問題児のヒーローアカデミア   作:わたくしメガネ

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1話

 

「出久!ティッシュもった?」

 

「うん」

 

「ハンカチは?ハンカチ!ケチーフ!」

 

「持ったよ!時間がないんだ」

 

「出久!」

 

「もう!なに!?」

 

「.........超、かっこいいよ」

 

 

この個性が溢れた世界で、無個性で生まれた僕。

ずっとヒーローに憧れて、でも諦めかけたとき

オールマイトに言ってもらえた言葉

 

『きみは、ヒーローになれる!』

 

 

あの言葉が、僕の人生を大きく変えた

ただ夢をみるだけだった僕に、夢を叶える力をくれた

 

『この力はきみが勝ち取ったものだ』

 

 

そして今日

 

「...いってきます!」

 

僕は、夢への第一歩を踏みだすんだ

 

 

 

 

▧ ▦ ▤ ▥ ▧ ▦ ▤ ▥ ▧ ▦ ▤ ▥ ▧ ▦ ▤ ▥

 

 

 

 

雄英高校ヒーロー科への入学倍率が300を超えるのは

推薦入学者4名を除き、一般入試定員は36人

18人ずつで、2クラスしかないからだ

しかし今年は特例で、推薦入学者が5人だったらしい

優秀な人が多かったのかな

 

 

 

2クラス中のA組に振り分けられた僕は広すぎる校舎の中を走りまわり、ようやく教室に辿りついた

扉がデカすぎるのは気になったが、バリアフリー的な何かがあるのだろう

 

(うわあぁ...!)

 

この扉の向こうに、入試を勝ち抜いたエリートたちがいる

 

そう思うと体が震えたが、その不安を必死に振り払った

 

(かっちゃんとか、メガネのこわい人...いなきゃいいなぁ)

 

 

ガラッ!

 

 

「机に足をかけるな!」

 

「あ゙あ゙?」

 

「雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか」

 

「思わねぇよ!てめぇどこ中だよあ゙あ゙?」

 

 

あー、まさかのツートップだ

 

 

「...俺は私立聡明中学校出身、飯田天哉だ!」

 

「聡明?!クソエリートじゃねぇか!ぶっ殺しがいがありそうだ!」

 

「ぶっ殺しがい!?君酷いな!?それでもヒーロー志望か!?」

 

「ケッ、」

 

 

かっちゃんが飯田君から目を逸らしたタイミングで、僕と目が合ってしまった

 

(っ、まずい!)

 

かっちゃんに視線を向けられたおかげで、クラス全体に注目されてしまった

 

人に注目されることに慣れてない僕はどうしようもなくキョドってしまう

 

 

「え、ええっと!僕は...!」

 

「おはよう!俺は私立聡明中学校出身の」

 

「わわ!聞いてたからわかるよ、飯田君でしょ!

僕は緑谷!よろしくね」

 

すると飯田君は神妙な面持ちをして、手を忙しなく動かしながら言った

 

「...緑谷君、君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな」

 

「...え?」

 

「僕は君を見誤っていたよ...!!悔しいが君のほうが上手だったようだ」

 

「え、ええと......」

 

 

オールマイトから力を受け継いですぐに始まった雄英の入試試験は筆記と実技のふたつの試験が用意されていて、飯田君とは実技試験のときに会場が同じだったのだ

 

その実技試験とは、敵を想定したロボを倒して、倒しただけポイントをもらえるといったシンプルなルールなものだった

 

が、実はその敵を倒してもらえる敵ポイントのほかに、審査制でどれだけ人を助けたかでもらえる救出ポイントというものがあったらしい

 

僕は敵ポイント0という圧倒的に不利な状況を、その救出ポイントのおかげで覆すことができ、今雄英に入学できている

 

飯田君はどうやら僕がそれを知っていたと勘違いしているようだ

 

 

(ごめん...、全然知らなかったよ...)

