問題児のヒーローアカデミア   作:わたくしメガネ

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ずいぶん遅くなってしまいました。申し訳ございません。
次の話もそろそろ書き上がるので、近いうちに出します。

今回少し原作と展開が異なりますのでご注意ください。


8話

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……、はぁ………っ。」

 

爆豪に居場所がバレてしまわないように、荒くなっていた息を落ち着かせる。

 

その間もいつ近くに寄ってきても逃げられるように気を張っておかなければならない。

 

周りを見渡す。爆豪はまだ近くには来ていないらしい。緑谷はほっと胸をなで下ろした。

 

 

(麗日さんはガン無視で僕を狙い撃ち…、やっぱりだ。

尖兵を出すなら機動力のいい飯田くんのほうがいいし、彼ならそれをわかっているはず。多分これはかっちゃんの暴走で、2人は連携がとれてないってことだ。

そもそもあの2人との正面衝突が僕らにとって勝ち筋の一番薄いパターン。

僕が麗日さんと行ったらその展開になるし、2人でここに残っても時間切れが怖い。

これでいい!後は麗日さんが「核」と飯田くんを捕捉し次第、僕も向かって2対1。これが勝ち筋だ!

……僕がかっちゃんに勝つっていうのが前提の話だけど、大丈夫……。掌にさえ気をつければいける……!)

 

 

 

 

 

その頃。

 

 

(発見!あとはデクくんが来るまで見つかんないように…)

 

麗日は核を見張る飯田を発見していた。

柱の影に身を潜ませて様子を伺う。

 

「……爆豪くんはナチュラルに悪いが今回の訓練に関しては的を射ているわけだ…。ふむ…。ならば僕も敵に徹するべきなのだ…。そうだ…、これも飯田家の名に恥じぬ立派な人間になる為の試練!なりきれ!ヒーローになるため悪に染まれ!」

 

 

「俺はァ…、至極悪いぞぉおおお!」

 

「ブフッ!!!!」

 

 

麗日は耐えきれなかった。

 

 

「来たか麗日くん!君が一人で来ることは爆豪くんが飛び出した時点で判っていた!触れた対象を浮かせてしまう個性…。だから先程、君対策でこのフロアの物は全て片付けておいたぞ!」

 

「これで君は小細工できない!ぬかったなヒーロー!!!フハハハハ!!!!」

 

「様になってる……!!」

 

 

麗日は歯を食いしばった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デクくん!』

 

身を潜める緑谷に麗日からの通信が届く。

 

「麗日さん!どう!?」

 

『ごめん!飯田くんに見つかっちゃった!』

 

「場所は!?」

 

『5階の真ん中フロア!!』

 

(ほぼ真上か…!)

 

緑谷は目的地との位置関係を瞬時に把握し、現状を打破できる策を必死に練る。

 

「もう時間もそんなにないはず!タイムアップは敵チームの勝ちだ!」

 

ガゴン

 

「!!!」

 

しまった。

緑谷は心の中で舌を打つ。

 

音のした方へ振り向けば、そこには爆豪が立っていた。

 

「溜まった…。」

 

呟いた爆豪は、視線をゆっくりと右腕から緑谷に移した。

 

「何で使わねぇ。舐めてんのかデク…。」

 

「かっちゃん…!」

 

(やるしかない……!)

 

見つかってしまった以上、仕方が無いと緑谷は腹を括る。

そして自分を焚きつけるように爆豪を睨みつけた。

 

「もう…、君を恐がるもんか!!」

 

 

 

 

「てめぇのストーキングならもう知ってんだろうがよぉ。」

 

爆豪は緑谷の言葉に反応しなかった。

そして、右腕に装着している手榴弾型の籠手を見せつけるように掲げると、狂気的な笑みを浮かべながらペラペラと自分の個性とコスチュームについて説明しだした。

 

「俺の爆破は掌の汗腺からニトロみてぇなもん出して爆発させてる。」

 

「……?」

 

緑谷は、爆豪が何故この状況下で今更そんなことを言うのかが理解できなかった。

 

 

 

しかし、モニタールームから2人のやり取りを見聞きしていたオールマイトがとある可能性に辿り着く。

 

「要望通りの設計なら、この籠手はそいつを内部に溜めて…!!」

 

