魔法少女まどか☆マギカ ~狩る者の新たな戦い~   作:祇園 暁

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第11話【油断の代償】

首の無い女学生の姿をした《委員長の魔女》は結界に侵入してきた人間達にありったけの机や椅子を飛ばした。しかしあろう事か、自らの使い魔がそれらに突撃して人間達の道を開いてゆく。

 

何時もはただ傍観するだけなのに、何故よりにもよって敵の味方をする?

 

「キィアアアアアアッ!!!」

 

魔女は今のこの状況に憤慨しているかのようにヒステリックな咆哮をあげた。

 

しかしそんな事はお構い無しに人間達、サトリとアキオは魔女に接近してゆく。

サトリはあと数秒で魔女に辿り着けるというタイミングで腰に下げた刀《黒刀》に手を掛ける。そしてアキオはゲオルギアをしまった状態でひたすら光のパネルを片手で操作していた。今彼等の道を切り開いているのは彼にハックされた使い魔だった。

 

魔女は業を煮やしアキオにしたようにその巨大な腕をサトリに振るう。

 

「いつもの、頼んだよ!」

 

「任せとけって!」

 

サトリの合図に答えたアキオはゲオルギアを引き抜き、彼女を飛び越えて前に出ると正確な狙いで魔女の爪先を撃ち、衝撃に耐えられなかった爪は鈍い音をたて剥がれた。その痛みに怯んだ隙をサトリは見逃さない。

瞬時に腕の真下に潜り込んだサトリは居合切りでその黒光りする刀を開放した。

 

次の瞬間、魔女の巨大な腕はその体から離れ吹き飛んだ。

 

怨嗟のこもった悲鳴をあげる魔女に追撃の手を緩める事なく、更にサトリは魔女の体目掛け走り抜ける。それをアキオが銃やハックした使い魔で援護する。

抵抗しようにも激しい援護射撃に身動きを取れない中、サトリが跳躍し魔女の胴体目掛け刀を構えた。

 

「行くよ、《八又大蛇突き》!!」

 

急降下しながらの激しい全力の突きに、魔女は貫かれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

アキオ達が勝利を手にした頃、マミ達もだいぶ結界の中を進んでいた。テレパシーで誘導してくれるキュウべえによるとそろそろ彼等の下に辿り着けるようだ。

 

しかしここまで進んでくる中でほむらはある違和感を感じていた。

 

「巴さん、あなたひょっとして怪我してるの?」

 

彼女の戦いぶりを見て、普段の彼女の華麗さが見られず、左足を庇うような素振りに気付いたのだ。ほむらの指摘にマミは苦笑しながらその事を肯定する。

 

「ごめんなさい、けど足手まといになるつもりは無いから心配しないで」

 

「そう。だけどそれなら何故あの男に来て貰わなかったの?仲間なんでしょ?」

 

本当は自分が昨日呼んだはずなのだが・・・

 

そのほむらの疑問にまどかが答えた。

 

「別の場所にも魔女が現れたらしくて、その魔女の結界に入って行ったってキュウべえが言ってたよ」

 

「別の場所に魔女?」

(おかしい、今までこんな事無かった。それにあの男が何者なのか、何を持っているのかをこの場で見られればと思っていたのに予想外だわ。・・・まさか魔女の出現パターンが彼等イレギュラーによって変化している?)

 

「だから私達でやるしかないわ。よろしく頼むわね、暁美さん」

 

その言葉に思考の底から戻ってきたほむらは返事をし、それを聞いたマミは満足そうに頷いて目の前に見えた扉をマスケットで吹き飛ばした。

すると扉の先に物陰に身を隠すさやか達を見付けて彼女達は駆け寄った。

 

「お待たせ!」

 

「マミさん!・・・それに転校生!?」

 

「お邪魔だったかしら?美樹さやか」

 

「・・・いや、あんたもマミさんと一緒に戦ってくれるんだよね?」

 

「そのつもりよ」

 

「そっか、じゃあ私達の分も頼んだよ」

 

