やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。   作:春雨2

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第8.5話 短編集 彼女たちのあんさんぶる!

 

 

八幡「やはり俺の誕生日サプライズはまちがっている。」

 

 

 

ある夏の日。

 

シンデレラプロダクションの事務スペース。

そこに二人はいた。

 

 

 

八幡「……あちぃな」

 

凛「……うん」

 

 

 

私こと比企谷八幡と、その担当アイドル渋谷凛である。

 

 

 

凛「プロデューサーは、何やってるの?」

 

 

 

いつものカーディガンを脱ぎ、ネクタイを緩め、シャツの襟口をパタパタとしている凛。

やめてくれませんかね。目のやり場に困る。

 

 

 

八幡「一般Pのやる定時報告書だよ。やっとかねぇと後がうるせえんだ」

 

 

 

主に前の席に座っている鬼とかな。

ちなみにその鬼は用事にていない。

 

 

 

八幡「これが終わったら、その後は帰るよ」

 

凛「……ふーん」

 

 

 

興味無さげに応える凛。ホントに興味無さそうだな……

 

 

 

八幡「お前こそ、今日は仕事もレッスンも無いだろ。何してんだ?」

 

凛「別に。ただ何となく、ヒマだったから」

 

八幡「そうか」

 

 

 

ここにいる方がヒマな気もするけどな。

ま、それは言わぬが花だろう。

 

 

 

八幡「……」 カタカタ(パソコンを打つ音)

 

凛「……」

 

八幡「……」 カタカタ

 

凛「……ねぇ」

 

 

 

手持ち無沙汰なのか、話しかけてくる凛。

俺、一応作業中なのだが。

 

 

 

八幡「なんだ?」 カタカタ

 

凛「今日って、何の日か知ってる?」

 

八幡「……いや」 カタカタ

 

凛「……そう」

 

 

 

それで会話終了。

凛、若干膨れっ面の様子。

 

なんなんだ一体……

 

 

 

八幡「……」 カタカタ

 

凛「……」

 

八幡「……」 カタカタ

 

凛「……ねぇ」

 

 

 

今度はなんだ。

頼むから答えやすい話題にしてくれ。

 

 

 

八幡「どうした?」 カタカタ

 

凛「プロデューサー、私のプロフィールとか読んでる?」

 

八幡「まぁ、一応」 カタカタ

 

凛「……あ、そう」

 

 

 

またも会話終了。

凛、目に見えて不機嫌なご様子。

 

ホントなんなんだ……

 

 

 

八幡「それがどうしたんだ?」 カタカタ

 

凛「別に、何でもないよ」

 

 

 

あからさまに何でもなくねぇだろ。

そんなムスッとした顔して。お団子でも入ってるんですか?

 

 

 

凛「……もういい」

 

八幡「え?」 カタk

 

凛「帰る。じゃあね」

 

 

 

そう言ってスタスタと去っていく凛。

 

いや、ちょっ、あぁもう!

 

 

 

八幡「ちょっと待った」

 

凛「…ッ!」

 

 

 

直ぐさま回り込んで、凛を制する。

ったく、もうちょいだったってのによ。

 

 

 

八幡「ほら、これ」

 

凛「え?」

 

八幡「プレゼントだよ。……誕生日おめでとう」

 

 

 

顔を背けながら、ポケットに入っていた小包を渡してやる。

凛は最初面食らっていたようだが、その後瞬く間に顔を赤くして、取り繕う。

 

 

 

凛「誕生日? あぁ、そっか。ふーん、プロデューサーもお祝いしてくれるんだ…ありがと」

 

 

なに今思い出しましたみたいな顔してんだよ。さっきまで気づいてほしいアピールびんびんだったじゃねーか。

 

 

 

凛「…あらためてお祝いされると、変な感じだね」

 

八幡「本当はもう少ししたら、ちひろさんたちがプレゼント用意して押し掛けてくる予定だったんだよ。それをお前が帰ろうとするから……」

 

凛「だ、だってプロデューサーが……」 ブツブツ

 

八幡「あ?」

 

凛「何でも無い!」

 

 

 

またもそっぽを向く凛。

喜んだり不機嫌になったり、忙しい奴だな。

 

 

 

凛「……これ」

 

八幡「へ?」

 

凛「……プレゼント。二日遅れちゃったけど、誕生日おめでとうプロデューサー」

 

 

 

お返しとばかりに小包を渡されてしまう。あ、誕生日って、そっか。

 

 

 

凛「二日前は休みで会えなかったから、今日渡そうと思って……プロデューサー?」

 

八幡「あぁいや、そうか……俺もう誕生日過ぎてたんだな」

 

凛「忘れてたの!?」

 

 

 

だってここ最近忙しかったし、特に誰にもお祝いされなかったし……いかん涙が出て来た。

 

 

 

八幡「ま、まぁとにかく……ありがとな、凛」

 

凛「……うん。どういたしまして」

 

 

 

笑顔で応じる凛。

……やっぱ、笑ってる顔が一番良いな、お前は。

 

 

 

凛「そうだ。プロデューサー、来年は8月9日にお祝いしようよ」

 

八幡「はぁ? なんでだよ」

 

凛「……だって」

 

 

 

凛は少しだけ言い淀んだ後、髪をかき上げ、照れたようにまた笑みを浮かべる。

 

 

 

凛「それなら、二人で誕生日を祝えるでしょ? 間をとってさ」

 

 

 

……ホント、勘違いするからやめてくれ。

 

 

 

八幡「……今度からお前の事は、ぼっちキラーと呼ぼう」

 

凛「なんで!?」

 

 

 

お互いに交わす、他愛の無い会話。

 

来年もこうしてお互い祝えるような関係でいられるのだろうか。

それは分からない。

 

けどそれでも、今は隣にいる。

 

 

なら、今はそれで良いか。

 

 

 

ちなみに俺が貰ったのは、ネクタイピンだった。

こんなオシャレアイテム、俺に似合うか心配だったが、凛が選んでくれたからな。使わない理由はない。

つーかこれと小町のネクタイが合わさって最強コンボじゃね?

 

 

そして俺があげたのは、アイオライトのネックレス。

決して高価なものではないが、凛は喜んでくれたし、まぁいいか。

 

 

 

アイオライト。

 

夢や目標、自分らしさへと導く石。

 

 

 

何だか気恥ずかしいので意味は言わなかったが……

ま、しばらくは黙っておくとしよう。

 

少なくとも、来年までは、な。

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭子「やはり私の青春模様にまちがいはない。」

 

 

 

中二病。

 

 

友人によると、私はそういった病にかかっているらしい。

 

病と言っても別に病気とかそういう類いのものではなく、思春期にありがちなちょっと背伸びした振る舞い。

そういったものを指すみたい。

 

けどその中でも、私は特殊な分類に分けられるようで……

 

 

邪気眼系。というらしい。

 

 

意味はよく知らないけど……フフ、中々良い響きね。

 

……今のがそうなのかな。

 

 

 

蘭子「…………カッコいいなら、それで良いと思うけどなぁ」

 

 

 

私の呟きに、答える者はいない。

 

でも、お母さんのご飯が出来たという声は聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友達「おはようー」

 

蘭子「煩わしい太陽ね(トモちゃんおはよう!)」

 

友達「……」

 

 

 

いつも通りに登校し、いつも通りに教室に入って挨拶する。

うん! 今日も一日頑張ろー!

 

 

 

蘭子「今宵は血が疼く……私の真の能力を見せる時が来たようね(今日テストだねー、頑張らなくちゃ)」

 

友達「……ふんッ!」 マカチョップ!

 

蘭子「ソウルっ!?(痛いっ!?)」

 

 

 

いつもの朝のやり取りをしていると思ったら、いきなり教科書の角を頭頂部に振り下ろしてくるトモちゃん。か、角は本当にヤバイよ……

 

 

 

蘭子「うう……痛いよトモちゃん……」 さすりさすり

 

友達「それはこっちの台詞よ。色んな意味で痛いわ」

 

 

 

やけにイライラした様子で言うトモちゃん。

ど、どうしたんだろう。そんなに今日のテストが不安なのかな?

 

 

 

蘭子「……フッ、安心せよ我が下僕よ。呪文の事なら私が…(大丈夫だよ! 国語なら私得意だから教えてあげ…)」

 

友達「ふんぬッ!!」 脳天直撃死神チョップ!!

 

蘭子「イーターッ!?(痛いッ!?)」

 

 

 

今度は直接手刀を振り下ろされちゃった。

でも何故かさっきより痛い気がする……なんでだろう。

 

 

 

蘭子「うう……さっきからどうしたのトモちゃん?」 さすりさすり

 

友達「だからそりゃこっちの台詞だってば。その中二言葉止めてよね」 ハァ…

 

蘭子「うっ…」

 

友達「あんた可愛いから許されてるけど、それでブッサイクだったら殴ってるわよ?」

 

蘭子「もう殴ってるよ……」

 

 

 

ダメだ……あの痛みを味わうと迂闊に堕天使形態(※中二モードの事。蘭子ちゃん命名)になれないよ。

 

 

 

友達「それと、その眼帯」

 

蘭子「え? 変かな?」

 

友達「目、怪我でもしたの?」

 

蘭子「……」

 

友達「……」

 

蘭子「……ククク、我が邪王真眼を見せる時が……あ、ごめんなさい嘘です嘘ですだからお願いだから振りかぶらないで!」

 

 

 

トモちゃんが怖かったので仕方なく眼帯は取りました(震え声)。

 

 

 

友達「ホントなら、その腕に巻いてある包帯も剥ぎ取りたいところだけど…」

 

蘭子「……ッ!」 キッ

 

友達「そんな親の敵を見るような目で見なくてもいいじゃない。……分かったわよ、それは見逃してあげる」

 

蘭子「トモちゃん……!」 キラキラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生「どうした神崎ー、腕、怪我でもしたかー」(※HR中)

 

 

蘭子「~~ッ!」 カァァ

 

友達「~~ッ!!」(笑いを堪えている)

 

 

 

次の休み時間、私は包帯を取りました。

 

 

 

蘭子「は、恥ずかしかった……」

 

友達「だから言ったじゃない。これに懲りたら、もうそんな真似しない事ね」

 

蘭子「……」

 

 

 

やっぱり私はカッコいいと思っても、他の人は気持ち悪がっちゃうのかな。

 

トモちゃんも、別に私に悪気があるわけじゃない。

むしろ心配してるからこそ、止めるよう言ってくれているんだろう。

 

…………でも……なぁ。

 

 

テストは、あまり集中出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭子「何度も僕ら~♪ 高く星追いかけて~♪」

 

 

 

紅蓮の道を往き、我が理想郷へと羽ばたこう(夕日の中、私の家へと帰宅中)。

 

……やっぱり、心の中じゃつまんないな。

でも口にしたら、きっと周りの人に白い目で見られる。トモちゃんが言っていたように、変な人だと思われる。それは、嫌だ。

 

けど、なぁ……

 

 

ついつい気持ちが暗い方に行っちゃうな。

こういう時は、歌って気分を晴らすのが一番だよね!