『爆豪少年ストップだ!殺す気か』

 

モニタールームから無線で爆豪に制止を呼びかける。しかし爆豪はその忠告を聞かなかった。

 

「当たんなきゃ死なねぇよ!」

 

 

 

爆豪は掲げた籠手のピンに指をかけ

 

 

 

引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのとき、とてつもない爆発が大地を揺るがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ!!!」

 

「授業だぞコレ!」

 

「緑谷少年!!」

 

「おい緑谷大丈夫かよ!?」

 

 

モニタールームにも伝わるその振動と轟音。

クラスメイトたちは、そのとてつもない攻撃を向けられた緑谷の安否を確かめたくモニターに齧り付く。

 

そんな騒ぎを、逆廻十六夜は眉を顰めながら見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッ ハッ ハッ ハッ

 

「そんなん…ありかよ…!」

 

緑谷は尻餅をつき、荒くなった呼吸を抑えることができない。

 

周りを見渡せば、そこらかしこに瓦礫の山が。

後ろを振り返れば、分厚いコンクリートの壁に大穴が空いていた。

この惨状が、先ほどの攻撃のとんでもない威力を物語っている。

 

 

(なん…だこの威力は!?もしこれが直撃してたら……!!!)

 

 

「個性使えよデク。全力のてめぇを、ねじふせる。」

 

 

 

 

 

 

 

「ハハ…すげぇ……!」

 

最大火力の攻撃の威力を思い知り、放心気味になる爆豪。

 

緑谷は呆然とするものの、すぐに現状打破のために頭を回し、抜けた腰に必死に力を込める。

 

 

「どうしたデク!まだ動けんだろ!?」

 

「……っ、麗日さん!状況は!?」

 

麗日は応えない。

 

「無視かよすっげぇな…!!」

 

 

爆豪に余裕がなくなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モニタールームにて。

 

「先生止めた方がいいって!爆豪あいつ相当クレイジーだぜ殺しちまう!!」

 

モニター越しでも爆豪の様子が尋常ではないことは伝わり、生徒の切島が必死にオールマイトに訴えかけていた。

 

「いや……。」

 

しかし、オールマイトの頭の中で爆豪の発言の一部分が引っかかった。

 

『中断されない程度にぶっ飛ばしてやらァ!』

『当たんなきゃ死なねぇよ!』

 

(妙な部分で冷静ではある…。みみっちいというか何というか…。とにかく……。)

 

 

『爆豪少年。次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする。屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く!ヒーローとしても敵としても愚策だ!大幅減点だからな!』

 

オールマイトは無線機のマイクに語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああ!!」

 

オールマイトからの忠告に、さらに苛立った様子の爆豪には余裕が少しも感じられない。

 

「窓側柱に!じゃあまた!」

 

対して緑谷は麗日へ必要事項の連絡を手短に済ました。

 

「じゃあもう殴り合いだ!!」

 

BOOM!!!!

 

しびれを切らして爆豪が、爆破の勢いを利用して突っ込んでいく。余裕がないせいか、緑谷が麗日に指示を出していたことに気がついていない。

 

(だめだ避けれない!)

 

攻撃を回避できないことを悟った緑谷は、反撃するタイミングを窺う。しかし爆豪はそれを見越して直前に爆破を起こして回避し、背後にまわり、また爆破する。それは緑谷の背中に命中した。

 

「ぎ!」

 

緑谷は苦しげにうめき声をあげる。

 

 

以上のやり取りをモニタールームで見ていた轟という少年が感心したように呟いた。

 

「目眩しを兼ねた爆破で起動変更。そして即座にもう一発…。考えるタイプには見えねぇが意外と繊細だな。」

 

「慣性を殺しつつ有効打を加えるには左右の爆発力を微調整しなければなりませんしね。」

 

便乗して八百万が解説をすると、他の男子生徒が才能マンだ、と呟いた。

 

そんな会話をしている間にも爆豪の攻撃は続いていく。緑谷に考える隙を与えないつもりだ。

 

「リンチだよコレ!テープを巻きつければ捕らえたことになるのに!」

 

「ヒーローの所業に非ず…」

 

「緑谷もすげぇと思ったけどよ…。戦闘能力に於いて爆豪は間違いなくセンスの塊だぜ。」

 

 

