参照よろしくお願い致します。
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6年後
「本日のゲストは現在プロリーグで活躍し、2年後に開催される戦車道世界大会日本代表選手にも選ばれた水樹選手です」
「皆さんこんにちは。本日はよろしくお願いします」
「いや~まさか水樹選手からこの番組への出演OKがでるとは思いませんでした」
「そうですね。色々ありましてTVへの出演はNGだったので」
「それは・・・「あの件」ですか?」
「いえ、「あの件」とは別です」
「わかりました。本日は「あの件」、即ち今でも話題になっている6年前に行われた黒森峰女学院対島田流の試合にに関して質問しても良い・・・という事ですが・・・」
「はい。今まで何人かの関係者がTVで発言していると思います。しかし本当に真実を知っている人はいなかったですね。本日は現西住流師範や自衛隊副隊長の逸見さんなどの了解の元、真実を話そうと思います」
「真実ですか、ネットでは色々囁かれていますので、今日全てが分かる・・・という事ですね?」
「全ては分かりません。全てを知っている或る人が居ませんから、ある程度分かると思います」
「では1つめ。6年前の試合、西住流VS島田流の試合に関してですが」
「噂では色々あります。島田流は文部省と手を組んだ』『島田流へ流れた資金は税金だった』『ルールを試合当日に書き換える・・・なんて汚い』などあります。文部省が島田流へ圧力を掛け、島田流は仕方なく従ったと当時公式に発表してます。でもあれだけの戦力差で敗北した真実は間違いないですね。ルールに関してですが、当日の試合開始5分前に書き換えは行われていました」
「5分前ですか?文部省は当日に書き換えたとしか発表していませんが?」
「間違いなく5分前です。なぜなら当時副隊長だった逸見さんが試合前に当時の隊長だった霧島エリさんの指示のもと、監視しており、HPが更新され書き換えられていたのは試合開始5分前だったと試合中に話しています。動画では削除されていますが、本日はそのシーンの動画もありますので御覧ください。また書き換えされた瞬間の映像もあります」
「・・・・・・そ・・・それはものすごい有効な証拠ですね。しかしどうしてそこまで完璧な証拠を掴む事が出来たのでしょうか?」
「わかりません。霧島さんの考えている事は我々では想像が出来ません。一つ言える事は、
『霧島隊長は、全てを予測して動いていた』です」
「やはり」
「ネットでも『全国大会決勝戦の最後のセリフ』から島田流との試合を霧島さんが「予測」していたと突き止めた人がいましたが、それは全て終わってから考察したことです。しかし当時の状況だけで「予測」したのは霧島隊長だけでしょう」
「少ない情報量だけで未来を予測する・・・」
「それに当時の大学選抜がM4を使用していましたが、M26へ主力を変更、それに加えT28、自動装填型カールまで持ち込み・・・・・・それでも黒森峰は勝った」
「試合終了後に黒森峰から配信された動画を拝見しましたが・・・あれは何なんでしょうか?今では「予測砲撃」と呼ばれていますが・・・」
「あれは・・・「予測砲撃」・・・なんて言葉は相応しくないと思います。「未来予知」といってもいいレベルです。30両を10両ずつに分け、10両が敵車両へ砲撃を実施、その砲撃を回避するために動く場所に違う10両が砲撃。その隙を狙って森の中を突っ切っている車両への砲撃を残りの10両が実施。ある程度数を減らし、移動しているカール撃破のため5両を向かわせる。この時点で30対15両・・・そして最後は霧島さんお得意の1対1の対決・・・30対0のパーフェクトゲームの完成です」
「・・・全国大会である程度主力の車両を撃破されている状態でよくここまで・・・手負いの霧島さんを倒すにはこの戦力では不十分だったということですね?」
「手負い?」
「はい。黒森峰は全国大会決勝戦で主力の車両を10両撃破されその修理が間に合わず、隊員達は予備の車両もしくはレンタル車両だったと・・・」
「反対ですよ。決勝戦で予備もしくはレンタルを使用していたんですよ」
「!!!」
「正確には私の指揮していた車両は全車両レンタルで、霧島隊長が指揮していた車両の半分がレンタルなんです。流石に全車両は金銭的に難しいですからね。見分け方は例えるなら逸見さんの乗るティーガーⅡが分かりやすいと思います。1回戦と決勝戦は微妙に違いますが、島田流戦ではもとに戻っています。これを発見した人はいませんよ。当時の関係者、それも小隊長クラス以上でないと知らない情報ですから」
