私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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遅くなりましたが、よろしくお願いします。




第4話「選出試験始まりです。」(前編)

 選出の日。俺は05:00に起床した。予定より1時間も早く目が覚めたが、いつもの事だ。何かイベント事があるときは、早くに目が覚める。いつも通り、朝食を食べ、シャワーを浴び、前世ではしたことのない髪のケアーをする。いつもよりゆっくりと時間をかけて作業した結果、06:30に完了した。いまから向かっても十分間に合う。コーヒーを飲み、バッグを持って学校に向かった。

 

 

 学校に到着し、自分が乗る戦車パンターG型が置いてある場所に向かった。ちらほら他の生徒も見える。

「おはよう」

「おはよう」

 ヤークトパンターに搭乗する生徒からあいさつされた。前世から朝から声を出したり、急激な動きをするのは苦手だ。特に挨拶するのは苦手だ。ようするに「めんどくさい」だ。

 

 パンターG型の周りに人影があった。

車長の綾波先輩(3年)

通信士の竹原先輩(3年)

装填手のアイリーン先輩(3年)

操縦士の山下先輩(3年)

以上4名が集まっていた。

 

「おはようございます」

「「「「おはよう」」」」

「相変わらずだるそうにしてるわね?」

「あ~すみません。でもこればっかりは、どうしても・・・はぁ」

「はいはい、わかってるよ。霧島の朝の弱さは。」

「まぁ、そこも可愛いところよね?」

「私・・・そっちの趣味ありませんよ?」

「そう?残念ね?あなた人気者よ?朝・・・弱いものね?」

「勘弁・・・してください」

「ふふふ・・・・・・冗談よ」

 アイリーン先輩は・・・危険。

「はいはい、遊びはここまで、整備するよ!」

 綾波先輩の一声で雑談は終わり、入念に整備を始めた。今日は先輩方にとって特別な日。綾波先輩を除き、他の先輩方は今回レギュラー入りを逃せば、3年間1軍補欠で終ってしまう。今回のメンバーで1軍入りする。それが綾波先輩の目的の一つ。この4人は同じ中学みたいだし。多分あたりだ。

「綾波先輩」

「何?」

「4人は同じ中学ですか?」

「・・・あれ、どこかで言ったけ?」

「いえ、言ってませんよ?」

「どうして、そう思ったの?」

「綾ちゃん」

「え?」

「3日前の練習中、山下先輩がそういった。そしてそれが綾波先輩ってみんな分かった。」

「そんなの「アイリーン先輩の苗字は藍谷ですよ?それに戦車に搭乗中は愛称は禁止ですよ?そしてその時の山下先輩を怒らなかった。」」

「確かに。私たちは中学で戦車道していた。一緒にこの学園を受けて合格した。でも2年のときに私だけが副隊長に選ばれた。でも他の3人は2軍落ち、それも補欠。そして「テスト生との模擬戦相手に選ばれた。」」

「そう簡単に言うと、戦力外だからやめろって事。」

「でも評価された。2軍補欠から1軍補欠まで。あのテストの模擬戦で最後まで残っていた戦車の動きはすごかった。多分乗っていたメンバー全員が1軍補欠まで昇格したはず。」

 そう、あの模擬戦で3台だけ動きが違った。1台は早く、俊敏に動いた。足回りが弱い、ヤークトパンターであそこまで早く、俊敏に動かせたら1軍入りしてもおかしくない。そして、あのIII号戦車J型の装填速度の速さと命中精度には苦労した。そしてもう一台のIII号戦車J型は特に目立ったところは無かった。でもそのIII号戦車J型を中心に他の2台が後半から動いていた。そのお陰で後半かなり苦労した。

「そう、あの模擬戦はあの子達の最後の試合になっていた。そして私は彼女達にさよならを言うはずだった。でも違った、彼女達は努力していた。それも結果が出せるテスト生との勝負で。西住流とそれを破った逸見率いるテスト生相手に。実質3台で8台を相手にした。そして5台撃破、1台中破にした。これを結果と言わず何という?」

「そして砲手がいなくて困っていた。そこで私に目をつけた。」

「そうよ。ホントはあの時決勝戦なんてどうでもよかった。3人がどうなるかが気がかりだった。そして模擬戦の後に結果を家元から聞いた。そして・・・あなたを見つけた。あなたを私達の元に配属させれば必ず1軍入りは出来る。そう思ったら、自然に貴方を探した。そして口説いた。西住まほ隊長へも何度もお願いした。そして今日、この日を迎えた。」

「随分・・・私の事過大評価されてます?」

「あなた・・・そっか。知らないのね?」

「何を?」

「「奇跡の砲撃手」「魔眼」」

「何ですかそれ?」

「今まで無名の中学を、行き成り準優勝。弾切れさえなければ優勝していたとも言われている。それから2連続優勝。そしてドイツの名門中学との試合でも圧倒的な戦力差をものともせず、4戦3勝1敗・・・ドイツを震撼させた。そしてあっちでは「魔眼」の愛称で呼ばれた。高校進学時、全世界からのオファーを全て蹴り、黒森峰女学院へ入学。これで過大評価しない人は居ないわね。」