まっすぐにその言葉を放つさやかにほむらは無表情を装いながらも内心驚いた。

一度疑いを持たれた状態で、ここまでマミやさやかと友好的になれたのは"今回"が初めてだった。いったい彼女達に何があったのだろうかと再び思考を巡らせるほむら。

 

それは今の彼女が知る由も無いがアキオ、そしてサトリといったほむらの言うイレギュラーのおかげだ。中学生の彼女達だけでは一時の感情に振り回されて大事な事を見落としてしまいがちだが、そこに高校生とは言えあらゆる修羅場を経験して来たアキオ達がその見落としてしまった物を見付ける手伝いをしたからこそ今の結果があるのだ。

 

「気を付けて四人供!魔女が出てくる!」

 

キュウべえの警告に四人の表情が変わる。

 

結界の広間の奥にドロドロとした白い液体が溢れるエフェクトが現れ、その中心から魔女が出現した。

それは今まで見てきた魔女や使い魔のように生理的嫌悪を感じるものと違い、なんとも可愛らしいファンシーな人形のような姿だった。

 

「見た目に騙されないで」

 

「分かってるわ!」

 

警告するほむらとそれに頷くマミ、二人は同時に飛び出しふわふわと落下しながら異様に脚の長い椅子に座ろうとする魔女に向かってゆく。

まずはマミがマスケットで魔女を狙い撃ち、直撃はしなかったものの弾丸に弾かれるようにあらぬ方向へと落ちてゆく。そして魔女が地面に叩きつけられた瞬間、ほむらの魔法だろうか、その落下地点が爆発した。

再び吹き飛ばされる魔女だが、その先にいるのはマスケットを野球のバットのように構えたマミだった。

 

「今日の私は気分が良いの、だから速攻で終わらせてあげる!」

 

その構えたマスケットで魔女を打ち返し、哀れ三度飛ばされた魔女は壁にぶつかったところでいつ取り出したのかほむらのハンドガンによる追撃を受けてからパタリと地面に落ちた。

マミはその魔女に近付き容赦無く頭にマスケットを撃ち込むと、リボンにより拘束しながら高く持ち上げた。

そして

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

必殺の一撃が魔女を撃ち貫いた。

 

その光景に歓声をあげるまどか達。マミも全てをやりきったように肩の力を抜くが、ほむらだけは違った。

 

(ここまではいつも通り。せっかく良好な関係が築けそうなんだから、失敗はできない!)

 

次の瞬間、倒したと思った魔女の口から巨大な芋虫のような怪物が吐き出された。それは恐るべき速さでマミに近付くとピエロのような顔にある口を開け、その中に並んだ鋭く巨大な牙を見せつけた。

だがその光景をまどか、さやか、そして目の前のマミですら理解できていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキオ!」

 

魔女を倒し結界から開放されたアキオ達の前に、マスターが息を切らしながら走ってきた。その光景に二人ともただ事ではないと察する。

 

「どうしたんだよマスター!店は?」

 

「そんな事言ってる場合じゃないぞ!魔女が現れた!」

 

その言葉にアキオ達は息を飲む。

 

「ちょっと待ってくれよマスター!魔女ならもう倒したぜ?」

 

嫌な予感を感じつつもアキオは事実を話した。だがマスターは首を振って事情を語り出す。

 

「マミという嬢ちゃんからサトリがいないかと電話がきた。恐らく俺は戦闘要員ではないと思っていたんだろう、いない事を伝えたら訳も話さず切った。あの様子は間違いなく魔女関連だ」

 

二人は顔色を変えた。まさか魔女が複数同時に現れるなんて思ってもみなかった。しかも今のマミは万全ではない。早く救援に行かなければ。

しかしそうは思っても場所が分からない。

 

「・・・いや」

 

アキオはふと思い出した。そもそも自分がここにいるのはほむらから情報を貰ったからだ。ならそのほむらは何故この場にいない?

 

まさか・・・

 

「二人とも、たぶんこの病院の周辺にそのもう一体の魔女がいるはずだ」

 

「根拠を聞いてる暇は無いな」

 

「うん、アキオを信じるよ!」

 

ほむらは確かに見滝原総合病院に魔女が現れると言った。二体の魔女、ここにいないほむら。アキオが導き出した結論はこの場に二体同時に現れ、それぞれが違う魔女を見付けたというものだ。

 

三人はそれぞれ別れて走り出した。

 

(頼む・・・無事でいてくれよ!)

