DOG DAYS ~矛盾の退魔師~   作:抹茶屋

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テストが終わった……。
結果は聞かんといて。

オリジナルで考えると難しいね、でもこの次は作品に沿った話になるから簡単なはず。


最後に一言、テスト前 研修旅行 きついです


11話目 記憶の罪悪感(下)

「今は時間がないでござるから、短く話させてもらうでござる。あれは、拙者と兄《イスカ・マキシマ》と魔物退治の旅をしていた途中でござった」

 

 

 村が魔物に襲われ、《ヒナ・マキシマ》と《イスカ・マキシマ》だけが奇跡的に生き残り、そして村を襲った魔物を退治した。

 

 しかし、魔物はそれだけではないと知っていた二人は、その復讐心で魔物退治をすることを決め、今無き村を出て二人で魔物退治の旅に出た。

 

 

「村を出て数日の辺りでござる。魔物を探していたとき、森のなかで柊殿とそのご両親が魔物と交戦していたのを見かけたのは」

 

 

 《ヒナ・マキシマ》と《イスカ・マキシマ》の二人は、森の中を慎重に足を進めていたとき、森のなかでかなり大型の魔物が、何者かと戦闘をしていたのを見つけた。

 

 

「兄者! 人が襲われています! 助けにいきましょう!」

 

「ちょっと待てヒナ、あの魔物は俺たちが行ったところでどうにかできるやつじゃない」

 

「ですが! 襲われている人を見捨てることは出来ません! 兄者がいかないのでしたら私だけでもいきます!」

 

「待てヒナ!」

 

 

 ヒナは魔物がいるところまで走っていき、二人の男女の前に立って武器を構えた。

 

 

「そこの人たち、ここは私に任せて早く逃げてください!」

 

「あらかわいい子、ねえ君? ここがどこかわからないかしら? あたしたち迷子で」

 

「今はそんなことよりも早く逃げてください!」

 

「楽しいはずの家族旅行が森で遭難とはな、全くついてねえぜ」

 

「あなたが楽しようとして転送符を使ったのが間違いじゃない!」

 

「俺だけのせいかよ! お前だって賛成してたろ!」

 

「お二人とも今は喧嘩を「ヒナ! よそ見するな!」……えっ?」

 

 

 イスカの声に反応しても遅し、既に魔物のはヒナに向かって腕を振り下ろしているところであった。

 

 

「ヒナぁ!」

 

 

 間に合わない、ヒナとイスカはそう確信し目を瞑ったときだった。

 

 

「『玄武(げんぶ)絶界(ぜっかい)』彼女を守りたまへ」

 

 

 男の声が森の中を響かせたのと同時に、魔物の攻撃が何に弾かれた。

 

 ヒナは瞑っていた目をゆっくりと見開くと、そこには一枚の紙切れが魔物の攻撃を受け止めていた。

 

 

「ここの生物はこんなに凶暴なのか? 大丈夫かお嬢さん」

 

 

 ヒナは何が起こったのかを理解できず、呆然と立ち尽くしているだけで、気がついたときには、その魔物は複数枚の紙によって拘束されていた。

 

 

「これで安全だけど、《天乃(あまの)》こいつの始末任せたぜ」

 

「承った《夜神(やがみ)》さん! 『白虎(びゃっこ)断雷槍(だんらいそう)』、雷を、悪しき心を祓いたまへ!」

 

 

 女性が一枚の紙をポケットから取り出すと、その紙は光と共に形を変え、光の槍とかす。さらにそに光の槍は稲妻を帯び、触れるものを全て灰とかしていた。

 

 その槍を持った女性は、自分の数倍はある魔物を前に、一直線にかけて槍をひと突き。

 

 刺された箇所からは青い光がほとばしり、魔物は必死の抵抗を試みるが身動きがとれず悲鳴をあげて抵抗するしか方法はなかった。

 

 そしてその悲鳴も徐々に小さくなっていき、やがて声は聞こえなくなった。

 

 

「手応えなかったわね、まだ悪霊の方が強いんじゃなかった?」

 

「天乃が強すぎんだよ……あーあ、中が真っ黒だぜ、《夜天》に見せないようにしろよ」

 

「わかってるわよ、ちゃんとあたしの側に……あれ?」

 

 

 天乃は自分の周りを何度も見回したが、夜天の姿はどこにも見つからない。

 

 ハッと気がついたときには、既に遅い。夜天は黒焦げになった魔物の近くで無邪気にペタペタと触っていたどころだった。

 

 

「ちょっ夜天! そんなもんに触ったらダメよ!」

 

「夜天、こっちに面白いのあるからおいでー」

 

 

 一瞬そちらを向く夜天だったが、すぐに目線をそらすとまた魔物のほうに興味を戻す。

 

 

「ちょっと! 何で来ないの! あの子私の子よね!」

 

「俺たちの子だ! 間違いようがねぇ!」

 

 

 親がワギャー騒いでいる間に、ヒナは夜天に近づく。

 

 身長はヒナの方は若干高い、120㎝くらいだろうか、顔は丸っこく髪を切ったことがないのか、背中まで伸びきっていた。

 

