私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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 あの名場面を汚すようで悪いが、戦車に飛び移らなくても
縄を投げればいいんじゃないか?それの方が効率もいいし、危険度も低い。


第37話「決勝戦(後編)」

 この名場面は邪魔してはいけない。相手から砲撃されているが、まず当たらない。

 

 

 全車停止し相手を観戦している。無事エンジンが始動したで、一安心だ。もし何かあれば一時戦闘中止しなければならなかった。それはこちらの作戦上非常に困る。何せここからマウスに活躍してもらわなければならない。予定通りポルシェティーガーが橋を壊し、市街地に向かった。

『聞こえるか?』

『はい』

『自分達のマウスの特性、弱点を理解し、結果を出せ』

『了解しました』

 

 決勝戦に関して俺は最後までマウスの運用に反対した。なぜなら・・・鈍い。確かに装甲、攻撃力は最高クラスだが、速度に難ありだ。しかしOG会の強い希望で採用することになった。

 

 

『各車市街地に進行する。相手は小回りが利く車両が多い。待ち伏せ等に十分気をつけろ』

『了解しました』

『隊長!!』

 ヘッツァーの様子を見に行かせた水樹からだった。

『ヘッツァーが、ヘッツァーが居ません!!』

『水樹!!ちゃんと探したの!!』

『はい!しかしヘッツァーは何処にも』

 悪い予感が当たった。ヘッツァーは自動車部の謎整備で復活したようだ。

『赤木』

『はい』

『こちらに急行して下さい』

『了解しました』

『水樹?』

『は、はい』

『回答を』

 少し水樹は黙る。

『水樹?』

『私の・・私の進言は問題ないと考えます。通常あの場合は私の進言した通りで作戦の成功率はUPしたと思います』

『水樹!あんた!』

『エリカ黙れ!』

『・・・』

『水樹、続けて』

『しかし私は向こうの指揮官を舐めていた、いえ相手高を甘く見ていた所がありました。もし私がもう少し考えて発言していれば1両撃破されずにいたと思います』

『そう。水樹の教育のために作戦を変更したんだけどね。流石に私も焦った。だから私のミス。水樹・・・どう?』

『どう・・・とは?』

『今正常に判断できる?』

『はい!』

『なら良し!!赤木と共に至急合流せよ』

『はい!!』

 

 

 結果を出す・・・これは大事な事だ。結果とは・・・テストで100点を取る。有名校に進学する。試合に勝つ。仕事で大きな取引を成功させる。会社の利益になる事をする・・。人間は常に結果を求められている。だから俺は結果を出さなければならない。この試合に負けることは許されない。11連覇という偉業・・・これはもうスポーツではない。使命だ。そして悪だ。勝てば天国、負ければ地獄?いや生き地獄だろう。負けたらその時の隊長をしている人間の未来が失われる。生きた屍にされるだろう。イジメ、迫害、そして追放・・・そう何もかもを奪われる。

 

 俺は原作を見てこう思った。迫害、イジメ、追放・・・ごくごく普通で社会では当たり前のことだと。例えば仕事で会社に10億の損害を与えるとする・・・どうなるか分かるだろ?10億では大きすぎるなら1000万だ、これなら想像できると思う。まずは軽く上司から嫌味、その後窓際、そして自主退職。それも退職金なし。なぁ?普通だろ?何も可愛そうって誰が思う?西住みほが味わった事は普通に社会で失敗したとき味わう程度のことなんだよ。

 

 だから黒森峰の人間には社会を教えた。結果を出すには何をしなければならないのかを。自分で判断、行動できない人間は不要だ。当たり前だ、上司のいう事を聞くのは当たり前だが、それしか出来ない人間はいつまでたっても一人前にならない。自分で考え、判断し、分からないときは相談する。機械人形は不要だ。

 

 

 俺は合流するまでの間、考えをまとめていた。そのときだった

 

 『大洗女子学園 III号突撃砲F型 、八九式中戦車 走行不能』

 

 マウスは良くやった。我々が到着するまでに終わらせてもいい。何せ今のみほにはマウスを撃破するための材料がない。原作ではヘッツァー、八九式中戦車を使用しIV号で撃破した。しかし八九式中戦車は撃破され、ヘッツァーは行方しらずだ。

 

『よくやった。そのままフラッグ車を撃破させて終わってもいいよ』

『了解しました』

『しかし最後まで油断するな』

『了解です』

 

 

 しかしみほはどうやってマウスを撃破する?原作で使用した八九式中戦車は撃破状態でヘッツァーは行方しらず。多分自走は可能だが戦力としては0と考えていいレベルだ。さてどうでる?

 

 

 

 市街地の近くで赤木達と合流しマウスに状況報告を行わせた。

『状況は?』

『現在追跡中です。奴ら自分たちの有利な小道等に入っていきました。こちらは迂回して追跡しています』

『了解。現時点で追跡を中止、我々と合流せよ。これ以上相手の術中に嵌る必要はない。お疲れ』

『ありがとうございます。っ!!』

『どうした?』

『敵襲です!』

『深追いの必要はない』

『はい。でもこいつら!!』

『おい、状況は?』

『あいつら機銃でこちらの側面を!!ええっい!鬱陶しい!!』

『おい!!』

『大丈夫です!』

 

 何かおかしい。まるで・・・走行は強固、攻撃力も強力、しかし鈍足・・・考えろ!!何を考えている。原作では車両上部のスリットを狙い撃破されたマウス・・・車両上部?いや無理だ。砲撃でどうやって撃破する?市街地戦で?・・・・おいおいおいまさか!!!

