自慢じゃ無いが俺は生まれてから(一度死んでるけど)このかた喧嘩をした事が無い。
バキィッッ!!
武道もした事が無い。
ドカッッッ!!
つまり何が言いたいかと言うと
「はぁ...はぁ...」
「これで終わりですか?」
今の俺ではウパに勝つ事など出来ないのだ。
「まだ...だ。」
俺は馬鹿だった。冷静に考えてみれば、肉体がサイヤ人である事以外はただの一般人だ。技も、気も、度胸も、何も持っていない俺が先祖代々様々な敵からこの地を守ってきた一族に勝てる道理などない...だけど。
「俺には...やらなきゃなんない事があるんだ。」
ずっと...夢だった。憧れのヒーローの手助けをしたい...その為にもここで、
「立ち止まる訳には行かないんだよ!!」
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男が取った行動はただ一つ、
「ウォォォォォォォ!!」
突進であった。両足に力を入れて、地面を蹴って突っ込む飛び頭突きだ。宇宙でトップクラスに丈夫な肉体から繰り出される突進はそれはそれは速かった。しかしその性質上、真っ直ぐに飛ぶ事しか出来ない。
「くっ!!」
故に対戦相手は真横に避けるのだった。
「そう来ると思ったぜ!!」
それに対し男は地面に手を伸ばして
「なっ!?」
ドゴォ!!
それは油断していた対戦相手の無防備な脇腹にクリティカルヒットする。
「ごふっ!?」
「へ...へ...どうだ。みたかこん...にゃ...ろ」
しかし、男は限界を迎えたのか倒れてしまうのであった。
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眩しい...そうか、ここはテントの中か。
「俺...どうなったんですか?」
「...その前にお前は何故、この塔に登ろうと思ったのだ?」
...何故、か。確かにそうだ。別にこの世界に転生したからって、何も危険な事に関わらなくても良いはずだ。
現にウーブはベビーが地球に来た時に深山に篭って修行をしてた為に寄生されずに済んでいる。スーパー17号や邪悪龍だって、場所に気を付けさえすれば関わらずに生き残ることだって出来るんだろう...ただ、
少なくともこの先の未来を知っているのは、俺ただ一人だ。それなのに過酷な...孫悟空が何処か遠くへ消えてしまうなんて結末は送らせたくない。だから、俺が...未来を変えてやりたいんだ。運命を変えてやりたいんだ。
「...ある人を助けたいんです。でも、その為には今よりももっと強くならなければいけない。だから、この塔を登りたいんです。」
「...ふっ。良いだろう。その心意気、合格だ。」
「...へ?」
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今、俺はカリン塔の前にいる。
「本当に良いんですか? 俺、勝負に負けたんですよ。」
「君が最後に見せた突撃、そして塔を登る理由...相当の覚悟が無ければ出来ない事だ。それに」
「...?」
「君を見ていると、彼を思い出すのだ。ずっと昔...死んだ私を息子の為に救ってくれた男を。」
...そんな、
「俺はそんな大それた人間じゃありません。だから「少年よ」...」
「自信を持つのだ。お前なら、きっと出来る。」
ボラさん...
「ありがとうございます! では、行ってきます!!」
くそ...まさかサイヤ人になって泣く事になるなんて思わなかったよ...
「(こんなんで泣いていたら...笑われてしまうなぁ、あの人に)」
そう思った俺は涙を拭って、両足に力を入れて思いっきり跳ぶ。サイヤ人の肉体という事もあって、10数メートルは飛んだ。そして勢いを失った頃を見計らって
「ふんっ!!」
ガシィッッ!!
塔に掴まる。
「絶対に登りきってやるぞ!! カリンの塔!!」
To be continued...
男の突進をわかりやすく言うと...悟天が天下一武闘会で見せた突撃です。わかり辛かったらすいません。