「ブラックブレット」 赤い瞳と黒の剣   作:花奏

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第五話 決戦へ

自分は何故、民警をしているのか。

 

茉里亜におぶられた彼を見て思う。

 

いつ死ぬかも分からない。

失いたくない人が増えた。

それなら、何故。

 

蒼太はもう一度彼の方を見て答えを出す。

 

人を救いたい。

茉里亜の様な呪われた子供達が差別されない世界にしたい。

 

茉里亜に先に行くよう伝える。彼女はカンガルー因子を宿している為、ジャンプ力が半端じゃない。

蒼太は先に行った茉里亜を追いかけるように走る。

 

死ぬな。里見蓮太郎君。

 

 

 

 

 

蓮太郎が運ばれた先は、勾田大学附属大学病院。着くなり、すぐさま集中治療室へ運ばれる。

沙耶は、彼を連れてきた頭にカンガルーの耳がついた少女の方を向き、目線を同じ高さにする。

 

「貴女が流星茉里亜ちゃん?」

 

少女は少し不安そうにしていたが、コクリと頷く。

 

「私は、神代沙耶。蒼太君と同じ、プロモーターだよ。蓮太郎君を運んでくれて、ありがとう」

 

「カミヨサヤ.....蒼太がいつも話していたです」

 

沙耶は立つと、茉里亜の手を握る。

 

「行こうか」

 

 

茉里亜が来た数分後、蒼太と延珠、杏が沙耶達の元へ来た。

延珠は手術室の方へ行こうとしている。

 

「蓮太郎は...蓮太郎は、大丈夫なのかッ?」

 

沙耶と杏が延珠を押さえる。

 

「お姉ちゃん。蓮太郎さんは、死んだりしない」

 

延珠が顔を上げる。

 

「本当か?」

 

杏が頷く。沙耶も続く。

 

その後、長時間に及ぶ手術が終わった。最後の最後で蓮太郎の心臓が動き、成功という形になった。

 

 

 

蓮太郎が目を覚ましたのは、何処かの病院で、沙耶と杏が顔を覗いていた。

 

「沙耶.....俺はどれくらい寝ていた?」

 

沙耶は左腕に付けた腕時計を見た。

 

「えっと、丸一日と三時間ほど。

蓮太郎君。大変な手術だったらしいよ。医師が匙を投げる直前に心臓が動き出したの。生きる事を諦めなかったの」

 

「沙耶。俺が川に落ちる前に何か言ったか?」

 

沙耶は少し顔を赤くしながら

 

「うん。言ったよ」

 

「あの言葉がなければ、死んでたかもしれない」

 

「こっちは、死ぬんじゃないかって、ひやひやしてたんだよ?このお馬鹿」

 

「ごめん」

 

沙耶と杏はため息を吐く。

 

「蓮太郎さん。謝るのは私たちにじゃないです」

 

「え?」

 

沙耶と杏は顔を見合わせる。二人は一斉に立ち、掛け布団をめくる。

そこには、蓮太郎に寄り添って寝ている延珠が寝言を言っていた。

 

「蓮太郎の...あほぉ....」

 

「俺、駄目駄目だな。

ところで木更さんは?」

 

「あー会議に行ってる」

 

沙耶は椅子に座り、腕を組む。

 

「蓮太郎君、七星の遺産について知りたい?」

 

「あぁ」

 

「ケースの中身は、ステージVガストレア、ゾディアックを呼び寄せる触媒」

 

「ステージVって...」

 

「ガストレア大戦において猛威をふるい、世界を滅ぼした存在。

ゾディアックは通常のガストレアと違ってモノリスの磁場の影響を受けない。

モノリスを崩壊されてステージIからステージIVのガストレアがエリアにはいって来たという話があったわ。

そして、それらが引き起こすものが....」

 

「「大絶滅」」

 

そのとき、沙耶のスマホが震える。

 

「もしもし。はい。分かりました」

 

「蓮太郎君。聖天子様から」

 

沙耶と杏は退室する。

 

 

 

「ほうほう。それで、蓮太郎君は生きてたか」

 

沙耶は菫のいる、地下室へと来ていた。

 

「そうそう。じゃなくて、何で私を呼び出したの?」

 

菫は深刻な顔をする。

 

「君はこれから()()を使うと思うが、一つ忠告する。なるべく使うな」

 

沙耶は机を叩き、立ち上がる。

 

「何でッ?アレを使わないと東京エリアを救うことができるのにッ 私には戦わせてくれないのッ?」

 

「君は体内にガストレアウイルスを宿している。侵食率が上がるかもしれないんだ」

 

「侵食率が上がるのを恐れていたら何もできない。それに杏達、呪われた子供達は侵食率が上がることを承知で戦っている」

 

菫は黙り込む。

 

「あ。そうだった。室戸先生に話があったの」

 

「話?」

 

「室戸先生は、呪われた子供達の事、どう思ってる?」

 

「いきなり何かと思えば」

 

「この前、神のメッセンジャーって言ってたのに、君達は家族じゃないのか?って言ったりで分からなくなって」

 

「そうだね....

