この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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ちょむすけかわいい


第二十五話

 裁判から数日後。

 

 

「ダクネス…帰ってこねぇなぁ…」

 

 

 ダクネスが頼りがいを見せ、領主の所に行ってからまだ帰ってきていない。

 流石に心配になってきた。

 

 

「ただ帰ってこないだけなら良いんだが…。あのデブのダクネスを見る目見たか?完全に性犯罪者だったぞ」

 

「ええ。まるで風呂上がりのダクネスを見るヒデオとカズマの様でした」

 

「「え」」

 

 

 そ、そんな目してるかなぁ…。

 風呂上がりにエロい服着るアイツが悪い。うん。

 

 

「まぁ何にせよ、帰ってきたら優しくしてやろうな」

 

「そうね…」

 

 

 カズマとアクアがそう言う。

 そうだな。帰ってきたら優しくあいつのしたいことを何でも……。

 あ、あれ?あいつのしたいことをやってあげたら物理的に優しくならないんじゃ…。

 

 

「あー…。やる気が出ねぇ…」

 

 

 そうカズマが呟く。

 

 裁判を終えて気が抜けたのかダクネスが居なくて寂しいのかわからないが、俺たち4人はここ数日何をするでもなくただボーッとしていた。

 

 まだ少し寒いとはいえ、カエルが出てくるくらいには暖かくなったのでクエストを受ければいいのだが、如何せんやる気が出ない。

 

 

「なんか、こう…アレだなぁ…」

 

「おお。アレだなぁ…」

 

 

 うん。アレだアレ。

 

 

「裁判の時の語彙はどこへ…」

 

 

 めぐみんがそう言ってくるが、仕方ないじゃないか。だってアレだもの。

 

 

「借金あるってーのに、こんな体たらくじゃな…」

 

「ハチャメチャが押し寄せてこねぇかなー」

 

「ははっ。嘆いてる場合じゃ無くなるかもな」

 

 

 ワクワクを百倍にして血祭り(パーティー)の主役になりたい。

 そんな事を考えながらふと、気になっていたことを聞いてみる。

 

 

「なぁめぐみん」

 

「なんですか?」

 

「さっきから俺の尻尾で遊んでるこの猫はなんだ?」

 

 

 そう。さっきから尻尾を猫じゃらしがわりにしている黒猫がいるのだ。

 消去法で恐らく飼い主であろうめぐみんに聞いてみた。

 

 

「ちょむすけです」

 

「ちょむすけ」

 

 

 そう呼ばれた黒猫は、返事をするがごとくなーおとひと鳴きし、また俺の尻尾をモフり始めた。可愛い。

 

 カズマがまた紅魔族のつける名前は変だなどと思いそうだが、猫の名前としては妥当ではないだろうか。

 

 

「飼うのか?」

 

「飼っていいんですか?」

 

「どうなんだ家主」

 

 

 めぐみんがキラキラと目を輝かせ詰め寄ってきたので、家主のカズマに聞いてみる。

 

 

「猫アレルギーの奴とかも居ないし、別にいいぞ」

 

「だってよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ちょむすけがなかまになった!

 

 

「よろしくなちょむすけ。あわよくばお前がカリン様に育つ事を願うよ」

 

 

 ちょむすけを撫でながらそう言う。

 

 

「なーお」

 

 

 返事なのかただの鳴き声なのかはわからないが、ここは肯定的に取っておこう。

 

 俺がちょむすけと戯れ暇を潰していると、誰かが来た。

 

 

「誰か来たぞ。この気はダクネス…では無いな」

 

「ちっ。誰だよ…」

 

 

 舌打ちをしながら玄関へ向かうカズマ。

 まぁ気持ちはわかる。

 

 

「はいはいどちら様…ってあんたか。何の用だ?身の潔白を証明するまで時間あるだろ。というか今はお前に構う暇はない」

 

「構ってる暇は無いだと!?抜かせ!貴様、やはり魔王軍の手の者だろう!またやらかしおって!」

 

 

 カズマがそっと開けようとしたドアを無理矢理バーンと開いてセナが屋敷に入ってきた。

 

 まったく、うちのリーダーはまた何やらかしたんだ?