(※蘭子ちゃんは天然だから、歌いながら帰ってる時点で変な人だと思われる事に気づいていません)

 

 

そういえば、今日はMステで貴音ちゃんが歌うんだった! 帰って録画しないと!

……アイドルは良いなぁ、自分を思いっきり出す事が出来て…

 

 

 

蘭子「信じてr……ん?」

 

 

 

少しだけ早足で歩いていると、交差点である物に目が止まる。

物というか、者だったけど。

 

 

それは私より少し年上だろう男子学生の二人組で、何と言うか……目立っていた。

 

 

 

「るふんるふん! 八幡、中々の戦果だったな! ここまで来たかいがあったというものだ!」

 

「ここで広げんじゃねーよ、周りの目が痛いだろうが。つか、俺は偶々出会わせただけだ。付き添いみたいに言うのやめてくんない?」

 

 

 

一人は恰幅の良い眼鏡の男子で、学校の制服の上に何故かコートを羽織っている。そしてその両手にはいっぱいの紙袋。プリントされているイラストを見ても分かるけど、正にその筋の人だった。

 

 

……でも、実は私もそこのお店の常連だったりする。

だ、だって心引かれるものがたくさんあるんだもん!

 

 

そしてもう一人は、同じ高校の制服を来ている標準的な体格の男子。顔は……か、カッコいい方だと思う。

特にその目。全てを威圧し、達観しているようなその瞳は、邪王真眼を持つ私を多いに引きつけて……はっ! もしや彼の者がダークフレイm(ry

 

 

と私が妄想に陥りそうになっていると、隣で待っている女子高生たちから声が聞こえてきた。

 

 

 

「やだーちょっと見てよ、あれがオタクってやつ?」 クスクス

 

「ホント、マジきもいんだけど」 ケラケラ

 

 

蘭子「……っ!」

 

 

 

それはほとんど隠す気のない、陰口とも言えない悪口。

この距離だ。あの人たちにも勿論聞こえているだろう。

 

……何でかな。

 

 

私が言われてるわけじゃないのに、胸が、痛い。

 

 

思わずその場から去りたい衝動に駆られながら、二人の男子を恐る恐る見る。

 

すると思った通りか、眼鏡の男子は冷や汗を流しながら居心地悪そうにしている。

当たり前だ。私だって、同じ状況だったらそうなるだろう。

むしろ、泣きながら逃げるかもしれない。

 

けれど、もう一人の男子は……何も変わっていなかった。

 

 

もしかして聞こえてなかったんじゃ、と私が考えていたら、その男子は動いた。

眼鏡の男子が持っている袋と同じ、自分の持っている袋(ただし数は圧倒的に少ない)を、おもむろに開き始める。

 

取り出したのは、一冊の本。大きさ的にたぶん漫画かな。

 

そして彼は、突然切り出した。

 

 

 

「やっぱ、ゆのっち一択だよな。何あの笑顔、眩し過ぎてもはや見れないぜ。宮子との絡みとか微笑ましくて微笑ましくて、この間リビングで読んでたら小町にキモイって言われちまったよ。そんな顔緩んでたんかね」

 

 

「八幡……?」

 

「お前はどーよ材木座。あれか。大穴で吉野家先生か」

 

「……ふっ、愚問だな。我はもちろん、なずな殿だ!!」

 

「予想通り過ぎてきめぇ!」

 

 

 

いきなり漫画トークが始まる。

その会話はどんどん熱を帯びていき、いつの間にやらお互い掴み掛からんばかりの熱弁になっていた。

でも、私にはそんな二人が凄く楽しそうに見えた。

 

羨ましいくらいに。

 

 

 

「うわ、なにアイツら急に……」

 

「……キモっ、早くいこ?」

 

 

 

先程の女子高生は、あからさまに引いた様子で去って行く。

 

よく見ると、周りにいた他の人たちもいつの間にかいなくなっている。

これが、世間の風当たりってやつなのね……

 

 

 

「……ふう、あーあまた黒歴史を増やしちまった…」

 

 

 

見ると、先程の男子が本当に疲れたといった様子で溜め息を吐いている。

まさか、演技……?

 

……いや、それはない。

 

私には分かる。さっきのは本音だった(同類の勘)。

 

 

 

「む? どうした八幡。もっと我とKRコミックスについて語り合おうではないか」

 

「いやいいから。俺は帰って漫画と一対一で語り合うから。ゆのっちがひだまり荘で待ってくれてるから」

 

 

 

やっぱり本音みたいだった。

 

 

 

「……けどまぁ、その方がお前らしいわ」

 

「八幡……まさか貴様……」

 

「オタク上等くらいがお前には丁度いい。そっちの方がまだウジウジしてるよかマシだ」

 

 

 

要はあの男の子は、眼鏡の男子に発破をかけたのだろう。

 

オタクなら、もっと堂々としてろと。

あの突然の行動はには、そういう意味があったのだろう。

 

 

 

「……くくく、流石は我が半身。我の事なら全てお見通しというわけか」

 

「いや違うから。その一心同体みたいな言い方気持ち悪いからやめてくんない」

 

 

 

そしてあの眼鏡の男子からは同じ匂いを感じる……!

……そっか、端から見るとあんな風なんだ私。

 

 

 

「しかしなハチえもん。女子にああいう事を言われると、どうしてもな。最悪泣いちゃうぞ我」

 

「まぁ気持ちは分かるがな……俺だってそうだ」

 

 

 

心底同意したくないといった様子の彼。

 

 

 

「けど、今は別に周りなんてどうでもいい。好きなもんくらい、好きって言いたいからな」

 

 

 

蘭子「っ!」

 

 

 

「周りの目ぇ見て、周りの顔色伺って、その上好きなものまで犠牲にして、そんなのは……俺は真っ平だ」

 

 

 

その言葉は、深く深く、私の中に突き刺さった。

 

好きなものを、自分を隠して、それで、本当に胸を張れるの?

 

私は……

 

 

 

「うむ……そうだな。それでこそ我の相棒! 剣豪将軍義輝の相棒だ!!」

 

「いやそういうのはいいから。ぶっちゃけそれは本当にキモイ」

 

 

 

わいわいと騒がしく、その二人は去っていった。

 

堂々と、自分を偽らないその姿がカッコよくて。

 

 

私はーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭子「クックック、我が眷属よ、闇に飲まれよ!!(トモちゃん、テスト勉強お疲れさま!)」

(※レアの特訓前の格好。もちろん傘もさしてるよ)

 

 

友達「悪化したッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後なんやかんやあり、トモちゃんは渋々ながらも私のこの病を黙認してくれた。

 

「見ている分には面白いしね」って言っていたけれど、ならせめてツッコミはもう少し優しくしてほしいかな。

 

 

けどもちろん、快く思わない人たちもいる。

 

親は宇宙人でも見るような目で見てくるし、外を出歩けば不審者扱い。

担任の先生には泣かれちゃったりもした。……さすがに迷惑かけ過ぎました。

 

 

 

でも、私はやめるつもりはない。

 

私が好きで、カッコいいと思って、やっている事だから。

 

 

 

中二病は、きっと私の青春なのだ。

 

 

 

だからきっと、まちがってなどいない。

そう胸を張って、今は言える。

 

 

……あの人に、また会ってお礼を言いたいな。

 

 

 

 

 

 

「ちょっとそこのキミ……ティンときた!」

 

 

蘭子「はい?」

 

 

 

 

 

 

その後彼と彼女が事務所で再び出会う事になるのは、また別のお話。

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「やはり俺の休日は普通に終わらない。」

 

 

 

休日。

 

 

学生であれば一週間に二日は与えられているその時間を、今になってありがたみを実感出来る。いや、俺だってまだ学生なんだが、半分社会人みたいなもんだからな。半分マンである。

 

それにプロデュース業をやりだしてからは、どうも休みが不定期だし、中々ゆっくり休む事もままならない。土日に休みを取れるのなんてザラだ。

 

だからこそ、久方ぶりの休みは貴重。そして今日はその久々の休日だ。

 

 

……休日、なのだが。

 

 

 

 

 

 

八幡「何故いる」

 

凛「え?」

 

 

 

まるで訊かれる事が意外だという表情で言葉を漏らす、黒髪の美少女。

 

普段ならばあの小町ですらも介入を制限されている不可侵入区域。つまりは俺の部屋に、我が担当アイドル渋谷凛はいた。

 

 

 

凛「だってプロデューサーがお休みだから、私も仕事無いし。今日はレッスンも入ってなかったから」

 

八幡「から?」

 

凛「そりゃ、遊びに来るよ」

 

 

 

なにその方程式。アイドルの法則?