「・・・」

「それに一番緊張しているのは・・・私達よ。」

「今日選ばれないと「違うわ」え?」

「今日の試験なんてはっきり言ってどうでもいいのよ。もっとも怖いのは・・・試験官よ。」

「家元ですよね?」

「そうね。でもその後ろにいるドイツの姉妹校の校長、教頭、戦車道顧問、隊長・・・この人たちも見に来るの。」

「いつもの事ですか?」

「いえ、今までこんな事例はないわ。多分貴方を見に来たの」

「どうして?」

「隙あれば、って奴よ。」

「なるほどね。」

 

 

 

 

 この時俺は嫌な予感しかしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 12:00

 

試験が始まった。私たちはBチームになった。逸見とみほはAチーム。30対30の模擬戦だ。

 

 

「じゃいくわよ?」

「「「「ヤヴォール」」」」

 

 パンターG型が音をたてて進んでいくが、いつもと違う。何と言うか、いつもの操縦ではない。ギアチェンジ時の回転数が合っていない。

 

 

 

 試験開始20分後、Aチームの斥候隊と砲撃戦になった。

「装填急いでください!!」

 いつもより遅い!!!

「車長、こちらに援軍を!!」

「通信士!!増援を!!位置を知らせろ!!」

 流石に5対8では分が悪い。増援のお陰で何とか6両を撃破できたが、

「アイリーン先輩!どうしたんですか?」

「す、すまない」

 アイリーン先輩だけでなかった。車長の綾波先輩も増援の指示が遅かった。そして通信士の竹原先輩も位置の把握が遅く、連絡が遅れていた。全員いつもと違う。仕方ない、

「やめましょう」

「「「「え?」」」」

「もういいですよ。やめましょう。このままいっても惨めな姿を晒すだけですよ」

「何いってるの!!」

「イヤイヤ、綾波先輩。増援指示を砲撃手が出した時点で車長要りませんよ。それにアイリーン先輩が砲弾落としましたよね?実戦なら暴発して終了ですよ?本当なら今、我々は死んでます。リタイアです。だからやめましょう」

「簡単に言うな!!!」

 アイリーン先輩に胸倉を掴まれた。

「だってそうでしょう?先輩のせいで今日、私たちは「死」にましたよ?」

「あ、あれは!!」

「事故ですか?それとも手が滑った?舐めてるんですか?」

 私の言葉が先輩達を傷つける。でも仕方ない。これでダメならここまでだ。

「「ごめん」で許されますか?戦場で?ごめん、手が滑ったで味方殺してもいいと思ってんのか?味方を誤射して相手の生き残った隊員へ「ごめんごめん、ミスった」って謝って許されるのか?お前ら勝負を舐めてるのか?戦場を舐めてるのか?」

「「「「・・・」」」」

「気合入れろよ?あのときみたいに気合入れろよ?私に言われてムカついただろ?見返してやるって!!あの晩、みんなで集まって作戦考えたんだろ?あのテスト生を見返すために!!」

「何で・・・」

「知ってますよ?選手整列のとき、先輩達だけ目の下に隈があるのをごまかすメイクしていましたから。どうします?辞めます?続けます?」

「でも今からじゃあ・・・」

 我々Bチームは圧倒的不利になっていた。谷へおい詰められていた。砲塔が下に向かない戦車にとって下のほうが有利である。

「なら、我々が有利だ。」

 状況を整理する。

①15対21で、不利

②逃げ場が少ない谷へ追い込まれている

③谷の下から上っている途中である。回転砲塔が少ないこちらが不利である。

④フラッグ戦であり、一発逆転は出来る。

以上である。

 

 

 

 「ここから逆転は難しいわ!」

 「いや、ここは・・・」

 各車長との話し合いが行われた。しかし有効な作戦は出ない。Aチームは中破した車両を修理している。しかしその周りを重戦車で固めている。ようはこの谷におびき寄せるしかない。そしてこの崖・・・うん、いける。

「あの~」

「何?」

「作戦というか、なんというか・・・勝つ方法あるんですが?聞きますか?」

 

 

 私の考えた作戦を皆に伝える。

 

「今の我々の状況から勝つにはこれしかないかと思います」

「だね?」

「やるしかない」

 

 各車両の車長から了承の声が聞こえた。

「では、各車両準備開始!」

 綾波先輩の掛けと共に車両が散っていく。

 

 

 

 

 Aチーム

「各車両、修理完了しました」

「分かりました。では、これより谷へ移動します。」

「ヤヴォール!!」

 

 谷へ逃げ込んだBチームを追いかける、あちらの車両のほとんどは砲塔回転できない、それに居たとしても下に向けても谷の下を走る車両には当てる事ができない。そして重戦車で谷の奥まで追い詰め、重戦車でとどめ。みほも逸見もそう思っていた。特に戦術的不利な状況ではなく、戦力も温存できている。そして指揮をしているのは西住みほである。

 

 

 

 しかしAチームもBチームも、忘れている。霧島エリは、どんな状況でも勝ちに来る人間であるという事に。

 

 

 

 




後編もあります

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