「聖グロリアーナフラッグ車走行不能!!」
「黒森峰女学院の勝利!!!」
敵フラッグ車を撃破した放送を聴いた俺は戦車から顔を出し、涼しいとは言いがたいが、戦車の中より幾分涼しい外の風を顔に当てた。まったくなんて作戦だ。アールグレイを撃破したのは私の乗るパンターG型だった。作戦内容は一言でいうなれば、砂嵐が通過する前に戦車を砂で被うだ。多少不自然な砂丘が出来ても砂嵐が周辺の砂を慣らす。それで不自然さは無くなる。しかし砂を被せるという事は砂の熱が戦車に伝導されるため社内は灼熱地獄になる。エンジンを停止しているので幾ら装備を万全にしていたとしても人間の体力が持たない。
「霧島!!」
「何ですか~?」
「代われ!!」
竹原先輩が死にそうな顔をしながら私と場所を代われと言って来た。私は戦車の外に降りた。中よりマシだ。
「それにしても地獄だったな」
「ええ、流石にもう1時間長ければみんな熱中症でダウンしていましたね」
「綾波?山下とアイリーンは大丈夫か?」
「ええ、少し回復してきたわ」
山下先輩、アイリーン先輩は倒れた。今はエンジンを掛けて中の空気を冷しているところだ。申し訳ない。
まったく汗だくなうえ、べたべたする。正直今すぐに風呂に入りたい気分だ。もしくはタバコが欲しいところだ。私は太陽を見ながら思った。
撤収作業を終え我々は整列し聖グロと向かい合った。
「勝者!黒森峰女学院!!」
「「ありがとうございました!!」」
ふっ、これで約束通り私達は「死」ぬ必要は無くなった。礼を終えた後アールグレイ先輩を見た。彼女は少し呆然としていた。まるで自分は何故負けたのか?またはまだ負けた事を認識できていないような顔をしていた。今流石に声をかけるのは不味い。
その後我々は母校へ帰還した。疲れた体を風呂で癒した後、私はコーラを買いに外に出た。そのとき一人の先輩に呼び止められた。
「霧島」
「何でしょうか?」
「隊長がお呼びだ」
「隊長代理ではなく?」
「西住まほ隊長だ」
「了解しました」
「それと」
「何でしょうか?」
「今日の試合見習わせてもらう」
「それは褒められているんでしょうか?」
「さぁあな。じゃあな」
「はい、それと先輩?」
「なんだ?」
「先輩って・・・
」
「何でしょうか隊長?」
「よくやってくれた」
「当然です。それと私だけではなく、隊長代理と副隊長代理にも労いの言葉を」
「勿論だ。しかし今日は皆疲れているからな。明日2人に言うつもりだ」
「私も疲れています。先ほど伝言は伝えました。多分今日か明日には動きます」
「何故だ?」
「彼女達慌ててましたから」
「そうか。なら一緒に現場を捕らえてくれ。話は学園長に通しておく」
「え?」
「何か問題が?」
「あの~私は不要と思います。彼女達だけで十分でしょう?」
「お前はそれでいいのか?」
「いや、私はとく「エリカが影で泣いているのを知っているのか?」うっっ・・」
「多少なら許す」
「分かりました。でも私のわがままも聞いてもらいますよ?仕事の報酬として」
「無茶な事以外なら問題ない」
「なら問題ありません。では今から「腐った枝」の処理を手伝ってきます」
「頼んだ」
「でもいいんですか?」
「なにがだ?」
「丸坊主になりますよ?」
「「腐った枝」があるのと丸坊主・・・どちらが見てくれがいい?」
「まぁ普通は後者ですね」
「そういうことだ。他には?」
「ありません。では」
「ねぇ!!どうする?」
「う・うるさいわね。今考えてるわよ!」
「まさか勝つなんて!!」
「先輩達はなんていってるの?」
「今電話掛けるわよ!!」
「ねぇ?」
「「「「!!!!」」」」
「面白い話してるわね?私も混ぜてくれないかな?どうしたの?何でそんな顔してるの?教えてよ?何がそんなに怖いの?ああ、私の顔かな?うん今すこ~~し怒ってるよ?エリカを散々いじめてくれたよね?泣き顔・・・少し可愛かったけど、エリカをいじめていいのは私だけ!!貴方達には相応の罰を与えるわ」
「待って!!」
「私達は先輩から!!」
「うん、でもその先輩達も今日終わる」
「え?」
「終わるの」
「裏は取ってる。全て風紀委員及び学園長への報告も終わってる。勿論処分も既に決定済・・・OK?」
「ふ・ふざけるな!!」
殴りかかってきた同級生を私は軽く避け、胸倉を掴み強引に地面に叩き付けた。
「ぐはっ!!」
叩き付けられた衝撃で一瞬呼吸困難になった同級生だったが、私には関係ない。
