七聖剣使いの航海日記   作:黒猫一匹

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今回の話しから原作崩壊していきますのでご注意を。


6ページ目 新聞記者と後の火拳

 

 ○月●日 晴れ

 

 

 

 ナミとカリーナの二人に偉大なる航路(グランドライン)の説明や知識を与えた翌日。

 オレ達はとある島の町にたどり着いた。

 食料やその他の物資の補給も兼ねてその町に立ち寄ると、その町は今現在、海賊の襲撃に合っていた。

 海賊達は大砲などで民家を破壊したり、金品を奪ったりと好き勝手な事をやっており、その町は海賊達の手によってなすがままに蹂躙されていた。

 

 そんな海賊達の姿に何やらナミがものすごく厳しげな表情を浮かべており、オレとカリーナの顔を見ながら

「助けましょ」と呟いた。

 オレとカリーナも当然その言葉に大きく頷く。

 何より町民を襲っている海賊を見ると10年ほど前にオレの故郷を襲ったあの海賊達の姿をどうしても思い出してしまうのだ。だからナミの言葉がなくても助けに行っていただろう。

 

 と、そんなこんなで町を襲っている海賊、”三日月のギャリー”が率いる一味と一戦交える事になった。

 

 突如乱入してきたオレ達にギャリー達は「何者だテメェら!?」と叫びながら睨みをきかせ、

「俺が誰だか解ってんのか! 懸賞金500万ベリーの”三日月のギャリー”様だぞ!!」

 と何やら大変騒いでいたが、オレはそのギャリーの言葉に思わず間の抜けた顔をしてしまう。

 

 ……懸賞金500万って、低すぎだろ…、と。

 

 だが、よくよく考えればここは東の海(イーストブルー)

 懸賞金アベレージが300万程度のこの海では500万はそれなりに高額な方なのだろう。今まで5000万前後の賞金首とばかり戦っていたオレからすればやはり低すぎる金額だが…。

 

 そして当然、その程度のヤツがオレとマトモに戦える筈もなく、オレは一瞬でギャリーと近くにいた幹部らしき彼の部下達を斬り捨てる。予想以上に呆気なくついた決着に残りの部下達は何が起きたのか理解できずに呆然としていたが、すぐに自分達の船長や幹部達がやられた事を理解したのか彼らは一目散に逃げ出していった。

 

 オレはそんなまるで歯ごたえのない海賊達に思わず溜息が出る。これならまだあの鎖野郎の方が何十倍も歯ごたえがあり強かった。そう思うとあの鎖野郎はこの海では相当な実力者だったのかもしれない。

 

 

 因みにナミとカリーナの二人はオレがギャリー達と戦っている最中に、彼らの海賊船に忍び込み船番を撃退したあと、お宝を盗んでいた様だ。

 彼らが撤退する少し前に船から出てきてお宝がギッシリと入った袋を手に持ってニコニコと満足そうな顔で現れた。

 

 …ていうか、おいナミ。助けようと言ったのはお前だろう。なのに戦いは全部オレに丸投げか?

 

 オレがその様な事を呟くと、ナミは当然でしょと言いたげに胸を張る。

 何やら「アンタの強さを信頼したのよ」だとか「元々はそういった契約でしょ」などと口を開く。

 いや、まぁ…確かにそうだが…。

 何やら都合のいい様に言いくるめられた感が拭えないが、そんなこんなでオレ達は町から海賊達を撃退したのだった。

 

 

 その後、その町の町長さんや市民の皆さんがお礼をしに現れて、その日はその町の人達と共に歓迎とお礼の意味も兼ねた宴会が開かれ、その宴会は夜まで続いた。

 その宴会の中で少し驚いたのが、ナミとカリーナの二人が意外と酒豪だった事だろうか。歳はオレとそんなに変わらないのに町の男達と飲み比べに参加していたのには目を見張った。

 

 …どうでもいい余談だがオレは酒が飲めなかったりする。

 

 とまぁそんな感じで男達と飲み比べしていた二人なのだが、いつの間にか、最後までダウンせずに飲み比べで優勝した者には賞金10万ベリーを付与! という勝負事に発展していた。

 

