主人公は品田です。品田は苦戦する、という訳ではなくどんな状況に陥ろうが、冷静かつ大胆に切り抜けるスタイルになっています。
1章 「紅魔館のメイド」
「うわわっと!!?」
スキマから落ちてきた品田がバランスを崩しつつ着地。
転ぶことは無かった。
「ふぅ。・・・ここかぎゃ!?」
上からくる圧力。
タツと橙が品田の上に落ちてきたのだ。
「紫様ー・・・。ほんと勘弁してください・・・。」
「ホントですね先輩・・・。ところで品田さんは。」
「君たちの下にいるから早く降りてほしいかなぁ・・・。」
「わわわわ!すすすみませせせん!!」
ふうっ、いてて。
「・・・しかし、ここが紅魔館なの?ものすごい真っ赤だけど。」
「主の趣味だそうですよ?・・・あとここには門番がいますので、気をつけてくださいね。」
橙ちゃんからの報告を受け、戦闘準備はしておく。
でも、
「・・・橙ちゃん。もしかして、この寝てる人が門番・・・?」
「万が一のことも考えてたんですけど・・・。まあそうですよね。大丈夫です。無視していきましょう。」
「先輩!?それでいいんですか!!?」
「いいんですよ。いつもこうですから。」
「門番してないね・・・。」
門を開け、玄関にノックをする。
「・・・返事が無いね。」
「ひとまず、入っちゃいます?」
「タツ、それはまずくない?」
「アリですね・・・。タツさん。」
真面目な顔で橙ちゃんも同意する。
ダメだ。破天荒すぎるこの子達。怖い。
「分かった。じゃあ開けようか。」
なるようになれだ。
玄関に手をかける。
・・・!
「・・・二人共。開けたあと絶対に屈んでおいて。(小声)」
「?」
「・・・はい。」
ガチャッ
シュンッ
扉を開けた途端飛んできたのはナイフ。
それを丁度眉間に刺さる手前で持ち手を掴み、止める。
「おや、見切られてしまいましたか。」
前にいたのは銀髪のメイド服の女。
ナイフを数本、手に構えている。
「野球やってる身なら、こんなもの楽勝だね。」
「ところで、門番はどうしたのかしら?」
「寝てます。」
タツが苦笑いで話す。
銀髪のメイド服の女が顔を顰める。
「・・・少々お待ちを。」
すると目の前の女は一瞬で消えた。
「・・・あの人は?」
「あの人は『十六夜咲夜』さんです。この紅魔館のメイド長。・・・あの人は『時を止める能力』を持ってます。・・・それに戦闘能力も高いです。気を引き締めてください。」
橙ちゃんに言われ、俺とタツは頷く。
すると門の方から
「あっ!?咲夜さん!どうも!」
「美鈴。おはよう。・・・何故また寝てるのかしら?」
「・・・ご安心ください!眠ってても侵入者はひとりも・・・。」
「三人に入られてるわ。」
「・・・・・・。」
「『ミスディレクション』!!!!!!!!!!」
ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
「・・・ご愁傷様です。」
アーメン。さてふざけてる場合じゃない。
凛とした目付きで彼女は俺たちのことを睨んでいる。
「・・・貴方達、要件はなんでしょうか?」
「少しここの主に用があるんだ。今幻想郷で起きてる『悪魔の妹』異変についてね。ここに悪魔の妹の元ネタがいるって言われたもんで、紫さんに頼まれたんだよね。」
「・・・それだけでしょうか?」
「ああ。」
「でしたらお帰りください。そのような要件、我が主が出るまでもありません。元よりあなた方は侵入者。ここで排除させてもらうわ。」
「はっ、はなから聞く耳持たずかよ。・・・二人共下がってて。こっちも元よりそのつもりなんでね。行くぞぉ!!!」
ー VS 紅魔館メイド長 十六夜咲夜 ー
「メイド長さん、これ返しておくよっ!!」
さっき寸止めしたナイフを送球の要領で投げる。
「っ!!甘いですね。その程度では当たりませんわ。」
今なかなか速かったよ?
易易とよけられてまあまあ来るなあ。
「メイド長って戦闘民族なの?」
「さあ。それは私にも。ですが、私は仮にも吸血鬼のメイド。腕には自信があります。悪いですが、早期決戦の方向で。」
すると一斉に無数のナイフをこちらに向けて投げてきた。
しかし避けるルートをすぐに構築し、そこを駆け抜ける。
「・・・甘いですね。それくらい読めています。」
「・・・?っ!!?」
抜けようとしていたところにナイフ。
ステルスだ。
「があぁ!!」
体を捻らせ、倒れ込むように避ける。
「スキアリィ!!」
メイドがナイフで倒れ込んだスキを狙い、刺しにかかる。
「甘いよ!」
ガキィッ!!!!