 

 

 

 

 

 

 

ガキンと鋭い金属音のようなものが結界に響いた。

まどか達が見詰める先には先程開けていた大口を今や閉じてモグモグと動かしている魔女のみ。そこにマミの姿は無かった。

 

「そんな・・・まさか」

 

一瞬で青ざめるまどか達。特にまどかは先程、彼女の危機に契約をして助けると意気込んでいたのだ。助けるどころかその危機に気付く事すら出来なかった。

恐怖もあるが、それよりも取り返しのつかない事をしたという後悔がまどかを支配する。

 

しかし、モグモグと口を動かしていた魔女は突如怪訝な表情をしてその口の動きを止めた。

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

まどか達が魔女の様子に気が付いたのとその言葉が響いたのはほぼ同時だった。

 

真横から特大の魔力弾が魔女を襲い爆発を起こした。

何事かとまどか達が魔力弾が飛来した方へ顔を向けると、そこには先程魔女の奇襲に敗れたと思っていたマミと、その隣にほむらの姿があった。

 

「マミさん!」

 

生きていたんですね。

 

絶望からの希望にその言葉がなかなか出てこないまどかにマミはニコリと笑い、次に隣のほむらへと向き直った。

 

「ありがとう暁美さん。あなたの魔法のおかげで助かったわ」

 

「本当はこんなところで手の内を明かすつもりは無かったんだけど」

 

「その覚悟の上で助けてくれたんだもの。私はあなたの事を本当に信頼するわ」

 

そのマミの偽りの無い言葉にほむらは照れ隠しのように長い黒髪を掻きあげた。

 

「それは光栄ね。けど」

 

「ええ、ブレイクタイムに入るにはまだ早いわね!」

 

そう言うと二人はそれぞれ左右に跳び、今しがた彼女達がいた所に爆煙の中から飛び出した魔女が食い付いた。

その体はマミの必殺技を受けて尚、傷一つ付いていなかった。

 

「必殺技が効かないなんて流石にショックね」

 

「いいえ、今の一撃は確かに効いたわ」

 

「見てなさい」とほむらは自分を追いかけて来た魔女の大口に手榴弾を投げ込んだ。そしてほむらが噛み付きをかわしたタイミングで魔女の口から爆発が発生する。

しばらく呆けたような表情になる魔女だが、次の瞬間口から全く同じ姿の魔女を吐き出した。

そのおぞましい光景にまどか達は小さな悲鳴をあげ、マミは唖然とした。

 

「あいつはああやって脱皮してダメージを回復するわ」

 

脱皮・・・彼女達が知る脱皮とは速度も回復力もまるで違うがそれ以外にしっくりくる言葉は無いだろう。

 

「けど、カラクリが分かれば倒せない相手ではないわ。暁美さん、連携でいきましょう!」

 

そのマミの提案にほむらも頷き二人は再び戦闘体勢に入った。

 

「まずは私から!《ティロ・ボレー》!」

 

マミは召喚したマスケットを次々と手に取り撃ち尽くしていく。その攻撃を受けて堪らず魔女は口から新しい体を吐き出すが

 

「隙は与えないわ」

 

すかさずほむらが両手で構えたマシンガンを魔女の顔面めがけぶっぱなした。

魔女は新しい体をすぐさま捨てようとするが、そうして開けた口に向けてマミは再び必殺の巨砲を構えていた。

回復の追い付かないほどの連続攻撃、それが彼女達の作戦。至ってシンプルな作戦だがマミが次の攻撃を放てば確かにこの魔女を葬れるだろう。

 

結界内に風が鳴いた。

 

(これでおしまい。まさか巴マミと友好的な関係を築けてこの魔女を乗りきれるとはね)

 

しかしいつまで経ってもとどめの一撃が来ない。

その隙に魔女は脱皮を果たして全回復してしまった。

 

「何をしているの巴さん!?」

 

