私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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第26話「疾風」

心の底から思った・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 「悔しい!」と・・・・

 

 

「ふぅ・・・」

「・・緒方様」

「やられましたね」

「しかし!!あれは!!」

「ルール違反ですか?」

「はい!あのような行為は戦車道に反します!抗議すべきかと!」

「ふふふ」

「緒方様?」

「恥ずかしくありませんか?」

「・・・」

「ルール違反?何処に『相手の戦車の真似をしてはいけない』と記載されていますか?彼女が実施した戦法の何処に違反要素が?」

「・・・」

「通信を全員に」

「はい」

 緒方は全車へ通信を行った。

 

『私は残念ながら撃破されました。しかし勝負は撃滅戦です。各員の奮戦を期待します。それと残念ながら私はこの試合を最後に自衛隊・・いえ、戦車道より身を引きます』

『『『!!!!!』』』

『ずっと前から考えていた事です。今日の試合の結果で今後の身の振り方を考えると・・・そして私は撃破されました。それも何も出来ずに・・・そして私の後継者は、この試合に勝利し、そのチームにおいてもっとも貢献したものを私の後継者に指名します。これは試合終了後に正式に発表する予定です』

 

 

 緒方は嘘は言っていない。確かに試合終了後に発表するつもりだった。しかし予想外なのは自分自身が序盤で撃破され、チームの士気が極端に低下し、このままでは敗北する確率が高くなった事だ。そこでチームに活を入れるため賭けに出た。それが先ほど行った後継者になるための条件提示である。条件提示により試合に負けた場合自分達はあのクソ生意気な小娘の部下になることが無条件で確定するのだ。どんな人間でも一回り年下の小娘が上司になるのは御免である。そして緒方の策は成功し、残存兵力は霧島率いる黒森峰撃滅のため走り去って行った。

 

 

「さて、彼女はどんな対応をするのかしらね?どう思います?」

「私には分かりません。ただ・・・」

「ただ?」

「我々が予想している遥か彼方の出来事が起きるかと」

「そうね。彼女なら起こすでしょうね。予想外の事が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ------------------

 

 

『全小隊集合』

 

 

 ババアを撃破した後俺は後退指示を出した。一旦小隊を再編成したかったからだ。いつまでもエリカと赤星が同じ小隊にいるのは勿体無い。直下が離脱し中破1車両が離脱した。また足回りの故障により2両が離脱した。これでこちらは残存25両。そして相手は26両。

 

『エリカ、8両率いて前進。赤星、左翼より5両率いろ。水樹はエリカのバックアップとして3両率いて後方で待機。マウス、パンター4両はここで待機』

 

 これで全てあわせて25両。

 

 

そして作戦は・・・・ない。まったく・・・ない。

 

『全小隊、相手は頭を潰されて殺気だってる。意味分かるか?今まで相手にしてきた敵とまったく違う。だから諸君らの実力、今まで努力してきた事がプロ相手にどこまで通用するか試してもらいたい』

 俺は全車両へ通達した。

『私が試合前に言った事を覚えているか?「一泡ふかしてやる」・・諸君らの実力で彼女達に一泡ふかしてやれ。各小隊長へは試合前にこういう事態がある可能性を示唆して、作戦を考えてもらっている。各小隊長は振り分けた隊員へ情報を伝えるように』

『『『了解しました』』』

『あの隊長』

『なんだ水樹?』

『私・・・その話は』

 忘れてた。水樹には話をしていなかった。

『水樹は変わらずエリカの小隊のバックアップだ。エリカは水樹がいる事を頭に入れ、再度作戦を再構築するように』

『『了解』』

 

 今回俺は頭を取る事に特化した作戦を考えてきた。いや、違うな。この作戦以外に思いつかなかった・・・それが正しい表現だ。残念ながら俺の実力はこれが限界のようだ。このままでは彼女達に何も出来ずに撃破されるのは目に見えている。ならば各小隊長に作戦を立案、実行してもらえばいい。それが最終的に俺が考えた作戦の一つだ。もうひとつを実行するにはまだ早い。もう少し場の空気が変わったら実行すればいい。無理を言って整備したパンター4台。早々に壊すわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 結論を言おう・・・惨敗した。各小隊長の奮戦空しく我が黒森峰女学院の戦車は25両から7両まで減らされた。私は無線越しにしか状況を掴めなかったが、要は突撃されたのだ。突撃と聞くと知波単学園を頭に思い浮かべる人が多いと思うが、あれは突撃ではなく特攻に近い。真の突撃は字の如く「突撃」。戦闘中の状況を敵の車長が完璧に読んでいたそうだ。発砲と同時に進路を変え攻撃を回避された。勿論こちらもそれに対して対応したが、場数が違う。所詮此方は高校生。簡単に撃破された。そして激戦後こちらは7両、あちらは23両・・・・圧倒的な戦力差を覆すことは不可能。ならば私は、私の戦車道を実行するまでだ。

 

 

『各隊員・・・どうだ?自分達の実力が分かったと思う。しかし落胆する必要はまったくない。なぜなら自分達は戦車道の頂点、プロ以上の人物達が乗車する戦車を7両も撃破できた。これは素晴らしい戦果だ。しかし、しかしだ!我々はまだ戦う事が出来る!!』

 

 一呼吸おいて

 

『戦う事が出来る以上、勝利を目指さなくては撃破された乗員やOB、OGに失礼だ。この試合に勝てる可能性は極めて低い。しかし低いって事は、つまりゼロじゃない。私はまだこの試合に勝利するつもりだ』

 

 そして

 

『パンターα、β、γ、σ、まだ戦う炎が消えていないのであれば、エンジンを始動されろ!』

 

 私が言い終わった瞬間に後ろで待機していたパンター4台のエンジンに火がついた。

『では戦いを再開しよう。例え砲身が折れても、足回りが破損しても、砲弾がなくなっても、諸君らの闘志が消えていないのであれば戦え!!』

 

『『『『ヤヴォール』』』』

 

 4両のパンターのうち1台に私は乗り込んだ。残りのティーガーⅠ、マウス、パンターには待機を命じている。残念だがこのパンターの作戦には残りの3両は着いて来れない。久しぶりの砲手だ。腕がなる。そして私は車長へ命じた。

「練習通りに進行しろ。手信号は正確に行え、すべてはお前の状況判断能力に掛かっている」

「了解しました」

 車長は残りの車両に大声で指示を出した。そうこのパンター4両には最低限の装備しかない。

 

 パンターα、β、γ、σ、

 

 通常の車両をルールギリギリまで改良した車両。重量は250kg減、エンジンの各部を強化品等に置き換え、高出力に耐えれるようにしている。また劇場版で自動車部がモーターを使用していたのを思い出し、少々難航したが各車両にモーターを搭載、最大速度を整地にて75kmまで引き上げた。しかし今回の車両はそこまでしか手が入れられておらず、駆動系と足回りの強化が間に合わなかった。

 通信機は取り外し、車長の手信号で各車両をコンタクトしている。砲弾、燃料においても軽量化の一端で最小限としている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       

 「さぁその身で味わえ。私の戦車道を」

 

 

 

 

 

 

 そして数分後

 

 

 

 

 

 

 「自衛隊 パンターG、ヤークトパンター、III号戦車J型2両・・・走行不能」

 

 




お気に入りが・・・暫く見ないうちに1000に近いのだが?

 評価数も・・・一気に15ぐらい?増えている・・・


 何が起こったか、俺には分からない。


 ただひとつ言えるのは



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