 ヒナは夜天を観察している間に、夜天はヒナの存在に気づき、訝しげな目線を送る。

 

 

「何で犬の耳に尻尾生やしてるんだ……妖怪か?」

 

「私は《ヒナ・マキシマ》と申す」

 

「《柊夜天》七歳、今は森で遭難中」

 

「あなたたち……もしかして異世界から来たの?」

 

 

 夜天はキョトンとした目でヒナを見つめ、首をかしげていた。

 

 

「ヒナ! 怪我はないか!」

 

 

 ヒナの後ろから、同じく耳と尻尾がついた男が近づいてきた。

 

 流石の夜天も、少し怖かったのか、魔物から離れると小走りで親の元に向かった。

 

 ヒナは見て気づいた。さっきの戦いをみて、圧倒的な力で魔物を倒したことを、この人たちならあるいはと……。

 

 イスカもまた同じことを考えていたらしい、二人はお互いの意見が一致したことを確認してから夜天の親の元に歩いた。

 

 

「先程は妹のヒナを助けてもらいありがとうございます」

 

 

 イスカは妹の代わりに頭を深々と下げて感謝の意を示した。

 

 

「別に頭を下げるようなことじゃねぇよ、当たり前のことだぜ」

 

「そうよ? それにあたしたちを助けようとしたとこにあたしはときめいちゃったし!」

 

「おいおい、そんなこと言ったら俺嫉妬しちまうぜ」

 

 

 陽気に漫才をしている二人に、ヒナは真剣な顔で見つめているのを、夜天が気づいた。

 

 夜天は母の袖を引っ張って漫才を中断させると、夜天が指差す方向を向く。その方向にあったのは、何かを伝えたそうに見つめてくる少女の姿があったことに二人は夜天が何を言いたいのかを察した。

 

 

「えっと何かあたしたちに伝えたいことがあるのかな?」

 

「俺たちの話を聞いてくださるのですか?」

 

「そんな表情で見つめられたらな……話ぐらいは聞いてやる」

 

「それでは単刀直入で聞きます。私たちと共に『魔物退治』をして下されませんか!」

 

「「オッケー!!」」

 

 

 

「即答かよ!?」

 

「拙者も説得に時間をかかると思ったでござるが、即答で、しかも了承ときたでござった。拙者と兄者は腹を抱えて笑ったでござるよ」

 

 

 夜天とダルキアン卿はクスクスと笑いながら話していた。

 

 

「それでどうなったんだ?」

 

 

 子供が紙芝居を聴くような、はしゃいで目を輝かして見つめる夜天。

 

 しかし、ダルキアン卿の顔は少しくぐもった表情に戻っていた。

 

 夜天はその表情から瞬時に悟った。ここからが悲惨な結末を迎えるということに……。

 

 

「無理しなくていいよ、話はまた今度でも構わない」

 

「いや、大丈夫でござる。それに今言わないといけない気がするでござる」

 

「……それなら聞こうかな、話してくれるか?」

 

「承知したでござる。了承を受けてから、条件として三日間の間まででござった。その三日後に、柊殿のご家族は、霧型の魔物に身体を乗っ取られてしまったでござる……」

 

「乗っ取られた……?」

 

 

 ダルキアン卿の首が縦に振られた。

 

 

「一瞬の出来事でござった。最後に御二人は『愛してる』と言って夜天殿だけを現世に送り返したでござる。今の御二人の存命はわからないでござるが、きっと生きてると拙者は信じているでござるよ、だから夜天殿も信じて待ってくだされ……」

 

「……そうなんだ、記憶が曖昧でわかんないけど……俺の親はすごい人だったことだけはわかったよ。それに、俺の親はここにいる気がするんだ……だから信じる。話してくれてありがとう。それだけで心の靄が少し晴れたよ」

 

「そう言ってもらえるだけで拙者も安心するでござる。さてと、話もこのくらいにして、そろそろ先にいった二人の助太刀に行くでござるか、夜天殿はもう少し休んでいられるとよいでござるよ」

 

 

 こちらに微笑みを見せるダルキアン卿だったが、その顔は少しだけ晴れた顔をしているが、まだ罪悪感を持っている顔もしていた。

 

 その表情をしたまま立ち上がると、ミオン砦に向き直りゆっくりと進んでいった。

 

 その後ろ姿を夜天は見届けていると、ダルキアン卿が、何か思い出したのか、こちらに戻ってきた。

 

 

「大事なことを忘れていたでござる。夜天殿、この二枚をお渡しするでござるよ。あの御二人が使っていた札でござる。夜天殿がまたこの世界にきたとき、渡してくれと頼まれていたのでござるよ、御二人とも、夜天殿がくることがわかっていたみたいでござった」

 

 

 ダルキアン卿は二枚の札を夜天の手にのせると、直ぐにミオン砦に向かった。

 

 

「またきたら、か……父さんと母さん……会いたいな……」

 

 

 二枚の札を見つめていると、夜天の片目から一滴の水滴が流れ落ちた。




さて次回は脱がすか、それとも破くか……悩みますなぁ!

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