「それはこっちのセリフかな?エリカの制服やジャケットをあんなにして・・・だから私が少しイジメて上げるわ」
私は地面に横たわっている同級生を蹴り上げた。
「ねぇ?サッカーしましょう?私選手でお前ボールな?」
もう一度蹴り上げだ。悲鳴がしたがお構いなしにもう一度、
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
もう一度
不意に肩に手が置かれた。
「やりすぎだ!!落ち着け!!」
私の足元には血塗れの同級生が横たわり、一緒に居たほかの女の子たちは怯えていた。
「これが罰です。では・・・次、お前」
私は怯える同級生を指差した。
「い・いや!!!ごめんなさい!!」
「何がごめんなさい?主語が無いよ?それに今更謝って許されると思ってる?謝って済むの?なら」
私はその女の子に蹴りを一発喰らわした。
「がっ!!」
「あ、ごめんなさい。足が滑った」
続けざまにもう一発蹴飛ばそうとした所で、私は取り押さえられた。
「だから、やりすぎだといっている。余計な仕事を増やすな!!」
「半殺しでも生ぬるい!!」
「霧島!!お前隊長の命令に歯向かうのか?これは多少じゃない!!いい加減にしろ!!」
私とした事が・・・熱くなってしまった。クールにならないとな。
「わかった。残りの仕事を終わらせよう」
「はぁ~、これ以上仕事を増やすなよ?約束だぞ?」
「分かりました。風紀委員長殿」
先ほど私と話したのはこの風紀員長だった。
『はい、それと先輩?』
『なんだ?』
『先輩ってメガネ似合いますね?』
『うるさい』
『でもベターですよね。メガネって。そうそう多分今日辺り何かしらするんじゃないですか?今日は皆疲れてますから』
『そうか。ではこちらも準備をしておく。隊長にはお前から伝えてくれ』
『了解です』
この先輩。戦車道メンバーに潜入し、こいつらが行ったイジメの証拠集めを実施していた。勿論誰がイジメに加担しているかなど、細かいことも全て調査済みだ。そして
「お前の言ったとおり。数人が寮を抜け出した」
「ええ、多分私たちの戦車のある倉庫へ向かったんでしょう」
「では急ぐとしよう」
「ええ」
「ほんとにするの!?」
「当たり前よ。今日、あいつらは全員疲れてるわ。疲れ過ぎて戦車を格納するときに燃料漏れを見つけられず、静電気か何かで出火。あの生意気な1年共をボロかすに攻め上げ、戦車喪失の責任を取らせる。勿論黒森峰を退学と言う形で!!」
「でも大丈夫?」
「大丈夫よ。一年生から連絡があったわ。『皆眠っている。私達が抜け出したことに誰も気付いていない』って。証拠が無いのに私達が攻められるわけが無い」
「そうね。じゃあ早速やっちゃいましょう♪」
私達は3台の戦車の燃料タンクに細工をする為各戦車に向かった。これであの生意気な霧島の泣きっ面を拝める。クソ生意気な小娘が!!霧島の泣きっ面を想像しながら作業を完了させた。そういえばえらく遅い。もう合流しても良い頃なのに・・・
「ねぇ?何してるの?そろそろ火、つけるよ?」
私の声が倉庫に響いただけだった。
「ねぇ!!」
私は少し大きな声を上げたが返事はなかった。仕方ないので他の戦車の状態を見に行った。燃料タンクには細工がされ、燃料が流れていた。途中で怖気づいて帰ったか?ならさっさと火をつけよう。素早く準備を行い、火をつけようとしたところで倉庫の照明が付いた。
「おやおやおや?急な戦車の整備ですか?御精がでますわね。お手伝いしましょうか?先輩?」
聞き覚えのある生意気な声だった。振り返ると風紀委員の紋章を掲げた生徒と霧島が居た。
「ちょっと・・・ねぇ?聞いて!!私達は・・・」
ゆっくり私のほうに向かってくる霧島・・・
「ねぇ!!誤解よ!!そう、一年生から戦車から燃料の匂いが「ガッハッ!!」」
私は蹴飛ばされて後ろに飛んだ。
「うるさい馬糞野郎。よく聞けよ?貴様如きに聞くことなど何も無い。お前の連れも既に拘束している。それに知りたいことは全て知っている。今の出来事も録画している」
私と一緒に居た子達は既に拘束されていた。霧島は私の胸倉を掴み持ち上げた。
「祈れ、お前に出来る事はそれだけだ」
そう言い私は意識を失った。
その後総勢12名のメンバーが自主退学になった。
勿論風紀委員が手を回し、昨晩あった事は闇に葬られた。
誤字脱字、文書校正を毎回ご指摘いただきありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。