移動手段を確保しないとな、脚が痛てぇ、結界の隔離を自分にも使えれば一瞬だが、出来ない事を考えても仕方がない、腹も減ったので店を探す。魔法ってすごいね、臓器も再現できるから、向日葵も食事が出来る。まあ、摂らなくても平気だか、あまり食にこだわりはないと言っても、初めての食事がテキトウなものでは、可哀想なので、少し良いところを探す。
《彼処はどうでしょう?》
清潔感のある店内に、開放的なオープンテラス、店員の接客もいい、カフェのようだが、ここでいいだろうか?
「向日葵、あそこでちょっと休憩するか?あと少し話もしたいし、」
「はい、ご主人殿」
嬉しそうに答えてくれたが、聞き方を間違えたな、今の所向日葵から帰ってくる返事は100%yes である。その勢いは白でも俺が黒といえば黒になりそうなぐらい。取り合えず、席に座り、メニューを見る。
「なにがいい?」
「ご主人殿と同じ物を、」
「ん?それでいいのか?」
「はいっ」
まあ、食べ物についてわからないのだから、仕方ないかと思いながら、ケーキと紅茶を2個づつ注文する。
《敵意のある人物を捕捉しました》
ここでか、猛烈に舌打ちをしたい気分だが、我慢する。数とか距離は?
《右に首を傾けてください》
?わかった、
ガンっ!
後方から飛んできた斧がおしゃれなテーブルに刺さった、あぶね!もっと鬼気迫る感じで言えよ!
「あー、外れちゃったよ………面倒臭いなー」
内心冷や汗タラタラだが、まあ、返しておくか。
「落とし物だ」
斧の柄を掴み、テーブルごと投げる。テーブルは蹴り砕かれ、破片がばら蒔かれる。
「あー、テーブルは関係無くない?」
「落とし物も持ち主の元へ返ったしもう用ないよな」
軽く威圧、当然、死なないように、すると、雰囲気が変わった、面倒臭いと言いたげな表情が、少し引き締まった。構えてはいないが直ぐに動ける姿勢をとっている。鑑定と真理を発動する。
クライスラ
スキル 隠密8 俊敏8 聴力強化5 視覚強化3 投擲7 短剣8 火魔法2
称号 暗殺者
暗殺者 内約 五感が鋭なる
隠密5 短剣5
こいつギルマスや列車の賊より強いかもな、俺の持ってないスキルが欲しいが、
「場所を変えよう」
「………わかった、」
「向日葵………そこで待ってろ。」
とにかく店を出ようと思い店を出ると、クライスラの姿がない、
《店の屋根の上です》
振り返ると刃渡り60センチ程の刃物で首を狙い、飛び降りている最中だった。地面を転がり間一髪避ける。結界で防御しているが、過信は良くない、追撃に来た所を刃物を持っている手を掴み背負い投げ、手首を捻り刃物を離させ隔離、その直後に振りほどかれ距離をとられた。速い奴だな。
「こいつは勝てそうにないな、さて………」
「ほら、忘れ物だ」
隔離していた刃物を取り出し、放る。驚いているが、さっさと帰って欲しい、
「………おい、………テーブル台だ、店に出しといてくれ、」
袋が、こっちに飛んでくる。適当に左手で取る。なにこれ?
《銀貨5枚です》
あー、はいはい、暗殺者の称号持ちがする行動じゃない気がするが………
「その店、ある渡来人がトップの店なんだ。」
渡来人?あー、異世界人の事ですか、なんか中国から来たみたいな感じだな。だだ、こいつがここまで気を使う理由はなんだ?
「わかった、出しとく」
野次馬がいっぱい、うざい、少し睨むとすぐに散っていった。さっさと店内に戻る。店のカウンターの方に行き、さっきの袋と、迷惑料として、金貨を一枚渡しておく。
テーブルが無くなってしまったので向日葵をつれて移動する。ケーキと紅茶を持って、
「あなたは、もしかして」
横から声をかけた、少年は見た目からして病弱な、黒い髪と茶色の瞳で、か細く自信のない声だったがはっきり、
「北川………さん、ですか?」
まず、こいつは知り合いじゃない。取り合えず鑑定と真理。
藤白 功徳
種族 人
パーソナルスキル 毒物・薬物効能操作・製造
耐性 毒無効 健康体
称号 薬殺されし者?
