ヒロインは私の体力が持つまで増やす予定にしました。欲深い人で申し訳ない……。
かなり分かりにくい文になっています。もしわからない、ここはこうした方がいいと言うアドバイスがあればとても助かります。
セルクルの背中に揺られながら、シンクと夜天にエクレ、さらにリコまでもが姫様奪還戦争に参加した。
というか、シンクがなんの考えもなしに突如表れた《ジェノワーズ》と言う三人組に、大陸協定に乗っ取った要人誘拐奪還戦を受けてしまったのが始まりだ。
「全く……。宣戦布告を受ければ公式の戦として認めたことになる! 普段の戦闘ならいざ知らず、寄りにもよって姫様をこんなタイミングで!」
「……ゴメン」
こうして俺たちは姫様が囚われている場所、ミオン砦に向かっている道中で、シンクがエクレに説教されていた。
「エクレ、そこまでにしとけ怒りすぎると頭の血管が切れるぞ? こうプツンっと」
「柊さまの言う通りでありますぞ!」
先ほどからずっと弱々しい返事しか返さないシンクに助け船を出す、夜天とリコに、シンクに呆れて溜め息をつくエクレ。
「だからってこんな大事な時に受けるやつがいるか」
「まあ仕方ないだろうな、誘拐ってこっちから聞いたらかなり大変なことなんだぜ。場合によっちゃあ殺されていてもおかしくない事件なんだよ」
「こ、殺されるって!」
「そんなことがあるのでありますか!?」
驚くエクレとリコ、驚いても仕方がない、こっちの世界では俺たちの世界とは一回りも二回りも違うほど平和な世界だ。
そんな世界で人殺しが起こることなんて滅多にないのだろう。
「そうなんだ、だから黙ってられなかった!」
セルクルに乗りながら、右手に
「でも大丈夫! 姫様も助けるし、コンサートだって間に合わせる!」
「……当たり前だ!」
「自分も微力ながら、頑張るでありますよ!」
「まあ暇潰しにはもってこいだしな、それにあの三人組にお仕置きをする必要があるし」
全員が全員同じ理由で来たわけではないが、目的の場所も意思も同じ、ならば作戦に支障はない。
援護のため、リコとはここで一旦別れることになった。
「勇者と夜天、聞け。ガウル殿下の兵は、悔しいが精鋭だ。そして、私達には本隊を待つ時間はなく、少数で攻め込むしかない」
目の前に目的の砦が見えてきた。
この話だけ聞けば、勝ち目など到底ないようにも聞こえるが、そんな事はない。
むしろ夜天は、こんな絶体絶命的な状態での戦いを求めていた。
「だが、かつての大戦では、千を超える騎兵隊を切り抜け、一騎のみで敵将まで辿り着いた伝説の騎士だって存在した! 今は、決して一人じゃない。私に勇者、そして夜天。この三人がいる! さらにリコの援護だってある。やってやれない事はない!」
「おう!」
「こういう状態ってめっちゃワクワクするよな! んじゃあ最初の作戦はやっぱり……」
「「「最短距離を最高速で正面突破!!」」」
各々武器を取り出す。
夜天も懐から札を取り出そうと手を伸ばすが、あることに気がついた。
「あ………なあエクレ、紋章砲ってどうやるんだ?」
「な、なんだ急に……まあいい、知ってても損はないからな」
「ありがとよエクレ!」
夜天はエクレに微笑み返すと、セルクルの背中の上に立つ。
「まずは自分の紋章を発動させる」
出し方はわからないが、取り敢えず出たと思い込む。
「全身の力と気合を込めて、紋章を強化!」
右手の甲に紋章が出てると思い込み、そこに力をいれる。
すると、夜天は気づいていないが、夜天の後ろには大きな紋章が現れていた。
「フロニャ力を輝力に変えて、自分の武器から解き放つ!」
「こうでいいんだな!」
自分の拳を前に勢いよく突きつけた。
すると、夜天の拳から光輝くビーム基紋章砲が飛び出した。
しかし、その光は数メートル進むと夜天たちの目の前で霧散した。
「……まあ紋章術には向き不向きがあるからな! 気にすることはない!」
「そ、そうだよ柊くん! 何事もチャレンジ、ネバーギブアップ!」
「シンク、その使い方違う気がするんだが」
失敗した夜天を二人は一生懸命励ましてくれた。
その心遣いは正直嬉しいが、失敗したことに夜天はどうとも思ってはいなかった。
