みなさんありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
「・・・く・・さい」
「・・はや・・・・い・・」
誰だ?うるさいのは?
「はやく・・・・さい」
うるさい!!
「はやくおきなさいよ!!」
「あ、はい?」
俺はベットの上で目を覚ました。目の前には女がいた。
「早くしないと遅れるよ?」
「ああ」
夢?俺は長い夢を見ていたのか?霧島エリではなく、元の男の姿に戻っていた。時間を見ると06:45・・・ヤバイ!!慌ててベッドから起き上がり下に降りた。
「今日は何時ごろの帰宅?」
「18時過ぎ。軽い残業があるから」
「わかった。それと車のエンジン切りなよ」
「暖気中」
「ガソリン代、使いすぎたらおこずかい減らすから」
「・・・了解」
俺は身支度を済ませ、愛車のGDBインプレッサ(鷹目)に乗り込んだ。結婚して、2人の子供を授かり、新居も購入、仕事もそこそこ。極々普通に過ごしていた。もちろん両家からインプレッサを降りてワンボックスに乗り換えろとも言われてりるが、勿論拒否している。嫁さんもそこに関しては、味方してくれている。煙草に火をつけ職場に向かう。
数時間後
今日もまったりとした一日だった。特に問題が発生することもなく一日が終了した。問題があるといえば・・・
「マジか~。大雪かよ」
まぁ家もそんなに遠くないし、タイヤの溝もバリミゾ・・・ゆっくり帰ろ。
家に帰る途中、雪の降る量が多くなり視界が悪くなってきた。この地域では雪はあまり降らない。そのため道は渋滞している。まぁ仕方ない。
次の瞬間俺は強い衝撃を受けた。あ・・横から突っ込んできたのか?視界不良でか?それともスリップ?男が何か言っているが、よくわからない・・・俺は薄れゆく意識の中自分の体を見た。最悪だ。横腹に何か刺さっているし、おまけに足が潰れている。一体相手は何キロスピードを出していたんだ。割れた運転席の窓から雪が吹き込んでくる。寒い寒い寒い寒い!!死にたくない!死にたくない!これから!これから幸せになるはずだったのに!!まったくこれぞ「こんなはずじゃあなかった」だな。俺は吹き込んでくる白い雪を見ながら意識を失った。
次に起きた時周りは白かった。そう白一色だった。俺は自分の姿を確認した。元の男の姿ではなく、霧島エリだった。どうせよくある神様が出てくるんだろ?幼女か老人か美人か・・・そんな事を考えていると
「よう」
後ろから声を掛けられた。
「どうも」
後ろを振り返ってびっくりしたよ。真っ黒だった。コ〇ンの犯人やハ〇レンの心理の扉の前にいる奴みたいに真っ黒だった。
「で?」
「ん?」
「何?」
「ああ、そうだったな。どうだ?自分がどうして死んだか思い出したか?」
「ああ、最悪の気分だ。ありがとう」
「まぁそういうな。さて本題だ。お前をまぁ転生させたのはこちらのミスでな。本来転生なんてのは行うことはないのだが、こちらの手続きのミスでな。だから今回死んでもらった」
「はぁ?何?ミスって転生させた。本来俺は居ない。そこで今回俺を事故に見せかけ殺したと?」
「そうだ」
「まったくクソッタレだな!!」
「まぁそうなるな。まぁ俺としてもお前には悪いとは思ってる。でもお前はこの世界には居られない。いるためにはある条件をクリアしてもらう必要がある」
「何?その条件を了承しないと俺は死ぬのか?」
「そうだ」
「マジ?」
「マジ」
「・・・・・・で?条件は?」
「お前にもう一度「死」が訪れる。それを回避するのが条件だ」
「いつくるの?」
「それは言えない。1年後か、10年後か、それとも20年後か。とにかくいつくるかは不明だ」
「で、クリアできれば、以降寿命まで生きれるのか?」
「そうだ。以降事故や事件による「死」はお前に発生しないし発生してもお前は死なない」
「絶対?」
「絶対」
「わかった。」
黒森峰及び戦車道関係者