 

 

心の中でとてつもない気まずさを感じていたその時、聞き覚えのある声が聞こえた

 

 

「ああ!そのモサモサ頭は!」

 

「へぇあ!?」

 

 

振り返るとそこには入試のときに随分とお世話になった女の子がいた

 

入試直前で転けそうになった僕を個性で助けてくれて、巨大ロボに無謀にも立ち向かったときも、さらには試験後も、敵ポイント0だった僕に自分のポイントを分けられないかと先生方に直談判してくれていたらしい

 

 

「よかった!受かってたんだね!パンチ凄かったもんねー!」

 

「あ、い、いやぁ、ぼ僕は君の直談判のおかげで...」

 

「え?なんでそれ知ってるの?」

 

「あ!いや!なんでもないです!」

 

 

そんなやりとりをクラスの入口でやっている間に、かっちゃんが忌々しげに僕を見ていたが、女の子との話に夢中になっていた僕は気づかなかった

 

 

「今日は入学式とガイダンスとかだけかな?先生ってどんな人かな?」

 

ウキウキと話す女の子

すると、どこからか低い声で何かが呟かれた

 

 

「...そんな浮かれている暇があるなら他所へいけ」

 

 

一気に沈黙する僕ら

足元に視線を向けると、そこには

 

「ここはヒーロー科だぞ」

と言いながら携帯食糧を飲む、寝袋に身を包んだ不気味な男が廊下に寝転がっていた

 

 

 

 

 

▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦

 

 

 

 

 

 

「「「個性把握テストおぉぉ!??」」」

 

寝袋男の正体は、クラス担任の相澤消太先生だった

 

あの後いきなり、体育着を着て外に出ろ という指示を出した先生に従い、混乱しながらも校庭に集まったが、僕らを待っていたのは入学式でもガイダンスでも自己紹介でもなかった

 

 

中学校までやったいた、個性使用禁止の体力テスト

個性をどれだけ使ってもいいというルールに、クラスメイトたちは『ヒーロー科っぽい』と興奮した

 

 

しかし、相澤先生の次の言葉に僕たちは凍りついた

 

『個性把握テストで八種総合最下位だったものは除籍する このクラスはたまたま21人でキリが悪いからな』

 

 

あまりに理不尽だ、というクラスメイトの意見も、世の中理不尽なんてたくさんある、と聞いてくれなかった

 

(どうしよう...、僕はまだこの力を使いこなせないのに)

 

 

入学早々、除籍の危機

 

 

そして、ついに一種目めの50m走が始まろうとしたときだった

 

 

 

 

 

 

「面白そうなことしてんじゃねえか!!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――!!!

 

 

上空から叫び声が聞こえた瞬間

 

凄まじい轟音と揺れ 砂ぼこりが起こった

 

 

 

「「「!!!!」」」

 

 

 

突然の出来事に動揺する僕たち

 

そしてその動揺が喧騒に変わる頃、砂ぼこりから1つの人影が現れた

 

砂ぼこりが晴れていくにつれて、その風貌がわかる

 

そこにいたのは、新しい制服を着崩した金髪の男子生徒だった

 

 

 

「...遅いぞ逆廻、初日から遅刻なんて除籍されたいのか」

 

「わりぃな相澤教諭 いろいろあったんだ」

 

 

相澤先生に逆廻と呼ばれたその人は、首にヘッドホンをかけていて軽薄な笑みを浮かべている。

 

 

 

(なんてダイナミックな登場なんだ)

入学早々、クラスの心はひとつになった

 

 

 

て、あれ!

............遅刻?

 

ということは彼も同じクラスなのだろうか

 

(さすがヒーロー科だ...!)

 

クラスのみんなも彼を『え、誰?』『遅刻しといて、派手な登場だな』『野蛮で凶暴そうですわ』などと言いながら視線を向けていた

 

彼はそんな視線に気づいているのかいないのか、こちらをチラリとも見ずに相澤先生と話し込んでいる。

 

そしてその話が終わると徐にコチラに顔を向け、強い意思を感じさせるアメジストの瞳を細くしてこう言った。

 

 

「雄英高校ヒーロー科1-Aの諸君。はじめまして!見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義者と三拍子揃ったダメ人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよな!」

 

 

 

説明書をくれたら考えてあげる なんて言える人はこの場にいなかった

 

 




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