私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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 もう直ぐ決勝戦です。

 よろしくお願いします。


第33話「手回し」

 

 

 聖グロとの試合後俺は西住しほに呼ばれた。

 

「本日の試合お見事です」

「どうも、ありがとうございます」

「しかしなぜ相手校と同じ戦術を?」

「決勝までに車両整備を間に合わせるためです。一言で言えば、こちらがわの車両にダメージを負わしたくなかった。ダメージを受けるとその分整備をしなくてはいけません。それとこちらの手の内を見せたくなかった。」

「プラウダとの決勝のためですか?」

「いえ、大洗とのです」

「どういう意味ですか?」

「みほ率いる大洗がプラウダに勝利します。よって相手に此方の戦術を見せたくなかった」

 この辺は本音だ。なるべく相手に手の内は見せたくない。負ける要素をなるべく減らしておく。普通の相手ならここまでしない。しかし相手はみほだ。ただの敵でなく、こちらの弱点を良く知っている。

「しかしいくら何でもあの戦力差でプラウダが負けるとは思えません」

「ええ、普通はそう思います。しかしプラウダの隊長は舐めてかかると思います。あの暴君ならある程度追い詰めて、降伏勧告でも出すんじゃないですかね?その間はお昼ねタイムとか?」

「冗談はやめなさい」

「冗談かは当日その目で確認して下さい。私は行きません。勝敗が分かっている試合を見に行く暇などありませんから」

 まぁ寒いのが嫌いなだけだが・・・

 

 

 

 

 

「みほは・・・強いですか?」

 突然の質問だった。

「?え?」

「あなたが其処までみほを警戒する理由はなんですか?」

 なるほど。俺がどうしてそこまでみほに拘るか・・・ってことか。簡単だよ。

「彼女は強い。私のような紛い物ではなく、本当の強者だからです。そして今現在彼女は黒森峰に居たときよりも強い。もしも私がみほと同じ立場であったなら、多分1回戦で敗退していることでしょう。そもそも素人と売れ残りの戦車でサンダースに勝利したことが奇跡ですよ。まぁ二回戦は・・・相手のお頭がもう少しよければって所です。」

「・・・・・・」

「今みほを取り巻く環境は、今まで西住流で押さえつけられていた才能を伸ばすのにベストです」

「あの子にとって西住流は枷だったという事ですか?」

「現状を見る限りそう思います。ただ少し訂正するなら西住流ではなく、彼女を取り巻く環境が悪かったのかもしれません。元々勝負に勝つという性格ではなかったのに、周りは勝つことのみに固着していた。西住流の欠点を改善したかったが、伝統を重んじる手前率先して出来なかった」

「・・・」

「私は西住流の人間ではありません。なのでこれ以上は踏み込むつもりはありません。ただ、あの時もう少しみほの気持ちを考え、答えていれば、みほは純粋に西住流と向き合えたかもしれません」

「わかりました。しかし負けることは許しませんよ」

 少し顔つきが変わる。

「いいんですか?勝利しても?」

「・・・」

 不穏な空気が流れる。

「ワザと負けると?」

「さぁ?どうでしょう?」

「あなた・・・どういうつもりですか?」

「勝てというのなら勝利しましょう。西住流家元の命令なら」

「当たり前です。西住流には勝利以外ありません」

「では勝利した暁には私のわがままを一つ聞いて欲しいのですが?」

「言ってみなさい」

「大洗が今年準優勝します。しかし廃校撤回の条件は優勝すること。初めて1年未満の高校が初参加で準優勝・・・十分な実績になると思いますが、如何ですか?」

「それを私から政府に言えと?」

「いえいえ、それは流石に。露骨に家元が表立って出るのは何かと後々問題が出る可能性があるので・・・あえてもっと上の人間が出る事が望ましいかと」

「緒方様ですか?」

「まぁその辺りが打倒かと」

「償いをしろと?」

「彼方の対応は家元としては正解、でも母親としては不正解。戦車話=家元の立場で話すのではなく、内容を聞いてそれから決めるべきだと思います」

「・・・」

「では私はこれで」

 そういい席を離れた。これである程度のお膳立ては出来たと思う。あちらは勝っても負けても生き残れる。しかしこちらは勝利以外ない。

「きついな~」

 

 長い暗い廊下を歩きながら俺は呟いた。

 

 

 

 

 




 

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