 

 

「おいカズマ。謝るなら今のうちだぞ」

 

「今回は何もやってねぇよ!」

 

「とぼけるな!貴様らが毎日爆裂魔法などを放つせいで冬眠から少しずつ目覚め始めていたジャイアントトードが一斉に起き出した!そしてなぜか初心者殺しまでいる始末だ!!」

 

「だからそれ俺のせいじゃないだろ!」

 

 

 カエルはアクアの件であらかた倒したはずなんだがな。まだいたのか。

 それにしても初心者殺しか。いい経験値になりそうだ。

 

 

「よしセナ。場所を教えてくれ。今から飛んで行く」

 

「飛んで…?何を言ってるのかはわからないが、場所はアクセルの街正門から続く平原だ」

 

 

 俺の言葉にに若干疑問を持ちながらも答えるセナ。

 それを聞いて膝に乗せているちょむすけを降ろし立ち上がり、腑抜けた仲間達に発破をかける。

 

 

「おいお前ら行くぞ!アクア…は目が死んでるから来なくていい。それ以外の奴らはさっさと準備しろ!特にカズマ!お前はセナに活躍を見せとかないとまた裁判でめんどくさい事になるぞ!」

 

 

 流石に可哀想なので今回はアクアを置いて行こう。一度に運べるのが3人までだから丁度いい。ちなみに背中に2人、俺が両腕で持つのが1人だ。

 

 

「は…!?浮いて…!?」

 

 

 俺が浮いている事に戸惑うセナをめぐみんがグイグイと押しうつ伏せに浮いている俺に乗せる。めぐみんもそれに続く。

 

 

「全員乗ったな?じゃ、行ってくるぜ」

 

「行ってらっしゃーい」

 

「え、まさかこのまま行くのか…?ちょ、待って、うわぁぁぁぁ!!」

 

 

 セナの絶叫が、アクセルの街の外れに響き渡る。

 舞空術で飛んだら毎回誰かが悲鳴あげてる気がする。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 平原。

 

 

「おー。いっぱいいるなー。初心者殺しはどこだ?」

 

 

 平原に着くと、カエルが沢山居た。こんなに寝てたのか…。

 まぁ暖かくなってきたとはいえまだ暖炉がいる寒さだもんな。カエルだって寝たいわな。

 

 

「ヒデオは初心者殺しを頼む!んでその後こっちに来てくれ!」

 

「りょーかーい」

 

 

 カズマにそう言われ初心者殺しらしい気を探り飛んで行く。

 この前は気円斬でワンパンだったからな。今回は正々堂々と正面から倒してやる。

 

 

「お、居た」

 

 

 見ると、初心者殺しはジャイアントトードを追い立てていた。

 このカエルのデカさなら数の暴力で初心者殺しくらい倒せそうだけどなー。

 本能がそうさせないのか?

 

 まぁ、それは置いといて。

 

 

「よし、勝負だ猫野郎!」

 

 

 そう叫び初心者殺しの目の前に着地する。

 ワクワクすっぞ!

 

 

「グルルル…」

 

 

 初心者殺しは俺を見ると唸り声をあげ、こちらを見据える。

 直ぐに飛びかかっては来ないところをみると、警戒しているのだろう。

 

 

「はぁっ!」

 

 

 気合いとともに、気を解放する。

 辺りに風が巻き起こり、土埃が舞う。

 

 

 しばしの静寂。

 

 

「グガァァ!!」

 

 

 先に仕掛けたのは初心者殺し。

 鋭い牙を剥き、こちらへと駆けて来る。

 

 

「悪く思うなよ。これも俺の強さの為だ」

 