堪らずほむらは叫びながらマミへ振り向くが、マミは無反応だ。それどころか必殺の一撃を放つはずの巨砲は元のリボンへと戻って地面に落ちてしまった。

 

「巴さん!巴マミ!?」

 

いくら呼び掛けても何の反応も無いマミを不審に思い彼女の側に向かった時だった。

 

マミの首が落ちた。

 

ゴトリと鈍い音を立てて首が地面に落ち、彼女の体からは首から上があったはずの場所から噴水のように鮮血が溢れだした。しかしその勢いはすぐに収まりやがて彼女の体はその場で崩れ落ちた。

 

言葉を失い、全身に血を浴び、普段の無表情が崩れ唖然とその光景を眺めるしかないほむら。

 

何故?やっと手を取り合えたのに。違う。もう諦めていたのに。何故私は彼女の死に動揺しているの?

 

あまりの出来事に混乱するほむら。それはまどか達も同じだった。

死んだと思ったマミが生きていて、反撃にでたと思ったら今度こそ間違いようの無い死に方をした。

 

いったい何が起こったのか?

 

それが全員の考えだった。

しかしこの状況下でただ一人ほむらに接近する影に気が付いた者がいた。

 

「転校生、後ろ!!」

 

「!?」

 

その言葉で我に返ったほむらは咄嗟に魔法を発動させた。

 

次の瞬間ほむらはその場から消え去り、彼女がいた場所を目では追えないような速さで影が通りすぎた。

その影は急にピタリと止まり空中でホバリングを始めた。

 

「何・・・アレ?」

 

「新手の魔女?」

 

「あいつが・・・巴さんを!」

 

まどかとさやか、そしていつの間にか先程の場所から離れたほむらはその襲撃者に目を向けた。

 

それは緑色をしたトカゲ。だがただのトカゲではない。成人男性と同程度の大きさ、昆虫のように飛び出た眼球、そして背中に生えた羽を羽ばたかせてホバリングしながら不規則に揺れる様は蜻蛉を連想させた。そして衝撃的なのは二本の前足で切り落とされたマミの頭部を抱えていたのだ。

 

「転校生、また!!」

 

再び張り上げられた声。ほむらは再び魔法を発動させて彼女に食い付こうとしていた魔女を避けた。

 

「まさか二度も美樹さやかに助けられるなんて」

(私がしっかりしなきゃ、まどかを守らなきゃ!)

 

ほむらは決意を新たにすると、再び姿を消した。そして直後に魔女の体から起こる連続した爆発、魔女は何とか脱皮を繰り返し逃れようとするが次第に追い詰められ、そしてとうとう脱皮が間に合わない内に致命傷を受け爆散した。

 

その魔女の最後を見届けたほむらは次にトカゲを見た。しかし次の瞬間ほむらは怒りを感じる事になる。

トカゲが抱えたマミの頭に齧り付いたのだ。

 

「その頭を離しなさい!」

 

激昂してトカゲにハンドガンを向けるが、それに合わせてトカゲはマミの頭部をほむらに投げつけた。それはちょうど

 

(銃の射線に!?銃が武器だと知ってる、知能がある!やっぱり魔女の類なの!?)

 

ほむらはマミの頭部に銃を撃つのを躊躇い、トカゲはその隙に再び目では追えない加速をした。

 

「ほむらちゃん!!」

 

まどかは堪らず叫んだ。マミに続きほむらまであのような悲惨な死に方をしてしまうのではないかと思い気が気じゃなかったのだ。

 

だが

 

「どんなに速くても、私には意味無いわ」

 

ほむらがそう呟くと影にしか認識出来ないまでに加速したトカゲはその勢いのまま墜落した。ピクピクと手足を痙攣させ、全身には弾痕があり至るところから血が流れていた。

 

するとトカゲの体はどろりと溶けだし、結界も崩壊を始めた。

 

現実世界に戻って来たまどか達は勝利したのを理解していたが、マミの血を浴びたほむらを見て、この場にまどか、さやか、ほむら、そしてキュウべえの四人しかいない事に残酷な事実を突き付けられていた。

 

巴マミは死んだ。

 