クラスメイトたちは、あまりの惨状にモニターから目を離せない。

しかし逆廻十六夜だけは、モニターではなく、オールマイトの様子を注視している。

 

それはまるで、オールマイトを品定めをしているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

当のオールマイトは小さいマイクを大きな手で強く握りながら、緑谷たちを見つめていた。

 

 

 

 

 

「てめぇは俺より下だ!!」

 

「ゔッ!!」

 

「なんで個性使わねぇんだ!俺を舐めてんのか!?ガキの頃からずっと!そうやって!!」

 

「違うよ。」

 

「俺を舐めてたんかてめぇはぁ!!!!」

 

「違うよ!」

 

 

気がつけば逆廻は2人の言葉を口に出すことはやめていて、今2人の会話を耳で聞き取ることができるのはオールマイトただ1人。

 

オールマイトは、緑谷の「ヒーローになる」こと以外で初めて見せる激情に、止めることを躊躇していた。

 

(きっと君の見据える未来に、これは必須なんだろう……!)

 

「君が凄い人だから勝ちたいんじゃないか!!!勝って超えたいんじゃないかバカヤロー!!!」

 

「その面やめろやくそナード!!!」

 

(止めたくない。止めてあげたくない……!!!)

 

 

オールマイトは心を決めた。

 

 

 

 

 

『双方止まりなさい!!!!以上をもってこの戦闘を中止とする!!!!』

 

 

 

 

「「「 !!!! 」」」

 

オールマイトの宣言に、モニタールームにいるクラスメイトたちは驚きながらも安心する。

 

あのまま続けば少なくとも2人のどちらかが大怪我をしていた。そんな確信がこの場にいる誰もが持てるほど、あの2人の最後の一発には遠慮がなかった。

 

 

 

 

拳を交える寸前で止められた爆豪は怒り狂った。無線で不満をぶつける。

 

「どういうことだオールマイトぉ!アレは撃ってねぇだろうがあ!!!!」

 

『これ以上続けるのは危険だと判断したまでさ。さぁ講評の時間だ。はやく戻ってきなさい。』

 

「ッソがぁ!!」

 

BOOOM!!!!

 

苛立ちを隠せずに瓦礫の山を爆破して、爆豪はその場を立ち去る。

 

ほっとした表情を浮かべて後をついて行く緑谷も、どこか物足りない様子だった。

 

オールマイトはそんな自分の弟子を見て、すまないと心の中で謝ると無線機を置き、チラリと後方を伺った。

 

 

(…私は君以外にも、導かなければならない少年がいるのだ。)

 

 

オールマイトの後方にいるのは多くの生徒たち。

そしてその視線の先には……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程まで訓練を行っていた4人がモニタールームに戻ってくると、オールマイトは4人をみんなの前に立たせた。

 

「さあみんなお待ちかねの講評の時間だ!さて諸君!今戦でベストを尽くした生徒は誰だかわかるかなー?」

 

はい、オールマイトの質問に真っ先と挙手したのは八百万という女子生徒だった。

 

「はい!じゃあ八百万少女!」

 

「はい、飯田さんですわ。彼が1番状況設定に順応していました。」

 

八百万はすました顔で簡潔に述べる。

 

「飯田少年も固すぎる節はあったりする訳だが、正解!流石だ!」

 

「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので!」

 

オールマイトの言葉に、八百万は胸を張って応えた。

八百万はもう少し今戦について物申したい様子だが、この授業において講評することを義務付けられている生徒がいるため、そのあと特に何か言うわけでもなく引き下がった。

 

「では全体の講評を逆廻少年!お願いできるかな?」

 

その講評をする逆廻十六夜は愉快そうに笑みを浮かべると、つらつらと今戦の講評を語り始めた。

 

「まぁ色々とあるが…。まず今回の訓練、勝負がついたとしたらヒーローチームの勝ちだったと思う。」

 

いきなりの始まりに生徒たちは戸惑う。

 

「……あ?」

 

爆豪は文句ありげに逆廻を睨みつける。

 

「ええと……、根拠は?」

 

爆豪の苛立ちように少しばかり怯えながらも、生徒が逆廻に問う。

その質問を受け、逆廻は笑みを深めると、緑谷を見た。

 

「お前……、最後の一発。かっちゃんにぶつける気なかっただろ?」

 