 

 そう呟き、一瞬で間合いを詰める。

 そして牙を容赦なく蹴り砕く。

 

 

「グギャア!!」

 

 

 牙を折られた苦痛に叫び声を上げながら転がっていく初心者殺し。

 だがすぐに起き上がり再び俺の方へと駆けてくる。

 

 

 が。

 

 

「止めだ。魔閃光!!」

 

 

 かめはめ波とは違う構えから放たれたそれは、容易く初心者殺しの体を貫いた。

 

 デストロイヤー戦後に覚えたこの技とかめはめ波の違いは、発射速度や威力はもちろんのこと、かめはめ波と違い属性付きだという事だ。内訳としてはかめはめ波の方が速度は遅いが威力は高い。

 

 ちなみにサイヤ人の俺は、モンスターを倒さなくてもレベルやステータスが上がることがある。そう、死にかければいいのだ。

 

 冬将軍の時は実際に死んだのでステータスしか上がらなかったが、今回は違う。普通に死にかけたので、レベルもあがったのだろう。

 

 ただ、死にかけるのは痛いし苦しいしめんどくさいので、わさと死にかける⇒回復魔法のループは基本的にやらない。

 

 

「よしっと。さ、戻るか」

 

 

 無事任務を終えたので、カズマたちの加勢に飛んで行く。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

 

 カズマ達のところへ戻ると、めぐみんが爆裂魔法で大量のカエルを消し飛ばしていた。流石。

 

 

「おいめぐみん。おんぶはいるか?」

 

 

 めぐみんのところへ着地し、そう問うた。

 

 

「いえ、ヒデオはまだカエル相手に戦わないといけないでしょうし、このままで大丈夫です。危なくなったら呼びますので」

 

「そうか。わかった。じゃあカズマの手伝いしてくる」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 めぐみんに見送られ飛ぼうとするが、ふとセナがこちらをじーっと見ているのに気がついた。

 

 

「なんだよ。また俺にも疑いをかける気か?」

 

「い、いえ。本当に初心者殺しを倒されたのかと…」

 

 

 ほう。疑うのか。

 

 

「ほれ。ちゃんと記入されてるだろ」

 

 

 冒険者カードを見せながらそう言う。

 

 

「本当だ…。空を飛んだり初心者殺しを短時間で倒したり、貴方は何者なんですか?」

 

 

 何者、か。

 そんなの知らん。が、前から言ってみたかったセリフを言ってみる。

 

 

「俺は、地球育ちのサイヤ人だ」

 

 

 フフン。どうだね。サイヤ人の俺だから言えるセリフ。

 だがセナはよくわかっていないようで。

 

 

「またサイヤ人…ですか。あなたといいサトウカズマといい、私達が知らない事をよく知っておられるのですね」

 

 

 じーっと見て来るセナ。また疑われている気がする…。

 よし、お前がそのつもりなら俺にも考えがある。

 

 

「じー…」

 

「な、なんですか」

 

「じー…」

 

「な、なぜ私の顔を…」

 

 

 メンチを切られる以外で顔をガン見されたことなど無いのか、セナは恥ずかしそうに顔を逸らした。

 無論俺は顔など見ていない。身長と距離の関係でセナにはそう見えるだけで、俺はほかの所を見ている。

 こいつ、ダクネスに負けず劣らずデケェな…。

 

 おっぱい。

 

 

「…はあ。勿体ないな」

 

「!?おい、今何を見て言った!」

 

「さぁ?おっと、カズマを助けに行くのを忘れてた。あばよ!」

 

「待てぇ!」

 

 

 セナの叫びを聞き流し空を飛ぶ。

 ふぅ…。

 

 巨乳は、でかかった。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「おーいカズマー」

 

 

 初心者殺しを倒したらしいヒデオが空から降りてきた。早いな。

 

 

「お、もう倒したのか。流石だな」

 

