魔法少女まどか☆マギカ ~狩る者の新たな戦い~   作:祇園 暁

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第6話にしてようやく戦闘回です


第6話【魔法少女の実力】

魔女の結界へと突入したアキオ達が目にしたのは、分かれ道がいくつもあるいりくんだ等身大の迷路だった。それも奥に見える広い空間では通路が横や下を向いており、無闇に進めば方向感覚を失ってしまうだろう事が容易に想像できた。

そんな結界内をマミは臆する事なく進んでいき、三人もそれに従ってついて行った。

 

すると彼等の侵攻を阻止しようとコラージュでできたとても生物とは言えない物体が蝶のように羽ばたき取り囲もうとしてくる。

 

「コイツらは?」

 

「魔女の使役する使い魔。昨日のアキオさんが髭ダルマと呼んでたのと同じ存在です」

 

そう説明しながらマミは手慣れた手つきで召喚したマスケット銃で飛翔する使い魔を撃ち抜く。

 

「私は道を拓くので、鹿目さん達の事はお願いします」

 

「OK任されて!」

 

アキオは一同の背後から迫り来る使い魔の一団に対し、愛用する二丁銃《ゲオルギア》を引き抜くと常識離れした脚力で横に跳びながら引き金を引きまくった。その連射と狙いも驚異で、彼が着地した時には既に横一例になって迫って来ていた使い魔は全て撃ち抜かれていた。

 

「ハッ!一網打尽、ってね♪」

 

「すっげ・・・」

 

「マミさんもアキオさんも、格好いい」

 

今アキオが使った《エア・アサルト》は対集団戦を想定した技だ。素早く全体に攻撃を加えるこの技は一体に対する威力が低くなってしまうが、使い魔にはそれで十分なようで護衛役のアキオにとってはそれが分かった事により動きやすくなった。

 

それを見ていたマミも同じ射撃を主にする者として対抗心を燃やしたのか、よりペースを上げて結界内の侵攻を再開する。

 

二人の活躍にまどか達は心を奪われた。

華麗に戦うマミ、クールにキメながら戦うアキオ。

 

(私も・・・魔法少女になったら、あんな風にカッコよくなれるかな?)

 

まどかは二人の戦いを見て思った。

 

自分には何の取り柄も無い、運動も勉強も特別得意という訳ではない。だけどもし魔法少女になればこの二人のように、胸を張れる事ができるようになるのではないだろうかと。

 

 

 

 

 

 

 

そして彼等は結界の最深部へと辿り着く。扉を守る使い魔達を排除し、その奥へと入ると広い空間の真ん中にその魔女はいた。

 

それは形容し難い異形の怪物。あえて特長を述べるなら顔のような部分にいくつもの薔薇、そして背中には揚羽蝶のような羽が付いたものだった。

 

「うわ・・・グロ」

 

「あんなのと戦うの?」

 

「黒づくめでヒッヒッヒ、とか笑ってる婆さんじゃないのね」

 

それぞれが思った事を口にする中、マミはさやかが持っているバットを受け取ると地面に突き刺し結界を発生させた。

 

「大丈夫、負けるもんですか!アキオさんも、私の戦いを見ていて下さい」

 

マミは三人に対し安心させるよう笑顔を作ると、魔女の佇む部屋へと飛び込んだ。

 

その侵入者に対し気にした様子を見せず魔女は椅子に座り続けているが、マミが近くにいた小さな使い魔を踏み潰すとピクリと反応した。

マミはこちらを見た魔女にお辞儀をしながらスカートをたくし上げるとまずは二本のマスケットが出現、その挑発に乗った魔女が座ってた巨大な椅子を投げつけてくるが冷静に中央を撃ち真っ二つにするとマミに当たる事はなく床に落ちてゆく。

今度はマミが複数のマスケットを召喚し反撃にでるが魔女は背中の羽を羽ばたかせ俊敏に逃げ惑う。

その間に接近していた使い魔達が姿を変え黒い鞭となりマミを拘束した。

 

「マミちゃん!!」

 

鞭に振り回されながらも射撃を行うが狙いが逸れ魔女に掠りもしないまま、彼女は壁に叩きつけられてしまった。

それから仕留めた獲物を確かめるようにマミを宙吊りにする魔女。

 

その光景にまどかは手で顔を覆い、さやかはアキオを急かした。

 

「アキオさん!マミさんが・・・!」

 

「いや、まだだ」

 

しかしアキオは気が付いた。

先程マミが外したと思われた弾の着弾点から魔法のリボンが昇って、この魔女の特長にもなっている部屋中の薔薇を裂き、それに気付きリボンを何とかしようとする使い魔達も絡め取っていたのだ。

ようやくその光景に気が付いた魔女は、怒りを露にしマミに巨大な鋏や茨を向け迫るがそれが届く事は無かった。部屋中の弾痕からリボンが伸び魔女を拘束したのだ。

 

「惜しかったわね」

 

そう言ってマミが胸元のリボンをほどくと意思を持ったように空中を飛び、彼女を拘束する鞭を断ち切った。

 

「けど、未来の後輩たちにカッコ悪い姿は見せられないものね!」

 

