魔法少女まどか☆マギカ ~狩る者の新たな戦い~   作:祇園 暁

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第3話【魔法少女】

「巻き込んじゃった以上説明しないとね」

 

助けを求めるさやかとまどかと出会ったアキオ達。直後に謎の空間に巻き込まれ見た事の無い生物に襲われる。

 

「けどその前に」

 

そこに現れたのは彼らと同じマンションの隣の部屋に住む巴マミだった。

 

「ちょっと一仕事、片付けちゃって良いかしら?」

 

そう言いながら両手で前方に宝石をつきだすと、一瞬マミは光に包まれ次の瞬間には衣装が変わっていた。

 

中世ヨーロッパの銃兵士のようなクラシックな格好となった彼女は普通の人間ではあり得ないほどの跳躍をすると腕を振るい、空間に大量のマスケット銃を召喚した。

 

「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!」

 

その言葉が文字通り引き金となり、現れたマスケット銃から一斉に弾丸が発射された。

その弾丸の雨に成す術もなく殲滅される髭ダルマ達。

彼女が華麗に着地した時にはもう一匹も残っておらず、この異質な空間も景色を歪ませながら再び見滝原デパートへと戻った。

 

「す、すごい・・・」

 

呆気にとられるさやか達。そしてそれは竜との戦いを経験したアキオ達も同様だった。

 

(変身したのも驚きだが、あの身体能力に大量の銃を召喚する能力・・・S級の力を持ってるんじゃないか?そして何より)

 

思考しながらアキオの視線はマミの胸元へ吸い込まれた。

 

(引っ越しの挨拶の時にも思ったが、やはり)

 

「アキオのバカーーー!!!」

 

突如ミオが大声を出しアキオの背中をぽかぽかと叩いた。

 

「うぉっ!ミオ!?いったいどうし」

 

「もう!アキオの考えてる事なんて分かるんだから!」

 

そう言いながらミオも、驚いた様子でこちらを見るマミの胸を見た。

自分とはかけ離れたサイズ。素直に羨ましかった。

 

「わ、私だって大人になったら・・・」

 

「は?」

 

ゴニョゴニョと何かを言うミオの言葉を聞き取れず疑問符を浮かべるアキオだが、まどかとさやかは察したらしく、同じように自分たちとマミの胸を見比べて落胆するのだった。

 

新たな人物が現れたのはその時だった。

 

積まれた資財の上から鳴る足音。それに気付いた彼等が視線を音のした場所へ向けるとそこには黒髪のロングヘアーをした少女がこちらを見下ろしていた。

感情の読めない冷めたような目でアキオ、ミオ、そしてまどかの順に視線を動かす少女。

 

「あっ!あいつですこの動物虐めてたの!」

 

そう言いながらさやかはまどかを守るように彼女を抱き締める。

そしてさやかの言葉を聞いたマミは静かに、しかし少し怒気を孕んだ声で少女に語りかけた。

 

「魔女ならもう逃げたわ。仕留めたいならどうぞ」

 

「私が用があるのは」

 

「鈍いのね」

 

少女の言葉に、聞く気が無いとでも言うようにマミは被せて言った。

 

「見逃してあげるって言ってるの」

 

「・・・・・」

 

沈黙。

 

彼女達の事情を知らない者達は事の成り行きを見守るしかできないでいた。

 

彼を除いて

 

「ストーップ!」

 

「!?」

 

「え?」

 

突然のアキオの声にその場にいた全員が何事かと彼を見詰める。

 

「俺には君達の事情は分かんないけどさ、そっちの子をそんなに邪険にしなくてもいいんじゃない?」

 

「でもそれはあの子がキュウべえを」

 

「何か理由があるかも知んないし、単なる誤解かもよ?それにここで睨み合うより先にキュウべえとやらをどうにかしないと」

 

「でも・・・」

 

一連の言動からマミにとってキュウべえはかなり大切な存在だと分かるが、それでもマミは黒髪の少女に背中を見せるのを躊躇った。

 

「ほら君も、そんな所にいないでさ!話を聞かせてくれよ」

 

「なっ、ちょっとお兄さん!」

 

咎めるように声をあげるさやかだが、アキオは気にせずニコニコと黒髪の少女を見ていた。

 

「・・・話せる事なんて何も無いわ」

 

だが黒髪の少女はアキオの誘いを断り、その場から姿を消した。

 

「あーあ、振られたな」

("話す事"ではなく"話せる事"・・・ね)

 

彼女の言い回しが気になり、アキオはしばらく少女がいた所を見詰めるのであった。

 

一方マミは少女がいなくなるや否や直ぐ様まどか達へと駆け寄りキュウべえを受けとると、手から不思議な光を出しそれをもってキュウべえの傷を癒した。

そしてアキオが様子を見に来た時には既に自力で動けるようにまでなったキュウべえはマミを見上げた。

 

「ありがとうマミ、助かったよ!」

 