本日で霧島エリの延命処置が中止される。当初家族は拒否したが、彼女は脳死状態ということを通告された。脳死=死体というのが一般的に言われている。例え希望をもって延命したところで、ほとんどの場合延命資金が底をつく、もしくは家族があきらめたり、介護疲れで中止する。これが現実だ。特に資金に関しては莫大だ。入院費や機材費、自宅で介護するにも人工呼吸器のレンタル代、メンテナンス代等を医師から説明された。勿論霧島家はそこまで裕福ではない。今ある資金では精々半年しか延命できない。借金してまでも延命するのか等の話をした結果彼女の意思を尊重し、1か月後に延命処置を中止することに決めた。
処置を中止することに決めた。
黒森峰においても10連覇を達成したとは思えない空気が流れていた。ほとんどの生徒は事件の細かなところまでは知らない。戦車道を受講している生徒には緘口令が言い渡され、特に彼女と共にしていた生徒には寮にて待機するように言い渡された。そして隊長である西住まほ、副隊長の西住みほ、副隊長補佐の逸見エリカは寮の一室で待機するように言い渡された。
「これからどうなるんだろ、私たち」
みほの問いに2人も答えられなかった。答えられるはずがない。しばらくの間、沈黙が続いた。
「逸見」
「なんでしょう?隊長」
「逸見はいつも「遺書」を書いているのか?」
「いえ、書いていません」
「みほは?」
「書いていないよ」
「ではなぜ、霧島は「遺書」を書いたんだ?確かに戦車道は危険な競技だ。しかし過去に死亡事故は起こっていない」
「確かに。そういえば」
「なんだ?」
「決勝の3日前、現地に向かう直前にあの子何か言っていました」
「なんて言ってた?」
「「お前あの世を信じるか?それと神を信じるか?」と」
「それで」
「一度あえば信じるわと。そしたら「がっかりするぞ」と」
「・・・よくわからないな」
「多分意味はないと思いますが・・・」
再びその場は沈黙で支配された。
「お姉ちゃん」
「なんだ」
「エリちゃんの延命費、西住で出せないかな?」
「みほ・・・」
「そうすればいつか・・・エリちゃんが目を覚ますかも!!」
「みほ」
「もしも足りないならプロになって活躍する「みほ!!」」
「それであいつが喜ぶか!?それにあいつの意思を無視するのか!?」
「お姉ちゃんこそどうなの!!エリちゃんは使い捨てなの!!なんでそんなに簡単に諦められるの!!どうして!!」
「みほ!落ち着きなさい!!隊長が簡単に諦めたなんて言ってはダメよ!」
「・・・・・・ごめんお姉ちゃん」
「いや、みほの気持ちもわかる。だが我々にできることはない。あるとするなら、明日延命中止になるまでに彼女が目を覚ますように祈るしかない」
「・・・」
以降誰も発言しなかった。
翌日
18:00
霧島エリの延命処置中止が実施される。最後に家族、友人が別れを告げた。まほ、みほが別れを告げ、エリカの順番になった。
「エリ、あなたと戦車道が出来て楽しかったわ。もう一緒に出来ないのが残念でしかたない。じゃあね。」
私は別れを告げた。家族も含め皆泣いていた。私も泣いた。人工呼吸器が外され。心電図が心肺静止を示す波形を示した。そして心電図の電源をおとした瞬間だった。そうまったくの瞬間だった。私の眼には波形が一瞬出たように見えた。しかし今それを言ったところで、信じてくれないように思った。そのときだった。
「逸見さん」
「ノンナさん」
「今の見ましたか?」
「何を?」
「心電図の波形」
「あなたも見たの」
「私だけではなかったのですね。エリカさん!」
「ええ!!」
私はもう一度医師にお願いした。人工呼吸器ではなく心電図の電源を入れるように。
奇跡とはこういう事なんだと思った。電源を入れた瞬間、先ほど心肺静止を示した波形が動いていた。現場は騒然となった。今まで死んでいた人間が生き返り、さらに意識を取り戻したのだから。
「エリ!!!」
周りの制止を振り切り私は彼女のそばにいった。
検査の結果、特に異常なしとのことだったが、リハビリ等で1か月以上は入院することになった。
作者の愛車はGDBインプレッサ F型 スペックC アライモデルです。