「「!!!」」

 

麗日と緑谷が目を見開く。

 

「緑谷は最後、かっちゃんではなく真上に撃とうとしていた。チームとしての勝利を優先してな。」

 

今度は爆豪が目を見開く番だった。

 

「作戦としては、まず緑谷が真下から核のある部屋に大穴を開ける。そして崩れた建物を利用して麗日が飯田を翻弄、核を回収っつうとこか?」

 

ヒーローチームの2人は目を見開いたまま顔を見合わせる。

逆廻はその様子をみてニヤニヤとしながら、順を追って説明を続けた。

 

「緑谷は麗日に窓側の柱に行くように指示を出し、自身も戦闘のなかで、逃げるように見せつつ、所定の位置までかっちゃんを誘導していた。おそらく止められなければ作戦は成功はしただろ。何ともお粗末な作戦だったが。」

 

ヤハハ!とふんぞり返って豪快に笑う逆廻。

 

作戦を見破られてた緑谷たちは苦笑いした。

 

「そんなにバレバレだった……?」

 

気まずそうに頬を掻く。

それに応えたのは上鳴という男子生徒だった。

 

「アイツが普通じゃないんだよ!安心しろオレ達はちっとも気が付かなかったぜ?」

 

たぶん、アイツも。

 

最後の一言を耳元で呟かれた緑谷は「アイツ?」と首を傾げる。

 

小さく指を刺された先には、爆豪が。

 

爆豪は俯き歯を食いしばり、拳を握っていた。

 

 

「っ、かっ」

 

「なら、なんでベストは飯田なんだ?勝つはずだったヒーローチームの2人じゃないのか?」

 

緑谷は爆豪の様子に話しかけようとするが、切島の言葉に遮られてしまう。

 

「まずかっちゃんだが、……言うまでもないな!私怨丸出しの独断行動と屋内での大規模攻撃という愚策。 戦闘自体のセンスはあるものだったが、状況設定からしたら最悪の行動ばかり!まあ頭の悪い敵っていう設定だったらぴったりだったかもな!」

 

ヤハハ!

 

爆豪は俯いたまま何の反応もしなかった。

緑谷とオールマイトは爆豪の様子を気にしていたが、逆廻はお構い無しに続ける。

 

「緑谷も苦肉の策だったんだろうが、核のある屋内で大規模攻撃なんて本当にその状況にいたらできないだろ。あの作戦は訓練であるからできる反則みたいなもんだ。」

 

「そして、緑谷があんな無茶な作戦に出たのは麗日が飯田に見つかってしまったから。麗日が気を緩めさえしなければもう少し真っ当な勝ち方もできたはずだ。」

 

ごもっともな指摘にヒーローチームの2人は身を引き締める。

 

「対して飯田はチームメイトが暴走しているにも関わらず相手への対策をこなし、核の争奪をきちんと想定していた。つまり、1番状況設定に順応していたって訳だ。どうだオールマイト。90点は固いだろ?」

 

ヤハハ!とまた豪快に笑う逆廻。

頭がいいのは午前で知っていたが、まさか観察眼もここまでとは。とクラスメイトたちは開いた口が塞がらなかった。

 

 

逆廻は爆豪をチラリと横目に見た。

 

(爆豪勝己。自尊心の塊。膨れきった心ほど脆いものはねぇな……。)

 

 

爆豪は未だ俯いたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

建物の損傷が激しすぎるため、続きは場所を移して行われた。

 

第二戦

ヒーローチーム

轟&障子

 

敵チーム

葉隠&尾白

 

 

 

 

 

結果からして、第二戦は圧倒的だった。

轟が建物ごと凍らせ敵チームの動きを封じた。

 

「一瞬で核兵器にダメージを与えず敵を拘束。文句ねぇな。」

 

逆廻もこの褒めようだ。

 

その後も、順調に訓練は行われていった。

 

 

 

 

「お疲れさん!みんな大した怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!初めてにしてはみんな上出来だったぜ!じゃあ着替えて教室に戻るんだ!」

 

 

 

爆豪はその間、一言もしゃべらなかった。

 

緑谷は、ただそのことが気がかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まってかっちゃん!」

 

授業が終わったあと、緑谷は、話しかける間もなく教室を出た爆豪を追った。

 