 そんなかなり張り切っている二人をしり目に、オレは町長さんに改めてお礼を言われながら、この島にはどういった目的で訪れたのかと聞かれたので、食料やこの先の航海に必要な物資の補給、あとはできれば船の買い替えなどが目的だと話すと、町長さんは一考する間もなくそれら全てをタダで差し上げますという随分と太っ腹な事を仰ってきた。

 

 え? マジで? ホントにタダでいいの? と思いながらも無駄な失費も抑えられるし、せっかくの好意を無下にするのもアレなので遠慮なくいただく事にする。

 

 それから暫くしたあとにオレの元に完全に酔っ払ったナミとカリーナが現れた。酔ってる彼女達の相手をするのは少し面倒だったが、久々に楽しいと思える一日だった。

 

 

 

 そしてその翌日、オレ達は町長さんからの好意で貰った大量の食糧とその他諸々の航海に必要な物資、それから小型の帆船を貰い町の人達から見送られながら出航した。

 

 

 

 

 

 ×月○日 晴れときどき黒猫……

 

 

 

 

 その日はちょっとした出会いがあった。

 いつもの様に偉大なる航路(グランドライン)へ向け航海していると、前方の海上で一隻の海賊船が停泊していた。

 その海賊船は船首が黒猫で海賊旗にも猫のマークが入っており、随分と猫を強調とした海賊船だった。その事からもしかしたらその船に乗ってる海賊達は無類の猫好き集団なのかもしれない。

 

 オレがその様な事を考えていると、ナミがその海賊船の海賊旗を見て「え? もしかしてあのマークってクロネコ海賊団!?」と驚きの表情を浮かべる。

 ナミの驚き具合から言って結構有名な海賊なのか? とオレがそう疑問に思っているとその疑問に答えるかの様にカリーナが説明してくれた。

 

 なんでも彼らはこの東の海(イーストブルー)ではかなりの大物海賊団であるらしく、船長の”百計のクロ”はその首に1600万ベリーの賞金首を掛けられているらしく、緻密(ちみつ)な計略のもとに略奪などの犯罪行為をする知能犯として有名らしい。それと同時に部下を容赦なく切り捨てるかなりの冷酷な男とも知られているそうだ。

 

 と、そんな話を聞いている内にその”百計のクロ”が率いる海賊船との距離が徐々に近づいてくる。そして近づくにつれ、何やらギター? の音らしき楽器音と男達の叫び声の様なものが聞こえて来た。

 

 その事からもしかして宴でもしてるのか? とその様な事を一瞬思ったが、すぐにその考えを打ち消す。

 何故なら男達のその声は楽しげなものではなく、その逆。怒声や悲鳴に近いものだったからだ。

 その上さらには、

「ホント使えねェ奴らだ! テメェら全員皆殺しだ!」

 という殺意に染まった声や

「ヤベェーつうの! だが俺の取材は体当たりだベイベー!」

 という覚悟を決めた様な声が聞こえて来たからだ。

 

 どうやら誰かがクロネコ海賊団と交戦中の様だ。

 さて、どうしようか。今なら彼らの船の前を横切ったとしてもそのまま素通りできるかもしれないが、後ろから二人の女泥棒達が「どうやら誰かと交戦している様ね」とか「このままじゃもしかしたらそいつにあたしのお宝が奪われちゃうかもしれないわ」だの「何言ってるの私()のお宝でしょ!」などと言った声が聞こえてきて、しまいには「という事で、さァ行くのよヒスイ!」とオレに全て丸投げしてくる。

 

 ……まぁ、なんとなくそう来るとは思っていたさ。

 非常に面倒だが、彼女達との契約では戦闘はオレが基本的に受け持つという契約を交わしている上、一応アスカ島まで送ってもらっている立場の為、仕方ないとオレは溜息を吐きながら彼女達の指示に従う。

 

 そこからオレは七聖剣を鞘から抜き放ち、妖気で身体を強化して駆け出す。そして跳躍して敵船へと潜入する。するとそこには切り傷を付けられ血まみれになって倒れる者達の姿があった。苦痛の呻き声を上げている者や気絶しているのか死んでいるのか解らない者までいた。

 

 そして現在、船上に立っているのはハート形のサングラスを掛けている男(何やら顎に変なシマシマな突起が生えていた…)と、血を流しながらもエレキギターを構えている金髪グラサンの青年、そして丸メガネを掛けたオールバックの人相の悪い男だった。