 

『マウス!!今すぐそこから退避しろ!!』

『しかし!』

『しかしもクソもあるか!!お前達の頭上に今何がある!!?」

『えっと・・・』

 外を確認しているようだが、そんな事不要だ。何があるか?それは

『今頭上には陸橋があります』

『だからだ!!その陸橋が落ちたら流石のマウスでも耐えれない!!』

『ああ!!りょう、りょう・・・わぁぁぁ!!』

『どうした!!?』

 

 通信は通じなかった。そして

 

『黒森峰女学院マウス 走行不能!!』

 

 ボケが!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリ?」

「んん?」

「大丈夫?」

「何が?」

「なんで笑っていられるのよ!!あんたが言ってた完全勝利が!!」

「ああ、そのこと・・・気にしなくていいよ。その完全勝利ってのは、試合で完全試合をすることじゃないから」

「でも・・・あんな新参者に撃破されるなんて!!」

「エリカ?」

「何よ?」

「撃破された理由や状況を思い出して?こちらの不手際で撃破されたのは何両?」

「一両よ」

「うん。でもマウスは違う・・・普通陸橋を落として撃破するなんて思いつかない。それに私も相手の作戦への対応が遅れた」

「無理よ!!あんな作戦!!普通しないわ」

「そう。それ、その考え方がダメなの」

「でも!!」

「エリカ、反省会は試合後に」

「わかったわ」

「じゃあ試合に集中。さて相手の車両はあと何両?」

「Ⅳ号、ヘッツァー、ポルシェティーガー、M3の4両ね」

「うん。じゃあ相手の気持ちになって。ここからどうやって勝つ?」

「・・・」

「うん、わからないようね?私も分からない。だから相手の出方を待つ」

「偵察?」

「違う。全車両で市街地に突入」

「サンダースじゃないけど、物量作戦。それに」

「それに?」

「相手が勝つにはここしかない。他じゃダメ」

「了解よ」

『全車両に通達、今から市街地に全車両で突入する。相手は4両しか居ない。しかし我々が撃破する必要があるのは1両のみだ。それを忘れるな!!それと相手は小回りが利く車両が殆どだ。周囲の警戒は十分にしろ』

『『『了解』』』

『逸見、赤木、赤星、水樹、直下を先頭に5つに部隊を分ける。敵と遭遇した場合は速やかに撃破せよ。しかし明らかに相手の術中だと分かり次第、他の部隊と合流せよ。相手で注意するのはⅣ号、ポルシェティーガーだ』

『了解しました』

『では・・・突撃』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 各小体より通信が入る。

『こちら赤星、ヘッツァー発見。しかし砲塔が無いので脅威とは感じません。追撃を中止します。しかし下手に追撃を中止するより2両ほど追撃させ残りはそちらと合流しようと考えます』

『うん。その判断でいい』

『こちら直下敵との遭遇はありません』

『赤木です。同じくです』

『水樹です。すみません。M3に2両やられました』

『了解。状況は把握している。速やかに合流せよ』

 

 う~~ん仕方ないか・・・ちゃんと周囲の警戒をするように忠告したんだけどな?

少し水樹に同乗するな・・・またエリカ辺りが苛めるのかな・・・後でフォローしておくか。

 

 

『エリカ?前方のⅣ号、ポルシェティーガーは?』

『現在追撃中よ。そっちも着いてきてるんでしょう?』

『勿論。そろそろ相手も仕掛けるだろうな。周囲を警戒しつつ相手を追跡しなさい』

『ええ』

 その時だった。

『エリカよ!!ヘッツァーが家を突っ切って突撃してわ。向こうは撃破判定、こっちは足回りにダメージが』

『大丈夫見てる。私は相手を追撃するわ』

『ダメよ!!』

『大丈夫』

 

 

 

 

 これも作戦。相手の作戦にワザと乗っかる。そして勝つ。勝つ方程式はある程度出来ている。前のポルシェティーガーが邪魔だ。

「ポルシェティーガーに砲撃」

 相手の足回りに命中し、ポルシェティーガーは止まった。しかし砲撃は可能であるため警戒は必要だ。足回りへのダメージは小破程度で自走は可能のようだ。俺はみほが原作通りの場所に入っていたのを確認し、俺も入っていった。そしてマイクを使い

 

「みほ」

「エリちゃん」

「ワザワザそちらの作戦に乗ってあげたんだから分かってる?」

「うん」

「久しぶりに本気で行くよ?今までみほは私に勝ったこと無いけど・・・大丈夫?」

「大丈夫、勝つから」

「そう。みほ?」

「何?」

「あなたの本気に対して私が『本気』にならないのは失礼だよね?」

「そうだね」

「だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          『殺す』つもりでいくから」

 

 

 

 

 そしてラストダンスが始まった。2両の戦車がダンスを踊り、さてさてどちらが生き残るか・・・

 







 

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