「マミさん・・・何で?」

 

「あんなの、人間がしていい死に方じゃないよ」

 

まどかとさやかがマミの死に心を痛める中、ほむらは一度強く唇を噛んでから再びいつもの無表情を作った。

 

「そうよ。彼女は人間としてではなく、魔法少女として死んだの」

 

その言葉にさやかはキッとほむらを睨み彼女の首襟を掴んだ。

 

「何でそんな事言うんだよ?あんたはマミさんの仲間になったんじゃないの!?あんたなんか助けるんじゃなかったよ!!」

 

「そしたら私達全員あの場で死んでいたでしょうね」

 

「あんたねえ!!」

 

「止めてよさやかちゃん!」

 

「止めないでよまどか!だってこいつ・・・」

 

しかし途中でさやかは気が付いた。今のほむらは必死で無表情を装っているだけだと。何故なら何でもないように喋ってはいるが、実際は悔しそうに顔を歪ませていたのだ。

 

「・・・ごめん」

 

そう言ってさやかは首襟から手を離すがその態度を見たほむらは、感情的になったあのさやかに謝らせてしまう自分はいったいどんな顔をしているのだろうかとマミの死を割りきれない自分を情けなく思った。

 

どうしようも無い悲しみに、まどかとさやかはその場で泣き崩れ、ほむらはただそんな彼女達を見詰めるしか出来ないでいた。

 

「まどかちゃん、さやかちゃん!」

 

そこへアキオが息を切らし走って来た。

 

「あなたはっ・・・」

 

ほむらは思わず彼に怒りをぶつけようとしてしまう。

 

自分は確かに伝えた。それなのに何故来てくれなかった!?

 

しかし、アキオのだらんと力無く垂れた左腕を見て思い出した。

 

そうだ、この男も戦っていたのだ。

 

今アキオに怒りを向けるのは筋違いだと思い直したほむらは、状況が分からないアキオにただ真実だけを伝えた。

 

「巴マミが死んだわ」

 

「!?」

 

その言葉をアキオは否定したかった。だがただ泣くだけで駆けつけた自分に何も言えないまどか達がそれが真実であるという事を告げていた。

 

「そんな・・・」

 

辛うじて出てきた言葉はそれだけ。頭の中が真っ白になり、次第に彼女との短い思い出が浮かんでくる。決して多くはないが、その一つ一つが浮かぶ毎にやりきれない思いが大きくなってゆく。

 

「俺は・・・無力だったのか?」

 

彼女達を助けるために戦うと決意したのは何時だ?彼女とのわだかまりが解けたのは何時だ?彼女と楽しく食事をしたのは何時だ?

 

全てがつい最近の出来事。その全てをほむらから聞いた一瞬で失ってしまった。

まどか達だけでなく、アキオも悲しみに支配されようとした時

 

「まだだ」

 

突如聞こえた声。その場にいた全員が振り向くとそこにはアイオトがいた。

しかも両脇にマミの体と頭をしっかり抱えている。

 

「巴マミを離しなさい!」

 

ほむらは瞬時に銃をアイオトに構えた。

アイオトが何者かは知らないがマミの体を何かよからぬ事に使われるのではないかと思ったのだ。

 

「止せ、悪いようにはせぬ。まだこの娘の魂は無事だ」

 

その言葉にほむらはハッとなり、今までまどか達が泣こうが全く反応を示さなかったキュウべえもピクリと耳を動かしアイオトを見詰めた。

 

しかしその二人以外にはアイオトが何を言っているか分からなかった。

 

「アイオトさん、マミさんをどうするんですか?」

 

まどかから出た言葉はアキオ、そしてキュウべえに衝撃を与えた。

 

「まどかちゃん、アイオトと知り合いなの!?」

 

アキオの驚きように控え目に頷くと、まどかは再びアイオトを見詰めた。

 

「少しの間預かるぞ」

 

しかしまどかの問いに答える事無く、アイオトはその場から姿を消した。

 

「アイオト・・・彼が」

 

そしてキュウべえはただ一人、マミの死よりもアイオトの存在に思考を巡らせるのであった。


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