驚くべき事にキュウべえは人語を喋った。しかしその事態に驚いたのはまどかとさやかだけで、アキオ達はというと元の世界で縫いぐるみが動いて喋りドラゴンでさえ人語を話すのだから無反応なのも仕方無いだろう。

 

「お礼はこの子達に。私はたまたま通り掛かっただけだから」

 

「そうだね、助けてくれてありがとうまどか、さやか!」

 

キュウべえに名前を呼ばれ再び驚く二人。さらに

 

「それと、君は那雲澪だったかな?」

 

「私の名前も?」

 

流石に異世界人である自分の名前を言い当てられたのにはミオも、そしてアキオも驚いた。

 

「実は僕、君達にお願いがあって来たんだ」

 

そんな四人の様子などお構い無しにキュウべえは続けた。

 

「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「改めて、私は巴マミ。見滝原中学校に通う三年生で、キュウべえと契約した魔法少女よ」

 

あれから十数分後、キュウべえの言う契約と魔法少女の説明のため一同はマミの自宅へと場所を移した。

マミは人数分の紅茶とケーキを手際よく用意すると話を切り出した。

 

「あの、契約って?」

 

不安そうにまどかが質問するとすぐにキュウべえは答える。

 

「僕と契約してくれたら君達の願い事を、何でも一つだけ叶えてあげるよ?」

 

「何でも!?」

 

「そうだよ。どんな奇跡だって起こしてあげられる。だけど一つだけ注意しなければならないのは魔法少女となったら魔女と戦うという使命を負ってもらわなくちゃいけない事だ」

 

願い事に食い付くさやかを諭すようにキュウべえは魔法少女の使命を切り出す。

 

「魔女?」

 

キュウべえは説明を続ける。

 

魔女・・・それは祈りから生まれる魔法少女に対し、呪いから生まれる存在。魔女は結界を作って閉じこもり、目をつけた人間を自殺や交通事故などへ駆り立てる。結界に迷い込んだ場合にどうなるかは分からないが、いずれにせよ生きては帰れないだろう。そして魔法という力を持った魔法少女も必ず勝てる保証はなく命懸けの戦いになる。

 

説明を聞いたまどか達は命懸けという言葉に臆してしまう。それも当たり前だろう。

彼女達は今まで死とは無縁の人生をおくってきた。そんな齢14歳の少女が先程の体験をし今の話を聞けば怖じ気づかない方がおかしい。

 

一方ミオも、わざわざ命を懸ける理由など思い付かなかった。

かつて自身の身体を蝕んでいた竜斑病もアキオの願いにより消えているし、元の世界への帰還もアキオならなんとかしてくれるだろうと信頼していた。

 

そんな彼女達にマミはある提案をした。

 

「なら、今度私の魔女退治を見学していかないかしら?あなた達は確かにどんな願いも叶うチャンスがあるけど、実際に魔女との戦いを見てから判断して欲しいの」

 

しかしそれに異を唱える者がいた。

 

「待ったマミちゃん」

 

「アキオさん?」

 

アキオは彼女に対しある懸念を抱いていた。

 

「大丈夫ですよ、彼女達は私が責任を持って守りますから」

 

「でもマミちゃん、これは命懸けの戦いって言ったよね?万が一君がやられたらミオ達はどうなる?」

 

「それは・・・」

 

アキオの抱いていた懸念。それはマミが戦いを甘く見ているのではないかという事である。

彼の見立てだと恐らくマミは魔女との戦いで本当の生死の境を経験した事がないのだろう。故に命懸けの戦いに見学などという言葉を使えたのだ。

マミ自身に自覚は無いだろうが恐らく心の底では絶対に負ける事など無いという気持ちがあるはずだ。

 

「守りながらの戦いは一人の時と勝手が違う。三人をフォローしながら君は一人で戦えるかい?」

 

「でも・・・」

 

マミはなかなか言い返せなかった。言葉だけではない、ここにくるまでは終始気を抜いたような顔していたアキオが今は真剣な表情で見詰めて来ているのだ。

その顔は数々の修羅場を潜り抜けて来た顔だというのを、長年魔法少女をやってきたマミには分かったのだ。

 

「だったらさ、アキオさんも一緒に来てくれればいいじゃん」

 

「へ?」

 

その言葉を口にしたのはさやかだった。

 

「ほら、何か魔法みたいの使ってたじゃん」

 

さやかが言っているのはハッキングの事だろう。さらに

 

「僕も是非それをお願いしようと思ってたところだ。アキオ、君もミオが自分の手の届く範囲にいれば安心だろ?」

 

キュウべえがさやかに続いた。

 

「いやそう言う問題じゃ・・・」

 

アキオはそもそも戦う必要の無い少女達が危険な場所に踏み込むのを止めたいのだ。マミ一人じゃ不安だから自分も行く、という訳ではない。

いや、マミに関しては戦いに対する認識を改めるよう何とかしようとは思っていたが。

 

