お前らに伝えたいことがある! と意気込んで太田と佐竹に俺、小鳥遊さん好きだわーと伝えたら二人揃って知ってたと綺麗にハモった返しを頂いた。
「流石の俺でもわかんだよなー、バレてんじゃねーか?」
おい冗談は止めてくれ佐竹。
「この間のほら、
ブルータス、太田もか。ははは、冗談だよね? そう問えば二人はまた揃って首を横に振る。嘘やん……
この分だと小鳥遊さんにはバレていないと祈っておくことにして、その妹であるひまりさんは察してると考えていいだろう。ただでさえこの前からかわれたばかりだと言うのに、これからどのような扱いを受けるか身体が震えてくる。
「ま、そんな宣言するってことはよー、もういいのか?」
「へ?」
「いや、最近お前の態度ちょっとおかしかったろ、さっきのことで悩んでんのかと思ったんだが」
あ、あー……そうだね、でもそれについては割り切った。少なくとも露骨なまでの挙動はもうしないだろう。
人間、一つのことの整理がつくと他の事もなんとかなったりするんだなって実感している。
「それに関しても大丈夫。お騒がせしましたって言っておくよ」
「そいつは何よりだぜー、これで俺も相談が出来る。日下部がな、俺の誘いにいつまでも乗ってくれない件についてなんだが」
「あんまりしつこい男は嫌われるよ佐竹……」
「い、いやこれでもな? ちゃんと頻度は考えてるんだぞ?」
この佐竹、俺に気を遣っていたらしい。
それを仇で返すような気がして悪いけど、そこは太田に同意しよう。頻度を考えてるって言ったけど、何度も誘えばそれは鬱陶しく感じるんじゃないかな?
それとなく言ってみれば、そうなのかとがっくしと肩を落とす。そこまで落胆されると言ったほうが悪いみたいじゃないか。
「佐竹、日下部さんは悪い人じゃないから」
「それは知ってんぞ」
「あっはい」
間髪入れずに首肯するその姿は感動すら覚えた。
と、昨日テツ先生からアドバイスをもらったそれは何も小鳥遊さんだけではない、
「佐竹よー、もしかしたら俺らの遊びには気軽に応えられない悩みとかあるかもしれないだろー? だからあんまりやるのはやめとけって」
「……」
「なんだよ」
「お前ってそんなキャラだったっけ?」
「そんなに、俺の拳が欲しいのか……」
「悪かった」
まあなんだ、俺が言いたいのは決して断りたくて断ってる訳じゃないよってことだ。多分、きっと。本当に嫌ならキッパリと断るタイプだろう、日下部さんは。
その理由まで推し量るのは流石に難しいが、ひょっとしたらひょっとするかもぐらいの確率で
そんなことを丁寧に言うと、考えていなかったと頭を抱えていた。
「俺、嫌われてないよなー?」
「まあ会話はしてくれてるし大丈夫じゃないかな」
「うーん、佐竹に習う訳じゃないけど、春明本当にどうしたの?」
「太田ぁ! ……いやな、テツ先生に色々相談したらそういう風なこと言われたんだよ」
凄くためになることだった、間違いないね。あの話を聞かなければ、きっとどこかで致命的な間違いをしてた気がしてならない。悪気のない一言だからこそ深くその人に傷を与えることだってあるのだから。
「じゃあ何で悩んでるのか考えようぜ? 確か日下部って雪女だよな?」
「雪……うーん、冷たい、寒い?」
「一応漫画とかだとこう、ぶわあああって口とか手から吹雪出してるけど……」
「日下部になら俺は凍らされてもいいかもしれねーな」
ああでもないこうでもない三人で考えても答えは中々出てこない。遂には佐竹が世迷言を言うまでで、何の話をしているかわからなくなる。
とりあえず佐竹の頭を綺麗な音がなるくらいに叩いておくと、抗議の声を無視しつつ黙り込む。
「やっぱ何か体質の問題じゃないかなぁ? それ以外に考えられないよ」
「ひょっとしたら男だけってのが苦手なのかもしんねーな、次は小鳥遊とか一緒に誘ってみっかー」
やがてほぼ同時に二人が声をあげ、俺はその手があったなと佐竹にしては冴えた考えに珍しく、あいつを褒めた。
うむ、佐竹は誘う時に他に誰にも誘ってなかったもんなあ……少なくとも俺や太田のどちらかか両方を連れていた。俺らの見えないところで誘ってたりはしてたかもしれないけれど、しかし頻度は抑えていると言ってたしあまりそれはなさそうだ。
「良く思いついた、お前の頭は足りないと常日頃から思っていたけどこういう時はほんと相手のことを考えて良い作戦を出すから憎めないな」
「褒めてるけどさらりと馬鹿にしてるのは俺でもわかるからな、拳が欲しいなら素直に言えよ」
「ま、まあまあ……」
テツ先生へ相談した翌日、その日の話がこれである。これ以降佐竹のお誘いはピタリと止み、小鳥遊さんが佐竹を心配し始めるのだが、それは別のお話だ。