○月■日 晴れ
なぜか全滅した海賊船の甲板の上で目が覚めてから数日が経過した。
死体処理やら、甲板についた血の掃除やら、その他いろいろとホントに精神的にも肉体的にも忙しい数日間だった。
でもこうして日記を書ける様になるまで心に余裕が出てきたので、また再び日記を書いていこうと思う。
結局海賊達が全滅していた理由も、なぜオレが海賊船の甲板の上で寝ていたのかも余りよくわかっていない。
…いや、すまない嘘だ。ホントは心当たりなら一つだけある。
――七聖剣だ。
よくよく考えればあの時、オレの中の最後の記憶は七聖剣を封じた神殿で七聖剣を手に取ったところで途切れているのだ。
そして次に目が覚めたら、この状況。
もうこれ絶対こやつの仕業でござるよ~。
恐らく七聖剣の呪いがオレに乗り移り、なんやかんやありアスカ島を離れ、そしてこれまたなんやかんやあり海賊を襲撃し呪いが解けた。
…とそう考えるのが妥当かな。まぁ仮にそれが事実だとしたら操られていたとはいえ、海賊達を殺したのはオレなんだよなぁ~…。
相手は海賊だし自業自得ともいえるかもしれないけど、とりあえずご冥福をお祈り申し上げます。
○月▼日 曇り
【悲報】どうやらオレ遭難してるらしい。
海賊達の死体処理や掃除などで今まで気づかなったが、この船オレ一人じゃあ動かせなくね? という事に今さっき気付いた。
いや、仮に動かせたとしてもオレ航海術なんて欠片も持ってねぇしここは
一応、買出し船用の小舟やオールは見つけたんだけな……う~む、オールで漕いでいけばその内どこかの島には着くかなぁ?
いやでも双眼鏡で周囲を見回してみた時に、島の対岸すら見えなかったしやっぱりそれは無謀だろうな。
はぁ~、せめて進むべき方角が分かればいいのだが。
…………。
………。
……。
…とここまで書いてみて思ったが、もしかしなくても今のオレの状況って想像以上にヤバい…?
くそっ!! オレは一体どうすればいいんだ…!!
○月○日 雨
とりあえずこの状況から何か打開するモノでも見つからないかと、船内をくまなく探してみる事にした。
すると、船長室らしき部屋からついに状況を打破できるかもしれないモノを見つけた。
それは
最初それを見つけた時、嬉しさの余りその場でついつい踊ってしまったほどだ。
後々振り返ってみると、ものすごいハシャぎ様だったと少し反省。
いやぁホントこの時ばかりはオレ一人でよかったと改めて思ったわ。誰かに見られでもしたら恥ずかしいなんてモンじゃないだろうし。
まぁそれはともかく、
これで少なくとも次の目的地は決まったな。本当ならアスカ島に今すぐ帰りたい所だが、帰る方法がないからなぁ。
このままいつまでもこの場にいても仕方ないし、明日ジャヤに向けて出発するとしよう!
○月×日 晴れ
オレはさっそく買出し船用の小舟を使い、
そして目指すはジャヤ!
しかしジャヤって名前の島は聞いた事がないけど一体どんな島なんだろうか? そこでアスカ島への
ちなみに現在オレが乗るこの船には、水と食料が入った箱に
水と食料と
マヤから貰った日記帳もこうして書き込んでおけば、後で何かの役に立つかもしれないし、それになんというかこれを捨てる気には絶対になれないんだよなぁ…。なんかマヤの顔がいちいち頭の中にチラつくし…。
はぁ~早くアスカ島に帰りてぇ~。
そして最後に七聖剣。
これに関してはオレが荷物を用意していたらいつの間にか荷物の中に紛れ込んでいた。なに言ってんだこいつと思われるかもしれないが、事実だ。
しかしおかしいなぁ…死体の処理や掃除には役立ちそうになかったので七聖剣はとりあえず倉庫の中に適当にぶち込んで今まで放置していたハズなのだが、何で荷物の中に紛れ込んでいるのだろうか?