「「全国大会である程度主力を失ったと思わせ、島田流戦では使い慣れていない車両を出し実力を出せない霧島さんを戦力を強化した島田流でボコボコにする」という文部省のプランは最初から破綻していたという事ですね」
「その通りです。因みに聖グロとの試合も文部省を油断させるためにあえて激戦を演じたと逸見さんは霧島さんから直接聞いたと言っていました」
「ちょ・・・ちょっと待ってください・・・・・・そうなると・・・聖グロとの激戦は文部省を油断させるためのフェイク・・何故ですか?」
「当時の文部省の計画は
①聖グロをある程度強化する。
②黒森峰と戦闘させ黒森峰の戦力を数値化。
③その数値を上回る戦力を島田流に持たせる。
当時の聖グロに文部省に勤めているOB,OGが居た事から①は確定ですね。聖グロが勝てばそれでいいし、負ければ②を参考に③を実施するだけ・・・・要は霧島さんを負かしたかっただけですね」
「西住流を倒したい島田流と霧島さんを倒したい文部省が手を組んだ・・・しかしあの試合で双方が大恥をかいた。試合終了後の
『今日の戦術は私の考え出した戦術・・・あなたたちには西住流の戦術を使う必要はない』
は当時流行語になりましたし、個人的に今でも忘れません。この言葉で島田流の名が地に落ちたのは言うまでもありませんが」
「私もあの時の事は良く覚えています。その後何人か脱税で逮捕されて、更にこの試合に関して世間で騒がれましたしね」
「そうですね。ここで一旦新たに提供された動画を皆さんに御覧頂きます。ではどうぞ」
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「私も始めて見た動画が多数有りました。特に霧島さんが逸見さんに
『カール?ああ、試合開始5分前にルール変更したからね』
『抗議?なんで?』
『カールの倒し方?地形を考えて』
などを無線で指示しているのは初めて聞きました。その後カールを撃破したんですね」
「その通りです。遠距離砲撃を行うためのカールを遠距離砲撃でノズルに直撃させ撃破する。霧島さんらしいといえば聞こえはいいかもしれませんが、相当な技術が必要です」
「なるほど。ではもうひとつの霧島さんの行方についてですが」
「私も皆さんが知っている程度しか知りませんね。当時私に隊長を譲り進路を自衛隊仕官としたそうです。しかし
11月25日未明から行方不明となりました。家族も当時の彼氏さんも行方を知りませんでした」
「現在も行方不明となっていますが、何か有力な情報は?」
「ありません。このTVを通して彼女自身からの連絡を期待します。今まで似た人間を見たなどの情報は多数来ていますが、発見には至っていません。霧島さん・・・このTVを見ているのであれば連絡をお願いします。遅くなりましたが、100勝するという約束を達成しました。これであなたと模擬戦ができると思います。待ってます霧島隊長」
「ありがとうございます。霧島さんもしもこの番組を見ているのであればご連絡お願い致します」
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番組終了後
「水樹さん!!」
「はい」
「お電話です」
「!!」
『もしもし』
『久しぶりね』
この声は!!
『霧島隊長?』
『もう隊長じゃないよ』
『あの・・・その・・・どうしていなくなったんですか?』
『その話なら直接話をしようか?今から言うところに来られる?』
『はい』
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「久しぶりです6年ぶりですか?」
「はい」
「TVで言っていましたが100勝したの?」
「はい」
「私と勝負したい?」
「はい」
「いつ?何処で?」
「一週間後、黒森峰で」
「なるほどね。それで?」
「それで…とは?」
「今日話すのはそれだけでいいの?」
「・・・・・・」
「どうして・・・
どうして…居なくなったんですか!!?」
「居なくなった訳じゃあない。ただ戻れなかっただけ」
「何処から?」
「病院」
「意味が・・・意味がわかりません!!」
「サングラス」
「え?」
「当時サングラスをしていたでしょ?」
「はい」
「少しの光が眩しくて日中殆どサングラスをしていました。授業中はカラーコンタクトで何とかしていました。多分私が1年生で出場した全国大会の決勝戦での事故が原因でしょう。私が失踪したとされている11/25に私は東京の病院に検査の為訪れました。しかし結果は最悪なもので至急でOPをしないと命に関わる脳腫瘍でした。でもその時私はOPを拒否しました」
「何故ですか!?」
