私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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第47話「評価」

 

 

模擬戦後に待ち受けているのは全国大会だった。俺は抽選会に行かず、次期隊長の水樹に副隊長候補の柚木に行ってもらった。まぁ来年度も行かなくてはならないため、場所の確認と場慣らしという名目だ。実際は本当に最近体調がヤバイ。

・めまい

・貧血

・頭痛

・肩こり

 

 が主な症状だが、ヤバイのが頭痛に、めまいだ。どうした訳か頭痛は症状が出始めたら薬が効かない。眩暈は一瞬目の前が真っ暗になる・・・しかも太陽の光がかなり眩しい。今までこんな事はなかったのだが・・・室内でも蛍光灯の光が眩しく思うときもある。そんため最近サングラスをかけるようになった。勿論許可は取得している。戦車道の時間のみと。意外と好評で被服科の生徒が夏に着れるコートを作成した。夏にコート??と思ったが意外とこのコート涼しいのだ。中には専用の保冷機能があり、真夏でも着ていても快適だった。直ぐにこれを戦車道メンバーに配布して欲しいと相談した。そうして戦車道メンバーにはこのコートが配布された。

 

 これは思ってもいない自体だった。これを着ると体型を隠せるという事だ。ナイス!!被服科!!

 一部では夏に向けての暑さ訓練と報道されていたが・・・そんな事はしません。

 

 

 まぁ話はそれたが、体の事を相談するにも主治医は現在東京にいる。最近大きな病院にスカウトされたらしい。そのため主治医にみてもらうには東京までいかなくてはならない。勿論そんな暇も金もない。よって子供に関して相談できる人間は現状居ない。現時点ではお腹もそこまで大きくないので回りにばれる心配は無い。もしもの時を考えると不安で仕方ない。一人で子供を産む事がここまで精神や肉体に負担をかけるとはな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 抽選会は無事終わり、我々の初戦の相手は継続高校となった。ミカが居なくなった継続は強いのか?と疑問に思ったが、どうやら後継者を育てていたそうだ。オレンジペコ率いる聖グロを練習試合とはいえ、そこそこ追い込んだそうだ。結果として敗北してしまったが、車両台数やメンバーの熟練度を見ても継続は中々やるかもしれない。

 

 聖グロは継続に危うく負けそうになったが、それから自分達の気持ちを入れ替え、練習試合に明け暮れたそうだ。そのかいあってプラウダに勝利する事が出来たそうだ。私が以前に実施した作戦をアレンジして運用しているとの事。まぁその戦術を物にできればそこそこいいところまでいけるだろうな。

 

 プラウダは未だ新チームが中々纏まらないとの事。しかしこれは今までの車両運用方法を変更したためとの事だ。まぁ全国までには仕上げてくる事を期待しよう。

 

 大洗に関しては、新戦力や新メンバーの投入で去年より大幅戦力強化を行ったそうだ。現在練習試合で連勝しているそうだ。

 

 

 そういえば抽選会場で水樹が大洗の次期隊長の澤梓と何か有ったそうだ。あれか?私が大洗に直々にスカウトに行った件か?まぁこれに関しては追々詳しく述べるとしよう。

 

 さて我々が順調に勝ち進めば決勝では聖グロか大洗となる。それまで私は自分の体調を整えさらに隊長の仕事を水樹に教えなければならない。水樹の負担を軽減するため、1回戦2回戦はエリカに任せ、俺と水樹は引継ぎに専念する事にした。が、本人の熱い希望で1回戦から準決勝まで水樹が指揮することになった。流石にそれには各小隊長やエリカから反論の声が上がった。しかし

「来年度に私が居るなら指揮をするが、私は留年する気はない。水樹で問題ない。もしも異論があるなら今から水樹と模擬戦を行い、水樹が負ければエリカが指揮を、勝てば水樹が指揮をする。どうだ?」

 

 当初俺も水樹ではエリカに勝つことは無理だと思っていた。しかし結果は水樹の勝利だった。エリカに敗北の理由を聞くと

「油断はしていないは。でも試合後半の戦術についていけなかった。今日の試合結果から今の水樹は私より強い。ほんの数日前までの水樹とは全然違ったわ」

「そう」

「彼方何かした?」

「特に心当たりはないけど・・・・」

「ないけど?」

「隊長としての心構えは教えた」

「間違いなくそれね」

 

 

 

