私はあの女が嫌いだ   作:yudaya89

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E5甲クリア

各海域堀終了。


第22話「始動」

もうすぐ全国大会が始まる。それまでに新体制の最終調整及び成果の確認のため、各高校の練習試合申請を全て受けた。予定に無かった5両での殲滅戦まで含めると計10戦。流石に連日の訓練も入れてなのでかなりハードなスケジュールとなってしまった。しかし各隊員達はそのハードメニューをクリアし、残るは聖グロとの15両による撃滅戦のみとなった。相手の意向で少し間を空けて行う事になり、その間戦車は整備班に整備してもらう事になった。戦車がないならな休めばいいじゃないという事で、各隊員は久しぶりの休日を楽しんでいる。しかし私には関係ない。兎に角書類整理に忙しい。それに加え予算会議やその他委員会への出席だ。勿論学校の課題もある・・・死ねと?書類整理が一段落し、これまでの練習試合の結果を思い出す。

 

 

 

 9戦9勝・・・・・・

 

 

 連日新聞や戦車道雑誌、テレビでも報道されている始末だ。

 

 

 『新体制黒森峰!!11連覇は確実か!!』

 『黒森峰の弱点は皆無!!』

 『新体制の移行は王者を更に強くする結果に!』

 

 

 などの報道が過熱した。私は知らないが有名な戦車道の解説者?が我が高の練習試合を見学していたらしく、その時の事をテレビで解説したのが発端らしい。因みにわが高の練習試合風景を情報処理科と協力し、ネット配信も面白半分で行ったところ、1戦目から回線がパンク寸前。更に例の解説者の報道後3戦目からはパンクしたそうだ。勿論有料視聴としていた。その後急遽回線を増設し対応し、現在では問題なく稼動している。

 因みに5戦目から各車両の隊員にGoProを装着し、隊員達の臨場感がそのまま視聴者にも感じられるようにしてみたところ。これが大うけ。パンチラ見たさに男が集まったが、残念ながら世界の補正で見えないようになっている。

 これで得た資金は戦車の整備費に当てられた。それでもお釣りがきたぐらいだ。それに関して予算委員会から色々言われ、書類整理が一気に増えた。

 

 確かに士気は向上している。誰もが11連覇は確実と思っている。副隊長のエリカですら表には出していないがそう思っているだろう。どれもこれも全部あの解説者が原因だ。

 

『新体制になった黒森峰、どうですか解説の森さん』

『確かに凄いですね。今までの黒森峰の弱点と言われたところを改善、それに加えあの霧島エリの砲撃技術を習得した砲撃士が全ての車両に搭乗している』

『確かに黒森峰の命中率は80%以上ですからね』

『そしてそれを支える装填士は独自の装填練習を行っているらしく、曰く「どんな状況でも装填可能」だそうです』

『どんな状況でもですか?』

『そうです。一度見たことがありますが、スラロームをドリフトしながら戦車が的を撃ちぬいていくんですが、普通横Gの影響で装填は難しいですが、その状況でも3s程度で装填していたんですよ。もはやプロレベルです』

『・・・』

『勿論それだけではなく、過去には崖から降りている途中や空中装填も可能だとか・・・』

『本当ですか?』

『勿論真実は分かりませんが、もっと「え?」と思う事がありまして。通信士なのですが・・・一度に3人が喋った事を聞き取る。上級者は4人が聞き取れる。そして全ての車両での情報を並列化するため通信士の試験は他を凌駕すると聞きます』

『情報の並列化・・・因みにその試験とは?』

『5人が喋っている事で間違っているものを聞き取る。4人は正しい事を伝えているが、1人だけ嘘を付いている。それを聞き取る。それも話し終えた瞬間に答えなければならない』

『・・・それはプロを超えてませんか?』

『はっきり言うと、今の黒森峰はプロで戦えるレベルですね。そして戦車長ですが・・』

『すみません!もう時間が無いみたいです。またの機会という事で』

 

 もしこれを聞いて喜ぶなと言って喜ばない奴は居ない。そしてこの放送は世界中に流れている。この影響で海外からの留学生が増加していると校長に言われたが・・・はっきり言って知った事ではない。今我が高は浮かれている。「俺を除いた全ての人間」がだ。これがどういう状況か分かるかい?そう負けへの道に転がり始めているという事だ。練習風景を見ていると全員「浮かれている」。当たり前だ、自分達に勝てる選手はプロぐらいと言われてみろ・・・誰が真面目に練習する?それが目に見え始めた。どうかしようにもどうしようもないのが今の状況で、俺の今一番解決しなければならない重大事項の1つだ。

 

 

 慢心、油断・・・過去にこいつらに取り付かれた人間は必ず敗北の道に引きずりこまれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖グロ 練習試合当日

 

「今日はよろしくお願いしますわ」

「ええ、こちらころよろしくお願いします。ダージリン先輩」

「こちらこそ、処で最近練習試合で負けなしと聞きますが・・・」

「らしいですね。まぁ所詮練習試合ですから、相手も本気ではないでしょう」

 ダージリン先輩と少しの間腹の探りあいが始まる。

「しかし黒森峰相手に本気で来ない高校があるので?」

「さぁ?興味ありませんね。ところであちらに居る金髪のチンチクリンと赤毛の子犬は新戦力ですか?」

「チンチクリンと子犬・・・面白い例えですわね」

「そうですか?まぁオレンジペコは彼方のお気に入りですからね。ローズヒップはクルセイダー部隊の隊長・・・合ってます?」

「・・・何もかもお見通しということ?」

「まぁ新メンバーの加入はあっても、新戦力はOGの影響で無理だったみたいですね。最近相手高が本気で来てくれないので、こちらのメンバーが浮かれてまして・・・聖グロには「そこそこ」期待してますよ?」