こちらもすぐに棒を取り出し受け止める。
そして弾き飛ばし、すぐに立ち上がる。
「ほう、今のを退けるとは。なかなかの腕前ですね。あなたは普通の人間のようですが・・・。一筋縄では行かないようですね。・・・こちらも本気で行きましょう。」
シュンッ
すると目の前からメイドが消える。
「なっ!?」
「どこを見てるんです?」
下からの声。掌底の構えだ。
「・・・だろうね。そんな見え見えの攻撃・・・、当たんないよ!!」
すぐにスウェイで回り込む。
そしていつもの棒の連撃でダメージを確実に与える。
「がぁっ!?捉えた・・・と思ったのですが・・・。」
「そっちの手の内は大体分かってるんだよねぇ。時、止めるんでしょ?時止めるんなら瞬間移動もお手の物だよね。」
(・・・絶対にそれだけじゃないよなぁ・・・。)
タツはそれだけじゃないと思った。
これは半分事実なのだ。たとえ、手の内を知っていたとしても咲夜の攻撃は素早い。品田持ち前の動体視力のお陰で回避ができているのだ。
「・・・ではそろそろ時を止める真髄。味わってもらいましょうか。・・・あなたの時は私のもの。なんの能力も持たぬあなたに、勝ち目はない。」
「言ってくれるじゃない。・・・強い能力を持った人間は何時でも慢心するもんだ。・・・人間、努力を忘れたら終わりなんだぜ。」
「はっ、言ってなさい!幻符『殺人ドール』!!!!!!!!!!」
ドュウーーンッ・・・
カチ・・・カ・・・チ・・・
「やはり、ただの人間。あなたはやはり負ける運命。・・・悪く思わないでくださいね。・・・『そして時は動き出す。』」
「・・・ぬぁっ!?」
ズドドドドドドッ!!!!!!!!!!
「品田さん!!」
橙が叫ぶ。
「さて・・・、あとは残り物の処理ですね。今ここで降参を認めれば、7割殺しで許してあげましょうか。」
「くっ・・・!!」
勝てない。タツも橙もそう思っていた。
ドスゥッ
「・・・?こ・・・れは・・・?」
突如咲夜の腕を襲った鋭い痛み。そこに刺さっていたのは青い柄のナイフ。間違いない。咲夜の使っているものだ。
だが・・・
「なん・・・で・・・?」
「7割殺しって、ほぼ死んでるってわかる?」
「品田さん!!」
「なにィ!?」
「地獄から戻ってきたぜ。」
「・・・一体どのように・・・。」
「簡単だよ。・・・これで弾いたんだ。」
「・・・何の変哲もない・・・」
「棒!?」
品田は無数のナイフに襲われる刹那、一瞬にしてナイフの壁の薄いところを探したのだ。凄腕のバッター、品田だからこそできる、『ヒートアイ』だ。相手もやはり人間だろう。そしてナイフは品田がこれまで体験した弾幕と違い、物理に近い。ナイフの数に限りもあるだろう。そこを突き、ナイフの薄いところを棒で叩き落とし、脱出したあと、流れ弾を処理したのだ。
「まあ大体空中でナイフ同士がぶつかり合って、流れ弾は来なかったけどね。・・・だから言ったろ?強い能力を持った人間はやっぱり慢心してしまう。だから、」
品田を咲夜の腕を指さし、
「・・・そんな、マヌケなダメージを受けるんだよね。」
「くっ・・・!ならばもう1度・・・!」
「させるかぁ!!」
槍投げの要領で棒を咲夜に向かって投げる。
「なにっ!?」
ズガァッ!!!
肩に当たり、咲夜の手から何かが弾き飛ぶ。
品田はそれを見逃さなかった。
「いただきぃ!!」
全力ダッシュで走り、飛んでいった何かを追いかける。
「させるものですか!」
咲夜も負けじと手を伸ばす。
やはり距離の関係上咲夜が近い。
すると品田はスライディングの体勢で思い切り咲夜の足を引っ掛けた!
「なっ!?」
そしてスライディングの体勢からすぐに立ち上がり、
パシィッ
「貰いっと。時を止めるタネはこの懐中時計だったんだね。これが無くなったんならほぼ俺の勝ちだ。降参を認めるね?」
「・・・ええ。私の・・・負けです。」
to be continued…