魔法少女まどか☆マギカ ~狩る者の新たな戦い~   作:祇園 暁

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キャラ崩壊の犠牲者・・・いや、原作終了後の変化だから大丈夫ですよね(能天気)


第4話【父なる真竜】

「ひえああっ!?」

 

マンションの一室に響いた余りにも情けない悲鳴。その声の主は魔法少女についての説明を聞いて今しがた帰って来たアキオだった。

一方アキオと共に帰宅したミオの反応は彼と違い、目を輝かせながらその原因を見ていた。

 

「お帰りなさい、狩る者。そして少女よ」

 

そこにはミオが普段使用しているフリルの付いたピンクの可愛らしいエプロンを、漆黒のローブの上から掛けている変質者・・・いや、アイオトがいた。

 

「少女よ、エプロンを拝借しているぞ」

 

エプロンを掛けているという事は言わずもがな、彼はキッチンに立ち料理をしていた。その傍らにはげんなりとした顔のナガミミが立っている。

 

「どうしたのアイオトさん!料理なんかして」

 

このカオスな空間をものともせず元凶に嬉々として訊ねるミオ。

彼女にとっては一緒に暮らす家族の新たな一面が見れて嬉しいのだ。

 

「ふむ、汝等を理解するのなら同じ視線で世界を視ねばと思うてな」

 

「この料理はその一環なんだとよ」

 

「お前は何でそんな疲れてんの?」

 

「いや、小一時間こんな気味悪い奴の手伝いしてたらこうもなるわ」

 

意外だ。

 

ナガミミの言葉にアキオはそう思った。アイオトは基本的に何をするにも単独で勝手にやるイメージがある。あくまでもイメージだが。

まさか真竜が他人に手伝いを頼むとは、彼の自分達人間に興味を持ち理解を深めようというのは本当のようだ。

そう思うと彼との共同生活も悪くは無いと思い始めていた。いや、今の料理以外置物同然で共同生活らしい事など全く無かったが。

 

 

 

 

 

 

 

夕飯時、食卓には魚の煮付け、お新香、そして味噌汁とシンプルながら見事な和食が並んでいた。

 

(何で和食なんだ?)

 

そんな事をアキオが考えている横で、ミオはクスリと笑った。

 

「ミオ?」

 

「いや、何だかいつもは無愛想なお父さんがやむを得ず料理を作ってくれた、みたいなイメージがして」

 

「アイオトがお父さんねぇ」

 

その会話を聞いていたのか人数分の茶碗をお盆に乗せて来たアイオトも会話に加わる。

 

「父・・・か。成程確かに、地球に生命を撒いた我はその父なのかも知れぬ」

 

「ふーん。それでアイオトっつぁん、料理の知識はどこで手に入れたんだ?」

 

「インターネットだ」

 

「・・・は?」

 

確かにリビングの一角に机と据え置きのパソコンはある。

アキオは椅子に座ってパソコンのキーボードを弄るアイオトを想像し、先程ミオの言った不器用なお父さん像が重なって吹き出してしまった。

 

「それじゃあアイオトさん、いただきます!」

 

全ての準備が整ったところで食事が始まった。

皆が料理の味に舌鼓を打つ中、アイオトは料理に手を付けず一人なにかを思案していた。

 

「いただきます・・・ごちそうさま・・・」

 

そう呟くアイオトにナガミミがいつもの毒舌を吐く。

 

「おいおい、テメエが小声でぶつぶつ言ってたら感謝の言葉も呪いに聞こえるぞ」

 

「感謝・・・か」

 

それを気にせずアイオトは語り始める。

 

「我々ドラゴンは生命を育て、ただ当たり前のように喰らってきた。それを人間が家畜を育て喰うという事に重ねる者もいたが、違うのだな。人間は自らの糧になる生命に感謝している、我々ドラゴンには無かったものだ」

 

「だからっていただきますで俺様達を食うなよ?」

 

若干身体をアイオトから離しながら言うナガミミ。しかしアイオトは意外な言葉を持ってそれを否定する。

 

「その心配は無い。我が父なら汝等は子供達だ。家族を喰らう者はいまい」

 

家族。

 

その言葉を呆然と聞くアキオとナガミミだが、ミオはとても嬉しそうな表情だ。

彼女はそもそも殆どの時間を一人で過ごしてきた。母親はこの世を去り父親は行方不明、彼女を引き取った祖父は研究のため家にいる時間の方が少なかった。そんな境遇のためか、この状況を求めていたのだろう。

 

「アイオトさん、家族なら私達の事は名前で呼んで!」

 

ミオの提案にアイオトはしばらく間を開ける。そして

 

「ミオ・・・アキオ・・・ナガミミ」

 

そう声に出し、それを聞いたミオも満足そうに返事をした。

 

その後、どうやって食事をとるのか興味津々でアイオトの仮面を見つめていたアキオだったが、気が付いたら彼の分の料理が無くなっていて何が起こったか理解出来ないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「魔法少女に魔女、それにキュウべえねぇ・・・」

 

食事の間に今日起きた事を聞いたナガミミは思案するように呟いた。

 

「そんなの前の世界じゃ確認されなかったぜ?アイオト、テメエなら何か知ってんじゃねーか?」

 

