亜人ちゃんに伝えたい   作:まむれ

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俺もひかりちゃんとこんな青春を送りたかった
今回も捏造設定クルゾー


【幕間】小鳥遊家は語りたい

「そうだひかり」

「ほ?」

 

 一家四人で夕食を囲みながら、父親の小鳥遊浩二は、レバニラ炒めをつついている娘のひかりに気になっていたことを聞いた。

 

「今日連れてきた男のお友達だけど」

「……へぇ! ひかりが男を連れてきたって!?」

 

 途中まで喋って、浩二は隣にいる人物に台詞を遮られた。

 彼女は一人で小鳥遊一家を養う大黒柱、浩二の伴侶は二人の娘のこととなると、仕事を部下に任せて飛んで帰ってくるくらいには親バカだったりする。

 食い気味の母親にひかりは心底嫌そうに顔を顰め、浩二にふざけるなと言いたげに頬を膨らませて抗議の意を示す。

 

「友達だよーと・も・だ・ち!」

「それでも今まで男友達は連れてこなかっただろう? 今ビックリしてるよ私は」

 

 彼女の言葉は心の底からそう言っていて、実は浩二もそれには同意していた。

 確かにひかりは友人を作るのが上手いが、それにしたってまだ進学して少し経った程度。同性の友人はともかくまさか異性の友人を呼びこむとはと、顔には出さなかったが帰宅を迎えた時は驚いていたのだ。

 

「そう言えば私も気になってたけど、どうしてお姉ちゃんは日下部さんを頼ったのよ」

「んー……マッチーはずっと頭持ってるし、ユッキーはちょっと距離を置きたそうにしてるから、こういう頼み事って出来ないから……」

「でもクラスの女子の友達とかいるでしょ?」

「いや、ちょうどそこに日下部がいたし。まあクラスの女の子に頼むのも悪いかなーって、だから元々日下部を探してたの」

「なるほど、あれ? 日下部さんのこと、呼び捨てにしてるじゃない」

「え? うん、成り行きで!」

 

 ご飯を食べながら双子の娘は会話を咲かせ、それを見て娘の母親は楽しそうに「名前は日下部と言うのかー」と記憶を刻んでいる。

 浩二から見て、今話題に出ている日下部という少年に関しては良い印象を持っている。やはり娘の話に付き合ってくれたことが大きい。ひかりが気を許しているのもあって、ついつい熱く語ってしまったがそれに嫌な顔をせず、それどころか楽しそうに続きを促したのだから。

 

「その日下部、という少年とここまで仲良くなるなんて……惚れたかい?」

「お母さんはすぐそっちに持っていきたがるんだから! 違うって!! ……うーん、私も不思議なんだよねぇ……」

「お姉ちゃんとあんなすぐ話せるようになってるのは私もビックリした」

 

「これがウマが合うってことなのかなって」

 

 なるほど、と浩二は頷く。漠然と呟かれた娘の言葉がすとんと心に落ちてくる。二人の会話を思い返すと、確かにそんな感じだったなと。

 

 このあと我が家の大黒柱が更に根掘り葉掘り聞いてくるため、普段より食事の時間が伸びたことを追記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「と言うことがあったんですが」

「さいですか」

 

 

 小鳥遊家にお邪魔した翌日、ひまりさんが唐突にそんな報告をしてきたので反応に困った次第。

 どうですどうです? と言われましても、あ、そうですかとしか返せない俺を許してほしい。

 

「よかったじゃないですか、姉に『ウマが合う』なんて言われて」

「いやまあ嬉しいけどさぁ……」

「そんな微妙そうな反応してますけど顔ニヤけてるからね」

 

 HAHAHA、nice joke……あ、鏡見せないでください自分でもわかってますからハイ。

 

「けどひまりさん、よく小鳥遊が俺を頼るってわかったよね」

「え? えぇ、町さんと雪さんはお姉ちゃんが言ってた通りですし、クラスの女子よりは日下部さんの方が男って意味でも頼りやすいって姉なら考えるかなと」

「よくそこまで読めるわ……」

「双子ですから」

 

 それでもすげーよ。

 まあ、なんというか、小鳥遊に頼られるってのは嬉しい。小鳥遊の困ってるところを助けるのは自分もやる気が出るし、お手伝いの体で一緒にいられるし。

 

「大丈夫です、私は日下部さんに協力しますから」

「……な、何の話ですかな?」

「そんな露骨な誤魔化しは、自白と同じですよ」

「いやいや」

「姉のこと、好きなんでしょう?」

「しー! 声がでけぇよバカ!!」

 

 一瞬時が止まった。次いで、ここが学校の廊下であることを思い出して、思わず口を手で塞いでしまうまで一秒、どちらかと言うと、そのあとの俺の声の方が大きかったりするけれどそれに気付く余裕などない。

 周囲が何事かと俺達の方へと視線を集め、それで冷静になるまでが二秒、ひまりさんに思いっきり睨まれて腕を叩かれるまでが三秒。いやでもいきなりそんなことを言うひまりさんも悪いと思う。

 

「いきなり何をするんですか!」

「まあ落ち着け、変なことを言うひまりさんが悪いんだ」

「だからって女の子の口を手で塞ぐのもどうかと思いますけど!?」

 

 そこはすまんかったって。

 

「……やっぱりひまりさんには気付かれちゃうか」

「確証はありませんでしたけどね? 今の反応でわかりました」

 

 こいつ今度はカマかけやがったのか。そんなカマにまんまと引っかかって悔しい反面、いっそ開き直ってひまりさんを味方に付けることが出来て、幸運だったとも考えられる。

 悔しさ一割を含ませて「よろしくお願いします」、「えぇもちろんです」と鈴の音のような声が帰ってくる。

 

「ってかいいの? 大好きなお姉ちゃん取られちゃうけど」

「みなさーん! この人がー!」

「俺が悪かったああああ!!!」

 

 最後にちょっとした反撃をしたのは、藪蛇だったようだ。

 

 




小鳥遊家の口調がきちんと再現できるか不安であります
小鳥遊家の母親のキャラが今回の捏造要素です

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