「ねぇアキオ、私は魔法少女になるつもりは無いから行かないけど、巴さん達を見てあげて」

 

追い討ちをかけるようにミオの一言。これにはアキオも折れた。

 

「分かった、分かったよ。俺も一緒に行くから魔女退治を見せてもらおうか、さやかちゃん」

 

その言葉を聞きさやかは喜び、マミは穏便に事がすんでホッとした。

 

「あ、あの!私も見に行きたいです」

 

おずおずと手をあげるまどか。今更アキオは止める気など無かった。

一方キュウべえはミオにさっきの言葉に対したずねていた。

 

「ミオ、さっきの言葉だけど」

 

「ごめんねキュウべえちゃん、私が命懸けの戦いをするなんて言ったら、きっといろんな人に怒られちゃうから」

 

それは今いるアキオは勿論姉のような女性、友達となった少女、もういない父親と祖父、他にもたくさんの人達の姿が浮かぶ。

 

その言葉を聞いていたアキオはミオが契約をする事は無いだろうと安心した。

 

そして話は黒髪の少女に移った。

彼女の名前は暁美ほむら、本日まどか達のクラスに転入したらしく、転入早々まどかにある警告をした。

 

「大切な人を悲しませたくないなら、今の自分を変えようなどと考えるな、か」

 

呟くように言ったアキオの言葉はまどかから聞いたほむらの警告である。

 

「つまりは魔法少女になるな、という事ね」

 

マミの言葉にさやかは疑問を問い掛けた。魔女を倒すのが魔法少女の使命なら仲間が増えるのは良いことなのではないかと。

だがマミが言うには魔女退治には見返りがあり、その取り分が無くなるのを嫌って先にまどかに釘を刺し、契約しようとしたキュウべえを襲ったのではないかと。

そしてマミがほむらに背中を向けられなかったのも襲ってくる可能性があったからだという。

 

「成程ね。ところでキュウべえ、お前が魔女を退治する目的ってなんだ?」

 

何気なく思った事を口にしたアキオ。それに対しキュウべえはすぐに答える。

 

「魔女は呪いを振り撒く存在だからね、放っておいたら困るだろう?」

 

「でもそれは俺達人間の都合だろ?キュウべえさんは何で魔法少女を生んで魔女を退治するのかなと」

 

しかし、今度はすぐには答えない。一瞬の間があって

 

「やば、もうこんな時間!」

 

と、さやかの慌てる声がした。どうやら中学生らしく門限があるらしく、まどかを連れて急いで玄関へ向かった。

 

「私たちもそろそろおいとましようか」

 

「ん?そうだな」

 

「じゃあ私は美樹さん達を見送って行きますね」

 

ドタドタとマミの自宅から五人は出ていった。

そんな中一人残されたキュウべえは誰に言うでもなく一人呟いた。

 

「魔女を退治する事に意味なんて無いさ。僕たちの目的は宇宙の延命、そして彼ら宇宙の災害を取り除く事だからね」

 

 




原作よりも早い段階でキュウべえの不穏な雰囲気がでてきました

13班紹介

トゥーヘァ
メイジ 22歳 3rdリーダー

カザン共和国でそこそこ名が知れたハントマン三人組《ジャスティスナイト》のリーダーで、13班の戦力補充のため現地のハントマンを募集したところ真っ先に食い付きチームで13班に参加した。
頭の回転が早く冷静に状況を把握し最善手を導き出す。しかしどこか傲る節があり、予想外の事が起こると途端にパニックになり言葉の通じない竜に「もうやめるんだ!」などと命乞いしたりメイジでありながら「トゥッ!ヘアァー!!」と掛け声と共に回し蹴りを仕掛けたりする。

所詮そこそこ名が知れた程度であり竜と連戦、ましては帝竜や真竜と戦う13班に振り回され常にパニック状態だった。が、それが功を成したのか精神が鍛えられ13班が分断された時も冷静に作戦を練りジャスティスナイトの三人で帝竜や真竜の撃破をしてみせた。


ヒマリ
サムライ(双剣) 18歳 3rd

ジャスティスナイトの一員で、ムードメーカー的雰囲気を持つルシェの女性。
何事も楽しんだ者勝ちというのを信条に何時もニコニコしている。あおいを凌ぐフレンドリーっぷりを発揮し敬愛すべき対象のウラニアを「ウラにゃん」と呼んだりしている。

サトリとは型は違えど同じサムライ同士という事でよく絡みに行ってるが、サトリは終止そのハイテンションっぷりに振り回される形になっている。


スターク
バニッシャー 42歳 3rd

ジャスティスナイトの一員の大男。
トゥーヘァとはまた違ったタイプの冷静な性格で、決して傲ったりせず、トゥーヘァがパニックになった際は叱咤しながらも彼を落ち着かせる。

かなりの戦闘力を持ち、豪快な一撃や巨体に似合わない小技などの技術を持ち合わせたジャスティスナイトの中核である。

13班に入ってからはマスターに教わったビリヤードにはまっている。

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