最近夜一さんがよく家に来る。
なんでも抜け出すコツが分かってもう楽勝だ、とか言っていた。
何と無く思うんだけど、そんな事してたらいつか軟禁ぐらい行くんじゃないだろうか。
まぁ本人は今の生活が気に入っているようだから何も言うつもりはないが……。
思い出したんだけど、
夜一さんって確か弟がいたと思う。
もしかしたら知恵の輪を解いたのはそっちじゃないかと思ったりしてる。ああゆうタイプは天才型が多いからだ。
まぁ、「あれが解けるんならこれも解けるよね」と言って持ち帰らせずにやらせて楽しんだり出来るようになったからいいけど。
途中から涙目で此方を見てくるけど本を読んでて気付かないふりをする。
え?性格悪い?
知らん。
元々嘘を付いて来たのは向こうだ。向こうが正直に話したら許す気である。
まぁ、どうやら今は大切に育てられたせいか異常にプライドが高いようなので、正直に告白できるのは何年も後だとは思うけど。
それまでは気長に愉しませて貰うつもりだ。
「……あれ?」
今日はやけに遅いな?
いつもなら日が昇りきるまでには来るのに……。
夜、
……どうやら今日は来ないらしい。
というか、これ本当に軟禁されたんじゃないだろうか…。
まぁ来ないなら今まで通りに研究をするだけなんだけど、……そう。実は最近実験をしていない。
理由?将来的にあの人は浦原さんと関わるはずだからあんまり色々して目を付けられたくないからだ。
◇◇◇
1週間がたった。
これは確定だな。
夜一さん……ナム。
「邪魔するぞ!!」
……噂をすればである。
「どう……した?」
「……お主、儂が1週間もこなかった事に疑問はなかったのか?」
ないですね。むしろ納得してました。
「……軟禁?」
「そうなんじゃ!!!
彼奴ら儂を部屋に閉じ込めたんじゃぞ!!
しかも信じられるか!?
風呂もトイレも監視付きじゃ!!
我慢の限界で気絶させて抜け出してきたわ!!!」
オゥフ…。
それもっとやばくなるじゃんどうすんの?次は多分監禁だよ?
「そういうわけで今日から世話になる!!」
………what?
「………え?」
「なんじゃ?まさかあの家に戻れという気か?儂は嫌じゃぞ!!冗談じゃない!!!」
……まぁ。幼女とは言え流石にトイレやお風呂の監視は嫌だとは思うけど。でもそれは子供に危険な真似はして欲しくないという親心とかの結果なわけなんだけど。
この場合どうするのが正解なのか分からない……。
「勿論この家に住まわせてくれるじゃろ?」
「………」
まぁ、どうするべきかは分からないけど、この場合の俺の答えは決まってるんだよなぁ。
「………だめ」
「な!?なぜじゃ!?お主は鬼か!?いいじゃろうそれくらい!!」
「家の人が…心配する」
「自分のやった事を反省させるいい機会じゃ!!」
「泊まらせる…メリットが…ない」
「……それは。な、なら手伝うぞ!!この前のように薬草を拾ったりするのを!」
「1人で十分。…お金も…そこまで余裕…ない」
「それは…。な、なら儂が家から」
「それは…泥棒と同じ……」
「つぅ!!……」
「取り敢えず、帰って…謝るべき。…じゃあ、又いつか……」
「〜〜っ!この薄情者!!もう二度と頼らん!!」
夜一さんは勢いよく出て行った。
…まぁ、仕方ないと思う。
そらぁ、頼りにしていた相手?に裏切られたら辛いだろう。
けど、今回のことに関しては俺も譲れない。
俺と違って夜一さんは死ぬことはないだろうが、夜一さんの周りは違う。この世界に存在するかもしれない神様ってやつが、お爺さんの様に別れの挨拶をさせてくれるとは考えにくい。もしも、この死亡フラグ満載の世界で夜一さんが家出中に誰かが死んだら、夜一さんは後悔するだろう。
だからこそ、これだけは譲れないのだ。
とかなんとか格好つけてみたけど、流石にもう1回来たら無理、だって胸が痛いもん。苦しくて死にそうだもん。ごめんね夜一さん!!!
夜、
夜一さんはあれからこなかった。
他の人の家に行ったのか、おとなしく帰っていったのか…。どちらかは分からないけど、きっとこれでよかったんだよね……。
「ニャーー」
「………オゥフ。」orz
夜一さんに教えてあげたい…。
ここら辺には猫はいないってことを…。
え〜〜、
……まじかぁ?
あぁ、ドアがカリカリされてる音が聞こえる。
なんだかなぁ。
勘弁して欲しい。
出ろってことだよね?これ?
ここにいるって事は他の家にはいかなかったって事か?だって行ったら速攻で連れ帰られるだろうし…。
え?つまり何?俺なら絶対泊めてくれると思ってたってこと?………はぁ。しゃあないなぁ。
《ガチャ》
「!!………二ャ、ニャー」
何だろうか…。扉を開けたら恐ろしく愛らしい子猫がいた件について……。そらそうか、本人も子供なんだから猫でも子供だ。…にしてもこれは……凄いな。
「……?猫?なんで…こんな所に?」
「ニャーー」《スリスリ》
「……随分と…人慣れしてる……捨て猫?」
「ニャー」《コクコク》
「……猫…自然で生きれる?」
「ニャーー」《フルフル》
「なら……うちに住む?」
「ニャーー!!」《コクコクコクコク》
「君は……頭いいね。」
「ニャー?」
「夜一さんとは…大違いだ」
「ニャ!?」
以上、俺は棒読み、夜一さんは必死の寸劇でした。