不思議な事もあるものだ。
○月●日 曇り
オールを漕ぎジャヤを目指していたらなんか海賊に襲われた。
いやあれは酷かったな。いきなり問答無用で大砲をぶっ放してきた時はさすがに焦った。砲弾の何発かは外れたけど、そのうちの2、3発は確実に沈没直行コースだったしつい反射的に七聖剣を手に持って構えてなかったらヤバかった。
七聖剣を手に持った瞬間、ドクンっと心臓が脈打つかの様な感覚に襲われあの妖気が再びオレの身体に纏い始めた。
今回は意識を失う様な事はなかったけど、その瞬間なぜか異常なまでの高揚感と謎の力が漲り、なんというか物凄くhighな気分になったのを今でも覚えている。
そのせいか少し乱暴な口調になったり、無性に連中の血がほしくなったりと色々とおかしなテンションになりもしたし…。
だけど、そのおかげで海賊達を無事撃退する事に成功したので結果オーライと言ったところだろうか。
撃退とはいえ、別に皆殺しにしたとかそんなワケじゃないよ。いくら戦闘中に高揚して血がほしくなったと言っても別に快楽殺人鬼というワケでもないので半殺しぐらいに自重したさ。いくら海賊とはいえ、さすがに自らの意志でその様な事をするのは躊躇われるからね。
まぁそんなこんなで海賊達の半数を半殺しにしていたら、そこで残りの船員達の目が突如赤く染まったかと思うと、先ほどまで敵意や殺意に溢れていたその顔は無表情へと変わり暫くその場で棒立ちになる。
そして次の瞬間にはなぜかオレに忠誠を誓いだした。うん、意味が分からん。
しかもその顔には未だ感情らしい感情がまるでないし、オレの言う事はなぜか素直に聞く様になるしで、まるで操り人形みたいで少し…いや、かなり怖いかった…。
最初はこちらを油断させる罠かとも思ったが、せっせと舵を取り始める彼らを見ているととてもそうは思えなかった。いきなりすぎて困惑したが、オレに従順ならそれはそれでありがたいので、とりあえず深く考えない様にした。
とそんな事があり、オレは現在彼らの海賊船に乗せてもらう事になった。
本当ならこのままアスカ島にまで送ってもらいたい所だが、残念な事に彼らはアスカ島への
…しかし、次のオレの命令を待っているのはいいんだけど、君たち無言でオレの後ろに待機するのはやめてくれませんかねぇ…?
後ろに振り返った時に無表情で赤く不気味に輝く目をしたいかついオッサン達と視線が合った時なんて冗談ぬきで悲鳴を上げそうになったからさ。
PS、
料理長が作ってくれた料理がとても美味しかったです。久々に美味しい食事にありつけとても満足だ。
…だた無表情で包丁を捌いたり、無言で料理を作り続ける姿は少し怖かったと追記しておく。
○月△日 雨
今日はなにやら変な夢を見た。
辺り一面が暗い空間? とでもいえばいいのだろうか。そんな場所にオレは赤い目をしたオレと対峙していた。
その赤い目はあの海賊達と同じ様に爛々と輝いていたが、対峙するオレにはあの海賊達と違い表情があった。その表情はなんというか悪意やら憎悪やらを混ぜこぜにしたかの様な不気味なモノでその表情を見たオレは背筋がゾクリと震えた。
そんなビビったオレの姿に赤い目をしたオレはなぜか莫迦にしたかの様に鼻で嗤いやがった。
…なんだかすごくムカついたわ。
すると赤い目のオレは対峙するオレに「赤き月の日までに力を蓄えろ」だの「血をもっと吸収しろ」だの「そんなんじゃあすぐに死ぬぞ」だのと何やらワケの分からない事を言いやがった。
さらに「オレとお前でこの世の全ての生き物を根絶やしにする」とかなんとかそんな物騒な事を宣うと、突如オレの視界が切り替わり、世界中の者達が死に絶える怨念渦巻く光景が映し出され、人々の死骸を踏み砕きながら狂った様に嗤うオレの姿が……、
そんな余りにも物騒すぎる内容にオレは思わず引いてしまった。
ていうかなんだこれ? なんつう物騒な夢見てんだよオレ…。
すると赤い目のオレはそんなオレに対して「この光景はいずれ現実のモノへと変わる。それまでにできるだけ血と憎しみを蓄えろ」とその様な言葉を最後にオレは夢から覚めた。
しかし、一体何だったのだろうかあの夢は?
…まぁ所詮は夢。オレにあんな破壊願望なんてないし、あの様な事など万に一つも起きないだろう…。
それより今は無事にアスカ島に戻れるかの方が心配だな。あれからもうかなりの日数が経過してるし、みんなもきっと心配しているだろうな…。
はぁ~、早く帰りてぇ~。