「妊娠していたからです。それを聞いた主治医は驚いていました『何を言っているんだい?妊娠?君は少し前まで戦車に乗っていたじゃないか』と主治医に問われました。検査の結果胎児は問題ありませんでしたが、その時メチャクチャ怒られました。『妊娠しているのに戦車に乗るなんて何を考えている!!』って」
「当たり前です!!」
「新しい命をとるか、自分の命をとるか…この2つの選択肢から1つを選ぶのは当時の私にとっては、もっとも残酷な選択でした」
「自分の命を…とったんですよね」
「私は今まで選択肢を間違えた事がないと自負しています。だから今2つの命は順調に育っています」
「どうやって」
「少し早めに出産しました。帝王切開で体力を温存しました。勿論成功率はあまりかわりませんでしたが、少しでも可能性があるほうを取りました。結果私も子供も生きています」
「でも誰かに連絡してもよかったんじゃないですか!!?みんな心配したんですよ!!」
「水樹?少し声のトーン下げようか?」
「すみません」
「連絡は出来なかったの」
「どうして?」
「妊娠の件を両親に言ったら激怒され、それに加え命に関わる脳腫瘍で号泣され・・・・・・しばらく色々とゴタゴタしたからね。連絡出来なかったの。学校に連絡できたのだって結局3週間後だったし、勿論妊娠は秘密で脳腫瘍のみ報告したんだけど、校長が色々とマスコミ対策した結果が・・・いつの間に失踪になってしまいました」
「校長・・・何やってるんですか」
「私も校長に話をしたあとしばらく検査とかでTV見られなくて、結局全部終わった後に自分が世間では失踪している事に気付きました。ある程度時間が経てば皆に連絡するつもりでしたが、子育てや夫の店の手伝いなどで中々出来ませんでした」
「夫?」
「橋本さんです」
「あの人もグルですか!?」
「まぁ状況が状況だったので・・・許してください」
「まぁいいです。でもエリカさんや家元には伝えなくていいんですか?」
「家元には校長と同じ時期に伝えました。エリカは・・・今伝えると殺されませんか?」
「家元はいいとして・・・エリカさんは・・・確かに激怒して一個師団で襲ってきそうですね」
「想像できるから怖い」
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「それで戦車道はもう辞めたんですか?」
「ん~続けたかったけど親の反対もあるし、何より脳腫瘍の後遺症で視力が一気に低下してしまいました。残念ですが私の戦術で視力低下は致命的です。模擬戦・・・全盛期に比べてかなり弱くなっていると思いますよ?」
「それでも・・・それでも私は彼方と戦いたいです。勝敗など関係なしに」
「わかりました。それでは一週間後に」
「ええ」
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「本日は私のわがままに付き合って頂きありがとうございます」
「いえ、水樹さんの戦車道を間近で見られる絶好の機会です。私も、他の隊員も勉強になります」
「そう言ってくれるとありがたいです」
「処で本日の模擬戦の相手は何方ですか?」
「私の先輩よ」
「逸見さんですか!?」
「違うわ」
「それじゃあ赤星さん?それとも赤木さん?」
「残念ながら違う・・・来たわ」
「・・・誰ですか?」
「無名の先輩よ」
「はぁ・・・」
「そうガッカリしないで、あの人の戦車道・・・よく見ててね」
「それじゃあ始めましょうか?」
「そうね。それと水樹?」
「はい?」
「フラッグ戦、車両数は各15両でいいのね?」
「はい」
「こちらのメンバーは1軍?2軍?」
「10両2軍、残り車両1軍です」
「了解。まぁ久しぶりだからお手柔らかにね」
霧島側隊員
「あの?」
「何でしょうか?」
「水樹さんとはどんな関係で?」
「私先輩、水樹後輩って関係」
「今何処で戦車道を?」
「今はしてないわ」
「はぁ・・・」
「ごめんね。水樹の部隊じゃなくて」
「いえ・・・そんなつもりは」
「でも」
「でも?」
「私が率いる部隊に敗北はありません。しっかり付いてきてくださいね?私が失望するような戦車道に黒森峰が落ちている場合・・・・・・
黒森峰・・・潰しますよ」
水樹側隊員
「全車両前進して下さい。A小隊は右の森を全速で抜け相手へ攻撃して下さい。その後ろをC小隊が追い、A小隊が敵と交戦し始めたら敵の側面に回りこんでください。B小隊は正面及び左を索敵して下さい。見つけ次第砲撃を許可します。ただし必中させてください」
「「「了解」」」