やよいちゃんも当て嵌まるのなら全俺が泣く。

 

そして話す事はもう無いとばかりに、手元のケータイに視線を戻す凛。

いや、それで説明終わりなんかい。

 

 

今俺たちはこたつを挟んで丁度向かいに座っている。

察してはいるだろうが、俺の部屋である。

 

え? こたつがあるって事は冬なのかって? ナンノハナシカサッパリデスネ。

 

 

こんな状況になったいきさつについては、面倒なので三行ですませる。

 

小町に起こされ

凛が来て

仕方がないのでお茶を出す。

 

ホントにこれだけだった。

 

 

 

八幡「……折角の休みだったんなら、友達とかと遊べば良かったんじゃねーの?」

 

 

 

当然の疑問を口にしながら、ノートパソコンを機動させる俺。建造はどうなったかな。

 

 

 

凛「卯月と未央はそれぞれ予定が入ってるんだってさ。加蓮は定期の検診で、奈緒は……なんかのイベントだってさ。詳しくは教えてくれなかったけど」

 

八幡「さいですか」

 

 

 

ケータイから目を離さずに答える凛。

たまにケータイの持ち手を替えては空いた方の手をこたつに入れている。

 

今気づいたが、そういえば凛ってガラケーだったんだな。今時珍しい。

 

 

 

凛「そう言うプロデューサーは?」

 

八幡「は?」

 

 

 

いきなりの返しに、思わず上ずった声を出してしまう。

見ると、いつの間にか凛がこちらに顔を向けていた。

 

 

凛「プロデューサーは、その折角の休みなのに部屋に一人でいたけど」

 

八幡「……」

 

凛「……」

 

八幡「……やっぱ俺は金剛姉妹の中では、榛名が好きだな」

 

凛「何の話!?」

 

 

 

思わぬ答えに驚く凛。こういう所は由比ヶ浜っぽい。いや金剛姉妹の話じゃなくね?

 

 

 

八幡「あのな、俺たちもそう短い付き合いじゃないんだ。その質問が意味を為さない事ぐらい分かるだろう? それくらいは察してほしかったな」

 

凛「嫌な信頼だね……」

 

 

 

思わず苦笑いを浮かべる凛。

 

しかしこれくらいで呆れて貰っては困る。

ぼっちの全ては語り尽くせない。

 

 

 

八幡「俺の担当アイドルなんだ。もっと覚えて貰わなくちゃならん事は沢山あるぞ」

 

凛「た、例えば?」

 

 

 

おそるおそる訊いてくる凛。そうだな、例えば……

 

 

 

八幡「『趣味は?』とかは訊くな」

 

凛「? 何で? 結構普通の質問だと思うけど」

 

八幡「ま、詳しくは原作小説7巻のぼーなすとらっく、もしくは限定版ドラマCDを聴いてくれ」

 

凛「宣伝だった!?」

 

 

 

7.5巻も好評発売中! 8巻が待ち遠しいね!

 

 

そんなこんなで雑談しつつ時間を潰していると、不意に凛が小さく声を上げた。

 

 

 

凛「……あ」

 

八幡「どうかしたか?」

 

 

 

すると凛は持っていたケータイの画面を俺に向け、困ったように言う。

 

 

 

凛「電池切れ。最近直ぐに無くなるんだよね」

 

 

 

確かにケータイの画面は真っ暗で、何も表示されていない。

こうして見てみると、所々傷がついていて、長く使用していた事が伺える。

 

 

 

凛「そろそろ替え時かな。周りもどんどんスマホになってくし」

 

八幡「今時じゃ、ガラケーの方が少ないもんな」

 

 

 

ちなみにガラケーはガラパゴスケータイの略らしい。

意味は……前になんかで見たけど忘れたな。

 

 

 

凛「プロデューサーはiPhoneだよね? 5S?」

 

八幡「いや、普通の5。まだまだ使えるし、当分替える気は無いな」

 

 

 

ポケットから出し、凛に手渡す。

 

ちなみに色は白。今思えば、黒でも良かったかなーという気もする。

まぁ青色のカバー付けてるから別に良いんだけどね。

 

俺のiPhoneを手に取り眺めながら、やがて凛はぼそっと呟いた。

 

 

 

凛「……変えようかな」

 

八幡「あ?」

 

凛「ケータイ、変えようかな」

 

 

 

言うや否や、こたつから出て立ち上がる凛。

俺がぽかーんとしながら見ていると、凛は身支度を整えながら、言ってきた。

 

 

 

凛「ほら、プロデューサーも行くよ」

 

八幡「は? 行くって……まさか、おい」

 

凛「うん」

 

 

 

私服用のダッフルコートを羽織ると、凛は笑いながら言った。

 

 

 

凛「ケータイショップ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家を出る時いつも以上に小町がうるさかったが、そこは俺。見事なステルスヒッキーを発動しての総スルーで何とかやり過ごした。

 

ただまぁ「デートなの!? プロデューサーと担当アイドルが休日に秘密のデートなのお兄ちゃん!?」とか言ってたせいで凛が終始顔真っ赤だったけどな。照れ凛かわいい。

 

 

そら俺だって女の子と二人きりでお出かけとか、何も思わないわけがない。だからこその無心。無我の境地である。You still have lots more to work on…

 

 

 

八幡「そういや、凛ってどこの会社使ってるんだ?」

 

凛「……プロデューサーと同じソフトバンクだよ。アドレス交換したのに覚えてないの?」

 

 

 

俺が訊くと、あからさまに不機嫌な様子で答える凛。

 

そ、そうだったけか? けどアドレスなんて一回交換したらそう見ないからな。電話帳には名前しか表示されんし。

 

 

 

八幡「そ、そうか。んじゃ、俺と凛はタダともなわけだ。……一回も電話した事はないが」

 

 

 

実際、俺がケータイを買う時にソフバにしたのはこれが理由にある。

当時の俺は「え? 連絡先交換しただけで友達になれんの? なにそれスゴい」と思って疑わなかったからな。まず連絡先を交換する事が無いという罠。最初に気付けよ俺ェ……

 

 

 

凛「タダとも、ね……」

 

 

 

ぽつりと言葉を漏らした凛を見てみると、何やら真剣な表情で俯いている。

 

な、何か拙い事言ったか俺?

 

 

 

凛「……ねぇ、プロデューサー」

 

八幡「ん?」

 

凛「タダともって、恋人同士でも“タダとも”なのかな?」

 

 

八幡「…………は?」

 

 

 

一瞬、発言の意味が分からなかった。

つまりはアレか? 恋人同士ならタダともじゃなくてタダカプじゃないか? という意味か?

 

 

 

凛「……っ……な、なんでもない。忘れて」

 

 

 

言った後、顔を赤くしたと思ったら早足で先に行ってしまう凛。

 

……いったい何なんだったのだろうか。

 

 

 

程なくして近所のケータイショップに着く。

ソフトバンクに来た事から、どうやら会社を変えるつもりは無いらしい。

 

店内に入ると、色とりどりのケータイが目に入る。

どれもスマホばかりで、やはりガラケーは少なかった。

 

キョロキョロと辺りを見回す凛の横に立ち、訊いてみる。

 

 

 

八幡「何するかは決めてあるのか?」

 

凛「うん。一応ね」

 

 

 

やけに即答だな。

さっき機種変を決めたあたり、まだ考えてなかったと思ったんだが。

 

 

すると凛は、店内で一番スペースを取っている機種のコーナーまで歩いていく。

俺も使っている機種。ご存知iPhoneである。

 

やはり最近5Sが出た事もあってか、大々的に取り上げられているようだ。

 

そのコーナーの前で、ジーっと眺めている凛。

 

 

 

八幡「なんだ、お前もiPhoneにするのか?」

 

凛「うん。そうしよう、かな」

 

 

 

なるほど。大方さっき俺と話をしていて決めたのだろう。それなら即決にも納得出来る。

しかしそれにしたって中々の行動力である。見習いたいものだ。

 

 

 

八幡「羨ましいな。まだ在庫あるっぽいし、丁度良かったじゃねぇか」

 

凛「え? 何が?」

 

 

 

きょとんとした顔で訊いてくる凛。いや何がって……

 

 

 

八幡「5Sにするんだろ? 今は売り切れも多いみたいだし、在庫あって良かったなって言ったんだよ」

 

 

 

さっきは5で充分とは言ったが、それでもやっぱり最新機種は羨ましいからな。後でどんな感じなのか感想でも聞こう。

 

 

 

凛「あー……」

 

 

 

しかし凛はと言うと、特に嬉しそうといった反応でもない。

 

 

凛「私は、プロデューサーと同じのでも別に……」

 

八幡「あ?」

 

凛「何でもない!」

 

 

 

店内の音楽でよく聞き取れなかったが、とりあえず何でもないというのは分かった。

 

 

 

凛「あ、ねぇプロデューサー。これは?」

 

 

 

取り繕うように凛が指を指して問いかけてくる。

そこに配置されているのはiPhoneの中でもひときわカラフルなもの。

 

 

八幡「あぁ、5cだな。いわゆる廉価版だよ」

 

凛「廉価版?」

 

八幡「俺も詳しくは知らねぇけど、スペックは5と同じくらいで安く買えるらしい。あと、色がカラフル」

 

 

 

我ながら小学生並みの説明である。

いや持ってるわけじゃないんだから仕方ないだろ?

 

 

 

凛「ふーん……あ、ホントだ。外側がプラスチックみたいなんだね」

 

 

 

ふむふむと眺め回しながら品定めしていく凛。

俺はてっきり5Sにするもんだと思っていたが、凛はそのつもりでもなかったようだ。

 

 

 

凛「……決めた。これにする」

 

 

 

そう言って手に持っていたのは、水色の5c。

 

 

 

八幡「いいのか? 5Sにしなくて」

 

凛「うん。色が可愛いし、それにプロデューサーと同じような感じなんでしょ?」

 

 

 

まぁ正確には違うがな。

大体は一緒らしい。……たぶん。

 

 

 

凛「なら、私はこれでいいよ」

 

八幡「……お前が良いなら、止めはしねぇよ」

 

 

 

青って所も、お前らしいしな。

 

 

 

その後機種変の手続きを済ませ、新しいケータイを手に店を出る。

しかし思いつきでケータイ変えちゃうんだもんな……これが女子高生か。

 

あと、妙に受付から戻ってきた凛の顔が赤い。どうしたと言うのか。

 

 

 

凛「……受付の女の人がね」

 

八幡「おう」

 

凛「…………お連れの彼氏さんと、カップル割りはどうですかって」

 

 

 

おぅふ……

やってくれるぜ店員さん……!

 

そして言いながらも、更に顔を赤くしていく凛。

やべぇな、こりゃ俺も絶対赤くなってる!

