アラガミ転生記〜ザイゴートからの成り上がり〜 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
「ひ、ヒロシぃぃぃぃぃ!!!」
イ゛ェアアアアア!!!ってか?
いや、ふざけてる場合では無い。
とうとう殺ってしまった。
俺自身、別に人間殺すのは罪悪感を抑え込めばなんとかなった。と思う。
しかし、これ以上目は付けられたく無かった。
だから今までは殺しはしなかった。
だが、殺ってしまった。
『ヒロシさん?ヒロシさん!?......生体反応が、消えた......。』
霊圧が消えたみたいな言い方だな。
......だめだ、頭ではわかってるのだが、思考が現実を受け止めきれて無いみたいだ。
「コンのヤロォォォォォ!!!!!」
凄い勢いで黒ゴートにゴッドイーターが迫る。
しかし、黒ゴートは軽々と避け、空気砲を放つ。
ゴッドイーターは、綺麗にくの字になりながら吹き飛び、身体が黒く染められる。
「あ.......。」
一瞬の出来事だった。
『キムラさんの、生体反応......消滅。』
呆然とした様子のオペレーター。
他の2人は仲良くボルグカムランの槍の餌食になった。
『シンジさん、リョウさんの生体反応、消滅........第8部隊、全滅.....!?』
その後、悲鳴の様な声が通信機から漏れた。
......胸が凄く痛い。
命を狙ってきたとは言え、元人間の俺はショックを受けていた。
まだアラガミに馴染めて無い証拠だ。
だが、この気持ちを失ったらお終いだと思うから、捨てる気は無い。
黒ゴートは、いつの間にかこちらに戻ってきていた。
愛おしそうに俺に頬ずりして来る。
......こいつらは悪くない。
制御できなかった俺の責任だ。
全て俺の責任だ。
今度から制御の訓練もしてみよう。
そして、俺は目の前のアラガミを殺す。
これは、ケジメだ。
勝手なことで、いらないお節介かもしれないが、頭の悪い俺にはこれくらいしか思い浮かばなかった。
あのゴッドイーターの仕事は、この2体の討伐。
この任務の失敗で、更に多くも人間が死んだら、恐らく俺は正気じゃ居られない。
これは別に人間の為とかじゃなく、脆い俺の為だ。
『殺る』
俺はこの世界に来て、初めて自分の意思で殺意を覚えた。
俺は、一歩踏み出した。
─三人称視点─
佇む3体の大型の異型。
そのうち2体は組んで居り、もう一体は、2体の小型の異型を従えていた。
両者睨み合い、空気が張り詰める。
「キェァァァァ!!!」
「キシャァァァァァ!!!」
「ウォァァァァァァ!!!」
一体の咆哮を合図に、戦闘が始まった。
人形のアラガミ、シユウは手に熱エネルギーを溜め、火球として放出した。
同時に大型なサソリの様なアラガミ、ボルグカムランはその針を相対している相手に向けた。
そして、どこか女王の様な風貌の蝶と人間を合わせたような......。しかし通常とは違い腕が生え、体色が黄色いアラガミ、サリエルαはその攻撃を静かに見守っていた。
そしてサリエルαは、向かってくる火球を自らの光弾をまとめ、巨大な光弾の様にしてそれを相殺する。
ボルグカムランの針は素手で掴み、得意な酸で溶かし、使えなくする。
火球は掻き消え、代わりに破裂した光弾から無数の光弾が放たれる。
シユウは防御体制を取ったが、防ぎきれず、少し後ずさる。
針を溶かされたボルグカムランは、腕の盾を合わせ、突進をかます。
向かってきたボルグカムランを、足による突きで迎える。
普通なら無謀だが、このサリエルは違う。
足に一点集中させて酸を出す。
盾に触れた瞬間、装甲を柔らかくする。
そして極限にまで威力を高め、それを更に集中させた足による衝撃が、柔らかくなった装甲をダイレクトに突く。
ヒビが入り、それが一気に広がる。
盾が、大きな破裂音を立てて砕けた。
そして一瞬で間合いに入り、閉じている口に酸を付けた腕でねじ込み、口の装甲を簡単に貫く。
力を入れ、それを引き剥がす。
「ギシャァァァァアアアア!!!!」
装甲と共に筋肉も剥がされ、体液が飛び散る。
そして剥いだ装甲を捨て、すぐに開きっぱなしになった口に腕を突っ込む。
「ギシ、ググェ、グギャァ.....。」
苦しそうに声を出す。
しかし躊躇する所か、腕に力を入れ、更に奥に進ませる。
そして、力任せに真っ二つに裂いた。
血の雨が降り、黄色かった筈の体も、真っ赤に染まっていた。
シユウは、本能的に恐怖していた。
敵うはずがない、と。
すぐに走り出し、逃げようとする。
しかし、サリエルαはそれに気付き猛スピードでシユウの背中に飛び蹴りを入れる。
「グガァ!!」
飛び蹴りされた方向に飛ぶシユウ。
転がるようにして受身を取り、サリエルαを見据え、構えを取る。
逃げられないと判断した。
ならば戦う他手段は無い。
シユウは小ぶりの火球を連続で放ち、最後に大きな火球を放った。
サリエルはそれを光弾で掻き消し、更に光弾で攻撃を仕掛ける。
焦って避けるシユウ。
すると、既に目の前にはサリエルαが迫っていた。
下からの全身を使った蹴りあげで、シユウの体は宙を浮く。
空中でなんとか体制を整えるも、上からの蹴りで落とされる。
そしてサリエルαは、落下するシユウの背後に回り、思いっきり蹴りを放つ。
蹴りはシユウの頭部を捉えた。
シユウの頭部は、花火のように砕け散った。
立っていたのは、真っ赤になった女王と、その下僕だけだった。
慣れない三人称視点の酷さと、慣れない暗い雰囲気のストーリーの酷さに嘆いている作者です。
やっぱり、一時のテンションは身を滅ぼすね(白目)