私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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 あけましておめでとうございます。

 今年も亀更新ですが、よろしくお願い致します。


 コメントや誤字修正など、みなさんの善意を大切に
 この物語を完結できるように頑張ります。
 


第40話「日常へ」

 俺が目覚めてから一週間は忙しかった。殆どが検査であり、特に一時的に酸素欠乏状態になったことから脳への影響が考えられた。そのため検査の大部分は脳検査だった。それが終わった後は警察による事情聴取だ。包み隠さず全て話した。まぁ内容が内容なだけに警察よりマスコミへ「これ以上の情報漏洩がないように」と念を押された。そんなこんなで一週間が瞬く間に過ぎ去り、退院する前日に主治医と二人で話をする事になった。

 

 

 

 

「特に検査で問題なくてよかったね」

「ええ」

「どうした?」

「いえ・・・あの」

「何?」

「どうして私を?」

「治療したかって?」

「はい。最後に無礼な態度をとりましたし・・・」

「目の前にけが人がいれば、どんな理由があろうとも治療するのが医者だ」

「・・・」

「まぁあの時の事はもういいよ。ただし、私の質問に答えてもらうよ」

「答えられる範囲でよければ」

 

 

 

 

 

 

 

「まず、君は誰だい?」

「霧島エリ」

「本当に」

「嘘じゃない。生まれてからはずっと霧島エリ」

「じゃあ生まれる前は?」

「さぁ?何かだったんだろうね」

「詳しく教えて」

「詳しく?残念ですけど」

「じゃあ・・・」

 

 

 その後試合中の記憶や刺された時の記憶、その他いくつかの質問が主治医から発せられた。俺は真実と虚偽を交えて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「エリちゃん?」

「はい?」

「今までの質問の意味わかってるね?」

「さぁ?何でしょうか?嘘付いてるとか?それともサイコパス試験?」

「サイコパスもそうだけど、精神異常の有無に関してのテストも入ってるよ」

「で?結果は?」

「わかってるだろ?正常だよ。勿論これは正式な検査だ」

「ならこれで私が精神異常者という疑惑は無くなったわけですね」

「エリちゃんがちゃんと答えてくれていれば、もしかしたら異常者だったかもね」

「そこまで私を異常者にしたいんですか?」

「ちゃんと治療を受けてほしいだけだよ」

「私は少し他の人と考え方が違うだけです。逸れの何処がいけないこと?危険な考えじゃなければ正常で、その逆なら異常者?もしそれが常識なら私は喜んで異常者になりますね。そんな事では社会じゃ生きていけませんよ。それに私の考え全てが危険な考え方じゃない。勝つために必要なことに関してだけです」

「そこなんだよ」

「??」

「勝つときだけ危険な考えをする。もしくは近い考え方をする。それはとても危険だと思うよ。簡単にいうなら、勝つためなら手段を選ばない、犠牲は問わない。と言いえるよね」

「勿論。それが西住流」

「でもエリちゃんがしているのはあくまでスポーツだ」

「そうスポーツ。勝も負けるも・・・ってやつですよね」

「そう。スポーツは勝ち負けじゃあない」

「ええ。まったくもってその通りです。私もそこは賛同しますよ」

「じゃあならあんな危険な考え方や今回みたいな手段を?エリちゃんなら出来た筈だよ?」

「確かに。あんな手段をもともとするつもりはありませんでした。しかし実施しなければダメなんですよ」

「なぜだい?」

「私が黒森峰女学院の戦車道受講者であり、その受講者数百人を率いる隊長だからですよ」

「隊長だからと言ってそういう考え方になるのは?」

「西住流家元西住しほ・・・その人に今までの話を出来ますか?戦車道はスポーツだから勝ち負けに拘るなと」

「・・・いや・・無理だな」

「以前ある人物が家元へこう尋ねました。「もしも試合中急に大雨になり、川が氾濫する。そのとき不幸にも黒森峰側の戦車が、それも隊長車の前にいた戦車が川に落ちた。前からは敵の戦車が来ている。貴方ならなどうしますか?」と」

「どう答えたんだい?」

「なんて答えたと思いますか?」

「・・・目の前の敵を撃破する?かい?」

「大正解」

「・・・・・」

「そして、こう続けました「もしも落ちた戦車の隊員を助けにいった場合は?」と」

「さっきのやり取りから何となくわかる。許さないと」

「またまた大正解。因みに家元の答えは『そのような行為は西住流の流儀から外れる邪道です』とのことでしたよ」

「しかしそれはあまりにも」

「酷い?そうでしょうか?世の中においては、日常茶飯事なことです」

「まぁ私から言えるのはここまでだよ」

「そうですね。私の目の前で家元を悪く言う=あなたの将来が潰れる。ということですからね」

「そういうことだ。だけどね、これだけは覚えておいてね」

「何でしょうか?」

「もしこれ以上エリちゃんの状態が悪くなったら手段は問わず、戦車道を辞めさせるからね」

「どうして?」

「君が大切な人間だからだよ」

「え?」

「ああ、勘違いしないでくれ。そういう意味じゃない」

「安心したよ。人の家庭を壊したくない」

「はははw。まぁ君は私の道を示してくれたし、いろいろ世話になったからね。もう情がわいているよ」

「そんなことしましたっけ?」

「いいんだよ。覚えていないと思うから。さてそろそろ私は行くよ」

「ドイツに?」

「そうだよ。一週間遅れだけどね」

「気をつけて」

「じゃあね」

「それと」

「何だい?」

「"A secret makes a woman woman」

「・・・どういう意味だい?」

「そのままの意味ですよ。今度またお会いしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから黒森峰に帰って待っていたのは、隊員達の心配の声と校長やOB、OGからの11連覇を達成した激励だった。まぁ状況が状況だったので、殆どは心配の声だった。そして

 

「エリ?」

「エリカ、心配かけました」

「体は?」

「そこそこ万全」

「そう、じゃあ早速だけど、これ受ける?」

「何これ?」

 

 

 

 エキシビションマッチ

 優勝高黒森峰VS各校連合 30両 フラッグ戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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