全国大会10連覇を目指し日夜練習を行う我が黒森峰女学園。全国大会1回戦を1週間後に控えたある日。私は西住まほ隊長殿に呼び出しを受けた。最近問題は起こしていないはずなので怒られる事は無いはずだ。・・・多分。
「霧島です」
「入れ」
「失礼します」
「霧島、聞きたいことがある」
「何でしょうか?」
「今の隊の空気についてどう思う?」
「副隊長への不満?という事でしょうか?」
「そうだ。このままでは全国大会に支障をきたす恐れがある」
そりゃね。
「確かに。練習中、一部の車両が命令無視をする事がありますね。あと多少の嫌がらせも」
「何!?」
おっと、この情報は初耳か?
「大丈夫です。逸見と綾波先輩が目を光らせています」
「そうか」
シスコンが。
「それで私にどうしろと?何か対策を行えと?」
「綾波元副隊長と話したが私たちが介入する事で、更に状況を悪化させる可能性があると結論に至った」
なるほどね。そこで俺って事ね。
「1つ妙案があります。しかしこれを実行するには、かなりのリスクがあります」
「言ってみろ」
「西住まほ隊長は決勝戦でのみ指揮を行う。それまでは副隊長の西住みほが指揮を行う」
「待て待て霧島!」
「隊長最後まで聞いてください」
俺は隊長を黙らせ、説明を続ける。
「まずみほに関してですが・・・まず入学した時より戦果がない。それも目に付く戦果が。原因は私ですが、それ以上に彼女は何も残していない。それなのに彼女は1年で副隊長になった。今までの黒森峰の中ではトップ10に入ると言われ、西住まほが居なかったら間違いなく次期隊長だった綾波先輩を押しのけて就任した。・・・今この様に皆思っています。なら簡単です。目に見える大戦果を出せばいい。全国大会10連覇が掛かっている、この大会で!」
隊長は考える。さぁ?どうでる?
長い沈黙のあと、隊長からは
「それはみほへかなりの重圧にならないか?」
「なります」
「ならそれは!」
「それをしなければ彼女はこのまま潰れます。周りから白い目で見られて平気でいられるほど、彼女のメンタルは強くない。それは一番貴方が分かっているはず」
「しかし!」
「隊長、あなたに残されているのは2つ。私の案を実行するか、このままみほが潰れていく様を黙ってみているか・・・」
「・・・・・・」
「あなたが決断しなければ、誰も決断しません」
「・・・・・・」
「あなたが行動しなければ、誰も行動しません」
「・・・・・・」
「あなたは今最も大事な選択をしている」
「・・・霧島」
「なんでしょうか?」
「私は今から本家へ行く」
「はい」
「お母様を説得し、みほを一時的に隊長へ昇格する」
「了解しました」
「その間お前が副隊長だ」
「それはダメです」
それはダメ。俺の役割はそこじゃあない。
「何故だ!?」
「そこのポストには逸見エリカが相応しいかと」
「理由は?」
「彼女はみほの良き理解者であり西住流の受講者です。私ではみほの補佐は勤まりません」
「・・・ダメだ」
はぁ?
「では、逸見と霧島の2人を副隊長へ任命する。これは決定事項だ」
「隊長!!」
「霧島」
おっと!!これ以上はいけない。上下関係のトップにはむかうのは、今は不味い。
「了解しました」
3日後
全体ミーティングにて
西住みほ 隊長臨時
逸見エリカ及び霧島エリ 副隊長臨時
この2つが言い渡された。
やっぱりこの女は嫌いだ。