「おう。いい運動になった」

 

「で、助けてくれない?」

 

 

 食われてはいないが、俺は今カエルの下敷きになっているのだ。

 急に後ろから飛んできたヤツを会心の一撃で屠ったと思ったら勢いを殺しきれずにこれだよ。

 若干ヌメヌメする。

 

 

「じゃ、どかすぞ…。うわ、ヌルヌルする。きめぇ」

 

 

 そう悪態をつきながらもカエルをどかすヒデオ。

 体にのしかかっている物がどけられ、段々と軽くなっていく。このくらいなら這い出れそう。

 

 ズリズリ。ヌルヌル。すぽん。

 

 

「お、出れた。サンキュー」

 

「おうよ。で、あとどんくらいいるんだ?」

 

「五、六匹かな。経験値欲しいから美味しいとこだけくれねーか?」

 

 

 ヒデオのように強くもないので経験値を得るのも一苦労だ。こういう時に稼いでおきたい。

 

 

「いいぜ。殺さない程度にぶっ殺せば良い訳だな」

 

「大体あってる。じゃ、頼むぞ」

 

「了解」

 

 

 そう言い宙に浮くヒデオ。何する気だ?

 

 

「せせせせせいっ!」

 

 

 気合いとともにエネルギー弾を複数放つヒデオ。

 あの、この位置だと倒しに行くのめんどくさいんですが…。

 

 しかし、それは杞憂だったようで、エネルギー弾はカエルには当たらずカエルの近くの地面で炸裂した。

 するとカエルは突然の爆発と音に驚いたのか、一斉にこちらへ向かってきた。なるほどね。

 

 

「よし、行くぞカエル共!」

 

 

 地面に着地しそう声を張るヒデオ。やだ、頼もしい!

 

 

「せぁあぁぁ!!」

 

 

 低空飛行で飛んで行き、カエルへ打撃を食らわせるヒデオ。

 なんでも、レベルが上がったから気の解放さえしとけばカエルを殴り殺せるらしい。

 なにそれこわい。

 

 あと、普通の人でも打撃が効きにくい相手に打撃を食らわせる方法を編み出したらしい。

 

『突く、より貫く!蹴る、より斬る!』

 

 とか言っていた。

 要は、槍のように貫く突きを放ち、剣のように斬り裂く蹴りを放つらしい。

 そんなん出来るのはお前だけだと声を大にして言いたい。

 

 内心ヒデオに文句を言っていると、半殺しが終わったようで声をかけてきた。

 

 

「おいカズマー。止めはよ」

 

「はいはーい」

 

 

 はよと促されたので弓を構え矢を放つ。『弓』スキルと『狙撃』スキルを覚えているのでそれを活用する。

 

 

「っし、終わったか。ヒデオ、カエル運ぶの手伝ってくれ」

 

 

 カエル肉はギルドが買い取ってくれる。

 少しでも金が欲しい今はこれも貴重な収入だ。

 このサイヤ人が居れば少しくらいなら運べるだろう。運ぶ時間を短縮し肉を痛まないようにするのだ。効率化。

 

 カエルの死骸を一箇所にまとめていたその時。

 

 

「あ、ああ!!カズマ、ヒデオー!!カエルがー!」

 

「さ、ささサトウカズマ!助けてくれぇー!」

 

 

  そう叫んでくるめぐみんとセナ。まずい。間に合わん。

 

 まぁ、カエルだから大丈夫だろう。

 ヒデオも同じことを思っているようで。

 

 

「食われてもすぐ死ぬわけじゃないしいいか」

 

「だな」

 

 

 再びカエルを1箇所にまとめる作業に戻る。

 効率、大事。

 

 

「わぁあぁひゅぐっ!」

 

「お、お、おい貴様ら!仲間が食べられてしまったぞ!!ひぃ!もう1匹来た!」

 

「わるい!今手一杯なんだ!すぐに飲み込まれはしないから安心して食われてくれ!」

 

