魔法少女まどか☆マギカ ~狩る者の新たな戦い~   作:祇園 暁

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第7話【これからの事】

魔女退治を終えた一行はそれぞれ帰宅とセブンスエンカウントに戻る二組に別れた。セブンスエンカウントに戻るのはアキオと、意外にもまどかであった。

まどかは忘れ物をしたから取りに戻ると言ったが、それは嘘の口実に過ぎない。

 

「あの、アキオさん」

 

まどかは彼にある事を話したかったのだ。

夜の暗闇が徐々に夕暮れを飲み込んでゆく街を歩きながら、まどかは切り出した。

 

「アキオさんはほむらちゃんの事、どう思ってるんですか?」

 

昨日の警告、そして今日学校で見せた表情。本当にさやかとマミの言うような悪い魔法少女なのだろうかとずっと疑念を抱いていたまどか。

そんな時にアキオの言葉を聞いて、彼に胸の内を話したくなったのである。

 

「そうだな・・・その前に、まどかちゃんはどう思ってるんだい?」

 

「私は・・・その、ほむらちゃんはそんなに悪い子じゃないと、思います」

 

アキオはまどかの意見を聞くと、自分の考えを口にした。

 

「俺もほむらちゃんは悪い子じゃないと思うぜ?警告だって純粋に危険な目に遇わせたくないから言ったように受け取れるし、その気になればもっと直接的な脅しだって出来たはずだ。何だかんだでマミちゃんにも攻撃する意思を見せなかったし、単に口下手で不器用なだけなんじゃない?」

 

問題は何故キュウベエを襲っていたかだが・・・

 

その事はあえて言わない事にした。

アキオの考えを聞いてまどかはクスリと笑う。

 

「何だかほむらちゃんのイメージ変わっちゃいます」

 

「そうそう、案外シャイだったりしてね」

 

「あの、実はほむらちゃんの事で気になる事があるんですけど」

 

困ったような、言うべきかどうか迷っているような素振りを見せるが、しばらくして意を決したようにまどかは口を開いた。

 

「私、ほむらちゃんが転校してくる前にほむらちゃんの夢を見たんです」

 

「へえ、それってどんな?」

 

「その・・・よくは思い出せないんですけど、確かにほむらちゃんだったと思うんです」

 

その言葉を聞いて考えるアキオ。少しケースは違うが彼も夢の中でアイテルという少女に会った事がある。そのためまどかの夢の話を単なる妄言と切り捨てる事はできなかった。

 

「まあ考えても今分かる事は少ないし、マミちゃんにも言ったけどまどかちゃんもほむらちゃんと話してくれないかな?」

 

「はい、分かりました。私も皆で仲良くできたら良いなって、そう思うんで頑張ってみます!」

 

そう言うまどかは憑き物が取れたような、スッキリした表情になっていた。

結局何も分からないままだが、さやかやマミに言えない事を相談できてひとまず満足したのだろう。

 

「OKその意気だ。家まで送ってこうか?」

 

「いえ、大丈夫です。それじゃあアキオさん、今日はありがとうございました!ミオちゃんにもよろしく伝えておいて下さい」

 

「おう、気を付けてな!」

 

そう言って彼等は別れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

再びセブンスエンカウントに戻って来たアキオはcloseと書かれた札を無視して店内に入ると、そこにはミオとサトリ、そしてもう一人の仲間を見つけた。

 

「マスター!」

 

バーテンダー風の衣装を着、顎髭を生やしながらも若者風の髪形をセットしている男性はアキオの声に片手を上げて返事をした。

 

「ようアキオ、一年振りだな」

 

「ああ、久しぶり・・・って"一年"!?」

 

渋面の男性、マスターはアキオ達の今までの経緯はミオから聞いていると前置きをおいて語り始めた。

 

「俺がこの世界に来たのは今から一年前だ。勿論直前の記憶はお前達と同じでグレイトフルセブンスでの戦いを終えたところだ。身ひとつで放り出され、路頭に迷っていた俺は兎小屋というバーの店主に拾われ最近までそこで世話になっていたんだ」

 

そう言いながら人数分の珈琲を淹れるマスターに「何でバーで世話になったのに珈琲?」とアキオは訊ね、マスターは「昼間は喫茶店だった」と返す。

 

「それでだ。俺以外にもこの世界に仲間が来ているんじゃないかと思ってだな、兎小屋の店主の援助もあってここにセブンスエンカウントという名前で店を建てたんだ」

 

そう説明してそれぞれに珈琲を配るとカウンター席に腰掛けた。

すると今度はサトリが口を開く。

 

「ボクはアキオ達と同じように数日前のこの世界に来たんだ。状況が全く分からないし、通貨も違うし、困り果てた時に目の前にこの店があったんだ」

 

「お前さん、あの時は子どもみたいに泣いてたな」

 

「マスターうるさい!」

 

くっくと笑いながら思い出すマスターにサトリは顔を真っ赤にして抗議する。

アキオとミオはその時の光景を思い浮かべてはニヤニヤと笑い、それに気付いたサトリはわざとらしく咳払いをして続けた。

 

「で!マスターと無事再会できたボクはここでマスターと一緒に他の仲間を待ちながら仕事の手伝いをしてたんだ」

 

「他に13班や前の世界の人間は?」

 

アキオが他の仲間の安否を聞くが、マスターもサトリも首を横に振った。今この場にいないという事はそう言う事なのだろうが、僅かな希望を持って聞かずにはいられなかったのだ。

アキオはサトリ達の反応に「そうか」と相槌を打つと、今度は二人に魔法少女について語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「魔法少女か・・・お前さんは放っては置けんか?」