「言いますわね」

 ダージリンから少しイラツキを感じとった。とっその時だった。

「失礼ではないでしょうか?」

 横から金髪の少女が話しに割り込んできた。そうオレンジペコだ。

「ダージリン様失礼かと思いますが、彼女に言いたい事があります」

 彼女は俺に向かって言い放つ。

「少しばかり連戦連勝してるからって今日ダージリン様に勝てる要素になりません」

 ダージリンを崇拝しているオレンジペコらしいといえばらしい。しかし

「やぁ初めましてオレンジペコ。黒森峰で隊長をしている霧島エリよ。よろしくね」

 一瞬オレンジペコが黙り、ダージリンが何かに気付いた瞬間、

「それにしても淑女と言うのは初対面の相手に挨拶もしないものかな?ええ?」

 やられた。ダージリンが一瞬顔をしかめた。勿論これで終わるはずも無く、

「どう思う?オレンジペコ?挨拶しない人間は社交界でもあまり好かれないのでは?」

 そしてオレンジペコは

「初めましてオレンジペコです。先ほどは失礼致しました」

 切り替えが早いな。

「話を戻します。あなたが今日ダージリン様に勝てる要素にはなりません。そして今日黒森峰の連勝がストップします!!」

 後ろで聖グロの隊員達がうなずく。あまり毒は吐きたくないけど仕方ない。

「ああ、確かに私はダージリン先輩には勝てません。多分惨敗するでしょう」

 俺の突然の発言に周囲は静まり返った。

「なぜなら私には何もないからです。アールグレイ先輩やそれを引き継いだダージリン先輩のようにカリスマ性や作戦立案も出来ません。しかし私は先代隊長のアールグレイ先輩に勝利した。そして今日ダージリン先輩にも・・・どうしてか知りたいですか?」

「ぜひお教えいただきますか?」

「それは・・・この2名が聖グロリアーナ女学院を率いているからですよ」

 周囲はざわめいた。

「それは我が高への侮辱と取ってよろしいですか?」

 オレンジペコの様子が変わる。明らかに敵意を俺に向ける。

「ええ、そうとって頂いて結構です。なぜならそれが真実だからです。過去に聖グロは準優勝しました。しかしここ数年結果が出ていない。いくつかある理由の中でもっとも勝てない理由が「OG、OBが原因でチャーチル、クルセイダー、マチルダぐらいしか導入、運用できない」という事です」

 誰も何も言わない。ダージリンは黙って紅茶を飲む。

「そしてその原因を「勝てない理由」にしている隊長以外の隊員の存在」

「「「「なっ!!」」」

 驚く聖グロの隊員。当然の反応だが、

「一々怒るな。そうだろ?「負けたのは戦車を限定しているOG、OBが原因」「戦車が・・・」「隊長の戦術が1流でも戦車がな~」などと負けた理由をOG、OBに仕立て上げ、自分達が負けた「理由を解析」しない。そして誰も隊長に「協力」しない」

「どういう「諸君らの中に」っ!!?」

「諸君らの中に誰か一人でも、いや副隊長のアッサム以外に誰かOG、OBに新規戦車の導入を唱えた者はいるか?もしくは一緒に立ち会った者はいるか?」

 しばらく時間が経過したが誰も何も言わなかった。そればかりか下を向いたまま俯いていた。

「そう・・・誰も隊長の考えなど気にも留めず紅茶を飲んでいる。誰一人自分の高校を変えようともせずノウノウと毎日を送る。悪いとは言わない。しかしそれが良いとも言わない。しかし私は「良い事」だと思う。なぜなら諸君らが変わらなければ我々に取って「カモ」のままなのでね。そうでしょ?「1年生」の士気を向上させるには持って来いですからね。

 先ほどまで俯いていた聖グロのメンバー全員が俺を睨む。当たり前だ、「一年相手で十分勝てる相手」と言われ、怒らない奴は居ない。

「まぁ今のやり取りもこれからの試合風景も全てネット配信する予定です。精々無様に負けないように頑張ってください。そうそう一つ言い忘れた事がありました」

 

 

 

 「今日私は見学です。指揮は逸見副隊長が行います。それでは」

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ当然の事だが勝利した。

 

 逸見は西住流受講者だ。元々2年で黒森峰の副隊長を任せられていたから無能ではない。そこで私は彼女を徹底的に指導した。常に状況の把握を細かく行う事、熱くならない等。原作の彼女は兎に角猪突猛進のところがある。そこを改善してやれば、結果は御覧の通り。ダージリン先輩ならギリギリ倒せる。勿論各隊員の錬度が高い事も勝利の要因だが、それを先導する指揮官が2流なら負ける。

 

 

 

 

 

 新体制も整い準備は万全。あとは抽選会でみほに再会し、原作とどう違ってくるか、よくよく様子観察する必要がある。

 

 

 


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