DOG DAYS ~矛盾の退魔師~   作:抹茶屋

9 / 20
すみません、かなり分かりにくくなってなってしまいました。

マジ駄文ですすみません


9話目 ターゲットは姫様でした(下)

 陽が沈み、辺りはすでに真っ暗だった。

 

 只今シンクと夜天は、浴槽を探しに城の中を探索中。

 

 姫様LOVEのエクレールに「姫様のコンサートに、そんな汗臭い格好で来られても困る。だから、貴様らはコンサート前に風呂を使って来い」と言われたのだが、なにぶんこっちに来てまだ半日の二人だ、城の中で迷子になっています。

 

 誰かに聞こうと周りを見渡すが、コンサートの準備に、ほとんどが出払っているぽく、人の気配が全くしない。

 

 

「なあシンク、俺たちいつになったらオアシス(浴室)に辿り着けるんだ?」

 

「僕に聞かれても……」

 

「何で誰もいねえんだよ」

 

「みんな準備に忙しいだよ、姫様の歌を聞きたい人だってたくさんいるんだし。僕も姫様の歌を聴いてみたいしね」

 

「まあそうだろうけど、流石に不用心すぎないか? いくら平和な国だからってこれは……でも俺も少し聴いてみたいかな、姫さんの歌は」

 

「でしょ! みんな楽しみなんだよ!」

 

「全国の歌姫だしなぁ……ん? おいあれ?」

 

「どうしたの柊くん?」

 

 

 夜天が見つけた先には、中庭のような拓けた場所の奥にある、一つの部屋を指差した。

 

 その扉の隙間から、微かに湯煙のようなものが立ち上っているように見える。

 

 

「あ! あそこだよきっと!」

 

「やっと風呂に入れる……今日は疲れたぜ」

 

「そうだね! じゃあ早く入ろうか!」

 

 

 二人は駆け足で、その部屋に入り込んだ。

 

 なかは、ホテルで見かけるような、豪華な控え室、その奥にもう一つの部屋がある。そこは浴室であろうが、ドア越しでもその広さは十分に分かる。

 

 

「お先に失礼するよ!」

 

「ちょっ! シンク抜け駆けはズルいぞ!」

 

 

 いつに間にか、服を脱ぎ終わったシンクは桶を片手に、向こう側に消えてしまった。

 

 夜天も急いで脱ごうと、上着に手をかけた瞬間だった。

 

 

「うわああぁぁぁぁ!」

 

「シンク!? 大丈夫か!」

 

「だ、大丈夫、ちょっとはしゃぎすぎて、す、滑っただけだから」

 

「なんか怪しいな? 本当に大丈夫なんだよなぁ?」

 

 

 奥から、シンクの声がくぐもった声で、返事がきた。

 

 怪しく思った夜天は、札の入ったフォルダーの留め金を外すと、着物も一緒に(はだ)ける。

 

 

「シンクお待たせ!」

 

 

 扉を開けようと手をかけたが……開かない。

 

 シンクが向こう側で扉を開けられないように押さえているのだろう。

 

 

「おいシンク! なんのマネだ!」

 

「ゴメン柊くん! でも、いまはちょっと!」

 

「はあ? 風呂を独り占めはどうかと思うぞ?」

 

「いや、一人じゃ……なくわないんだけどね……何て言うか……」

 

 

 また口籠った。なんなんだよいったい。

 

 

「はっきりしろ、もう我慢の限界だ! ぶっ壊……」

 

「わーわー待って待って! いま開けるからちょっと待って!」

 

「開けてくれるならさっさと開けろよ」

 

 

 夜天は深い溜め息を吐くと、扉の向こう側からシンクが離れたことを確認してから、扉を開けた。

 

 白い湯煙が、夜天の体を包み込む。

 

 

「へー結構広いじゃん、流石城って感じだな」

 

 

 辺りを見渡しながら、シャワーが並べられている場所に向かう。シャワーは一応こちらの世界と同じものだったので、普通に使うことができた。

 

 一方シンクはというと、すでに風呂に入っており、こちらにぎこちない笑顔を向けていた。

 

 

「シンク! お前……」

 

「な、なに?!」

 

 

 方を震わすシンク、お湯のせいなのか額から汗が滲み出ていた。

 

 