あの水樹さんから直接指導してもらえると聞いて私は歓喜した。今まで何人かのOG,OBの指導は受けてきた。でも一度だけ水樹さんの指導を受けたときは、それは衝撃だった。他の方々とは何かが違う。今もその違いが分からないが、私は水樹さんに憧れている。しかし
「5号車 撃破されました!!」
「3号車もです!!」
「B小隊側面より攻撃を受けています!!」
「C小隊は我々を残して全滅しました!!」
私は思わず水樹さんに指示を仰いだ。
「このままでは全滅します!!一度後退したほうが!!」
「無理ですね。遠距離から正確にA小隊に砲撃を、その後後方に居るC小隊を砲撃で全滅させる。その間にB小隊を側面から・・・流石ですね」
「褒めてる場合じゃあ!!」
「分かりませんか?この戦術は速攻型です。C小隊を全滅させられた時点で我々の負けです」
「しかし」
「勿論負けるつもりはありません・・・普通ならね」
「どういう意味でしょうか?」
「これが普通の人間との勝負ならC小隊の居場所はわかりません。でもそれを正確に攻撃した。わかりますか?初手でこちらの戦術を見抜いた人間に次の一手が分からないはず有りません」
「負けるという事ですか?」
「正確には「また負けた」ですね」
「まさか!!あの人は!」
「そうです。私の前任の隊長にして今の黒森峰の基礎を築いた霧島エリ隊長本人です。後遺症で視力が落ちた?全盛期よりかなり弱くなった?・・・ふざけないでほしいですね。未だ十分世界に通用するレベルじゃないですか!!多分今の砲撃は彼女の指示ですが、もっと凄いのは砲撃の角度、距離、タイミングを全て指示しているという事です。わかりますか?霧島隊長は全て指示している。裏を返せば彼女にとって今の黒森峰は失敗作であるということです」
「失敗作!!水樹さん訂正して下さい!!我々は歴代でも上位に「そんな事は関係ないですよ」え?」
「あの人にとって勝てるのか・・・それだけです。歴代トップだろうが、彼方が西住まほさんと同じレベルの人間だろうが・・・関係ないです。あの人が全てを指示している・・・それだけであの人からの評価は最低レベルということです」
「・・・・・・」
「悔しいならあの人の過去の動画を見てください。余程のとき以外はタイミングしか指示していませんから」
「わかりました。水樹さんにとって霧島隊長は・・・倒すべき人ですか?」
「ええ、私が最も敬愛している人であり、倒さないといけない人でもあります」
「矛盾していませんか?」
「どうしてか、もう少しで分かります」
他愛も無い話をしている間に残りの4両が撃破され、残りはフラッグ車のみとなった。水樹さんはまっすぐ前を向いている。そして相手の・・・いや霧島さん率いる13両が私達を取り囲んだ。そして
「水樹?」
「はい」
「6年前と反対ですね」
「はい。あの時のように1対1を受けてくれますか?」
「受けると思いますか?もしそんな淡い気持ち『ドーン』」
私は彼女の喋っているときに砲撃を行った・・・目の前にはフラッグ車があれば当たり前だ。しかし
「そう!!水樹!!その執念だよ。今の砲撃を卑怯呼ばわりする人間が居るなら、それはゴミであり寄生虫だ。勝利への弊害以外何者でもない」
煙が晴れ始め、あの人の声が聞こえ、そうして姿が見えた。今のは完全に不意を付いたと思ったのに
「水樹・・・さぞ悩んだでしょう?後輩の目の前で不意打ちなど・・・この6年でツマラナイプライドを肥やしていなくて安心しました」
「今のは完全に不意を付いたと思います。どうしてですか?」
「前にも言いましたよ。常に相手を見て、観察して、勝つために行動せよ・・・実行したまでです」
「そうでしたね。ところで私のお願い聞いてくれませんか?」
「え?いやですけど」
その一言の後私は撃破された。昔と変わらない、私の敬愛する人・・・いや大好きな先輩・・・しかし倒さなければけない敵・・・・・・
矛盾していると人から言われる・・・・・・そう・・・
大好きで・・・・・・あの人に認められたいという気持ちは・・・未だに色あせてない
でも・・・あの敵を倒さなければならない・・・と言う気持ちも日に々々大きくなる
私は・・・あの人が・・・あの先輩が・・・あの女が
大好きで・・・愛おしくて・・・倒したくて・・・嫌い
私はあの人を好き過ぎて・・・・・・嫌い・・・・・・
「やはり
私はあの女が嫌いだ」
とりあえず完結とさせていただきました。
見切り発進で初めてガンパン小説ですが、完結できてよかったです。
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ありがとうございました。約1年半お世話になりました。
次の小説もガンパンになると思います。そのときはまたよろしくお願いします。
外伝を数話投稿予定です