 

「そりゃまあ、知っちまった訳だしね」

 

話を聞いたマスターは藪から棒に訊ねる。アキオの答えにサトリとミオも同調するように頷いたが、マスターはどこか困ったような顔をする。

 

「だがそいつは何を持って終わりとする?」

 

「何を、って・・・」

 

言葉に詰まるアキオにマスターは諭すように語りかける。

 

「俺達の時のように明確な終わり、最終目標がある訳じゃないんだろ?その魔女が呪いから生まれるってのがどう言う事かは知らんが、真竜のような親玉がいる訳でも無さそうだし、全ての魔女を消し去るなんて無理なんじゃないか?だとしたらいつまで手を貸す」

 

マスターの言う事はもっともだった。

この世界に適応したとは言えアキオ達の願いは元の自分達の世界を再構成して帰還するというものだ。

魔法少女の戦いに中途半端に手を貸して、帰還の方法が分かったらはいさよならというのは後味が悪いし、かと言ってマスターの言うように魔女との戦いに終わりなど見えない。

 

「それでも・・・」

 

だがアキオは言葉を紡ぐ。

 

「それでもさ、やっぱり放っては置けねーよ。もしかしたらあるかも知れないじゃん?一気に魔女との戦いを終わらす方法がさ」

 

全く合理性も計画性も無い楽観的な発言。しかしそれでも、何が出来るか分からなくても誰かの力になろうとする。

そんなアキオだからこそ、過去・未来・現在で沢山の仲間が着いて来てくれたのだろう。

 

「マスター、ボクはアキオの意見に賛成だよ」

 

サトリがマスターの目を見て宣言する。

 

「わ、私も!」

 

それにミオも続く。マスターは二人の目を見て、今一度アキオに向き直ると彼は相変わらず口元に笑みを携えていたが、その目は真剣そのものだった。

 

「まったく・・・変わらんな」

 

ふっ、と表情を緩めながら言うマスターに、自然と張り詰めていた空気はもうどこかへと消えてしまった。そしてマスターが右手を差し出すとアキオは迷わずその手を握った。

 

「ああ、マスターにとっては一年でも俺にとってはたった数日だからな!」

 

アキオもニカッと笑い軽口を言って見せる。

ハッキリと口で言った訳ではないが、マスターも今回の件に力を貸してくれるという事がアキオ達には分かったのだ。

 

「じゃあさ、とりあえず全員の意思が確認できたところで今後の方針を決めようよ」

 

サトリの言葉に各々が考え始める。

 

「アキオ、仮に魔法少女達がいない時に魔女の結界を見付けたら、こちらから侵入する事はできるか?」

 

まず口を開いたのはマスター。

 

「たぶん、使い魔にハッキングが効いたって事は結界の入り口にハックして入る事はできるかもな。けど他の物理的な手段で入れるかは分からねえ」

 

「という事はアキオか魔法少女がいなければこちらから手出しは出来んか・・・」

 

そう呟いて考え込むマスターに、アキオはハッキングも実際やった訳じゃないから確証は無いと付け足す。

次にサトリが疑問を口にする。

 

「そもそもキュウべえって何者?普通の女の子を魔法少女にして、願い事を叶えて・・・そもそも願い事を叶える力で魔女を倒した方が手っ取り早いんじゃない?」

 

「その辺はいろいろと制約があったりするんだろう?まあキュウべえとやらの目的が魔女を倒す事ならばな」

 

そう言うマスターにサトリはどういう事かと訊ねると、マスターは珈琲で口の中を湿らせてから説明した。

 

「魔法少女の使命として魔女退治をさせているが、キュウべえと魔女の関連性は今のところ一切無い。アキオがキュウべえに魔女退治の目的を聞いたが答えは返ってこなかったんだろ?」

 

その問いに頷くアキオ。

 

「そいつは単純に魔女を倒す理由がキュウべえ側には無いんじゃないのか?だとしたらキュウべえの目的は何だ?」

 

「魔法少女を生む事?」

 

ミオが呟くとマスターは頷いた。

 

「それだ。もしくは契約という行為に何かあるのかも知れんが、いずれにせよナガミミの言う通りやっこさんの動きには油断しない方がいいだろう」

 

「本当の敵は魔女なのか、それとも・・・」

 

「まああくまでも一つの推察に過ぎん、敵と決めつけるのは早いだろう」

 

口ではそう言いながらもマスターは、キュウべえという存在は信用できないと心の中で考えていた。

 

結局情報の無い今は今日のように魔女退治には出来るだけアキオかサトリがついて行き、結界の入り口を見付けたらアキオか魔法少女に連絡、そして新しい情報が入ればこの店にて交換するという事で今後の方針は決まった。

 

「そんじゃ、この事は明日マミちゃんに伝えておくよ」

 

「よろしくね、アキオ」

 

これからの事が決まったところで、アキオとミオはセブンスエンカウントから出て行った。

 

その光景を外灯から見詰める赤い瞳の存在に誰も気付いた者はいない。

 

「やれやれ、どうやら僕はあまり彼等に信用されてないようだね。でも面白い言葉が聞けたよ。"真竜"・・・か。そろそろアレの試験を行う事だし、彼等から新しい情報が手に入るか見ものだよ」




この小説の為にセブンスドラゴン3をやり直そうと思いましたが
せっかくだし新しいキャラで→アキオ達(一周目)の脳内ストーリーが自分の中でハマり過ぎて無理→でも他のキャラメイクしたい→だけど自分の中でミオのヒーローはアキオ→でも(以下無限ループ
こんな感じで結局一周目の記憶とwikiを頼りに書いてます

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