 

 

何とも気恥ずかしくなってしまい、顔を背けつつ早足で歩いてしまう。

しかし凛が着いてくる気配も無いので、不振に思い振り返ろうとした時だった。

 

 

 

『ーー♪』

 

 

 

不意に、ケータイの着信が鳴る。

 

ポケットから取り出し画面を見ると、表示されているのは“渋谷凛”の文字。

電話には出ないまま、振り返る。

 

すると凛は、買ったばかりのiPhoneを耳に当てつつ、期待するような表情でこちらを見ていた。

 

 

 

八幡「……はぁ」

 

 

 

仕方がないので、出てやる。

 

 

 

八幡「……なんだ」

 

凛『もしもし、プロデューサー?』

 

 

 

受話器越しの凛の声と、目の前の凛の声が重なる。

 

 

 

八幡「この状況で俺じゃなかったらおかしいだろうが」

 

凛『あはは、確かにそうだね』

 

 

 

楽しそうに笑う凛。

俺としては、ものスゴく恥ずかしいのだが。

 

 

 

八幡「ケータイ変えてはしゃいじゃってんのか? まぁ気持ちは分かるがな」

 

 

 

俺もsiriを使えるようになった時は一人でよく遊んだものだ。

同時に死にたくもなったがな。

 

 

 

凛『いいでしょ? 折角のタダともなんだし。それに……』

 

 

 

ちょっとだけ躊躇った後、凛は微笑みながら言う。

 

 

 

凛『最初は、プロデューサーに電話したかったからさ』

 

八幡「……」

 

 

 

……こいつは、ホントにずるいよなぁ。

 

 

 

八幡「……ちっ」

 

凛「あ、ちょっ、何で切っちゃうの!?」

 

八幡「なんか悔しくなったから」

 

 

 

顔が熱くなるのを誤摩化すように、足早にその場を後にする。

その横に凛が追いついて来たが、顔は向けない。向けられない。

 

 

 

凛「もう、まだ言いたい事あったのに」

 

八幡「まだあったのか……」

 

 

 

勘弁してくれ。

どれだけ俺のSAN値を削る気だ。

 

 

 

凛「さっきプロデューサーが言ってた、付き合ってく上で覚えていて貰いたい事。私にもあるんだ」

 

八幡「……一応、聞いておこうか」

 

 

 

果てしなく嫌な予感しかしないがな。

仕方ないので、一瞬だけ、顔を向けてやる。

 

 

 

 

 

 

凛「お休みの日にヒマな時は、私に連絡すること。……分かった?」

 

 

八幡「…………おう」

 

 

 

俺がそう言うと、彼女は満足そうに微笑んだ。

 

 

 

隣を歩くこの少女。

 

この少女が、俺の担当アイドル。渋谷凛。

どこまでも真っ直ぐで、いつだって優しい。

 

 

だから、非常に癪だが、覚えていてやるか。

ほんとぉーーーにヒマな時は連絡してやるよ。

 

 

 

幸い、電話はタダみたいだしな。

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【mail@ 総武校←→某中学校】

 

 

 

 小町 >>[今、ライブ中? どんな感じ?]

 

八幡 >>[すげぇ恥ずかしかった。脇汗ヤバイ。]

 

 小町 >>[お兄ちゃんのコンディションなんて聞いてないよ……何やらかしたの。]

 

八幡 >>[聞かない方が身の為だぞ。きっと、俺の妹だと公言したくなくなる。]

 

 小町 >>[それは元々ですかなー。]

 

八幡 >>[泣いていいか?]

 

 小町 >>[文面でならどうぞ。小町も生徒会なかったら行けたんだけどなー。]

 

八幡 >>[今だけは生徒会に感謝せねばなるまい(泣)]

 

 小町 >>[それで、お兄ちゃん的に結局どんな感じだったの?]

 

八幡 >>[まぁあれだな。一言で言うと、八幡的にポイント高い。]

 

 

 

*One day, Hachiman and Komachi*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「やはり俺のクリスマスは……あ、いや、やっぱ何でもないです」

 

 

 

ある冬の日。

 

シンデレラプロダクションの事務スペース。

そこに二人はいた。

 

 

 

八幡「……さみぃな。でも暖けぇ」

 

凛「……うん。……あれ? なんかデジャヴ」

 

 

 

私こと比企谷八幡と、その担当アイドル渋谷凛である。

 

いつの間にか事務所に設置してあったコタツに入り、俺はパソコン、凛はiPhoneと睨めっこしている。

 

 

 

凛「プロデューサー、また報告書?」

 

八幡「いや、まどマギオンライン」

 

凛「……艦これですらなかった」

 

 

 

別にいいだろ。同じゲームやってっと飽きんだよ。

しかしワルプルギスの夜はもう15夜か……ほむほむはあと何回繰り返したのだろう。

 

 

 

凛「……ねぇプロデューサー」

 

八幡「んー……」

 

凛「まだ家には帰らないの?」

 

八幡「あーもうちょっと休んでからな。今日は結構疲れてよ」

 

 

 

全く、あの事務員はことあるごとに俺に雑用を押し付けやがる。

……でもしっかり見返りにスタドリは貰う俺。何だろう。最近美味しく感じるようになってきた。末期?

 

 

 

凛「……プロデューサー、今日が何の日か分かってる? ……あれ。またデジャヴ」

 

 

 

俺の態度が不思議だったのか、怪訝な表情で聞いてくる凛。

 

 

今日? 今日が何の日かだと?

 

そんなの、そんなのーー

 

 

 

 

 

 

八幡「クリスマス・イブだが、それが何か?」 キリッ

 

凛「っ」 ビクッ

 

 

八幡「クリスマス・イブとはクリスマス前夜、12月24日の今日を意味する。元々クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う祭りであり、つまりは12月の25日。すなわち明日だ。は? 有浦? そんな奴は知らん。そもそも日本でクリスマスが受け入れられ始めたのは明治の始めから。それから徐々に浸透していって、昭和に入った頃には年中行事と呼ばれるまでになっていた。日本現金だなオイ。それからクリスマスは日本のイベントの目玉とも言える程の発展を遂げ、今ではその日をどれだけ幸せに過ごせるかがステータスにすらなっていたりもする。いやいや、何でだよ。クリスマスってのは元々家族で過ごすのが当たり前だったんだ。それが何で恋人と過ごさなくちゃならないみたいになってんだ? なんでクリスマスは家族と過ごすって言っただけで『ぷーくすくすww寂しい奴www』みたいな視線を受けなきゃならないんだ? おかしい。こんなのは絶対に間違っている。間違ってるに決まってる!! 爆ぜろリア充! 弾けろパカップル!! バニッシュメント・ディスワールドォォォオオオオッ!!」

 

 

凛「お、落ち着いてプロデューサー!!?」

 

 

 

俺のあまりの豹変に戸惑ったのか、慌てて止めに入る凛。

 

 

はぁはぁ……

 

やばい、久々に全力を使ってしまった。

何かこう、溢れ出るモノを抑え切れなかったんだ。

 

しかし、ちょっとこれはマズイな。凛が結構ガチなレベルで引いている。

 

よし。ここは何事も無かったかのように振る舞おう。

 

 

 

八幡「……と、まぁ。そんな風に思う奴も世の中いるって事だ」

 

凛「いや。今のを誤摩化すのはさすがに無理だと思うよ」

 

 

 

ですよねー

 

なんかもう、色々情けなかった。

 

 

 

八幡「はっ、別にクリスマスがそんな嫌いなわけじゃねぇよ。これは本音だ」

 

 

 

実際、俺も数年前まではこの訳も無く一喜一憂する季節に、心躍らせていた。

 

 

サンタさんはいると信じてた。

 

雪が降るだけで次の日が楽しみだった。

 

家族との晩ご飯が、いつも以上に美味しく感じた。

 

 

今日という日を、心待ちにしていたんだ。

 

 

 

八幡「けど、何でだろうな。歳くって、恋人だの何だのを理解をする歳になりゃ、家族とのクリスマスも虚しく感じちまうんだよな、不思議なことに」

 

凛「……」

 

八幡「ホント、贅沢な悩みだわ」

 

 

 

家族と過ごすクリスマス。

 

それだけで、随分と恵まれているはずなのに。

 

 

 

凛「……別に、いいんじゃない?」

 

八幡「え?」

 

 

 

俺がセンチメンタルな気分に浸っていると、不意に凛が話し出す。

 

 

 

凛「それが分かってるなら、充分だと思うよ。家族との時間が大事って、ちゃんと分かってるなら」

 

八幡「いや、別にそんなんじゃねーって。俺だって恋人がいりゃ、家族なんか放っておいてデートに行くぞ?」

 

凛「なら、それはプロデューサーの親にとっては、寂しくも嬉しい事なんじゃないのかな」

 

八幡「……お前、そんなにポジティブキャラだったか?」

 

凛「誰かさんを反面教師にしたのかもね」 クスクス

 

 

 

凛は可笑しそうに笑い、ふと窓の外を見る。

俺もつられて見てみれば、奇麗な夜景に、ぽつりぽつりと雪がちらついて見えた。

 

 

 

凛「……きっと、何が幸せかなんて、その人にしか分からないよ」

 

八幡「……?」

 

 

 

凛は俺に視線を向けず、窓の外を眺めたまま言う。

 

 

 

凛「家族と過ごす人はもちろん、友達と楽しく遊ぶだっていっぱいいる。大好きなペットと戯れる飼い主だっているだろうし、中には、一人でゆっくりするのが好きな人だっているかもしれない。……そして恋人も、ね」

 

八幡「……」

 

凛「だから、他の人と比べる必要なんてないよ。自分が良いと思ったんなら、それでいいと思う。……ね?」

 

 

 

俺の方へと向き直り、笑顔を見せる凛。

 

……やれやれ。

 

 

 

八幡「……凛よ」

 

凛「うん?」

 

八幡「それって結局、クリスマスを楽しめるから言えることじゃね?」

 

凛「あ、バレた?」 アハハ

 

 

 

あちゃーといった様子で笑う凛。

全く、説得力があるんだか無いんだか。

 

