目覚めたらベホマ使いに   作:ベホマラー

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ヤードラット星編
9話~一旦落ち着こうが一番落ち着けない~


俺は今、見知らぬ土地にいる。

いやなんで、って言われてもなあ……

 

とにかく言えることは不時着して宇宙船が壊れて使えなくなった。

はい地球にいけなくなりましたありがとうございました。

 

はあ……

 

どうやらここはアニメでも詳しくは語られていないヤードラット星らしかった。

そう、悟空が瞬間移動を覚えた場所だ。

 

あ、そういえば仲良くなって技を教えてもらったとか言ってたな。

ひょっとして俺も瞬間移動を覚えられんじゃないか? 最高。

 

さて、そうと決まればまずは現地の人と意思疎通といこうか。

俺はそこら辺にいたヤドラト星人に声をかけた。

 

「やあそこのおじょ――」

 

やべぇ。性別とか見た目みんな同じで分かんないからむやみにお嬢さんとか言えないな。

一度声をかけてみたかったんだ。生前は女性関係に無縁だったもので……あれ、おかしいな目から汗が。

 

「%?〇&……」

 

「はい?」

 

まずい、変なこと考えてたから聞き取れなかった。

 

「@$#!¥*」

 

「え?」

 

待って。素で聞き取れないんだが。

まさかジェスチャーで会話をしろと。悟空は原作でそんなことをやっていたのか。

 

俺は唯一出来る『こんにちは』を意味する手話をしてみた。

 

「なんてな」

 

「へ?」

 

「オレからのサプライズはお気に召したかい?」

 

「サプライズ?」

 

「そう。旅人がここに馴染みやすいように、それと歓迎の気持ちを込めてのサプライズ宇宙語だ」

 

なんだドッキリってやつか。驚かせやがって。

だが、なんだか彼(?)の笑顔を見てると暖かくなってくる。

 

それに俺のことを思って行動してくれるなんてヤードラット星人じゃなくてヤードラット聖人なのでは? やだ、上手いこと言っちゃったかしら。

 

…………

 

とりあえず俺は自分を殴った。

そんな奇行を眺めていた悟空が話しかけてくる。

 

「なにやってんだ? 新しい修行か? オラにも教えてくれよ。おめえを殴るの手伝うからよ」

 

それだけはやめてください死んでしまいます。

まずその超サイヤ人の状態を切ってくれないと話にもならない。

 

そう。悟空は超サイヤ人になっているのだ。日常的に。

 

なんでもパワー消費が激しいからそれに慣れようとしてるのだとか。

 

「そういえば、デンデもスーパーサイヤ人みたいになってたな。それになってオラと手合わせしてくれよ」

 

「え?」

 

そんな覚えないんだが。むしろなれるんだったら喜んで変身しまくりますよ、ええ。

 

「フリーザと戦った時になってたじゃねえか。まさか覚えてねーんか?」

 

フリーザか。あの時は確かに力がどこかから溢れてくる気がしたが特に気を払う余裕なんてなかったからな。とにかくカルゴが殺されたことに激怒していた。

 

ああ。結局美味いものを食わせてあげられてないな。早く帰って何かしてやりたい。

せめてブルマさんとこで良くしてもらってることを望む。

 

あれ、何の話だっけ?

 

「なあ、試しにスーパーサイヤ人になってみてくれよ」

 

あ、そうか。てか俺サイヤ人じゃないし。

 

「言うならスーパーナメック星人かと。でもそんなこと言ったってやり方が分からないんだけど」

 

ちなみに俺はここに来てから素の自分を出来るだけ出すようにしていた。だから悟空に対してのさん付けもやめた。一人称を正式に『俺』にした。

正式に、ってなんだ。ゆるキャラか俺は。

 

「カルゴがフリーザに殺された時のことを思い出したらいいんじゃねえか?」

 

ッ! その事を言うなっ!(自分は棚上げ)

 

そして気が付いたら俺は金色のオーラを纏っていた。どうやらあれは俺の地雷らしい。

 

