私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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 亀更新ですが、よろしくお願いします。


第25話「敗北」

 「全車パンツァー・フォー。エリカ前進し相手に奇襲を。奇襲後はエリカの判断で行動しろ。赤星はパンター6両を引き付れ、エリカの後方より援護しろ。ただし状況次第で援護をやめ挟撃しても可。直下はパンター、Ⅲ号を引きつれ偵察行動。相手は格上だ。こちらの戦法はある程度読まれてる。だが、読まれている=失敗するではない。諦めるから失敗するんだ。最後まで足掻けよ!!」

「「「「「ヤヴォール」」」」

 

 

さてどうなるか・・・

 

 

 

 

 出撃から15分後

 

『こちらエリカ敵と遭遇。数は6両!』

 敵と交戦とエリカの部隊より通信が入った。数が6両とは少し少ない。エリカの部隊は8両だ。後ろに赤星の部隊6両・・・囮か?それとも・・・いや!!

 

『エリカ!!至急後退!!後退せよ!!やつら横から来るぞ!!』

『な!!全車両後退!!』

 通信から後退する様子が伺える。そして

 

 

 『黒森峰パンターG、1両走行不能』

 

 前方の車両は囮、左右からの挟撃が本体。たがが4両で赤星とエリカの部隊の指揮系統を一時的に混乱させるとは・・・流石だな。それも左右からの車両は殆ど全開で突撃してきたそうだ。木々の間はギリギリ車両が通れる程度のはず。我が高の操縦士でも全開はまず無理だ。しかし我が高も負けてない。あの混乱の中いち早く立て直したエリカの部隊の砲撃で相手のパンターを1両中破させた。日頃の訓練の成果だ。

 

 一旦全ての部隊を後退させ、エリカ、赤星の部隊を再編成し、直下の部隊へ2両追加した。各13両と10両編成だ。

『流石に強いな相手さんは』

 俺は全車両に通信を入れた。

『だが今のところは想定範囲内だ。想定範囲内と言いことは問題ない、慌てる必要は無いという事だ。では次の作戦に移行する。諸君準備はいいな?』

『『『ヤヴォール』』』

『よろしい、では作戦「頭潰し」を開始する。直下頼んだぞ?』

『ヤヴォール』

『エリカ、赤星はなるべく相手をおちょくる感じで頼む』

『『ヤヴォール』』

 

 偵察車両から相手も部隊を再編成し進撃している事が分かった。ババアの車両はヤークトパンターで守られている。守りに重点を置いているため、速度は比較的遅い。一方こちらはヤークトパンターは後方に下げ、パンターGを主力においているのため相手より少し早い。偵察より所定の位置にもう少しで敵が到着すると通信が入った。

『各車両状況報告』

『こちらエリカ、所定についてます』

『直下です。同じく所定につきました』

『了解。各車両待機。偵察はそのまま続行。相手が作戦箇所に入った瞬間に作戦開始。III号戦車J型は相手の鼻っ面に突撃、勿論撃破されるなよ?偵察要因が居なくなるのは困る。その際煙幕は忘れるな。続いてエリカ、赤星は敵さんに突撃。III号戦車J型は鼻っ面から離脱する瞬間を間違えるな。情報は密にしろ。突撃後足早に逃げろ?立ち止まるな。直下は分かってるな?以上質問は?』

『『『ありません』』』

『よろしい』

 

 

 

 『敵、所定の位置に差し掛かりました!!これより作戦を開始します』

 『了解、各車両幸運を祈る』

 

 

 作戦は簡単だ。

 III号戦車J型が敵の先頭で煙幕を大量に撒く。ある程度視界を奪った後、エリカ、赤星率いる車両が煙幕を撒きながら突撃。勿論煙幕を撒いて視界を奪うのが目的だが、敵車両を撃破してもいい。その後直下の部隊による遠距離砲撃。ある程度したら近くで待機していた直下のパンターGが敵さんに紛れ込む。相手の車両は黒森峰から数台貸し出している。何でかって?車両を用意するのに時間が無かったそうだ。そのため黒森峰からレンタルしている。色やマークに関しては事前に調べが付いている。直下の車両には絵がうまい隊員を集め、待機中に車両のマークを書き換えた。勿論服に関してもルール上、試合中に服の着替えは禁止とは書いていないため、相手の服装に着替えさせた。何?卑怯?自分の部隊の編成や残り車両の台数を把握していないのが悪い。