 

 

凛「……でも、誰だってこの日を楽しむ事は出来ると思うな」

 

八幡「そうか?」

 

凛「うん。だって、クリスマスだよ?」

 

 

 

なんじゃそりゃ。

まるで子供みたいな理由である。

 

……けど、さっきも言ったように、俺だって昔はこの日を最高に楽しんでただよなぁ。

 

思い出が、いつまでも消えないくらい。

 

 

 

八幡「……はっ、そうかもな」

 

凛「ふふ……そうだよ」

 

 

 

意味も無くこうして笑えるのも、クリスマスのおかげなんかね。

 

 

 

八幡「つーか、お前は家族とも過ごさずに仕事終わりにここでダラダラしてていいのか?」

 

凛「いいんだよ。さっきも言ったように、これが私にとっての一番過ごしたいクリスマスなんだから」

 

八幡「……コタツでゴロゴロするのがか?」

 

凛「……それ本気で言ってる?」

 

 

 

その後もウダウダとダラダラと過ごし、俺たちは帰った。

 

凛を送る道中、彼女がいたらこんな感じなんかね、と意味の無い事も考えた。いやいやダメだろ俺。凛は担当アイドルだぞ? そもそも向こうにそんな気ねぇって。いやでもなんかアイツ終始顔赤かったし……煩悩退散煩悩退散。

 

 

ちなみに帰ってからのイブは小町も含め、家族でクリスマスを過ごした。

いつもより暖かく感じたのは、あいつのおかげなんだろう。

 

 

そして何故か、翌日の25日は奉仕部部室でクリスマスパーティーをする事になってしまった。主催は由比ヶ浜。言わなくても分かるな。

 

まぁでも、行ってやらん事もないか。凛と、あとは……友達でも、誘ってみるのも良いかもしれん。

 

 

 

そして朝起きた時、数年ぶりに俺の枕元にはプレゼントが置いてあった。

 

 

それは形は無くて、たかだか数キロバイトしかないけれど。

とても、愛おしいものに感じられた。

 

思わず頬が緩むくらい、幸せな気分になれたのは秘密である。

 

 

さて、俺も送んねぇとな。

 

 

 

 

 

 

【mail@ Rin → Hachiman 】

 

 

 

『 Merry Christmas ♪ 』

 

 

 

 

 

 

* end *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まゆ「やっぱりまゆの青春ラブコメはまちがっています。」

 

 

 

バレンタインデー。

 

 

毎年2月14日に行われる甘ぁいイベント。

女の子が男の子へと、チョコレートを送る一世一代の大イベント。

 

 

男の子は、その日一日を貰えるか貰えるかとそわそわ過ごし。

 

女の子は、渡すのは今か今かとドキドキ過ごす。

 

 

そんな甘い甘い、青春ラブコメを代表するような特別な一日。

 

 

 

まったく本当にーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消えて無くなればいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンデレラプロダクションの一角にある事務スペース。

 

その一番端の席に座っている一人の男の子。

 

 

標準的な体型で、髪は少しだけ長め。

顔立ちは整っている方だと思います。その、全てを蔑んだような目つきでなければ。

 

 

しかしさっきまで憮然とパソコンで作業をしていた彼も、今ではオドオドと視線を彷徨わせてばかり。

 

そう。

 

 

まゆが、隣の席に来てからは。

 

 

 

八幡「……で、俺に何か?」

 

 

 

ようやく落ち着いたのか、彼はまるで距離を取るかのように視線だけをこちらへと移してきます。

そんなに警戒されるとは、少しだけ寂しくなりますね。うふふ……

 

 

 

まゆ「佐久間まゆと言います。……あなたが比企谷さん、で間違いないですよね?」

 

八幡「まぁ、そうだが……」

 

まゆ「……実は、あなたに会いたくて今日は来たんです」

 

八幡「!?」

 

 

 

まゆがそう言うと、比企谷さんは面白いくらいに動揺し始めます。

視線をキョロキョロとさっき以上に彷徨わせ、気のせいか呼吸も少しばかり荒いような気がします。

 

 

 

八幡「…………どういう意味だ?」

 

 

 

そして今度は目つきを鋭くし、訝しむように訊いてきました。

 

 

 

まゆ「……まゆは、アナタに興味があるんです」

 

八幡「っ!??」

 

 

 

そして、また更に動揺の色を濃くする比企谷さん。

 

 

 

まゆ「比企谷さん……まゆは…………」

 

八幡「……ッ…」 ゴクリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まゆ「恋とか愛とか、そういう浮ついたものが大ッ嫌いなんです」

 

 

八幡「………………は?」

 

 

 

 

 

 

まゆの宣言に、呆然とする比企谷さん。

さっきまでの動揺は消え、その代わりにポカンと口を開けています。

 

ちゃんと聞いていますかぁ?

 

 

 

まゆ「ちひろさんから聞きました。比企谷さんも、アンチ恋愛脳なんですよね?」

 

八幡「あ、アンチ恋愛脳って、あの事務員は何を言いやがったんだ……つーか、別にそこまでは…」

 

まゆ「今日が何の日か知ってますか?」

 

八幡「リア充が末永く爆発して欲しいと神様に願う日だ」

 

 

 

まゆの問いにこれでもかと言うくらい即答する比企谷さん。

うふふ、やっぱり本当だ♪

 

 

 

まゆ「うふふ、まゆは嬉しいです。まさかこんな所で同士に会えるなんて」

 

八幡「同士って……また、随分と大袈裟だな」

 

 

 

呆れたように言う比企谷さん。

 

 

 

八幡「つーかお前モテそうなのに、それなのに恋愛事が苦手なのか」

 

まゆ「確かに、言い寄ってくる男の方はいましたよ。でも、だからこそです」

 

八幡「?」

 

 

まゆ「寄ってくるのは外見で判断するような底の浅い男ばかりでしたよ。人当たりが良いように装っても、陰では下心が見え隠れしている。例え隠していても、まゆには何でも分かりますからね。女の子の情報網を侮ってはいけません」

 

 

八幡「は、はぁ」

 

 

まゆ「でもそれで断れば、今度はメンクイだのなんだのと言われ、同性からは調子に乗るなと蔑まれ、あげくは裏で如何わしい事をしていると囁かれる始末。けどそれでもまだ可愛いものです。アイドルになってからは、周りの男じゃ満足出来ないだの、イケメン俳優を狙ってるだの、今度は枕営業しているだのと、それはもう……思い出しただけで腹立たしい……」

 

 

八幡「お、おい」

 

 

まゆ「嫌になりますよね。まさに今日なんて、どこに行ってもそんな恋愛脳共の巣窟ですよ……そんなにバレンタインが好きなら、自分の身体の一部をチョコに入れて渡すくらいすればいいのに……それで何が愛情よ……」 ブツブツ

 

 

 

八幡「何この子怖い」

 

 

 

おっと、ちょっと暴走してしまいましたねぇ。

この季節はどうもこうなりがちです。別に雪が降っても特別な気分になんてなりません。むしろイライラします。

 

 

 

八幡「……案外、こういう奴ほど一度恋に落ちると滅茶苦茶ハマりそうな気もするけどな」

 

まゆ「何か?」 ニッコリ

 

八幡「いえ何も。……まぁ確かに、気持ちは分かるぞ。というか全面的に同意って感じだ」

 

まゆ「うふふ。そうですよね~♪」

 

八幡「ホント、リア充爆発しろって感じだわ」

 

まゆ「うんうん♪」

 

八幡「ははは」

 

まゆ「うふふ」

 

 

八幡・まゆ「「あはははははははははははは」」

 

 

 

 

 

 

まゆ「それで、比企谷さん?」

 

八幡「ん?」

 

まゆ「その机の上のチョコレートはなんですか?」

 

八幡「」ダッ ←逃げた。

 

 

 

~3分後~

 

 

 

まゆ「逃げなくてもいいじゃないですかぁ♪」

 

八幡「俺、結構全力で走ったよな。なんでまた椅子に座らせられてるんだ……?」 ガタガタ

 

 

 

女の子を舐めちゃいけませんよぉ。

もしもの時の為に鍛えてるんですから。絶対に逃がしません。

 

 

 

まゆ「それで? そのチョコは?」

 

八幡「いや別にこれは……」

 

まゆ「あなたも、結局はあの恋愛脳達と一緒だったんですか? そうやってまゆの事を内心笑ってるんですか?」

 

八幡「だから怖ぇよ、目のハイライト消えてるんですけど……。……これは、臨時プロデュースしたアイドルから貰ったんだよ」

 

まゆ「臨時プロデュース?」

 

八幡「ちひろさんから少しは聞いてるだろ? これはそん時のお礼って奴だよ。他意は無い……と、思う」

 

 

 

奉仕部。

 

確かにその件についても聞いていましたね。

なんでも、プロデューサーのいないアイドル達を臨時的にプロデュースしているって。

 

 

まゆ「なるほど、そういう事だったんですねぇ。……でも、本当にそれだけですか?」

 

八幡「どういう意味だよ」

 

まゆ「お礼以上の意味も、含まれている可能性ですよ」

 

 

 

まゆがそう言うと、比企谷さんは少しだけ表情を暗くします。

 

 

 

八幡「そりゃねーよ。トモチョコって言ってた奴とか、義理ってハッキリ言った奴もいたしな」

 

まゆ「その子、どんな様子でした?」

 

八幡「『義理だからな! 勘違いするなよな! 義理なんだからな!』って顔真っ赤にしながら言って逃げてったよ。どんだけ大事なんだよ…傷ついちゃうだろ……」

 

まゆ「…………」

 

八幡「だから、またハイライト消えてるんですけど」

 

 

 

まぁ、その件については不問にしておいてあげましょう。本当に義理の可能性もありますしね。

しかし同士がこんな体たらくではいささか不安ですねぇ。

 

ここはちゃんと確認しておきましょう。

 

 

 

まゆ「……それじゃあ、凛ちゃんからは?」

 

八幡「っ!」

 

まゆ「比企谷さんは、凛ちゃんの担当プロデューサーなんですよね? だったら、やっぱり貰ったんですか?」

 

八幡「……ってない…」

 

まゆ「はい?」

 

八幡「貰って、ない」

 

 

 

苦々しい顔でそう告げる比企谷さん。

その表情を見ていると、本当に本当に……

 

 

 

まゆ「それは残念でしたねぇ♪ うふふ♪」

 

八幡「……まったくそんな表情には見えないんだが。お前今までで一番の笑顔だぞ?」

 

 

 

いえいえそんな。

別にアンチ恋愛脳の仲間が、バレンタインなんてものにうつつを抜かしていなくて良かったなんて、そんな風にはちっとも感じていませんよ?