おお。本当に超サイヤ人になれるんだな……自分でも驚きだ。

 

しかし……あまり見た目が変わらないんだな。触覚でも金色になれば分かりやすかったのに。いや、もしそうなったらネタか。

髪の毛が生えるとかなかったのかなー。30でつるっぱげなんて苦痛でしかない。

 

「なれたじゃねえか! そんじゃ、ちょっとオラと戦ってくんえねか」

 

「ちょ待って、準備が――ぶはッ」

 

早っ。戦おうぜ、って言ってから1、2秒で襲い掛かってくるなよ。

俺はぶっ飛ばされて民家に当たりそうになるのを必死にこらえて直前で止まった。

 

「危ないな! こんなとこで戦ったら星がボロボロだよ。せめて場所を移さないと」

 

今俺は平静を装っているが、凄く戦いたい衝動に駆られている。サイヤ人の影響を受けすぎたか? まあ、宇宙船内でずっと悟空と密着してたしな……

頑張れ、俺の理性。負けるな俺の知性。

 

 

 

 

負けました。野生に駆られました。

 

「はあッ」

 

俺は悟空にただのパンチをし返した。しかし難なく手で防がれてしまう。俺は更に左手、足とで立て続けに攻撃した。

 

ところがそれに対して悟空は全てを見切り、拳を振りかぶって右ストレートを俺の左頬に直撃させてきた。

 

今度も民家に当たる――

 

シュイン

 

え、何の音だ?

 

シュイン

ガバッ

 

「んぶッ。もごごご」

 

突如何もない場所から現れたヤードラット星人が俺たちの頭をつかむと、海辺まで瞬間移動して掴んでいた頭を水中へと突っ込んだ。

 

「なにす――がぼぼが」

 

 

 

小休止。

 

 

 

「人の星で暴れるなど、言語道断。きっちりと反省してもらうからな」

 

現在悟空と一緒に正座中。この星で大暴れしてしまったことが住民の逆鱗に触れてしまったようだ。

 

「もう我慢できねえ!」

 

ところが悟空が足を崩して後ろに倒れ込んでしまう。

少しはじっとして下さい。

 

「こら! 正座を崩すな。お前ら10分追加だ」

 

えぇ……

悟空と連帯責任とか、クリア出来る気がしません。

 

逃げ出したい。

いや、向こうの戦闘力より断然こちらが上だし、逃げようと思えば出来るんだが、星からは逃げる手段がない(絶望)

 

頼みの綱は宇宙船をどうにかして直してもらうことだ。

 

「だめだ、やっぱ我慢できねえ」

 

「10分追加な」

 

くッ……

 

 

――――――――――

 

 

結局、夜になっても上のような状況が続き、呆れ果てたヤドラトさんにやっと開放してもらった。

 

よしよし、俺の足、辛かったな。精神力ちゃんもお疲れ様。

きっと人間的に強くなれたはずだ。おそらく。

 

「それで、お前さんたちは何故ここに来たのかね」

 

目の前には体がピンク色で目の周りがタコの吸盤ばりに出っ張っている人物がいた。皆そんな顔してるんだけどな。

 

「見ての通り不時着です」

 

「そうか。それは災難じゃったのう」

 

「いや、今の正座が一番くつ…………あ、宇宙船を修理出来る人っていませんかね」

 

「いるな。いるが……直すのは代金がいるがお前さんたち金は持ってるのかの?」

 

ダイキン……?

オカネ……?

 

うわ……

 

俺達一文無しじゃないか!

この先どうやって食っていけばいいんだ。くそぅ、こんな所で野垂れ死にとか嫌だ。せめて人間っぽい人の所で死にたかった。…………単純に失礼だな。

 

「持ってなさそうじゃな。ならここで働いて稼ぐといい」

 

「いいんですか?」

 

「うむ。早速仕事についてじゃが、荷物の運搬をしてもらおうと思う。ちと人出不足らしくての。知り合いに今連絡するからまっとれ」

 

おうい。聞こえておるか。そうじゃ、その件じゃがいい働き手を見つけたから今そちらに送るからの。うむ、それでは。

 

何もない所に向かって話をしていた。通話みたいだけどまさか一人芝居じゃないよな?