 

 その丸メガネを掛けた男は両手に手袋をはめており、その両指の部分には刃がついている。その刃からポタポタと血が流れ落ちている事からこの船の惨劇はこいつがやったのだろう。

 

 当然、突然のオレの登場に彼らの視線が向けられる。

 そこで丸メガネの男――たぶんこいつが”百計のクロ”だろう――が「なんだ貴様は?」と低い声で尋ねて来る。

 その質問にオレは「…泥棒はあいつらだし…賞金稼ぎ…って訳でもないしな…取りあえず泥棒娘達の用心棒だ!」的な事を応えると、”百計のクロ”は「そうか…まぁ貴様がどこの誰だろうが関係ない。この船に居合わせた以上貴様にも死んでもらう」と言ってきた。

 

 いや、なんでそうなる。すごく思考回路がぶっ飛んでるぞこいつ…。

 

 まるで会話にならない事にオレは眉を潜めるも、周囲の状況とカリーナの話しからマトモな野郎じゃない事だけは改めてよく解ったので、取りあえず予定通り叩き潰す事にした。

 

 

 そしてその後、”百計のクロ”と戦闘する事になったのだが、こいつの実力は先日の”三日月のギャリー”よりかは断然強く、あの鎖野郎と比べると少し弱いと言った程度だった。

 しかし、速度でいえばあの鎖野郎よりも速く、それこそ速さだけなら偉大なる航路(グランドライン)でも十分通用するレベルではないだろうか? 少なくともオレが出会った奴ら中ではこいつが一番速かった。

 

 と、そんな理由でこいつの速度に虚を突かれてしまったが、それだけだ。スピードはあってもパワーはないのかヤツの攻撃は妖気を纏ったオレの身体を傷つける事ができなかったのだ。

 その事にヤツは盛大に驚いていた様子で「貴様一体何をした!?」と取り乱していた。

 その後オレは妖気で強化した身体で”百計のクロ”に迫るも速度でいえばヤツの方がやはり速い為、オレの攻撃は悉く回避される。

 そんな攻撃を繰り返しながら「クソッ、こいつの動きを何とかできないもんか…」とそう悪態を吐きながらつい呟くと、そのオレの声に反応する様に七聖剣の刀身に埋め込まれた7つの宝石と天文が妖しく光り、妖気が溢れ出す。

 そしてその妖気は逃げ回るヤツを捕縛したのだ。

 

 七聖剣ってこんな事も出来たんだなぁと流石にそれには驚いたわ。

 まぁ、それでもヤツの方はオレの何倍も驚いていたが。

「なんだこれは!?」とか「まさか“悪魔の実”の能力者なのか!?」などと叫びながら妖気の捕縛から逃れようと必死に抵抗していたが、抜け出す事は出来ず、そのまま七聖剣でヤツをブッタ斬った。

 

 その光景に今まで黙って戦闘の成り行きを見ていたハート型のサングラスをした男が「ウソだろ!? あのキャプテン・クロがやられた…!?」と愕然とした驚きを現していた。そしてエレキギターを持った金髪グラサンの方は「ワッツ!? すっげェつうの!」という純粋の驚きを示していた。

 

 オレはハート型のサングラスをした男に「交戦を続けるか?」と尋ねると、その男は青い顔をしながら「い、いやこっちはアンタに敵対の意志はねぇ」と両手を上げながら降伏を宣言していた。

 

 

 その後、いつの間にか船内に潜入していたナミとカリーナの二人がホクホク顔で現れたり、エレキギターを持った金髪グラサン、名前はロッキー・ハッタリ―というらしく、彼から「サンキュー助かったぜベイベー」とお礼を言われた。

 

 どうやら彼はブルーベリータイムズ社に所属する敏腕新聞記者らしく(普通自分で敏腕っていうか…?)、現在は東の海(イーストブルー)に単身出張しており、海賊達に取材して回っているそうだ。

 何でもロッキーは自由に海を翔ける者達に憧れを持っている様で彼らのありのままの姿を新聞に描きたく海賊達に取材をしているそうだ。

 

 そしてそんな中その取材中に”百計のクロ”の地雷をを踏んでしまい、危うく殺されそうになっていた所にオレが駆け付けて九死に一生を得たとの事。

 