 

 

 

まゆ「でも、正直以外でしたぁ。ちひろさんからの話を聞く限りじゃ、結構な親密度だと思っていましたから」

 

 

 

だからこそ確かめたんですけどね。

 

まゆの言葉に、「何を話したんだあの悪魔は……」と愚痴る比企谷さん。

 

 

 

八幡「……まぁ、これは言い訳になるかもしれんが…」

 

まゆ「はい?」 ニコニコ

 

八幡「実は一昨日あたりから、凛とケンカしてんだよ」

 

まゆ「ケンカしてなかったら貰えてたとでも言うつもりですか?」

 

八幡「急に真顔になるなよ怖いよ……」

 

 

 

まったく。でも、これで少し納得できました。

確かに臨時プロデュースの子から貰って、担当アイドルから貰えないというのは少し違和感がありますからねぇ。

 

 

 

まゆ「ちなみに、一体どのような内容のケンカを?」

 

八幡「明日チョコ作るって言うから、彼氏でも出来たのか? ってからかった」

 

まゆ「うわぁ……」

 

八幡「やめろよ。お前そんな事言うキャラじゃないだろ……」

 

 

 

そりゃそう言いたくもなりますよ。

小学生ですかあなたは。

 

 

まゆ「そのチョコを渡す相手って、やっぱり……」

 

八幡「……さぁ、どうだろうな。正直、期待しちまった自分が恥ずかしくて、あんな事言っちまったのかもな」

 

まゆ「……そうですか」

 

 

 

まゆには分かりませんが、やっぱり男の子は皆期待してしまうそうです。

 

貰えないと分かっていても、期待せずにはいられない。

そしてそんな自分に、恥ずかしくなる。

 

比企谷さんも達観しているように見えて、案外まだ子供なんですねぇ。

 

 

 

八幡「難儀な話さ」

 

まゆ「え?」

 

八幡「いつだって解くより結ぶことの方が、ずっと難しいんだ」

 

 

 

もの凄いしたり顔で言う比企谷さん。

というか……

 

 

 

まゆ「……何かの台詞ですか?」

 

八幡「おう。漫画」

 

 

 

比企谷さん、更にそこでドヤ顔。

漫画の台詞をそんな我が物顔で言うのはどうかと思いますが……まぁ、確かに良い台詞ですけど。

 

 

 

八幡「……結局の所、長い時間かけて積み重ねてきた関係も、ふとした拍子に簡単に壊れちまうんもんなんだよな」

 

まゆ「…………」

 

八幡「少しは仲が深まったと思っても、くだんねー事で離れちまうもんさ」

 

まゆ「……ケンカの内容を聞いてなかったら、もう少しは感傷に浸れたんですけどねぇ」

 

八幡「言うな」

 

 

 

けれどあなた達は、まゆが思うに……

 

 

と、そこでケータイの着信音。

まゆのケータイではないようなので、恐らくは比企谷さんのものでしょう。

 

 

 

八幡「ん、メール……凛から?」

 

まゆ「っ!」

 

 

 

これはまた、なんとも絶妙なタイミングですねぇ。

 

 

 

まゆ「凛ちゃんは何と?」

 

八幡「……『プロデューサーへ。会社の下の喫茶店で待ってます。』……だと」

 

まゆ「これは……」

 

八幡「……」

 

まゆ「……」

 

八幡「……」

 

まゆ「……爆死しろよ」 ボソッ

 

八幡「ヒッ…!」 ビクッ

 

 

 

怯えるように少し距離を取る比企谷さん。

嫌ですねぇ、ちょっとしたジョークなのに♪

 

 

 

まゆ「冗談ですよ♪ 早く行ってあげてください」

 

八幡「いいのか……?」

 

まゆ「実は、別にアンチ恋愛脳の同士とか、そんな事はどうでもいいんです」

 

八幡「は?」

 

まゆ「まゆはただ、比企谷さんに興味があったんです」

 

 

 

ちひろさんが話してくれた、捻くれ者の優しい男の子。

その人がどんな人なのか、実際に会って確かめてみたかった。

 

 

 

まゆ「まゆとはちょっと違いますけど、比企谷さんも過去に色々と恋愛絡みで嫌な事があったんですよね?」

 

八幡「まぁ、な……」

 

まゆ「けどそんな人が、沢山のアイドルから慕われている。その理由を、確かめたかったんです」

 

 

 

百聞は一見にしかず。

実際に会って、話をしてみたかったわけです。比企谷さんと。

 

 

 

八幡「……それで、確かめてみてどうだった?」

 

まゆ「正直慕われてる意味が分かりません」

 

八幡「いつも笑っているだけにお前の時たま見せる真顔がマジで怖い」

 

まゆ「うふふ、まぁ一度会ってお話しただけですからね」

 

 

 

なんならまゆも臨時プロデュースしてもらいましょうか。それはそれで面白いかもしれません。

 

 

 

まゆ「……でも、確かに凛ちゃんの言う通りの方でした」

 

八幡「え? お前凛とも話とかするのか?」

 

まゆ「そりゃしますよぉ。まゆと凛ちゃんは仲良しなんですよ?」

 

八幡「はぁ……いや、うーん。何だろこの違和感……まぁいいか」

 

まゆ「それより、早く行かなくていいんですか?」

 

八幡「あっ、そうだった」

 

 

 

まゆがそう言うと、少しだけ慌てた風に席から立ち上がる比企谷さん。

身支度を整え、喫茶店へと向かおうとします。

 

 

 

まゆ「あ、そうだ比企谷さん」

 

八幡「ん、どうした?」

 

まゆ「凛ちゃんと比企谷さんからお話を聞いた上で、あなたに言っておきたい事があります」

 

 

 

出口へ向かおうとしていた足を止め、身体を半分だけコチラへと向き直す比企谷さん。

 

 

 

まゆ「凛ちゃんと比企谷さんは……さしずめ、固結びです」

 

八幡「…………は?」

 

 

 

意味が分からないといった風に呆けたような表情になる比企谷さん。

ちょっと分かり辛かったですかね。

 

 

 

まゆ「さっき比企谷さんは言いましたよね。『解くより結ぶことの方が難しい』って」

 

八幡「ああ」

 

まゆ「でもそれって、奇麗に結ばれた蝶々結びだからですよね」

 

八幡「蝶々結び……」

 

まゆ「ええ」

 

 

 

見た目が奇麗で、形が整っている蝶々結び。

それでも、少し引っ張っただけで解けてしまう。

 

 

 

まゆ「けれど、あなた達は違います。不器用で、素直じゃなくて、危なっかしいお二人の関係は、固結びです」

 

八幡「……」

 

まゆ「見てくれが奇麗じゃなくても、すぐに結べて、簡単には、解けない。……違いますか?」

 

 

 

まゆがそう言うと、比企谷さんは最初目を丸くして見ていましたが、やがて苦笑し、感心したように言いました。

 

 

 

八幡「お前、案外良い事言うんだな」

 

まゆ「案外、は余計ですよ」

 

八幡「……その拗ねた顔は、怖くねぇな」

 

 

 

また少し笑って、比企谷さんは踵を返して喫茶店へと向かっていきました。

 

 

 

八幡「そんな台詞を言えるなら、お前にも良い奴が現れるだろ」

 

 

 

もう一言、余計な台詞を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、凛ちゃんと比企谷さんは無事仲直り出来たそうです。

と言っても、ケンカというにはあまりに小さなモノでしたけどね。

 

比企谷さんも、ホワイトデーには苦労する事でしょう。

 

 

そしてまゆはと言うと、なんと今日、初めてプロデューサーと対面する事になるそうです。

これでまゆも、ようやくアイドルデビューですねぇ。

 

なんでも、その人は男性らしいです。

果たして、一体どんな人なんでしょう。

 

 

その新しいプロデューサーを待っている間、待ち合い室でまゆはあの二人の事を思い出していました。

隣に、信頼出来る誰かがいる。

 

そんな関係が少しだけ羨ましくて、そしてもう少しだけ、妬ましく思いました。

 

 

ふと、扉がノックされる。

 

返事をすると、少しの間を開けて男の人が入室してきました。

 

 

まゆは立ち上がり、真っ直ぐにその人へと視線を向けて、口を開きます。

 

 

 

まゆ「佐久間まゆです。あなたは、まゆに運命を感じますか?」

 

 

 

この人とまゆの関係は、どんな結び目になるのでしょう。

 

いつかはあの二人のような関係に、それ以上になれたら嬉しいです。

 

 

 

少なくとも、バレンタインにチョコを渡せるくらいには。

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーロー。

 

それは誰もが憧れる存在ーー

 

 

 

 

 

 

光「……っく」

 

「フッフッフ、いいザマね。光」

 

光「なんで、なんでなんだ……」

 

「いつまで現実から目を背けているつもり? もう諦めなさい。アタシは……」

 

光「なんでなんだ! 麗奈ぁ!!」

 

麗奈「大ショッカーの、新たなる首領となったのだから!!」 ドドーンッ!!!