しかし話を振られたアイオトも心当たりは無いらしく、一言「いや」と言うだけだった。

 

「だがな、小娘。今後何が起こるか分からねえが、絶対に契約しようなんて思うなよ?」

 

ミオに対し強く釘を刺すナガミミ。

 

「もうナガミミちゃんたら、大丈夫だよ」

 

困ったように笑いながら言うミオだが、ナガミミは難しい顔をしていた。

そんなナガミミを宥めるようにアキオが割って入る。

 

「まぁまぁ、せっかく可愛くなったのにそんな顔すんなよ、ナガミミちゃん♪」

 

「テメエ・・・」

 

今の少女の姿を茶化すように言ってくるアキオに頬を赤くしながらふるふると怒りに震えている。

しかしお構い無しといったようにアキオは続ける。

 

「心配しすぎだって。キュウべえだってさやかちゃんが願い事に飛び付いた時、魔女との戦いになるって警告してくれたんだぜ?」

 

「それだよ」

 

間髪入れずに突っ込むナガミミ。

 

「相手を心配してるような素振りだが、だったら初めから契約なんて持ち掛けんなって話だ」

 

「いや、それはたぶん止むに止まれぬ事情があって・・・」

 

ここまで言ってアキオはまだキュウべえの魔女退治の理由を聞いてない事に気が付いた。それに思い起こせば最初に契約を持ち掛けて来た時もそんなやむを得ずという雰囲気などなく、女の子が惹かれそうな可愛らしい仕草をしていた。

その一方でナガミミは止まらない。

 

「まあそうかもな、何か理由があるのかも知れねえ。だがやり方が気に食わねえ。魔女少女と言うからにはキュウべえの狙いは子供だ。俺達の世界と比べてかなり平和なこの世界の子供に、何でも願いを叶えるから魔法少女になって魔女と戦ってくれなんて、だいたいは二つ返事で了承するだろ」

 

これにはアキオも言い返せない。

 

「うん、確かに魔法少女なんて女の子の憧れだもんね」

 

ミオも納得したように思った事を口にする。

 

「魔法少女になれて願い事も叶って・・・魔法少女になって戦うっていうのもカッコいいものだと思っちゃうかも」

 

「これほどキュウべえとやらのターゲット層に有効な条件はねえな」

 

二人の話を聞いてアキオもキュウべえに対しだんだんと疑念が湧いてきた。

 

「まあ要するにそいつは胡散臭いって話だ。信用するなとは言わねえが油断はするなよ?」

 

ナガミミの忠告に二人は静かに頷いた。

 

「そう言えば!」

 

突然何か思い出したかのように声をあげるミオ。そんなミオを不思議そうに見るアキオだが次のミオの言葉で彼も声をあげる事になる。

 

「今日はどうして私を仕事終わりに呼んだの?」

 

「あっ!」

 

色々な事がありすっかり忘れていたのだ。

 

「ミオ、ナガミミ、もしかしたらだけど」

 

そうアキオが切り出した時、イーターホンがなりそれは中断された。

ミオが返事をしながらぱたぱたと玄関へ駆けていき扉を開けると、訪問者を部屋へと招き入れた。その人物は

 

「マミちゃん?」

 

「こんばんは。夜分に失礼します、アキオさん」

 

そう、それは数時間前に別れたマミであった。

マミは居間へ通されるとアキオ、ナガミミ、そしてソファーに佇むアイオトを見付けてギョッとするが、ミオに促されるままにテーブルを挟んだアキオの正面に座るマミ。

 

「紹介するね、そっちがナガミミちゃんで、あっちがアイオトさん!」

 

「ど、どうも、巴マミです」

 

今更だが入居の挨拶にはアキオとミオが回り、マミとこの二人は初対面である。

ナガミミは営業スマイルでお淑やかに、アイオトは無言をもって返した。

 

「まあアイオトは気にしないでさ、どうしたの?」

 

そのアキオの言葉で気を持ち直したマミは早速用件を切り出した。

 

「さっきお話した魔女退治の件なんですけど、明日早速行おうと思ってます。それで、アキオさんも一緒に来て頂けませんか?」

 

そこでアキオはある事を思い付いた。

 

「OK、じゃあ明日も今日と同じ時間に空くから17時ぐらいに待ち合わせしようか」

 

「はい、じゃあ場所はどこにします?」

 

アキオはその問いに予め決めていた言葉を口にした。

 

「最近できた新しい喫茶店、セブンスエンカウントでどうだい?」

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わりアキオ達の住むマンション前。そこにはアキオ達の部屋をじっと見詰めている暁美ほむらの姿があった。

 

「イレギュラーね、まさかここにきて新たな魔法少女候補が現れるなんて」

 

彼女が思い出すのはまどか、さやか、マミ以外にあの場にいた少女。つまりはミオである。

そして次にアキオの姿を思い出し難しい顔をしながら再び呟いた。

 

「しばらくは様子見。利用できるようなら機を見て接触しないと。逆に邪魔になるようなら・・・」

 

その先の言葉を言う前にほむらはその場から瞬時に姿を消した。




アイオとっつぁん、これだけがやりたかった

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