私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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こんなに長くなる予定ではなかった・・・


第5話「選出試験始まりです。」(後編)

 Aチームが進撃を開始したのを双眼鏡にて確認した。

「では状況開始」

 綾波先輩が指揮するBチームは指定の位置に付くため、各自の持ち場に散っていく。

 

 

 

 Aチームの車両が谷へ入った。

「まだまだ、全車両が入った処で撃て。」

 

 

「全車両、谷の中間地点まで進軍してきました!」

「よし!下に偽装している車両へ通達!!攻撃を開始せよ!」

「攻撃開始5分で離脱せよ。その後追撃できないように崖の入り口を塞げ。遅れたものは脱出を諦め、忠義に従いその場で悪あがきをせよ」

「ヤヴォール!!」

 

 本当は崖の上から狙えば直ぐに敵を排除できたが、こちらがフラッグ車を追えなくなる。この崖の入り口は一箇所しかない。でもその一箇所しかない出入り口を塞ぐ。矛盾しているが・・・今はそこは関係ない。

 

 崖の下では、岩に偽装した戦車6両がAチームの車両を撃破している。岩を車両の上に置いたり、岩を退け、戦車を入れるスペースを短時間に行わなければこの作戦は成功しない。隊員全員で作業した結果、6両が限界であった。そして今私の横では

「おい!!気を付けろ!!」

「分かってる!!」

 戦車を戦車の下にもぐりこませ、砲塔を下に向けている。これで崖の下の車両を撃破できる。しかし

「時間が掛かるな。」

 偽装工作で時間を殆ど使った事から、この作業が遅れている。

「残り2分!!」

「よし!!作業終了。何台出来た!?」

「4両です。」

「仕方ない!2両は初弾を崖に砲撃せよ。残りは敵車両へ!!」

「ヤヴォール!!」」

 

 

 

 ここまでは想定通り。

「綾波先輩」

「ええ」

「偽装車両は「逃げろ!」」

 しかし岩を車両の上に置いている車両がそう簡単に逃げれるわけ無く、6両のうち4両が撃破された。残り2両は何とか逃げ伸びた。

「発射!!」

 崖が崩れ、2両を追撃できなくなったAチームは、こちらの砲撃を無視し、谷への進撃を開始した。」

 この突破力は逸見か?彼女はまだまだだが、状況を素早く読んで動く事が出来る。多分西住も直ぐ側に居るはず。あの2両が生き残る事が、この作戦の要。

「よし、谷へ進撃を開始します。我々はここからフラッグ車を撃破しにいきます。囮を。竹原あの

2両は!!?」

「大丈夫です。しかし相手のフラッグ車の周りに重戦車3両居るそうです。」

「大丈夫よ。霧島なら撃破出来る!!」

「敵車両、谷を登り始めました。それと外にいる2両から連絡です。砲撃をうけているとの事です。」

「死ぬ気で逃げよ!」

「了解しました。「死ぬ気で逃げよ!!繰り返す死ぬ気で逃げよ!!」」

 綾波先輩の指示を竹原先輩が伝える。

「ねぇ?霧島?」

「何ですか?アイリーン先輩?」

「もし私の装填が遅かったらどうなるの?」

「フラッグ車の自爆。最悪な終り方。」

「もう少しオブラートに包んでよ。」

「無理です。」

「ははっ!で?何発装填したらいいの?」

「3発。それでいいです。」

「わかった。」

 この作戦は敵主力を谷に閉じ込めるのが作戦。そして敵がある程度進撃した処で、フラッグ車である私たちが谷を抜け出し、フラッグ車へ攻撃を開始する。勿論敵さんも追いかけてくるだろうけど、追いついた頃には決着が付いている。勿論こちらにもかなりのリスクはある。まず谷の外に居る2両が撃破されたら終わり。そしてその2両と協力して塞いでいる岩を砲撃で破壊しなければならない。タイミングが重要であり、一歩間違えれば自爆する。

 

 

 

「竹原!!状況は?」

「2両健在!!タイミング的に2分後!!」

「霧島!」

「OK!」

「アイリーン!!」

「OK!」

「竹原!!」

「行ってください!!外には敵車両2両!!」

「山下!!駆け下りろ!!」

 

 俺が乗るパンターG型が崖を降りていく。ほぼ垂直に近く、重い戦車での崖降りは、命がけだ。しかしそれは山下先輩なら何とかできる。最初はまっすぐ降りていた車両は、直ぐに横向きへと変えた。少しでも速度を落とし、着地時のショックを和らげるためだ。そして

「一発目!!」

 俺は崖へ砲撃した。

「撃って!!」

 竹原先輩の通信でそとの2両が岩へ砲撃を開始した。しかし時間はない。1~2発が限界だ。そして

「撃ちます!」

 俺が撃った砲弾で岩は破壊され、車両が通れる道が出来た。

「山下!!あそこに!!」

「綾!!中に!!」

「次弾装填完了!!」

 戦車内では外に顔を出し、山下先輩に指示を出す綾波先輩に車内に入るように言う竹原先輩、いつも以上に早く装填したアイリーン先輩の大声が響く。そして

「そこに居られると邪魔。」

 そういって俺は敵の重戦車へ砲撃をする。その直後

「耐ショック!!」

 身を屈め、ショックに備える。その直後、大きな轟音が車内に響いた。

「全員大丈夫か?」

「「「「はい!!」」」」

 目の前には仲間の戦車2両に、敵の戦車1両が居た。

「すごい!!仲間が1両撃破しているぞ?霧島!!」

「相手にいいもの見せてあげる。全車両フラッグ車へ向かってください。」

「どうするの?」「装填完了」

「こうするんです!!」

 俺が撃った砲弾が相手の車両に当たったことを確認した。そして白旗が揚がっていないことも確認した。

「霧島?」

「大丈夫です。相手は何も出来ず、あそこに居る事しかできませんよ♪こちらに追いつけませんし。」

 