 

 

 

 

 

 

仮面ライダー×アイドル シンデレラガールズMOVIE対戦 in事務所。

 

 

 

 

 

 

光「なんでだ麗奈! アタシたちは、皆に希望を与えるアイドルだったじゃないか!」

 

麗奈「黙りなさい! 別にアタシは、アイドルに執着していたわけではないわ」

 

光「何!?」

 

麗奈「自分の存在を世に知らしめる為……そして、いずれはこの世を支配する為にと利用していただけの事……」

 

光「麗奈……!」

 

麗奈「大ショッカーの首領となった今、そんな肩書きは必要無いわ! アタシは『[大ショッカー首領]小関麗奈』となったのよ! アーハッハッハッハッハ!!」

 

光「そんな、咳き込みすらしないなんて……もうアレはアタシの知っている麗奈じゃないって言うのか……!」

 

麗奈「フン! まずは手始めに、このシンデレラプロダクションから手中に納める事にするわ。出て来なさい!」

 

 

「ぐおおおぉぉぉぉおおお!!!」

 

 

光「なっ! アレは、ツタンカーメンオルフェノク!!」

 

鈴帆「ぐおおお!! ウチかてアイドルになりたかったんじゃ~!!」

 

麗奈「着ぐるみの中で熱中症になり命を落とした上田鈴帆……オルフェノクとして命をアタシに捧げなさい!!」

 

光「くっ! オリジナルか……ならアタシだって……!」

 

麗奈「おっと! 変身はさせないわよ。コイツらがどうなってもいいの!?」

 

 

ショッカー隊員の皆さん「イー!!」

 

未央「きゃあああああ! 助けてー!!」

 

奈緒「う、うわー」

 

 

光「なっ、人質!?」

 

麗奈「クックック。コイツらの命が惜しいなら、大人しくやられる事ね!」

 

光「卑怯だぞ!」

 

 

未央「そうだそうだー! そんなテンプレな事して恥ずかしくないのかー!」

 

奈緒「そ、そうだー」

 

 

麗奈「うるっさいわね! そう台本に書いてあるんだからしょうがn……ウォッホン!! とにかく、やっておしまい!!」

 

鈴帆「ぐぉぉおおおお! 覚悟するばーい!!」

 

光「ぐっ、どうすれば……!」

 

 

 

「そこまでです!」

 

 

 

麗奈「ッ!?」

 

光「あ、あれは……」

 

 

 

「この事務所の平和は、私が守ります!」

 

 

 

未央「で、出たー! ハードボイルド探偵、安斎都だぁーーー!!」 イェイ!

 

奈緒「えッ、どこからマイクを!?」

 

 

 

「……私じゃなくて、私たち……でしょう? ……都ちゃん」

 

 

 

都「おっとそうでした。すいません文香さん」

 

文香「…いえ……一緒に頑張りましょう」

 

 

未央「そしてその傍らに佇むは、天才的な頭脳を持つ相棒の鷺沢文香だぁーーー!!」

 

奈緒「その解説者ノリは一体……」

 

 

麗奈「フン! 何がハードボイルド探偵よ! ただのコスプレした女子高生じゃない!」

 

奈緒「(コスプレした女子中学生が言ってもなぁ……)」

 

文香「……私は、女子高生という歳では…」

 

麗奈「いやアンタには言ってないわよ!」

 

都「文香さんなら女子高生でも充分通用しますよ!」

 

文香「…ありがとう、ございます」 てれっ

 

麗奈「だからそんな事はどーでもいいのよ! もういいからさっさとやっちゃいなさい!!」

 

鈴帆「ぐぉぉぉおおおお!! そろそろ目ぇ開けたかー!!」

 

都「むむ! 来ましたね」

 

文香「…行きましょう、都ちゃん…」 サイクロン!

 

都「ええ!」 ジョーカー!

 

 

 

都・文香「「変身!」」

 

 

『CYCLOE/JOKER!!』

 

 

煙もくもく~

 

 

 

麗奈「なっ!?」

 

ショッカー隊員の誰か「煙イー!?」

 

 

 

煙はれ~

 

 

 

奈緒「おおおお!!」

 

 

 

仮面ライダーW「さぁ、あなたの罪を数えなさい!」 ズビシッ

 

 

 

未央「キタァァァアアアア!! シンデレラプロダクションの涙を拭う二色のハンカチ、仮面ライダーWだーーー!!」

 

奈緒「す、スゲー!! 本物! 本物のスーツ使ってるよ!!」

 

未央「そしてなおちんは特撮もイケる口なんですねー」

 

 

麗奈「ハッ、何が二色のハンカチよ! アタシの罪なんて沢山あり過ぎて数え切れないっつーの!」

 

鈴帆「この間はちひろさんのペヤングを激辛にすり替え取ったけぇの」

 

麗奈「黙らっしゃい! アンタどっちの味方よ!」

 

 

W(都)「よし! 今です文香さん、奴の弱点を検索するんです!」

 

W(文香)「…検索……ですか? …残念ですが…うちの書店には、店内検索の機械は……」

 

W(都)「それじゃなくて、ほらアレですよ! えーっとえーっと……星の、星の、……星の王子様?」

 

W(文香)「あ……その本でしたら、うちのお店にも、置いてあります…」

 

 

麗奈「アンタら台本くらいちゃんと読んでおきなさいよ!」

 

光「正しくは地球(ほし)の本棚だな!」

 

奈緒「ちなみにフィリップは今坊主頭の模様」

 

未央「果たしてその情報は今いるのかぁーーー!?」

 

 

W(都)「仕方ありません……ここは私の推理力が試される所ですね」 

 

麗奈「なんですって!?」

 

W(都)「私は既に、あなたの弱点を見抜いています!」 ババーン!

 

鈴帆「な、なんじゃと!?」 ガーン!

 

W(都)「まるっとお見通しです!」

 

 

未央「おおっとー!? 今の台詞はエスパーアイドルユッコ登場フラグかーー!?」

 

奈緒「やめといた方がいい。収集がつかなくなる」

 

 

W(文香)「…それで、弱点というのは……?」

 

W(都)「ええ。それはズバリ……」

 

光「……!」ゴクリっ

 

 

W(都)「奴は、目を閉じているっ!!」どーん!

 

 

鈴帆「バレたかーー!!?」ガーン!

 

麗奈「いやアンタさっき自分で開けたいってバラしてたでしょうが!?」ガガーン!

 

 

光「こ、これが勝負の駆け引きってやつなのかッ!」

 

奈緒「違うと思う」

 

未央「というか、彼女らはいつ戦い始めるのだろうかーー!!」

 

奈緒「……まぁツタンカーメンとはいえ、中身アイドルだからなぁ」

 

未央「スーツアクターさんもアクションし辛そうだね」

 

奈緒「いきなり素に戻ったな……つーかWの中誰なんだ? 高岩さん?」

 

サトリナ声のショッカー「あれ、真尋ちゃんですよ」

 

未央・奈緒「「えッ!!?」」

 

サトリナ声のショッカー「いやー募集したら快く引き受けてくれたんで助かっちゃいました♪」

 

未央「はぁー、男性にしてはやけに背が低いと思ったよ。むしろ良く着れたなぁ」

 

奈緒「というか何やってんだちひろさん……」

 

 

W(都)「お袋さんが泣いていますよ? さぁ、ちゃんと目を開いて、前を見据えてください」

 

W(文香)「…今度は是非、書店に立ち寄ってくださいね……」

 

鈴帆「うぅ……ウチが間違っとったばい……!」 グスっ

 

光「さすが、事務所の涙を拭う二色のハンカチだな!」 うんうん!

 

麗奈「いや、うんうんじゃないわよ!」

 

 

奈緒「戦う前に勝負が終わってた……」

 

 

W(文香)「…それでは、私は…店番があるので……」

 

W(都)「事件の匂いある所、私たちは再び現れます。アデュー!」

 

 

 

ブロロロロ……

 

 

 

未央「こうして、仮面ライダーWこと安斎都と鷺沢文香はハードボイルダーに跨がり、去っていくのだった。 完」

 

 

麗奈「いや終わってないわよっ!?」

 

奈緒「つーかもろ小走りで帰ってったんだけど……」

 

サトリナ声のショッカー「大丈夫。SE入れときますから」

 

 

麗奈「ええい、まだよ! まだアタシは終われない!」

 

光「もう諦めるんだ麗奈! 大ショッカーの大首領なんて、麗奈には相応しくない!!」

 

 

奈緒「(正直めちゃくちゃ似合うと思う俺ガイル……)」

 

 

麗奈「うるさい! アンタに何が分かるのよ!」

 

光「麗奈……」

 

麗奈「こうなったら……アタシだって……!!」スッ

 

光「っ! それは、ソディアーツスイッチ!?」

 

麗奈「それだけじゃないわ……」 スッ

 

光「ガイアメモリに、ヘルへイムの森の果実……!?」

 

麗奈「かくなる上は、アタシもこいつらを使って……!」

 

光「よすんだ! そんな事をしたら、麗奈の身体がっ!!」

 

 

麗奈「うるさいのよ! アタシは、人間をやめるのよ! 光ゥ!!」

 

 

光「やめろぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

「やれやれ。何の騒ぎだ?」

 

 

 

 

 

 

麗奈「ッ!?」

 

光「っ……あ、あなたは……?」

 

「ん? 俺か? 俺は……」

 

 

光「……っ!」

 

 

 

八幡「通りすがりの、仮面ライダーだ」

 

 

 

未央「モヤシキターーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

 

奈緒「いやお前アイドルじゃねーじゃん!!?」

 

 

八幡「細かい事は気にするな。俺の言う事はいつも大体正しい」

 

奈緒「いやいやいや。いつも青春ラブコメが何だって言ってるよお前」

 

八幡「んで、これはどういう状況だ?」

 

奈緒「無視された!?」 ガーン

 

 

光「実は、かくかくしかじか」

 

八幡「四角いムーブ、か。なるほどな。大体分かった」

 

麗奈「嘘吐きなさいよ!」

 

八幡「とりあえず一枚」 カシャッ

 

 

光「」ピース

 

麗奈「」ピース

 

 

奈緒「あれ、あのカメラ本当に士が使ってたカメラじゃないか?」

 

サトリナ声のショッカー「blackbird,fly ディケイドモデル ラストバージョンですね。比企谷くんの私物らしいですよ?」

 

奈緒「マジかよ裏山!」

 

未央「もう皆さん撮影の事一切気にしてませんねー」

 

 

八幡「さて、それで俺は何を破壊すればいいんだ?」

 

光「麗奈を……アタシの仲間を救ってくれ!」

 

八幡「……悪いが、俺は破壊者だ。救うなんて事は出来ないな」

 