 

 泣きわめくセナにヒデオがそう返す。

 この間のリザレクション発言といい、真に疑われるべきはこいつなんじゃないだろうか。

 

 

「鬼め!!うわぁぁ!!く、来るなぁ!!」

 

 

 セナがカエルに食われそうになったその時。

 

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!!」

 

 

 聞き覚えのないワードと声が響く。

 すると、セナを食べようとしていたカエルとめぐみんを食べていたカエルが真っ二つになった。すげぇ。

 

 よく見ると、誰か立っている。

 

 

「誰だあの子」

 

「知らね。めぐみんと似たような服着てるな」

 

 

 めぐみんと似たような服を着た女の子が居た。年齢まではわからないが、露出度からして女の子だろう。太もも。

 

 とりあえずカエルをある程度の場所まで運び終え、めぐみん達のところへ戻った。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 戻ると、食われるところを間一髪で少女に助けられたセナが。

 

 

「貴様ら、よくも…!」

 

 

 恨めしくこちらを睨み今にも掴みかかってきそうだ。

 

 

「食われなかったんだしいいじゃねぇか。そうカッカすんな。顔が怖い。そんな顔ばっかしてたら彼氏の1人もできねぇぞ」

 

「なっ…!貴様…!セクハラで訴えるぞ!」

 

「心配して言ってやってるのに…」

 

 

 うん。ほんと、将来が心配です。

 とまぁ、この独身は置いといて。

 

 

「おい今なにか失礼な事を考えなかったか」

 

「いや何も」

 

 

 怖っ!

 

 いい加減話が進まないのでこの喪女は置いといて。

 

 

「また失礼なことを…」

 

「考えてません。それより、君、誰?」

 

 

 先程セナとめぐみんを助けた少女に正体を問う。目が赤いところをみるとおそらく紅魔族だろう。めぐみんの知り合いか?

 

 

「え…いや…あの…」

 

 

 完全にビビられてますがな。

 そんなに顔怖いかな…?まぁいいや。

 

 

「おいめぐみん。出て来い。お前の知り合いか?この子」

 

 

 未だにカエルの中にいためぐみんを引っ張り出し真相を問う。

 めぐみんというワードを聞いた少女は心無しか表情を明るくした。

 

 

「出ましたよ…ぬるりと。えーっと…誰ですか?」

 

「えっ!?」

 

 

 めぐみんにそう言い放たれた少女はかなりショックを受けた様子だ。さっきから顔が忙しいな。

 

 

「なんだ、知らねぇのか?紅魔族っぽいし服装も似てるから知り合いかと思ったんだが…」

 

「知り合い、というかライバルです!ねぇめぐみん、私のこと忘れちゃったの!?ゆんゆんだよ!紅魔の族長の娘で、学校の同期で、成績はあなたに次いで二番目で、よくあなたにお弁当を取られてた!」

 

 

 やっぱり紅魔族か。それにしても、同期なのか。どこが、というより全体的にめぐみんより大人びている。

 二人を見比べているとめぐみんが。

 

 

「ヒデオ、私たちを見比べてどうしたのですか?何を比べているのですか?」

 

 

 低めのトーンで脅すように言ってくるめぐみん。やだ、この子怖い!

 とりあえず誤魔化しとこ。

 

 

「いや、お前の成績が1番でこの子が2番って聞いて、どう見ても逆だろって思ってたんだよ」

 

「ふっ。何を言うかと思えば。自己紹介の時も言いましたよね?私は紅魔族随一の天才だと。カズマも聞いてましたよね?」

 

「聞いてたが、痛い子の妄言だと思っててな」

 

「なっ…!」

 

 

 うんうん。

 普段のこいつを見てたらそうは思えんな。

 ふと、何か思いついたのかカズマがぽんと手を叩き。

 

 

「あぁ。バカと天才は紙一重ってこういう事を言うのか」

 