「でも紋章術って結構面白いもんだなそれにどこかで使った気が……試す価値はあるな」
「試す? 柊くん何を試すの?」
「ちょっとな、まあ見とけって!」
夜天はセルクルの背にもう一度乗り直すと、今度は指を銃の形にし、数十人の敵兵が見えるミオン砦の入り口に指先を向ける。
「夜天、貴様は何をするつもりだ」
「ちょっとした俺がアレンジした紋章術を試そうと思ってね」
指先に集中する夜天の後ろには、先ほどと同じく紋章が浮かび上がっていた。
紋章はどんどん光の強さが代わり、夜闇を照らし始めた。
気づけば、光は夜天の指先に集まり、野球ボールほどの球体が出来上がっている。
「第一ステップ突破、第二ステップに移行っと! 蒸発は勘弁、発射!!」
掛け声と共に球体は、夜天の指先からまるで弾かれたかのように飛んでいった。
今度は途中で霧散することなく、真っ直ぐと敵陣に向かっていた。
門の前に盾兵が構えていたが、その球体は盾に当たったが止まることなく盾兵を吹き飛ばし、後ろの門にめり込み止まった。
「なんていう威力だ……」
「すごい、すごいよ柊くん!」
「驚くのはここからだぜ! 第二ステップは成功、最終ステップだ、派手にぶちかますぜ!」
両手を勢いよく合わせ、夜の道をに手のひらを叩いた音が、木霊する次の瞬間……。
朝陽が昇ったかのような光と共に、爆音と爆風が夜天たちを襲った。
前から勢いよく土煙が舞い上がり、夜天たちを覆い隠した。
土煙で前が見えない状態でも、三人はセルクルのスピードを落とさない、やがて土煙が晴れていき、現状を把握するために周りを見渡す三人。
そこで三人の目に留まったのは、想像を遥かに越えたものがそこには広がっていた。
先程まで数十人と列になって、夜天たちを向かえ打つ準備をしていた兵たちは、全て《ケモノダマ》へと姿を変え東西南北とあっちこっちへと吹っ飛んでいた。
そして門は、さっきの爆発で跡形もなく破壊され、中が剥き出しになっている、門の後ろで控えていた兵たちも、何が起こったのかわからずにただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
「柊くん、流石にこれはやりすぎじゃない?」
「あー俺もそれは思った、ここまでとは思わなかった」
「しかし、これはチャンスだ! あそこから一気に攻める!」
チャンスを逃すまいと、セルクルの足をさらに早めてミオン砦に入り込むシンクとエクレ。
しかし夜天はセルクルの背でぐったりと倒れ込み、そのまま地面に滑り落ちるように墜落した。
「体に力入らねぇ……紋章術での疲労か、あとは任せたぜ……」
セルクルが顔を擦り付けてくるのをお構いなしに、夜天は少しでも体力を回復させるためにその場で眠りに入ろうとしたのだが、その行動をひとつの影が止めた。
「もうここでダウンでござるか? 昔は何事も諦めない闘志が見えた気がしたでござるが」
夜天の頭の上で、こちらの顔を覗き込む一人の長髪の女性いた。
その頭には犬の耳がピコピコと動いているのが見え、仲間だと言うことがわかった……が、奇妙なことにその女性は、夜天のことを知っているかのような口振りで話しかけてきたことに、夜天はその女性に警戒心を剥き出しに睨む。
「あんた……なんで俺のことしってんだ……なに者だよ」
「忘れるのも無理ないでござるよ、拙者とあったときは、まだこんなに小さかったでござるからなぁ」
そういうと、女性は腰辺りに手をかざすと、ケラケラと笑い始める。
その高さだと、夜天がまだ小学生を上がったか上がらないか辺りの大きさだった。
その時の記憶は夜天は事故で記憶がなくなった年だったはず。
「あのときは本当にすまなかったでござる」
和みが長髪の女性から消え、頭を深く下げたまま動かない。
現状が全く掴めない夜天は失った記憶を思い出そうと頭を抱えるが、やはり記憶は戻ることはなかった。
「ひとついいか……その時の記憶がなくてさ、できればあんたとの関係を含めて何があったのか教えてもらえると助かる」
「うむ、わかったでござる、ではまず拙者と初めてあった時のお話からでござる」
転生ものでもいい気がするな……タグに増やすか?