 …そんな話を聞いていて海賊相手に取材とかよくやるな、とオレは本気でそう思った。

 

 するとロッキーが「あの”百計のクロ”を倒したアンタの強さしびれるぜぇ! 取材OK?」と何やら興奮した様子でオレに尋ねてきた。

 

 するとオレがその言葉に何か応えるよりも早くにナミとカリーナの二人が先に口を開き「ヒスイに取材? いいわよ、だけど高くつくわよ?」とオレの意見を完全に無視し勝手に取材を了承してロッキーと交渉を始める。

 

 …いや、別に取材ぐらいはいいんだけどよ…。せめてオレに何か一言あってもいいんじゃないか? お二人さん。

 

 何だか最近遠慮がなくなってきた二人に呆れつつも無事に交渉が成功したのかナミとカリーナは満足そうに頷き、オレは溜息を吐きながらロッキーの取材へと応じた。

 

 

 そして取材後、ロッキーは「こうしちゃいられねェ! 早速本社に戻らねェと!」とオレの取材を切り終えると楽しそうな声音で「アンタの事、我がブルーベリータイムズ社の新聞で大々的に取り上げとくから、期待しといてくれよな!」と妙に張り切った様子でサムズアップしてきた。

 そうしてロッキーは大急ぎで本社へと帰って行った。

 

 

 そしてロッキーが去った後、ナミが思った以上にお宝があって三つに分けたから一つ持ってくれない? と言った為、お宝が入った袋の一つを持ちそのまま自分達の船へと戻る。

 

 その戻る最中に唯一、一人だけ生き残っていた船員であるハート型のサングラスをかけた男は

「…もう海賊やめようかなぁ」などと呟いていたのが聞こえてきたような気がした。

 

 まぁ何はともあれ、こうして再び偉大なる航路を目指して航海は続く。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 白い雲が風に流れ、燦々と太陽が輝く。

 波も気候も穏やかであり、カモメが気持ちよさそうに飛んでいるある日。

 

 甲板に寝転がりながら欠伸をする翠色の髪をした少年が船に追走する形で飛んでいるカモメを視界に収めながら眠たげな(まなこ)で追っていた。

 

 そんな彼の名前はヒスイ。

 つい数週間前まではただの一般人であった筈の少年だ。だが、自身の中にあるちょっとした好奇心のせいで今現在は一般人が経験するには少々過酷な状態に陥っていたりする。まさに好奇心は猫をも殺すと言った所だろうか。…彼がそのまま命を落とすかどうかは不明だが。

 まぁ、何はともあれ完全に自業自得な結果である。

 

 そしてそんな彼にとって全ての原因でもある七聖剣は、現在甲板で寝転がっている彼の真横に立て掛けられていた。すぐ隣に立て掛けられているのは突然の襲撃にも対応できる様にする為だろう。

 

「………」

 

 ヒスイはその後も何をするでもなく、暫くカモメを眺め続けていたが、次第にその両の瞼がゆっくりと閉じられていく。だが、すぐに近づいてくる気配に気づき、ヒスイは瞼を開けてその気配の元に視線をチラリと向ける。

 

 するとそこには毛布を持ったボーイッシュな雰囲気の少女、カリーナがいた。

 その手に持っている毛布から推察するに、どうやら彼女はヒスイが寝てると思った様で、彼に毛布を掛けようとしたのだろうが、その前にヒスイが目を覚ました為にどこか手持ち無沙汰な感じであった。

 

「…もしかして、起こしちゃった?」

 

 だからだろうか、そんな自分を紛らわせる為にその様な解りきった事をついつい口に出してしまったのは。

 そのカリーナの言葉にヒスイは当たり前の事だが、そんな彼女の心情など知る由もなく、普段通りに口を開く。

 

「いや、元々寝てた訳じゃないさ。どちらかと言えばこれから寝ようと思っていた所だな」

 

 ヒスイの言葉にカリーナは少しタイミングが早かったようね、と苦笑しながらそう呟き、毛布を彼の隣に置く。

 そんな彼女の姿にヒスイは「…意外に優しいんだな」と小さな声で彼女に対する感想を呟く。その声が聞こえたのかカリーナは不敵な笑みを浮かべながらヒスイを見下ろす。

 