「なにおう!喧嘩を売ってるなら買いますよ!」

 

 

 先程ドレインタッチで分けてもらった体力のおかげで立ち上がりカズマに襲いかかろうとするめぐみん。

 

 

「やめんかロリ。それより、ゆんゆん…だっけ?この子本当に知り合いじゃないのか?」

 

「ろ、ロリ…」

 

 

 とりあえず話が進まないのでめぐみんを止め、空気になりかけていたゆんゆんと名乗った女の子の話題を振る。

 するとセナが。

 

 

「…ふむ。何やらつもる話がありそうでね。では、自分も今日のところはこれで。サトウカズマさん。最後以外はまともな冒険でしたが、演技の可能性も捨てていません。私はまだあなたを信用していませんから」

 

「この程度で信用されるなら端から裁判になんてなってないよな。ヒデオ。この子の対応は屋敷でするから、とりあえずギルドに飛んでってカエル回収頼んでくれ」

 

 

 カズマにそう言われたので、断る理由もないので従う。屋敷に連れて行くと言ってるし、ゆんゆんの事も気にせず大丈夫だろう。

 

 

「了解。セナ、乗っけてやる」

 

「い、いや私は…」

 

「つべこべ言わず乗れ」

 

 

 嫌がるセナを無理矢理持ち上げ、ギルドへと飛んで行く。

 

 

「いやぁぁあー!!」

 

 

 セナの可愛らしい悲鳴が平原へ響き渡る。

 素が出てるよ素が。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 屋敷。

 

 

「お、ヒデオおかえり」

 

「ほれ。金」

 

 

 一足先に帰り風呂から上がっていたカズマに臨時報酬を渡す。お金は大事だよね。

 

 

「サンキュ。いつもすまないね」

 

「それは言わない約束っすよカズマさん」

 

「で、どうだった?セナはなんか聞いてきたか?」

 

 

 カズマが真面目な顔付きで聞いてきた。俺に一緒に行かせたのはこれが理由か。

 

 

「いや、特には。ずっとビビってたし」

 

「ふーん…」

 

「あれ、めぐみんとゆんゆんは?」

 

「風呂」

 

 

 めぐみんはヌルヌルだったから分かるが、何故にゆんゆん?

 

 

「あ、ヒデオ。おかえりなさい。お茶のむ?」

 

 

 お茶を淹れに行っていたらしいアクアが戻ってきた。

 

 

「いや、気持ちだけもらっとくよ。喉乾いてないし、お前が淹れるやつ大体がお湯だし」

 

「そう」

 

 

 アクアは短く返事をするとテーブルにお茶を置き飲み始めた。

 ほんと、なんでお湯になんの?

 

 

「あ、そうだ。カズマ。何でゆんゆんまで風呂に入ってんだ?めぐみんだけなら一緒に入れたのに」

 

 

 あのロリは言わば妹なのでノーカン。

 

 

「うーん。どこから言えばいいか…」

 

 

 曰く、ゆんゆんがめぐみんに勝負を仕掛けたのはいいものの、めぐみんが寝技(ヌルヌル)を使ってゆんゆんまでヌルヌルになったらしい。

 こうして見ると、なんかエロいな。

 

 

「ふーん」

 

 相槌だけを返し、2人が出てくるのを待つ。

 やがて出てきたので俺も風呂に入り、ご飯にした。

 途中めぐみんの服が入らなくてゆんゆんがアクアの服を借り、それを見てめぐみんが若干悔しそうな顔をしたり、ちょむすけが俺とカズマの目の前で火を吹いたりしたが、まぁそこは割愛。

 

 

 

 

 

 今夜も、ダクネスは帰ってこなかった。

 

 




iPhoneがバッキバキになった。


・魔閃光
『魔』属性の気を持つ気功波。速い。

・ゆんゆん
幸が薄い紅魔族の少女。めぐみんのライバル(自称)


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