加護 戦神の加護
何故に、称号ハテナマーク付いてるの?それにスキルの項目がない、ただ称号ではっきりしたのは俺と同じで死んでこの世界に来た………と思う。あと加護?
「お前、送られてきたのか?」
「はい、この世界の闘いの神様にこちらに送ってもらいました。その時に魔法とか貰えないか頼んだんですけど、無理だったそうで、病気にならないようにしてくれって言ったら健康体を貰いまして、実は僕ともう一人、いっしょに来たんですけど、」
「?」
「もう一人の神様が送った人が横に真っ裸で居たんです。送られた先が街中で、その人連行されちゃって、僕戦う力無いですし、あの人が言うには前に送った人のサポートをして欲しいって言われてたらしくて、それで、」
「そいつ送った神、豊穣神でイーゼルとか名乗ってない?」
「はいそうですよ、やっぱり知ってたんですね!」
「………あの駄目神」
わざとなのかうっかりなのか、どっちにしろされる側からすればたまったもんじゃない。
「あっ(察し)………あなたも連行されたんですか」
「いーや、パラシュート無しの強制スカイダイビングさせられただけだよ、街から5km離れた所に、はっはっはっ、(怒)」
「はは………ところでそちらは?」
「私は向日葵です。ご主人殿の人形第一号です。」
誇らしげに胸を張っている。
「えっ………」
「ああ、最高傑作だ、まあ一体しか作ってないがな、」
「えっと、そう言うことではなくて、………どこから聞いたらいいですか?」
「いや聞くなよ、それより連行された奴は大丈夫なのか、」
状況によっては、説明している時間が惜しい。
「それが、お金が必要なんですけど来たばかりで餞別で貰った金額ではとても………それで、ここには同じ世界の人がよく通うお店、つまりここで誰かから借りられないかと、そしたら彼から聞いてた特長と一致する、北川さんが通り掛かった訳です。」
「ちなみにどれくらいここに通ってる?」
「二日程前です。」
ふーん、あの神にも考える脳があるんだな、二日前は俺がこの街に来た時期と一致する。なにか狙いがあるのではと考えてしまう。そもそも俺が会ったときの対応がすべて演技なら………考えすぎか、ただ頭の片隅には置いておこう。情報が少なすぎる。
「で、どのくらいの金がいるんだ、あとそいつにはどういう能力がある?」
「それは、ちょっとわからないですけど風魔法を貰ってました。お金の方は金貨50枚が必要だそうです。」
多分、足りない、オークの魔石を売れば足りるかもしれないが、
《足りません》
マジでか、どのくらいの金額になる?
《試算したところ、所持金295000円、魔石の売却で、合計359000円になります、この町では魔石1つ、銀貨一枚になります》
魔石が安いな、もの全般が安いせいか?
《そうです》
どう足掻いても手持ちでは足りない訳か、どうしたものか、
「あ、いました。」
青年が話しかけてきた。誰こいつ?
「懸賞金の受け取りに来ないから探したんですよ。」
あー、あの馬小屋で気絶してた、にしてもどうやってここを?考えていると暫く間を置いて向日葵を見る。
「綺麗な女の子を連れた男性を探していると聞いたらすぐわかりましたよ。」
普通に嬉しいな、ただ、先の事を考えると目立って仕方ないかもな、対策も考えておこう。
「そういえば額を聞いてないけどいくら?」
「ええーと、そう言うのは受け取る時に確認をするので………それに僕は探してくれと頼まれただけですし」
じゃあ行くか、と言おうと思ったら後方から威圧感が、と言うか青黒いのが漏れとる!漏れとる!頭に一発拳骨を落とす。
「ど、どうかしましたか?」
「ん?いや、たいしたことじゃない。」
あれ、気付いてない?結構炎と言うか霧みたいなのが出てたけど、後死人が出る可能性があったことは黙っておくに越したことはない。
「ええっと、お前も来るか?」
「よくわかりませんが、そうさせてください。」
はぁー………馬小屋行きたくねぇな、金はいるけど、清潔感って大事だよ。あっ、紅茶冷めてる。