空中で姿勢を整えるマミの前に先程のリボンが来るとそれは巨大な大砲を形作る。

これには流石のアキオも驚いた。

立場が逆転してしまった魔女に、次の攻撃をどうにかする手立ては無いだろう。

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

その必殺の名を叫んだのと同時に大砲の撃鉄が火花を散らしながら鳴り、特大の魔弾が魔女を撃ち抜いた。

 

魔女の爆発を背後に見事に着地すると、いつの間に用意したのか時間差で降ってきたティーカップを華麗にキャッチして優雅に紅茶を口にするとマミは三人に笑顔を向けた。

 

一連の流れを見ていたアキオはやはりマミの意識に危惧を覚える。

恐らく先程使い魔に捕まったのは演出だろう。それに彼女は言っていた、「未来の後輩たち」と。

表向きは契約をよく考えさせるためと言いながら、華麗な逆転劇を演出したり、彼女は二人に魔法少女になって欲しいのではないか?

 

しかし一方で彼女の実力を認めてもいた。

彼が魔女の戦いを見て感じた力、それは自分達が戦って来たドラゴンに並ぶものだった。と言っても真竜や帝竜などの化け物クラスではなく最下層のドラゴンだが。

しかし最下層とは言えその力は凄まじく、一対一での戦闘になれば13班のメンバーでも気を抜いたら負けるほどだ。実際彼が2020年の竜災害について調べた時には武装した自衛隊ですらドラゴンには勝てなかったという情報を目にしていた。

そのドラゴンと同等の相手に一人で勝利をものにする彼女の実力は本物だろう。

 

アキオがマミの今後をどうするか考えている間に魔女の結界は歪み、消滅していった。

元の廃ビルに戻ったところでマミは変身を解き、戦利品を三人に見せる。それはソウルジェムに似てはいるが漆黒の闇を内包しているような、そんな物体だった。

 

「これはグリーフシード、魔女の卵よ」

 

そのマミの説明に三人は後ずさった。さやかがその安全性を訊ねると、キュウべえはむしろ便利な物だと言う。

 

「私のソウルジェムを見て。さっき見せた時より濁っているでしょ?」

 

「それは魔法を使ったから、かい?」

 

「ええ、だけどこのグリーフシードがあればソウルジェムの穢れを浄化する事ができるの」

 

そう言ってマミがソウルジェムをグリーフシードに近付けると、ソウルジェムから黒い靄のようなものが出てグリーフシードへと移っていった。するとソウルジェムは本来の輝きを取り戻す。

その光景を見てアキオはピンときた。

 

「ああ成程!昨日言ってた取り合いになるほどの見返りがこのグリーフシードな訳ね」

 

その言葉にマミは頷くと、光の差さない暗闇へとグリーフシードを投げた。

突然の行動にまどかとさやかは驚くが、暗闇からはその落下音は聞こえてこない。代わりにコツコツと足音を響かせながら四人の行動を監視してた人物が姿を現す。

 

「あともう一回ぐらいなら使えるはずよ。それとも誰かと分け合うのは不服かしら、暁美ほむらさん?」

 

マミの挑発的な言い方に動じる事なく、以前見たのと同じ無表情な顔でほむらは出てきた。

 

「別に・・・」

 

そう言いながら手に持っていた、先程マミが投げたグリーフシードを投げ返す。

 

「それはあなたの獲物よ。あなたの好きにすればいい」

 

ほむらはそれだけ言って再び闇へと姿を消して行った。

一方のマミは忌々しげな表情でほむらが消え去った場所を見ている。アキオはそれが気になった。

 

「くぅー!何なのさあの転校生、やっぱムカつくー!」

 

「魔法少女同士仲良くやれたら良いのに」

 

「相手にその気があればね」

 

中学生組の何気ない会話。だがアキオは口を出さずにはいられなかった。

 

「本当にそうかい?」

 

「え?」

 

「マミちゃん、本当にそう思ってるなら何であんな挑発的な言い方をしたんだ?」

 

「私・・・そんな言い方してました?」

 

アキオの言葉に少し表情を険しくさせながらマミは問い掛けた。アキオは頷くと再び口を開く。

 

「結局まだ昨日の件だってこっちが勝手に予想して悪者扱いしてるけど、向こうの事情を聞いてない訳だしさ」

 

「なにさアキオさん!あの転校生の肩を持つっていうんですか!?」

 

マミに憧れを抱いているさやかは彼女が批判されたと思い噛みついてきたが、それでもアキオは続けた。

 

「そうじゃねーよ、ただあの子の事は何も分かっちゃいないんだし一方的に敵だと決めつけないで、次に会った時にでも話をしようぜ。敵かどうかはそれから決めても遅くはないんじゃない?」

 

「それこそ相手にその気が無いと、アキオさんも昨日断られたじゃないですか」

 

どうやらマミは一度思い込むと中々他の考えをできない質らしいとアキオは判断した。

これ以上は自分も厄介者と思われかねんと考えたアキオは最後に一つだけと言い、マミにある事を提案した。

 

「とにかくあと一度だけでも対話を試みてくれ」

 

「分かりました、善処はします」

 

こうしてこの日の魔女退治は完勝に終わったが、アキオとマミ、さやかの間に歪な雰囲気が生まれてしまったのであった。


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