亜人ちゃんに伝えたい   作:まむれ

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ささっと終わらせようと思ったけど誰も描かないのでしばらく続けようと思います(多分きっとめいびー)ので設定を短編から連載に変更
原作突入すっぞおらー


雪女さんは意地っ張り

「――と言うことが昨日あった」

「んで俺を混ぜなかったしよー、俺も話してみたかったんだけどなー」

 

 四月にしては気温が高い今日、雲一つないために太陽も容赦なくいじめにかかってくる。そんな中で体育があるとか殺意を感じるね。

 昨日の報告を面白半分に佐竹に言ってみればおっとこいつからも殺意を送られるとは俺の味方はどこにもいないらしい。

 

「あはは、でもほんと小鳥遊さんだっけ? と仲が良いよねー」

「何て言うかウマが合ったと言うか、楽に話せる」

「の割には小鳥遊『さん』ってつけてんだな」

「外すタイミングを見失っただけなんだ」

 

 いやマジで。毎日話してるし同級生だし。ただなんとなくずっと小鳥遊さん小鳥遊さんって言ってたから改めて小鳥遊なんて言うの恥ずかしいんだよな。

 太田も混じっていよいよ俺と佐竹の三人で固まることが増えたと思う。俺はちょくちょく小鳥遊さんに呼ばれたり行ったりしてるけど。

 だからサッカーのチーム分けも俺らは同じチームで固まっている。太田はボールカットが上手かった。だがその全てを俺に回そうとするのはやめような。途中から俺へのマーク厳しくなってた。

 今は授業の終わり間近で余った時間を先生の好意で休憩となり、それを消化しているとこだ。各々が自由に過ごしている。

 

「デュラハンは不思議だったね。亜人(デミ)の神秘だな」

「一目でわかるもんねー、あの子」

「……」

「って佐竹?」

「あれ」

 

 佐竹の声と指が向けた場所はグラウンドの片隅、ちょうど校舎の影になるその場所に顔を伏せて蹲る生徒がそこにいた。と言うかあれは……もしかして日下部さんか?

 二人とアイコンタクトをすれば頷いたのはほぼ同時、佐竹はともかく太田までもタイミングが完璧なのはちょっと笑う。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 まずは佐竹。俺と太田はそのちょっと後ろに備えて出番待ち。男三人で行くのはちょっと威圧感があるのではとの配慮だ。

 佐竹はなんだかんだちょくちょく日下部さんと話してるというのと佐竹のため的な下心も込みだったりする。最近の佐竹はお熱なんだ。

 

「えっと、うん平気」

「いやでもよ……」

 

 平気と言う割には表情も悪く、立ち上がったは良いがそのままフラフラとして危うい。佐竹も難しい顔してるし、うーんこれやせ我慢なんだろうなぁ。なんで我慢してるのかは知らないけど。

 結局そのまま座り込んだ彼女に佐竹も言わんこっちゃないと言わんばかりに近くにいた別の女子生徒を呼び寄せた。

 

「こいつ体調悪いみてーだから、保健室連れてこーと思うんだが」

「わかったー、日下部さんいこっか」

 

 佐竹もとりあえず着いていくのか日下部さんに手を伸ばした女子生徒の横で腰に手を当てながら二人を見ている。

 と、その女子生徒の手が触れるか触れないかの距離で聞こえてきたのは拒絶の言葉だった。

 

「私!」

「雪女だから、冷やせば、大丈夫だから……」

 

 その声の大きさに思わず俺らまでビックリしてしまう。近くで聞いていた二人も当然一切の動作を止めていた。顔を見合わせ、どうすりゃいいかわからないって感じ。

 と言うか雪女と言うのは……比喩だとしたら面白いが字面まんまに受け取るならば……亜人(デミ)ってことになるが……えー、三人目?

 まあとりあえず助け舟は出しておこう、このまま放置して倒れられても困る。

 

「校庭じゃあ冷やすものもないから、大人しく保健室行こうか。うーんと、動くのは辛そうだから……太田! 担架持ってきて!」

「うん、じゃあひとっ走りで取ってくるよ」

「あの……」

「立ってふらついたんだから大人しくしとけ、日下部の方が正しい」

「それじゃあどっちかわからないよー!」

「男の方な」

 

 まさかの当事者置き去りで話は進む。いや、あるいは当事者が大丈夫と言い張るので放置したが正しいのかもしれない。女子生徒もノリノリな辺りこのクラスは良いクラスに間違いない。

 その後数分して担架を持ってくる太田は「もう教室の場所覚えたし」とドヤ顔で宣ったのでなんとなく担架の後ろの部分を持たせることにした。俺と女子生徒は横、佐竹は前。楽な部分を率先してやるのは当たり前だよねぇ?

 

「えっと……大丈夫ですから……わわっ! 触らないでください!」

「保健室は体調不良の時だけ行く場所じゃねーからいいだろ」

「佐竹はなぁ、中学最後の方はちょくちょく保健室にサボりに行きやがったからな」

「それは、なんて言うか……佐竹は駄目だったんだね」

 

 担架に乗せる役目は女子生徒が背後からの襲撃で無事達成。うわーかるーい!とか体温低いんだねーとか。結構言葉も体も抵抗してたけどどこ吹く風、あれこやつもしかして相当図太いのでは。図らずもクラスメイトの新しい一面を垣間見た瞬間だった。

 しかしそうか、雪女って体温低いのか……夏とか凄い触りたくなる……触らせてもらえないかなぁ?

 

「せんせー日下部さんの体調よろしくないんで保健室連れて行きますねー」

「おう、帰ってくるころには授業が終わってそうだからそのまま着替えていいぞお前ら」

「あざーっす!」

「佐竹は言葉遣いしっかりしろー、態度もよくないし頭冷やせよ!」

「余計なお世話だ! ……お世話です!」

 

 えっちらほっちら、一度乗せてしまえば危ないのを理解してるのか特に抵抗することなく輸送はスムーズに行うことができた、一名様ご案内でーす。




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