都内某所
「何だって先生はこんな奴らを此処に連れてきたんだ……」
1人の男が忌々しげに呟く、それを聞いた別の男がその言葉を鼻で笑いながらいう。
「それはこっちのセリフさ、連合だかなんだか知らないけどオレ達の邪魔はしないでくれよ?史上最強の弟子を殺すのはオレたちYOMIの仕事だ、希望の象徴とか言われてる奴は勝手にしてくれても構わないけどね」
「チッ……一々癪に障る言い方だ……」
「おっ、殺る気かい?別にオレは構わないけど?」
一触即発の雰囲気が部屋を包む。
敵と闇、交わるはずのなかった者達が道を同じくする。
敵と闇の生徒と弟子もまた道を同じくする。
それはきっと、誰にとってもいいことでは無いのだろう。
◇
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!人殺しー!」
桜の花が咲いた道を少年が走っている。
「あっ、岬越寺先生おはようございます!!」
「やぁおはよう」
バレー部の女の子達がすれ違いざまに挨拶をかわしていく。
その姿を見送った後、男は手に持った縄を振りかざした。
「ケンイチ君!君は何故ペースを落としてるのだね!!さぁもっと早く!風のように走りたまえ!」
「ぎぃぃええぇぇぇぇぇぇ!!!!」
少年、白浜兼一がこうなったのは遡ること数週間前だ。
◇
「え、僕が雄英に……ですか?」
僕は美羽さんに呼ばれて師匠たちが集まる広間に来ていた。
お客さんが来ているようだけどなんの用かと聞けば、何と僕を雄英に推薦受験させたいということだったのだ。
思わず聞き返してしまったのは仕方ないだろう。
「うむ……私としては君はまだ基礎工事を行っている所であるから我々の手から離れるのは認めがたいことではあるが長老としては個性持ちの子供達と手合わせを行っていくのも君の成長に繋がるとのお考えなのだ」
「ほぇ〜……いや!まま待ってくださいよ!受けるも何も僕は無個性ですよ!?どうやったって個性持ちの子達に勝てるわけないじゃないですか!?」
「おいケンイチぃ……お前のそのやる前から諦めるくせいい加減直せ……なんたってお前は俺達の弟子なんだぜ?個性持ちの1人や2人どうってことないだろ」
「さ、逆鬼師匠まで!?」
「ケンちゃん……」
「長老……僕、無理ですよ……」
「大丈夫じゃケンちゃん、お主は充分強くなっておる。それに何時だってケンちゃんの闘いは自分より強い者達との闘いだった。ケンちゃん……お主は儂ら『梁山泊』の弟子なんじゃよ?怖がることなんてないんじゃよ」
「…………分かりました!!僕は雄英を受けてみます!」
「よく言った!!皆聞いたのう!」
「はい長老、ケンイチ君、君の選んだ道は辛く険しい道だ!だからこそここにある作戦を実行に移すとする!!」
「名付けて!!雄英なんか怖くない!!地獄の訓練週間!!を始める!!」