「……ああ?」

 

無視されるかと思ったが反応してもらえたことに安堵しつつ、緑谷はまだ、話すべきか話さないべきか悩んでいた。

 

まだ母にも言っていない秘密。

 

「……こ、これだけは君に言わなきゃ行けないと、思って……。」

 

「……。」

 

「……騙してたわけじゃないんだ。これは、人から授かった個性なんだ。」

 

「……!?」

 

「誰からから絶対に言えない!…でも、本当なんだ!まだろくに扱えないし、全然モノに出来てない状態の借り物で…!だから、使わずに勝とうとしたのに、結局最後はそれに頼ろうとした!僕は、まだまだで、だから……!」

 

「いつかちゃんと自分のモノにして、君を超えるよ。」

 

 

フラリ、と、爆豪はふりかえった。

 

 

「……なんだそりゃ?借り物…?訳わかんねえこと言いやがって…。これ以上コケにしてどうするつもりなんだぁ…?あぁ!?」

 

「だからなんだ!?今日オレはてめぇに勝てなかった!そんだけだろうが……!!」

 

「氷の奴みて敵わねぇんじゃねぇかって思っちまった!ポニーテールの奴の言うことにも納得しちまった!……逆廻のクソ野郎には遠く及ばねぇって理解しちまった…!!!!クソ!クソが!!!てめぇもだデク!!」

 

「こっからだ!俺は!……いいか!?俺はココで!一番になってやる…!!!!」

 

 

爆豪の目には薄らと涙が浮かんでいた。

 

 

「次は完膚なきまでに勝ってみせる!」

 

 

 

爆豪は最後にそう言い放つと、ゆっくりと、しっかりと歩いていった。

 

 

緑谷は去っていく爆豪を後ろから見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、その2人を物陰から、身を隠すように伺う影が。

 

(なんつータイミングだこりゃ。)

 

逆廻十六夜である。

彼は今、不本意ながらに聞いてしまった会話から、自身が突き止めようとしていた真実に辿り着く。

 

"緑谷出久の個性について"

 

("人から授かった"ねぇ……。やっぱりそういうことか。)

 

案外と呆気なく終わったな。

 

逆廻はため息をつく。

彼は決して"緑谷出久の個性"について調べるために、物陰から2人の様子を伺い見ていた訳ではない。たまたま通りかかったところで、緑谷と爆豪が言い合いを始めてしまっただけなのだ。…ただし、逆廻十六夜の五感は常人のそれを遥かに凌駕するので、例え逆廻が教室にいようと会話はだだ漏れだった。

 

気まずい状況に出くわした逆廻十六夜は珍しく空気を読んだ。ちゃんと空気を読めて周りに合わせることもできる男なのだ。いつもはやらないだけで。

 

流石の逆廻でもあの空気をぶち壊すのには気が引けたらしい。

どうしたものかと悩む前に緑谷の暴露大会がはじまり、結果として2人の会話を盗み聞きすることになってしまった。

 

 

緑谷出久の個性は人から授かったものである

 

 

本人の口から出たこの確かな情報は、逆廻十六夜を真実へたどり着かせるのには十分だった。

 

(なるほどねぇ…。さあて、どうしたものか。)

 

 

逆廻はとりあえずこの場から離れるために廊下を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

この後ものすごいスピードで爆豪のほうへ向かっていくオールマイトはあえて止めないでおいた。

 

 

 

 

 

「爆豪少年!!!」

 

「言っておくが自尊心とはとても大事なものなんだ!君は間違いなくプロになれる能力を持っている!まだまだこれから……」

 

「離してくれオールマイト。…言われなくても!!俺はアンタをも超えるヒーローになる!!!」

 

「あ、うん……。(立ち直ってた…!)」

 

 

 

 

 

 

オールマイトの登場により、逆廻十六夜が珍しく守った空気感がぐちゃぐちゃになったのは言うまでもないことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、とあるバーにて。

 

 

 

「見たか?これ。あのオールマイトが雄英で教師だってさ!」

 

「なぁ……、どうなると思う?」

 

「あの"平和の象徴"が殺されたらさぁ…!」

 

 

 

 

この数日後、緑谷たちは知ることになる。

 

真に賢しい、敵の恐怖を。

 

 

 

 

 

 




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