「意外は余計よ。とはいえ、貴方には色々と儲けさせてもらってるからね。これぐらいのサービスはしてあげるわよ」

 

 何やら意味ありげにウインクをしながらカリーナは船内へと歩き出す。

 そんな彼女の背中に「毛布、ありがとな」とヒスイが素直にお礼を言うと、彼女の足が一瞬停止するもすぐにまた歩き出し、そのまま船内へと消えた。

 ヒスイはその毛布を身体に掛けそのまま瞳を閉じ、今度こそ夢の世界に旅立った。

 

 

 

 

 

 時刻は昼過ぎ。

 

 睡魔に襲われ、あれから1時間と少しの間、ヒスイは甲板でうたた寝をしていたが次第に目が覚めていき、完全に意識が覚醒した時にはもう既に昼食が出来上がっている時だった。

 料理の匂いが風に流れて彼の鼻腔をくすぐる。その美味しそうな匂いに彼の腹の虫が小さな音を立てて鳴く。

 

 ヒスイは起き上がると、真横に立て掛けていた七聖剣を持って船内へと入る。

 そこではナミとカリーナの女子二人が料理をテーブルに運んでいる姿が見受けられた。

 

 因みに料理はナミとカリーナの二人が当番制で作っている。ヒスイがその料理の当番制に入っていないのは、別に彼が料理が出来ないだとかそんな理由ではなく(とはいえ料理が得意という訳でもないが…)、彼女達と交わした契約によるものだ。

 簡単に言えば、ヒスイが戦闘の全てを請け負う代わりにナミとカリーナは航海や家事などを請け負うと言ったものだ。

 

 と、そんなこんなでテーブルに並べられた料理を一つ一つ眺め、その料理の中にナミの得意料理である鴨肉のローストみかんソースがある事に気付く。どうやら今日はナミが当番の日の様だ。

 

 ヒスイはそのまま自分の席に着き、「いただきます」と食事を始める前の挨拶をして料理を食べ始める。因みにナミとカリーナの料理の腕は一流の料理人と比べても遜色ない程絶品であり、その料理業界でも十分通用するレベルである。つい数週間前とは比べられない程、変化した食生活であった。

 

 満足そうに料理を食べるヒスイにナミはふふっと少し嬉しそうに笑みを浮かべながら口を開く。

 

「こんな美少女の手料理が毎日食べられるんだからかなりの幸せものよね。本当なら有料なんだけど…まぁアンタには色々と儲けさせてもらってるから特別よ」

 

 ナミのその言葉にヒスイはどこかで似たセリフをつい1時間ほど前にも聞いたな、と苦笑を浮かべる。確かにナミもカリーナも世間一般で言えば十分な美少女であろう。契約とはいえ、そんな彼女達から手料理を作ってもらっているヒスイは確かに幸せ者なのかもしれない。

 

 ヒスイがそんなナミの言葉に対して何か言葉を発しようとした時、

 

 

「いやぁ、全くだ。こんな美味い手料理を毎日食べられるなんてアンタ相当な幸せモンだな。羨ましいぜ」

 

 

「そうそう、そういう事だからヒスイにはこれからももっと……、」

 

 ナミは突如割り込んできた男の声に満足そうに頷きながら、これからももっと稼ぎまくるわよ! と言葉を続けようとするもその言葉は最後まで口に出す事は出来ずに途中で止まる。

 

 そしてナミとヒスイ、カリーナの三人はその声が聞こえてきた方向に視線を向けると、そこにはナミの作った料理を美味しそうな表情で食べている一人の青年がいた。

 オレンジ色のテンガロンハットを被り、首に赤い首飾りを巻いたそばかすの青年。

 

 

「「「……誰?」」」

 

 

 ヒスイ達三人はその青年に向け同時に疑問の言葉をぶつける。

 すると、その青年は視線を三人へと向けると、突如立ち上がり、

 

 

「あ! こいつはどうもお食事中に失礼。何とも芳ばしい料理の香りに誘われてやって来た俺の名はエース。以後よろしく」

 

 

 と、ヒスイ達に向かって、礼儀正しく一礼した。

 

 

 




ロッキー・ハッタリ―………『トレジャーバトル』というゲームに出てくるゲームオリジナルキャラ。たぶん知ってる人は知ってると思う。

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