亜人ちゃんに伝えたい   作:まむれ

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原作の場面は絡むか絡まないかと言う判断は中々難しいものです


日下部春明と生物教師

「と言う訳で持ってきてもらった!」

「物みたいに言うのやめーや」

 

 それからほぼ間を置かずして小鳥遊さんが後ろに先生を従えて帰ってきた。冴えない雰囲気を漂わせているがよくよく見るとガッシリした体躯、服の上に白衣を纏ってるということは……科学の教師かな?

 その先生は八千草先生と一言二言交わしてベッドへ町さんの体を降ろすと一足先に保健室から出ていってしまった、うん、丁度良いから俺もお外に出よう。

 

「……えーっと、先生?」

「んお、お前は」

「日下部です、一年の」

「あー、新入生か……」

 

 その先生は丁度保健室の前でしゃがんでいて、なんと言うかぐったりしていた。何があったんだ……

 聞けば今まで亜人に会いたかったのだがそれが出来ず、今日立て続けに亜人に会うことが出来て複雑な気分だそうで。やっぱ三人もいるのは珍しいんだな。

 

「と言うことは亜人について詳しいんですか?」

「詳しい、とまでは言わないが色々知っていることにはなるな。日下部は仲良さそうにしていたが」

「入学式に小鳥遊さんに絡まれて友達になりました」

「お、おうそうか……」

 

「その言い方は酷くない?」

「大体、校門のとこで女の子を熱心に観察してたところを止めた方が良いよって言っただけじゃん!」

 

 うぐっ……そ、そんなこともあったようなないような……

 そう言えば彼女欲しいって言って可愛い子探してたのにあれからまったく女の子探ししてないな、うーん佐竹と協力して探そうかなぁ。

 ふと、そこで小鳥遊さんへ視線を向けてみる。可愛いけど、うん。もうちょっと女の子っぽいところがあればなって。

 

「日下部……お前って奴は」

「ちゃうねん先生」

「何がだ……あぁ、おまえらに訊きたかったんだがあんま驚かないのな、亜人、珍しいだろ?」

 

 先生の訝し気と言うよりは純粋に気になったような表情の質問に俺は小鳥遊さんと顔を見合わせ首をかしげる。

 まぁ確かに珍しいけれどね、小鳥遊さんと仲良くなってそのあと町さん見て日下部さん見て亜人(デミ)はもう三人見てるから、慣れたよね。

 

「俺はさっきも言いましたけども町さんとは顔合わせ済んでますし? と言うか、あれ? 小鳥遊さん言ってないの?」

「あ、う~~~ん……そう言えば言ってなかったかも」

「?」

 

「だって、私も亜人だし。吸血鬼(バンパイア)だし」

 

「そ、そうか……まさか三人も亜人と会うとはなぁ……人生どう転ぶかわからんもんだ」

「先生もそう思いますか、吸血鬼(バンパイア)、雪女にデュラハンもいますもんねぇ」

 

 亜人を求めていた先生も二人はともかく三人となると反応に困るらしい、がしがしと頭を掻いて立ち上がって……そこで止まった。

 

「「えっ」」

「えっ?」

 

 あれ? 何かおかしなことを言っただろうか。小鳥遊さんまでこっちを向いて……ん?そう言えば日下部さんから話聞いた時に小鳥遊さんいたっけ……?

 あ、やらかしたと思った時には流石の俺でも血の気が引いた。しかし今更嘘ですって言ってごまかせるわけでもないし、うん、日下部さんごめんね……

 

「あ、その、さっきもう一人女の子いたじゃないですか、雪女の亜人らしくて」

「へー、雪女ちゃんもいるんだ……」

「…………」

「先生、三人って言ってたのに知らなかったってどういうことですか?」

「今日から新しい数学の先生が来たんだがな、それが、亜人なんだよ」

 

 おーまいーがー……。と言うことは何か、この学校に四人も亜人(デミ)が集まったって言うのか?

 先生も心の底から出したと思われる溜息を隠すことなく吐きだし、小鳥遊さんは凄く面白そうに会ってみたーいと興味を抑えきれないご様子。三人ですらうわーって気持ちだったから俺もその気持ちはよくわかる。

 

「二人そろって辛気臭い顔しちゃって」

「いやいや小鳥遊さん、コメントに困るもん四人いるって」

「亜人って意外と会えるんだなって思うとショックと言うかなんと言うか……」

「この先生、昔亜人に会いたかったけど会えなかったらしくて、それでこうなってるんじゃないかな」

 

 小鳥遊さんの目が鋭くなったのを見かねた俺は思わず先生をフォロー。町さんの体を嫌な顔せず持ってきてくれたし亜人(デミ)のことは色々と知ってると言うか会いたいなんて言うくらいだからきっと理解もしてくれるんだろうし、そう言う先生だったなら俺も色々教えてもらいたいと考えている。

 先生も小鳥遊さんの様子に紛らわしい言い方をしたとわかったのか慌てて「亜人は好きだぞ」と付け加えていた。他人とどう関わって、どのように日常を過ごしているのかに興味があるとかなんとか。

 

「そう言えばさっきから気になってたんだけど」

「?」

「センセーって私達みたいなのを亜人って呼ぶでしょ?」

「あぁ」

「私も、と言うか私と日下部君もそれに合わせてたけど」

 

 そこでチラッっと俺に視線を向ける。まあ流石にいきなりデミって言う訳にも行かないしな、最初からずっと亜人って言ってたから知らないんだろう。追々教えればいいかなって。

 どうしろと、と言うニュアンスを込めて肩を軽くあげるとノリが悪いと言いたげに眉を顰めるとそのまましょうがなさそうに続けた。

 

「そもそも言い方が古い!」

「古いのか!?」

「あと可愛くない! 教科書みたいな響きだし!」

「まんまって感じですから、女性の受けはよくなさそうですよね」

「だから若い子とか女子高生の間ではね!」

 

 

亜人(デミ)って言うの!」

 

 

 

「…………へぇ! 亜人(デミ)、か」

 

 決まった! と言う副音声が聞こえてくるのではないかと思わんばかりの決め台詞、先生は興味深そうに小鳥遊さんを見ていて。

 そして俺はと言えば、うん、正直に言おう。見惚れていた。一生の不覚である。

 前のめりの体勢でウィンクをしながら、人差し指を立てて楽しそうに笑って先生にそれを教える小鳥遊さんの姿がとても、可愛かった。

 

 

 




【祝】原作突入
読み返してみても一巻一話のこの場面はひかりちゃんさいかわ場面のひとつやなって 

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