 それから水樹の戦車道のセンスが開花したような気がした。私は水樹への隊長引継ぎやその他委員会の仕事のため戦車道への参加が制限された。そのため指揮は水樹とエリカが担当していたが、エリカが「私が居る必要はない」と言わしめるほど彼女の指揮は完璧だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全国大会が始まり水樹の率いる黒森峰は破竹の勢いで連戦連勝していった。各校が弱かったわけではない。黒森峰が強すぎた。そのため周りから私以上の評価をもらっているみたいで「霧島を倒せるのではないか?」はたまた「第二の霧島?」などと評価され、「鬼神水樹」とも言われている。そんな中黒森峰は決勝まで駒を進め、決勝の相手は大洗と思われたが、聖グロが大洗に勝利した。それも圧勝でだ。こんなおいしい話に世間が反応しないはずがない。しかし驚きだ。非公式であるが家元はみほを認めており、無論私もみほを認めている。そのみほにオレンジペコは勝利した。下克上・・・といってもいいと思う。

 

 

 

 聖グロは、お得の浸透強襲戦術を私の言ったとおり強化し、かつメンバーの熟練度を上げて来た。熟練度を上げるため全国前に練習試合を12試合組んでいたそうだ。「実践に勝る経験なし」というが短期間でここまで仕上げたオレンジペコの手腕は評価に値する。ここまで辿りつくのに並大抵の努力では無理だ。オレンジペコは本当に素晴らしい。是非とも私の「全力」が出せる相手であってほしいが・・・この編成を見る限り、そろそろ限界だろうな。

 

 

 我々は対聖グロの作戦立てていた。今までの動きなどから次の聖グロの作戦を予測するのだ。

「これが大洗戦の聖グロの動き」

「エリカ?少し巻き戻して」

「ここ?」

「そう・・・なるほど・・赤星?」

「何でしょうか?」

「今までの動きから我々に対しての作戦は?」

「確かに聖グロの動きは固定されています。機動力のあるクルセイダーで相手を撹乱しその後本隊で叩く。大洗戦では多少変更されていますが、殆どこの作戦です。ただ、我々に対し作戦を変更するとは思えません」

「なぜ?」

「錬度の問題かと。ここまで連携の取れた作戦を行うのであればそれこそ時間が掛かります。今の作戦以外の作戦の連携を取る時間は無いと思うからです」

「なるほど、理にかなっていますね。しかしその時間が有った場合は?」

「・・・すみません」

「もしもこの作戦以外を実施する場合、内容としてはそこまで変わりません。多少アレンジを加える程度でしょう。その事は大洗との戦いで分かります。彼女達はまだ発展途上・・・その上でもう一度聞きます。エリカ?彼女達への対策は?」

「クルセイダーは無視しても構わないかと、チャーチル、マチルダ、M26パーシングを優先するべきかと」

「クルセイダーは無視?足回りに攻撃されると戦力低下に繋がる可能性は?」

「しかし・・・」

「水樹」

「はい、エリカ副隊長と同じ意見です。ですが進撃しつつ敵車両を撃破していく。理由はクルセイダーの攻撃力は無視出来るようで出来ない。機動力は相手が上。相手をしている間に本隊が迫ってくる・・・少し矛盾していますが・・・」

「エリカは30点、水樹は40点」

「「・・・」」

「諸君は少し優しいな」

「「「???」」」

「意味が分からないか?ではヒントを与えよう。明日までに考えてきてくれ」

 俺はそう言いその場に立つ。皆も釣られて起立する。

「いいか、我々はライオン、相手は少し機動力のあるシマウマかキリンだ。獲物を捕食するにはどうする?以上だ」

 俺はそう言い会議室から出て行った。

 

 

 やはりまだまだだ。答えは簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いちいち雑魚の相手はメンドクサイ。機動力があるという事はその負担はダイレクトにエンジンにかかる。クルセイダーのエンジンはそろそろ終わる。幾ら整備しても新品交換でもしない限り難しいだろう。例え新品でも慣らしが必要だ。ならばこちらは動かず相手が来るのを待てばいい。

 クルセイダーは索敵のために動き回るだろ。その分エンジンに負担がかかる。例え我々を見つけても隊列が延びる。そのため本隊到着が送れる。まぁローズヒップが成長しているなら無理な行動は避けるだろう。もしも本隊との距離を計算して行動しているのであれば今語った作戦は実行できない。しかしエンジンなどへの影響は大きい」

 

 俺はそこまで作戦書にまとめた。そして最後に一文書き加える。

 

 

 

「上記ほどに聖グロが優秀で有った場合、我が高は下記の言葉に従い行動するものとする」

 

 

 

 

 

   「撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心

 

 

 

 

                                 以上」

 

 

 

 

 

 

 


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