 

 そうこうしているうちに

『自衛隊、パンターG、III号戦車J型、ヤークトパンター、走行不能!!』

 はぁ?ヤークトパンターを撃破?予想外すぎる。おっとゆっくりはしていられない。

『我々も動くぞ。J地点へ急行。赤星?ダメージレポート!!』

『中破1両、小破2両』

『了解。K地点へ。追撃はあるか?』

『5両追ってきます』

『了解、状況変更赤星はそのまま相手と遊べ、エリカは?」

『こちらエリカ、小破3両よ。それと私の判断で部隊を2つに。追っては赤星に付いて行ったわ。今K地点に急行中』

『問題ない。よくやった。10分の後に仕上げを行う。直下はどうだ?』

『こちら直下。無茶苦茶怖いです。しかしティーガーⅠのすぐ近くに潜入完了。現在部隊の再編成中。10分以内で進撃を再開すると思います。ただこちらが外に出ないので、不審に思われるかもしれません』

『車両にダメージが入り、何かこう、開かない?みたいな言い訳しろ』

『何とかやってみます!』

『エリカ急げ、赤星は追っ手を引き付けろ。おい!遅れてる』

 

 

 

 

 

 

 

『こちら直下、コマンダーキューポラが先の戦闘で開かなくなったと報告しました。敵さんそれを信じてくれました。今ティーガーⅠの護衛の為、すぐ横に居ます。』

 マジ?マジ?運は此方に向いている。

『状況報告!!常に各隊長は通信で流せ!!』

『こちらエリカ、後1分で到着!!』

『こちら赤星、相手がキレてます!!まだ引き付けは必要ですか!?』

『こちら直下、ホントに怖いです!!』

『エリカ2分後にH地点へ砲撃を開始!!赤星はそのまま!!直下は砲撃が開始されれば状況に応じて我々に砲撃を行え、機を見てティーガーⅠを撃破せよ。その後は頑張って離脱せよ』

 

 

 

 

 

 そして

『自衛隊、ティーガーⅠ走行不能!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その放送を聴いた瞬間、「ざまぁ」と心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間を戻して、自衛隊側

 

「申し訳ありません緒方様、私のミスでパンターG、III号戦車J型、ヤークトパンターを失い、1両中破にされました」

「かまいません。それより部隊編成を早急に行いなさい。それと今から私が指揮を取ります。彼女は中々のやり手です」

「はい。まさかここまでするとは思いませんでした。しかしもっと怖いのは先ほど突撃してきた戦車の車長です。皆笑っていたんです。我々でもあの状況下で笑えません。一体どんな精神状態なのでしょうか・・・」

「あなたがそう思っているのなら、彼女の術中に嵌っていますよ。あれは彼女の作戦です。相手に自分達の精神状態を分からないようにするための・・・流石です。勝負という事を良く知っています」

「高校生がそこまでしますか?」

「そこが狙いです。たかが高校生、小娘・・・最初貴方達はそう思った。しかし蓋を開ければ、今数的には我々が負けている。たかが高校生相手に。どうですか?現実が見えますか?」

「・・・はい。仰るとおりかと」

「多分まだ彼女の企みは終わってはいませんから十分気をつけるようにしましょうか。それでは各車両ダメージレポートを」

 

 各車両よりダメージに関して報告が入る。しかし1両のパンターGより報告が来ない。なんでも先の戦闘で通信機とコマンダーキューポラに不具合が出ていると、このままでは各車両の動きに着いて来れない。ならば私の車両の近くにおいておけば、何かの際に盾になる。

「パンターGは私の車両の横に着なさい。他の車両は小隊長の指示に従いないさい。」

 

 

 

 