 

その人は額に人差し指と中指を当てながら会話をしていた。あっ! あのポーズは瞬間移動するときの! 使い方、色々あるんだな。

 

「それじゃ、わしに掴まれ」

 

俺達に向き直るとその人は肩に掴まるように指示してきた。もしかしてもしかするんですか⁉

 

ビュン!

 

 

おおお……

 

思ったよりスムーズで実感がないが、初の瞬間移動に俺は感動を覚えていた。

 

着いた先は宇宙船のターミナルのような場所に……というか俺の右隣がうるさい

 

「なあ、今のどうやったんだ? オラにも教えてくれよ」

 

なあなあ!

いいじゃねえか!

 

しつこい悟空に疲れたヤードラット星人は、その術を教えることを承諾してしまった。

 

 

今俺は、いや俺だけ、労働をしている。悟空は瞬間移動の方法を教わりに行ってしまった。まあ、原作でもずっと練習してたんだろうしな。

 

ひょっとしたら、本来宇宙船は壊れなかったはずなのかもしれない。

無理して二人乗りにしたのは良くない結果を生んだ。

やっぱり自転車の二人乗りはまずいよな(無関係)

 

俺の仕事といえば宇宙船の発着場に運び込まれた荷物を各家庭に運ぶだけの簡単なお仕事。

 

ちなみに車は走っていない。瞬間移動による事故が多発するのだとか。

 

 

次々と運んでいると意外にもお褒めの言葉を頂いた。他の人達は瞬間移動で物を運んでいるのだろうと思って頑張っていたが、大多数は飛んでいくだけらしい。

 

瞬間移動を使っている人は、すぐに仕事を終わらせたい人か元々戦闘力の高い、瞬間移動でもある程度疲れにくい人だ。後者は中々貴重な人材ということだった。

 

「今日はここまででいいだろう」

 

「ありがとうございました。あの、ここに宇宙船を修理できる技術者とかいませんか? 直してほしいものがあるんです」

 

「ん、まあオレがそうだな」

 

バイトリーダーのニワネ先輩が自分を指差した。

 

「本当ですか、パイセン! じゃあ、こっちです。ついてきてください」

 

「そのパイセンってのやめろ」

 

 

俺達は宇宙船の元へ赴いた。

 

「こりゃひどいな……」

 

ニワネ先輩は宇宙船の隅々までをチェックしてそう言った。

 

「いくらで引き受けてくれます?」

 

「そうだな……半年は働いてもらわなければならないな」

 

半年か……

 

「じゃあお願いします!」

 

 

――――――――――

 

 

俺は悟空の隣で修行させられていた。なぜか服も現地の人と同じものを着させられている。

仕事疲れで結構つらいんですが、どうしてもやらなきゃだめ?

 

俺達は指を額に当てて集中する。遠くの気を探る特訓をしているのだ。

瞬間移動の基礎となる広範囲把握術。これをマスターしないことにはヤードラット星人の技を使うことはできない。

 

「どうだ? 感覚は掴めたか?」

 

師範ラトさんは俺に聞いてくる。

 

「いえ、全く」

 

「まあ最初はそんなもんじゃ。ゆっくりと練習するがよい」

 

そして、おおそうじゃった。と何やら紙を見せてくる。

メニュー表と書かれたその紙には修行コースと期間が記されていた。

 

◯上級コース

・瞬間移動

 所要期間:2年

 

〜〜〜〜〜〜

 

◯初級コース

・長距離会話

 所要期間:2ヶ月

 

2年? 年ってなんだっけ……?

そんなのんびりしていたら地球が人造人間で大変なことになるぞ。

悟空を止めないと。

 




ちなみに地球にフリーザ親子が来るまで残り一年余りです。

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