 

 

 それから5分後

「敵フラッグ車発見!!」

「大丈夫。2両で追いかけろ!!重戦車は無視しろ!!」

「でも!!」

「大丈夫だ。安心しろ」

「了解」

 こちらの足回りが不安だ。速度を上げたいが、ここで壊れると厄介だ。

「敵車両の位置は?」

「ここです。」

「分かりました。」

「アイリーン先輩?」

「完了している」

「竹原先輩、実況させてください。今何処を走っているか」

「ええ」

 通信をスピーカにした。

「今K地点を通過。2手に分かれる道を左に、それと今赤松地帯に入りました。」

 追いかけている車両から通信が入る。

「少しフラッグを左にさせて」

「川沿いにですか?」

「そう」

「了解しました」

 

 通信の向こうで砲撃や轟音が響いた。

 

「道左に誘導完了。もう直ぐ赤松地帯を抜けます!!」

 

 

 その通信を聞いた瞬間

 

「Ich war enttäuscht」

 そして俺は砲撃を実施した。

 

 

 数秒後

 

「Aチームフラッグ車。水没のため走行不能。よってBチームの勝利!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後

 

 俺たちは車両移動を手伝った。時間は3時間程度で終了した。その後ミーティングにて1軍の発表となった。俺たちは無事選ばれる事になった。Aチームの逸見、みほも選ばれ、その場はお開きになった。その後綾波先輩のおごりで、ファミレスで食事会、二次会は寮で宴会となった。この日の麦ジュースはいつもと違う味がした。

 

 

 

 

 

 

 綾波弥生

 試合終了後改めてあの崖を見たがほぼ直角だった。試合中は必死になっていたから霧島の「崖を降りる。戦車にいけない場所は無い!」この言葉を聴けばいけると思った。しかしこれは・・・本当に命がけだったような気がする。ドイツから見学に来ていたメンバーから「カミカゼ!!」「クレイジー!!」「Bushido」などと飛び交っていたそうだ。まぁ当たり前か。 

 でも一番ありえないと思った出来事が2つある。それは崖を降りたときに、敵が1両撃破されていた事だ。当初は2両が連携して撃破したと思っていたが、隊員から何処からとも無く、砲弾が飛んできた。その直後に我々が崖を降りきった。もう一つがそれから直ぐに追ってくる敵戦車へ霧島が砲撃した。その後敵車両が追撃してこなかった事だ。白旗も揚がっていないのに。履帯にでもあたったのだと思った。でも違った。車両移動中に私は見た。砲身が花を咲かしたように内部から破裂していた。隊員は我々が砲撃した直後に車両が揺れ、その後異常確認のため外を見たら、こうなっていたとの事。あの時霧島の「いいものをみせてあげる」多分攻撃できない事を見せ付けたのだろう。砲撃できない、我々に追いつけない。この2つを相手にわからせることにより、うしろからの追撃の心配をしなくていい。

 ここまで考えて思った。可能なのか?今までの出来事が!!崖から降りてきている戦車から的確に不要な岩を狙撃する。それが完了後敵戦車を撃破。砲身への射撃。そして最後の予測砲撃。これは全て現実なのだろうか?もし現実としたら、再現可能か?奇跡?偶然?それとも本当に霧島にはみえているのだろうか?・・・・

もしかしたら私は・・・

 

 

 

 いや、ここから先は考える必要はないな。今は1軍入りした事を素直に喜ぼう。

「綾波~~~。いくぞ!!」

「先輩~ゴチニなります~」

 そして今日私のサイフの中が空になる事を、私はこの時点で悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談

 

 

 

 

 「ん~~、もう朝か」

 現在時刻0600。

「今日は学校休みだし~、戦車道も休み~。」

「そうね~」

「日曜日以外で休みとか最高♪」

「だよね~」

 ・・・俺はさっきから誰と話しているんだ?ゆっくり振り返ると

「おはよう♪」

「アイリーン先輩?」

「そうよ?」

「え?何で?」

「あの時、私に活をいれてくれたでしょ?だからそのオ・レ・イ♪」

「いえいえ!!!結構です!!」

「どうする?私の言う事聞く?じゃないと、他の子に朝がかなり弱いことバラそうかな?」

「・・・」

「別に疚しいことはしないわよ。少し抱かせてくれればいいわ。どう?」

「本当に抱くだけですか?」

「本当」

「バラしませんか?」

「しない」

「・・・わかりました」

「やった!!エリちゃん可愛い~~。いい匂いする。」

 しばらくすると、アイリーン先輩が大人しくなった。寝たのか?

「アイリーン先輩?」

「・・・・・・・・ありがとう」

「・・・何か言いました?」

「何も。しばらくこうしていい?」

「いいですよ。」

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 長々となりましたが、これで終わりです。

次回は他の人間から見た、主人公の印象等になります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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