 やはり車長はいい・・・現役を思い出す。もう引退して何十年・・・彼女の言う通り、私は忘れているみたいね。戦車道を。そして勝負というものを・・・

 

 

 部隊の編成が終わり、進撃を開始した。しかし私は違和感を感じる。一体何に違和感を感じているのかは分からない。いや感じないのではなく感覚が鈍っている。私は周りを見渡す・・・一体何が・・・まさか!!車両が!!違和感の原因を突き止めた瞬間だった。私達の頭上に砲撃が降り注いだ。遠距離からの砲撃で当たり所が悪くない限り装甲は抜けない。しかし部隊の足は止まる。その隙に紛れている車両が行動を起こす。

 私は再度周りを見回し、紛れている車両を突き止める。

「各車両落ち着いて行動しない。当たり所が悪くない限り装甲は抜けません」

 しかし

 

「自衛隊、パンターG 走行不能!!」

 この放送はタイミングが悪かった。

「緒方様応戦の指示を!!」

「反撃させてください」

 ここは反撃しかない

「各車両、反撃開始。弾の消費を考え各車両3発までです」

「「「「了解」」」」」

 絶好の機会だ。これで反撃しない車両が敵と判断できる。

 

 

 しかし全車両・・・敵に向かって砲撃を行っている。口頭で隣のパンターにも伝えていますが、反撃しない車両がいない。まさか・・・いや数がおかしいし、紛れ込んでいるのはパンターGという事も判明している。

「各車両に通達。撃ち終わり次第後退」

 撃ち終わった車両は指示通り後退していく。周りの護衛車両も私の車両に合わせ後退していく。その時私の車両近くに着弾した。幸い車両へのダメージは無かったが、少し護衛の隊列が乱れた。特にパンターGが一度停止したが、直ぐに持ち場に着いた。余りに慌てていたのか、砲塔が此方に向いている・・・・まさか!!

 

 

 

 まさか!!と思い指示を出そうとした瞬間、私の車両に衝撃が走った。今度は至近弾ではなく命中だった。それもほぼゼロ距離での・・・私はその衝撃で戦車の中に倒れそうになったが、キューポラの取っ手を掴み何とか倒れずにすんだ。しかし

 

 

「自衛隊・・・・・・ティーガーⅠ ・・・走行不能・・・」

 

 

 

 

 

 その直後

 

「黒森峰 パンターG 走行不能」

 ティーガーⅠを撃破したパンターは呆気なく撃破された。

 

 

 

 私は白旗を見ながら、いかに自分が口だけになっていたのかを痛いぐらい痛感した。あの時彼女との会話を思い出した。

 

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「はい。緒方様率いる部隊と私率いる黒森峰で試合をしたいと思います。そこで再度私の実力を見極めてもらい、それから再度検討するというのはどうでしょうか?」

「それは私の目を疑っているということでしょうか?」

「私の本当の実力を再認識していただく場を設けて頂きたいと思うだけです」

「なんと無礼な!!遠まわしに私の目を疑っていることではないですか!」

 「こんな無礼な人間は私は初めてです」

 「今までの話は無かった事に。失礼する」

「自分の目を疑われたぐらいで癇癪を起す。それが嘗ての大戦を生き残った人物の正体ですか」

「それとも元から詰らないプライドが高いだけの人間だったんですか?もしそうなら私は耳を疑いますね。歴代の戦車乗り?ホントはただ臆病なだけの小心者だったんでないかと。だって最初に死ぬのは詰らないプライドを振りかざす人間と相場は決まってますから」

「いえ、ここまで来たら私も言わせてもらいます。あなたが私を評価するのは間違っている。私があなたを評価します。なぜなら今のあなたは戦車乗りではなく、下らないプライドを振りかざす老害です」

 

 

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 何だ・・・全部彼女の言っている通り、私は確かに口だけの老害だ・・・

 

 

 

 久しぶりに・・・・何十年ぶりかに・・・・私は・・・・心の・・・・そう

 

 

 

 本当に心の底から思った・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 「悔しい!」と・・・・






 戦車はL=何km?ですか?

 私のGDBはL=4.5kmです。サーキットではL=3km

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