人類最後の希望だ」

 

「ふーん」

 

沙耶は左腕に付けた腕時計を見る。

 

「それじゃあ、もう時間が」

 

ドアの前で歩みを止める。

 

「室戸先生」

 

「まさか、君はッ」

 

「行ってきます!」

 

「君の命に関わるかもしれないんだぞッ」

 

 

 

 

 

蓮太郎は沙耶に絶対安静だと言われていたが、着替えることにした。先程、蓮太郎も蛭子影胤との決戦に参加して欲しい、と聖天子から電話があった。

 

病室のドアが開いたかと思うと、菫が入ってき、バックを置いた。

 

「君のパトロンからだよ」

 

中を開けると拳銃などいろいろ入っていた。

 

「完璧だ」

菫は赤い液体の入った注射器を渡す。

 

「そしてこれは私からの餞別だ。AGV試験薬。出来れば使うなよ」

 

「意識がないときに、先生に執刀される夢を見たんだ」

 

「私が君にやった事は決して許される事じゃない」

 

「俺は先生の事を恨んだりした事はない」

 

 

 

蓮太郎が病室を出るとそこには、木更がいた。

 

「社長命令よ。里見君、蛭子影胤・小比奈ペアを撃破し、ステージVガストレアの召喚を止めなさい。

君は今までの100倍働いて。私は君の1000倍働くから」

 

「やってみせます。貴女の為にも!」

 

 

 

延珠や沙耶ペアと合流し、四人はヘリコプターへ乗った。沙耶は腕時計を外し、ウエストバッグの中に入れ、髪をポニーテールに結ぶ。沙耶のウエストバッグには、小刀二本と、グロック26Gen4、スマホが入っている。双剣は見当たらない為、蓮太郎はどうするのか、疑問に思った。

 

ヘリコプターが降りた先は、森の中。辺りは闇に包まれている為、それぞれがペンライトを持っている。同じヘリコプターに乗っていたペアが散り散りに解散。蓮太郎達は四人で行動することにした。

 

「いいか?あまり大きな音を立てるなよ」

 

蓮太郎が立ち止まり、ひそひそ声で注意を促す。

 

「なんでだ?」

 

「今は夜型のガストレアが活動していて、昼型のガストレアは眠っているの」

 

「音を立てると、昼型のガストレアを起こしてしまう、であってる?」

 

「正解だ。杏すごいな」

 

「でしょー。いつも私が勉強教えているからね」

 

四人はゆっくり足音を立てないようにし、歩きはじめようとした。が、

ズドンッと地割れの様な大きな音がし、近くからモデル・アリゲーターのガストレアが姿を現した。四人はそっと息を潜め、岩場に隠れる。すると、気付かなかったのか、ガストレアが闇へ消える。四人は胸をさすり、顔を見合わせた。

 

「危...」

 

蓮太郎の言葉を消し、爆発音がした。

 

「やばいッ何処かのペアが爆発物を使ったッ」

 

「沙耶...あれは何?」

 

杏が何かを見つけ、指差す。

 

「ッあれは....」

 

「「ステージIV⁉︎」」

 

四人は走り出す。しかし、後ろからガストレアが追ってくる。

沙耶達が力を解放。瞳が赤く染まる。延珠は蓮太郎をおぶる。三人は跳びながら高速で逃げる。

 

このままだと上手くいく。

 

誰もが確信したその瞬間、目の前に崖が現れた。

 

「崖だッ」

 

三人は手前で一瞬止まり、足に力を入れ、空へ飛び出す。そのまま崖の下へと着地。

沙耶と杏は自分だけの体重しかかからないが、延珠には自分の体重プラス蓮太郎の体重がある。その為、着地に困難し、地面を滑り、なんとか止まった。蓮太郎は衝撃で、投げ出される。体を起こすと目の前で延珠が肩で息をしていた。

 

「延珠...」

 

呼ばれた少女は振り向き、ピースサインを作る。

崖の上を見るとガストレアが下を覗き、残念そうにしていた。

 

少し休憩を取った後、再び四人は歩き出した。すると木と木の間から光が差し込んでいた。灯の方へ歩みを進める。

灯の正体はトーチカだった。中で、焚き木をしているのだと思われる。沙耶達の胸は今にでも破裂するのかと思うほどドキドキしていた。

 

もしかしたら、影胤達かもしれない。

 

四人はトーチカの四方を囲む。延珠以外の三人は拳銃を構える。

アイコンタクトをし、一斉に中に入る。

 

「動くなッ」

 

そこには、影胤の姿はなく、蓮太郎の目の前にいるのは一人のイニシエーターだった。その少女も銃を構えている。人間の気配を感じたのだろう。

 

「お前は...」

 

延珠が少女の首に蹴りを入れようとする。

 

「待て延珠」

 

延珠は脚を止め、地面につける。

 

「この子は敵じゃないよ」

 

蓮太郎は少女と目線を合わせる。

 

「お前、俺のこと覚えてるか?」

 

「勿論です」

 

延珠と杏は息をのむ。

 

「待て待て。この女、妾は知らないぞッ」

 

「蓮太郎さん。どういうことか説明して下さいッ」

 

「こいつは三ヶ島ロイヤルガーター所属、伊熊将監のイニシエーターだ」

 

「モデル・ドルフィンの千寿夏世です。初めまして」

 

夏世の右腕からは、真っ赤な血が滴り落ちていた。

 

 




こんにちは。いや、こんばんは。クルミです!
ついに五話に突入!思うんですけど、話の進み具合が速すぎません?次は影胤との決戦、それから.....と多分八話で第一章は終わりです。内容が薄いんですよね。
それでは、感想、宜しくお願いします!他の人はどのように思うのか知りたいので感想が欲しいです。それでは今後とも宜しくお願いします。

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