないだろ、最悪こいつに貸すだろうがなんだろうがするし、」
俺は直接知り合いではないし、ゴチャゴチャ言いそうなら形だけでもそうすればいい、俺は工房を借りに行く。が、ここで問題が発生。
「ただ、その管轄がその木っ端だったような気がするんだよなー、」
嘘だろ、ここは手を間違えられない。俺が行けば不都合や詮索されるそして理由を付けて足止めもするだろう。藤白は金の出所や、足元を見られる可能性がある。金に関してはあっちも欲しいだろうし、増額されるだろう。ここは、代理人を立てたいが………
《列車で助けたエドガーが適任だと思います》
あのおっさんか、また気絶しないといいが………どのくらいの地位にいるか知らないが相手が力のない辺境の木っ端なら問題ないだろ。それに俺の強さも知っているし、下手なことはしないと思う。希望的観測だが、
「まっ、なんとかなるだろ………そろそろ行くわ、」
馬小屋を出た頃にはもう臭いには慣れてた。