「…………体洗ったか?」

 

「か、体?」

 

「そうだぞ? 後に入る人のことを考えたら当たり前だろ?」

 

「そ、そうだよね! あはは、心配要らないよ、しっかり体は流したから!」

 

「そう、まあそれなら別にいいけど」

 

 

 体の向きを反転して、蛇口を捻りお湯を出す。

 

 鏡の向こう側で、シンクが胸に手を当てていた。

 

 

『バレてないと思ってるのか? バレバレだ、シンクの頭から犬耳が生えてる次点で分かるって、相手は姫さんか? エクレは垂れ耳だし、リコは……ガキだし、隠しことだから女だろうからな……やっぱ姫さんかな』

 

「ね、ねえ柊くん」

 

「ん? どうしたシンク」

 

 

 湯船からゆっくり上がろうとするが、背中に隠れている姫様を庇いながらのために、下手に動けないようだ。

 

 

「ちょっとだけ目を積むってもらえるかな?」

 

「構わねぇけど、隠し事をするならもっと上手くしろよ、姫さんがいることバレバレだからな」

 

「「え?」」

 

 

 夜天は、シャンプーで頭を泡たたせながら、後ろで二人が驚いている顔をしているのが、見なくてもわかった。

 

 

「あと体流すだけだから、それまでゆっくりしてれば? その後すぐに姫さんとシンクの二人っきりにしてやるからよ」

 

「いえいえ、勇者様たちはゆっくりとお風呂に浸かってください。私は先ほど洗いましたので、ちょうどよかったですから」

 

 

 そう言うと姫さんは、出口の方に向かっていった。

 

 扉に手を掛けようとしたとき、こちらにもう一度振り替えってきた。

 

 

「あの召喚の事とか、これからの事とか…。お二人にお話ししたい事、いっぱいあるんです。ですから、コンサートが終わったら、少し…お時間頂けますか?」

 

「「全然構いませんよ」」

 

 

 二人が同じことを言ったことに、多少驚きもしただろうが、すぐに笑顔に戻し一礼してから扉の向こう側に消えていった。

 

 

「いい子だな。ところでシンク、姫さんの柔肌見た感想は?」

 

「思い出させないでよ!?」

 

「見たんだ! エクレに言ってやろ」

 

「ちょっ柊くん!」

 

 

 花が散り、男二人という色がない場所とかした浴室で、洗い終わった夜天は湯船に浸かろうと、向かったときだった。

 

 

『きゃー!』

 

 

 外から姫さんの叫び声が浴室の隅まで木霊する。

 

 

「今のは!」

 

「姫さんのこえだな……」

 

「って! なんで湯船に浸かろうとしてんの?! 早くいこう!」

 

「え、ちょ、おいシンク!」

 

 

 夜天の手首をがっちり掴み、そのまま引きずるかたちで、こんなときにでも、しっかり服を着るシンク。

 

 着替え終わると、またすぐに夜天の手首をつかみ、そのまま悲鳴が聞こえた外に飛び出した。

 

 そこで二人が見たのは……。

 

 屋根に立っている三つの影、その一人の影の脇に抱えられ、その口にはタオルで縛られた姫様がいた。

 

 

「我ら! ガレット獅子団領!」

 

「ガウ様直属秘密諜報部隊!」

 

「「「ジェノワーズ!」」」

 

 

 何処かのアイドルグループがしそうなポーズをとる三人組。

 

 その三人組の後ろから、花火が数発上がるとその光で三人の姿が見えた。

 

 一人は緑色の戦闘服をきたウサ耳の少女、さらにもう一人は、黄色の戦闘服をきた犬……うん犬耳の少女、そしてその二人に挟まれた全身黒ずくめの少女。

 

 

「ウサギ、ネコ、イヌだな……」

 

「ちょっと待てぇぇ! うちはイヌじゃなくってトラや!」

 

「どっちでもいいだろ! 関西弁女、俺は早く風呂入ってさっぱりしたいんだよ!」

 

「どっちでもよくないわ! ちょぉぉぉぉ大事なことや! それにうち等がようあるのはそこの勇者だけや!」

 

 

 関西弁(自称トラ)がシンクに向かって指を指した。

 

 

「ビスコッティの勇者。あんた等の大切な姫様は、うちらが攫わせていたで!」

 

