亜人ちゃんに伝えたい   作:まむれ

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このネタは結構書きたかったので(作者にしては大分)筆が進みました


デミちゃんは誰が可愛いのか

 亜人(デミ)が四人もいる、と言うこの学校。

 そろそろ学校に慣れてきた今ではその四人へと目を向け始め、ちょくちょくではあるが話題に上がり始める頃合いだ。俺らも先日佐藤先生に関して話していたし、ちょっと耳を傾ければ一日一回は誰かの名前を聞くこともある。四人は容姿も良いので特に男子は目が離せないのではないだろうか。

 

亜人(デミ)ってみんなあんなに顔整ってんのかなー」

「まあ整っててもおかしくはないね……」

 

 ちなみに今日も三人で集まっては話題は亜人(デミ)のことである。しょうがないね、話題性に富んでるし。

 

「いや~……亜人(デミ)と言えば町もいいよな~~!! ボーイッシュな見た目と裏腹に乙女! 頭に目が行きがちだけどスタイルもいい!」

「うんうんわかる」 

 

 毎日喋れば話題もなくなるだろう。だがそれは少し先の話であり今日はまだその時ではない、何が言いたいかと言うと誰が一番可愛いかと言う話になった。

 こういう時の佐竹はとても生き生きとしている。虚空へと視線を走らせ、手を握ったり解いたりしては大げさな身振りと共に台詞を吐く。これを別のところで活かせればなあと思わなくもない。

 

「でもやっぱり佐藤ちゃんかなー! 隠れファン急増中! 乱れた姿を是非拝んでみたい!」

「そっちもいいよねー」

 

 

 あとはこう、もうちょっと欲望を抑えてくれればいいのだけど。とは言え健全な男子高校生である俺らも口には出さないだけで佐竹の言うことに否定を唱えることはできない。すっげーわかるからだ。佐藤先生を佐藤ちゃんなどと呼んでるのはこの際置いといて、ちょっと触れ合っただけであの有様なのだからいやぁほんとその先となるとどうなるか想像もつかない。

 

「さっきから頷いてるだけだけど太田はどうなんだよ」

「え、僕?」

「そーそー、俺や春明ばっか語らせといておめーは全然言わねーじゃん」

「うーん、でもほんとに今はそんな二人を喜ばせる話はもってないよ、なんせ女子とあんまり話せてないしね、二人が早いだけ」

 

 ちょくちょく日下部さんを運んだ時に一緒だった女子生徒と話してるのを見かけてるんだからな、それだけで俺らが喜ぶ話になるんだぞ。

 もちろん俺はそれを口にすることはしない。ちょっと話してるからってすぐに恋愛ごとに結び付けるのは小学生のすることだからだ。この間そんな小学生じみた真似を俺はされたけどな。

 

「ねーねー何の話してんのー?」

 

 おっと、渦中の亜人(デミ)である一人の御登場だ。小鳥遊さんは楽しそうに俺達の顔を見て、ほらほら話しちゃいなよーと肘でつついてくる。

 

「ん? あぁ学校にいる亜人(デミ)の魅力について話してたところだ」

「ほ~~~、ねぇねぇ! わたしはわたしは~~~!?」

 

 多分この瞬間の三人の意見は一致したと思う。両手でピースしてそれを横向けに構えながら前かがみで返事を催促するその様は俺だってうわぁ……と思うくらいなのだから他二人は推さずとも知れる。

 見ろ、佐竹の先ほどまでの輝いていた目が今ではだるそうに鈍くなっているではないか。手をシッシッと追い払う様に振るうと、

 

「ごめん、話逸らさないでくれる? 今真面目な話してるからよ、空気読んで?」

「話題変えたつもりはないんだけど……」

 

 思わず同情する程ばっさりと切り捨てた。うん、どんまい。

 さきほどまでの勢いはどこへやら、肩を落とした小鳥遊さんだけどそのまま返すのもアレなのでちょっとくらいフォローはしておこうと思う。

 

「まあまあ佐竹、小鳥遊さんだって充分可愛いじゃあないか」

「お、おう……」

 

 こいつはいきなり何を言い出すんだと言わんばかりの佐竹の反応は軽くスルーしておく。一度口を開けば、するすると言葉が出てくるのが自分にとっても意外だった。

 

「四人の中で一番明るい性格、笑うと少し見える八重歯、金の糸とも言うべきさらさらな髪、他三人に劣らないんじゃないか、な、あ……?」

「…………」

 

 うん、こういう時どんな顔をすればいいかわからないの。

 太田も佐竹も溜息ついてるし、小鳥遊さんは固まってるし、え? 何? 俺何もしてないよね? ちょっと可哀想だったから思った事言っただけだよ?

 

「さ」

「?」

「さ、さすがにそこまで面と向かって褒められると照れる、かなあ……」

 

 顔はこちらに向けているものの制服の袖で口元を隠し、顔を仄かに赤くしながら視線だけ別方向へと向ける小鳥遊さんの反応に、うん? と首を捻りながら自分の発言を顧みる。

 …………おっとぉ確かに思ってたことを述べただけだけどべた褒めだぁ、これは周囲に人がいる時に言う事じゃなかったなー……なかったね!!

 

「い、いやすまん! 他意はなかったんだ!」

「他意があった方が私としては、うん……恥ずかしくなくて良かったんだけど!」

「じゃあ他意があったってことにしといてくれ! くそっ! そこは小突いてくるとこだろ!!」

 

 何故フォローしただけでこんなに恥ずかしい思いをしなければならないのか、これがわからない。 

 ちらりと二人を見れば佐竹も太田も生暖かい目をしてるし、こいつらほんと他人事だからっていいよな。元はと言えば亜人(デミ)で誰が一番可愛いかなんて話しだした佐竹のせいだろうがよ……覚えてろよマジで。

 

「はいはいラブコメはそこまでにしようねー」

「「してない!!!」」

「そろそろ授業始まっちゃうから、戻ろう」

 

 いやこれもうしばらく小鳥遊さんの顔見れないでしょ。向こうもこっち見ようとしない――あ、今こっち見た。そうすると俺も小鳥遊さんを見ていた関係上視線は交錯する訳で。小鳥遊さんは一瞬だけ交錯した視線を慌てて地面へと落としていた。

 いやほんとなんでこうなったんだろうな……わからないわ、しばらく小鳥遊さんとまともに話せなさそうだ。

 

 

 

 

 

 




スカイプで画面共有されて自分の描いたものを読まれるというとても恥ずかしい思いをしました

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