「我々はミオン砦で待っています!」

 

「姫様がコンサートで歌われる時間まで、残り一刻半。…それまでに、無事助けに来られますか?」

 

 

 挑発的な口調で言ってくる黒ずくめの少女。

 

 

「つまり、大陸協定に基づいて、要人誘拐奪還戦を開催させて頂きたく思います。こちらの兵力は200。ガウ様直轄の精鋭部隊」

 

「で、ガウ様は勇者様との一騎打ち。さらにはそちらのご友人との戦いもご所望されております」

 

「ん? てことは別に……」

 

 

 大陸協定、言わば受けるか受けないかはこちらで決められる。

 

 もしここでシンクが受けなければ、この話はなかったことになり、姫さんも戻ってくるはず。

 

 

「シンク、この挑戦状うけなく……」

 

「あなた方が断ったら………姫様にあんな事やこんな事に……」

 

 

 シンクが悩んでいるところに、追い討ちをかける黒ずくめの少女。

 

 シンクはその言葉を聞いて顔を勢いよくあげ、そして夜天は次に何が起こるのかがわかったが、止めることができなかった。

 

 

「っ! 受けて立つに決まってる! 僕は姫様に呼んでもらった、勇者シンクだ! どこの誰とだって戦ってやる!」

 

「あーぁ……このバカ勇者」

 

 

 三人同時に口元がにやりっとつり上がったように見えた。

 

 

「了解。これで、戦成立とさせていただきます」

 

 

「では、私達は先程言った通り、ミオン砦でお待ちしてますね」

 

 

「じゃ、楽しみに待っとるで! それとそこの勇者の友人mって!?」

 

 

 トラ耳は、夜天を指差そうとしたときに、あることに気づいてしまった。

 

 その光景がなんなのかを理解したとき、トラ耳の顔をゆでダコのように真っ赤に染めた。

 

 

「なんであんたは裸なんやぁ!!」

 

 

 そう、夜天はいままでずっと裸でシンクの横に立っていたのだ……隠すこともせずに…。

 

 

「文句はシンクに言え! 着替える時間もくれないまま引き摺られてきたんだからな」

 

「だからって少しは隠そうとか思わんのか!」

 

「隠したら意味ないでしょ!」

 

「「「この……変態が!!」」」

 

 

 屋根の上からいろんなものが、夜天に投げ込んでくる。

 

 時々刃物やら弓やらと飛んできたりと、冷や汗を掻きながらも見事にかわしていく夜天。

 

 

「なんで当たらんのや!」

 

「見事にかわされますね!」

 

「勇者の友人、恐るべし」

 

 

 弾幕の嵐がやむと、屋根にいた三人はこのままでは埒があかないとふみ、仕方なく屋根から向こう側へと飛び降りていた。

 

 

「この続きはミオン砦で!」

 

「私たちはこれみて」

 

「さらば……」

 

 

 見えなくなる前に、捨て台詞を吐きながらその場を去った。

 

 嵐のような出来事のせいで、その場は沈黙が……「ハックショッ!!」、代わりに夜天の早大のくしゃみがその場だけを響かせた。

 

 

「大丈夫柊くん?」

 

「誰のせいだ誰の、中継で俺のあられもない姿を見しちまったろ! 明日飢えた獣が襲ってきたらどうしてくれるんだ! まあ俺的には大歓迎だがな、からだが冷えたのでもっかい風呂はいってくるわ」

 

「あ……えっ、あ了解! 行ってらっしゃい」

 

 

 何か言いたかったのかシンクはぎこちない返事を返してきた。

 

 そんなシンクを背に、せっせと浴室に向かう。

 

 扉を開けようと手を伸ばした時に、ひとついい忘れたこと思い出した夜天はシンクにもう一度振り替えった。

 

 

「シンクに忠告……ここ猛獣が出るから気を付けろよ。それだけだ、じゃ!」

 

「どういうこと! ねぇ柊くん! どういうこと!」

 

 

 夜天が浴室に入ったあと、外からシンクの短い悲鳴が聞こえたのは言うまでもない…………。




 疲れた……感想でヒロインは複数いるのか聞かれましたが、増やすかどうかは迷い中です。

 増やした方がいいのかな……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。