光「え?」

 

八幡「……だがまぁ、アイツのバカな幻想を壊すくらいは、してやるよ」

 

 

奈緒「(お? この流れは……)」

 

 

麗奈「何をふざけた事を……! いい加減諦めなさいよ!!」

 

光「麗奈!」

 

麗奈「いつまでも仲間とか言って……アタシは! アンタの! 敵なのよッ!!」

 

 

光「違うッ!!!」

 

 

麗奈「っ!」

 

光「例え麗奈が大ショッカーの首領になったって、アタシはアイドルで、麗奈の仲間なんだ!!」

 

麗奈「……っ……アイドルなんて、結局は何も出来ない。出来る気になってるだけよ……!」

 

 

八幡「それは違うな」

 

 

麗奈「……なんですって?」

 

 

未央「モヤシの説教キターーーーーーーッ!!!!」

 

奈緒「(キャラ似合い過ぎだろアイツ……)」

 

 

八幡「お前がただ、そうやって自分の限界を決めて、自分に見切りをつけて、それを他者に押し付けてるだけだろ」

 

麗奈「何を……!」

 

八幡「だがコイツは違う。コイツは、光は今でも信じてる。お前の事を仲間だと。お前と一緒に、誰かを笑顔に出来ると!」

 

麗奈「だから、知った風な口をきくなって言ってるでしょ!? アンタに何が分かんの!?」

 

八幡「分かんねぇよ。俺はアイドルじゃない。けど、コイツはアイドルだ」

 

光「……っ!」

 

八幡「だから、俺はコイツの笑顔を守る。コイツの笑顔が、きっと誰かの笑顔を守る事に繋がる。俺はそう信じてる」

 

麗奈「……アンタ、一体何者なの!?」

 

八幡「俺はただの……」 スッ

 

 

奈緒「あ! ディケイドライバー!!」

 

サトリナ声のショッカー「あれも自前らしいです」

 

 

八幡「……通りすがりのプロデューサーだ。覚えておけ! 変身!!」

 

 

 

『KAMEN RIDE DECADE!!』

 

 

煙もくもく~

 

 

 

奈緒「えほっえほっ!」

 

未央「ちひろさ~ん、もうちょっとこの演出どうにかなんなかったんですか? げほっ」

 

サトリナ声のショッカー「こうしないと交代出来ないんですから我慢してください」

 

 

 

煙はれ~

 

 

仮面ライダーディケイド「ここは、シンデレラガールズの世界って所か」

 

 

 

奈緒「おおおおおお!! 生ディケイドだぁ! うう、アイドルやってて良かった……」

 

未央「あれ? 今度はちゃんと頭身高いですね」

 

サトリナ声のショッカー「ああ、ディケイドのアクターさんはちゃんと高岩さんですよ」

 

 

 

奈緒・八幡・光「「「マジでッ!!?」」」

 

 

 

未央「プロデューサーさーん、声入ってますよー」

 

 

八幡「高岩さん。後でサインください」

 

光「アタシも!」

 

奈緒「あ、ズリィぞお前ら!」

 

 

未央「ちょっとは聞いてくださいねー」

 

 

麗奈「くっ、よりにもよって一番チート臭い奴とはね……こっちは思い切って芋羊羹でも食べようかしら」

 

光「麗奈! それは仮面ライダーじゃない!」

 

ディケイド「他作品の力を使うとは、卑怯な奴だなオイ」

 

奈緒「お前が言うな!」

 

 

麗奈「……フッ…まぁ、いいわ」

 

光「麗奈?」

 

麗奈「光、勝負よ。アタシが勝てば、アンタも大ショッカーの一員になりなさい。……アタシが負ければ、アイドルとしてもう一度、やってあげてもいい」

 

光「麗奈っ」 パァァ

 

麗奈「負けたら! の話よ。……だから、ここから先は本気の勝負よ!」

 

光「ああ!」

 

 

ディケイド「ふ、……なら俺も、本気でいかせて貰うぜ」

 

 

 

『FINAL FOME RIDE HI HI HI HIKARU!!』

 

 

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

光「え? うわぁ!!」

 

 

 

光ぶわー

 

 

 

奈緒「ま、眩しい……!」

 

未央「(変身の時もこっちじゃダメだったのかな……)」

 

 

 

光しゅー

 

 

 

光「こ、これは……!」

 

 

未央「おおっと! 眩ゆい光が収束してみれば、そこには真っ赤な衣装を身に纏った南条光の姿がーーー!!」

 

奈緒「青く発光してるラインがファイズみたいでカッコいいな!」

 

 

ディケイド「ま、さしずめ『[小さな英雄]南条光』ってとこだな」

 

光「ありがと! 八幡P!」

 

ディケイド「いや俺……まぁいいか」

 

麗奈「フン! 相手にとって不足は無しよ!! どっからでも…」

 

ディケイド「いやまだ終わりじゃないぞ?」

 

麗奈「え?」

 

ディケイド「コイツがとっておきだ」 スッ

 

 

奈緒「あ! 今度はケータッチ!?」

 

サトリナ声のショッカー「あれも比企谷くんn…」

 

 

ディケイド「いくぞ?」

 

 

 

『RIN UZUKI MIO SYOKO NAO KAREN MIKA RIKA HIKARU  FINAL KAMEN RIDE DECADE!!』

 

 

光ぶわー

 

 

 

奈緒「だと思った!」

 

 

 

光しゅわー

 

 

ディケイドコンプリートフォーム「こっからが本気だぜ?」

 

 

 

奈緒「おおおおぉぉぉう……?」

 

未央「シュール! ただでさえアレなのにカードが全部アイドルバージョンになっててとってもシュール!!」

 

ちひろ「比企谷くんが今までプロデュースしてきたアイドルたちですね」

 

奈緒「あ、なるほど。……いつ脱いだ!?」

 

 

ディケイドCF「んで、こいつだ」 カチ

 

 

 

『RIN KAMEN RIDE YAEN NO UTAHIME』

 

 

光ぶわー

 

 

 

奈緒「この演出めんどくさ! 」 眩しー

 

ちひろ「だってこうしないと出て来れないじゃないですか!」

 

 

 

光しゅわー

 

 

凛「……」

 

 

 

未央「出たーーー!! 『[夜宴の歌姫]渋谷凛』だぁぁあああ!!!」

 

ちひろ「衣装カワイイですねー」

 

奈緒「(ヤバイ。凛の顔が真っ赤だ。喋れないのが恥ずかしさに拍車をかけてるな)

 

 

麗奈「ちょっ!? 三対一はさずがに酷くない!?」

 

ディケイドCF「本気の勝負なんだろ? それにこれでもまだ抑えてる方だ」

 

奈緒「あーまぁ激情態じゃないだけ…」

 

麗奈「それにしたってでしょ! ヒーローがそれでいいの光!?」

 

光「……南無三!」

 

麗奈「見捨てられた!?」 ガガーン

 

ディケイドCF「つべこべ言ってないで行くぞ!」

 

 

 

『FINAL ATTACK RIDE RI RI RI RIN!!』

 

 

 

ディケイドCF「これがホントの最初っからクライマックスだぜ」 スッ

 

凛「……」 スッ

 

光「アタシも行くぞ!」 スッ

 

 

未央「おお! 三人のマイク(一人はライドブッカー)に淡い光が灯って……!」

 

 

麗奈「え、ちょ!?」

 

 

奈緒「その光がまるでビームサーベルのように伸びて……!」

 

 

麗奈「いや、まだアタシ怪人にも変身もしてn…」

 

 

 

ディケイドCF・光「「うぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」」

 

 

 

未央・奈緒「「切ったーーーーーッ!!!!」」

 

 

 

麗奈「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

どーーーーーーーん!!

 

 

煙もくもく~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗奈「う、うう、もうムーリィ……」

 

 

光「ありがとう八幡P。おかげで、アタシの大切な仲間を助ける事が出来た」

 

八幡「気にすんな。むしろちょっと申し訳ないくらいだ(麗奈に)」

 

光「八幡Pは、これからどうするんだ?」

 

八幡「旅を続けるさ。次はどこのプロダクションへ行くのやら……」

 

光「……また、来てくれる?」

 

八幡「……お前か、そこの生意気なアイドルに呼ばれたら、な。なんせ俺は…」

 

 

光「通りすがりのプロデューサー、だろ?」 ニコッ

 

 

八幡「……おう。またな、光」

 

 

光「うん、またね! 八幡P!! 絶対、また会おうなーー!!」

 

 

 

 

 

 

仮面ライダー×アイドル シンデレラガールズMOVIE対戦 in事務所。

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丹羽仁美「花道、オンステージ……?」

 

 

to be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光「いやー楽しかった! ありがとう八幡P!」

 

八幡「……ま、これも依頼だからな」

 

 

 

撮影の片付けを終え、俺と南条光は休憩スペースでくつろいでいた。

今回の依頼は色々と大変だったな……

撮影の為に事務所を貸し切って、その上撮り終えるのに丸一日かかった。東映さんからも色々借りちゃったし。

 

……まぁでも、正直俺も大分美味しい思いをさせて貰った。

まさか本当に変身出来る日が来るとは。プロデューサーやってて良かったー!

 

 

 

八幡「しかしちひろさんには脱帽だな。まさかこんなコネを持ってるとは」

 

光「なんか『いつか本当に仮面ライダー×アイドルで映画作るのも良いかもしれませんねぇ♪』って言ってたぞ?」

 

八幡「マジかオイ……」

 

 

 

今回は身内同士のお遊びみたいなもんだったから良かったが、お金取るってなったら別問題だろ。

ぶっちゃけさっきのだって放送出来る内容じゃないよ? いやする気も無いんだけどさ。

 

 

 

光「……でも、これでちょっと分かった気がする」

 

八幡「ん?」

 

光「お芝居やっててさ、すっごく楽しかったけど、どこかで少し後ろめたかった」

 

八幡「……」

 

光「やっぱりお願いを叶えてもらうんじゃなくて、自分で叶えないとダメなんだって、思った」

 

 

 

そう言って、少しだけ哀しげな顔を作る光。

しかし、それも一瞬の事。

 

顔を上げた光の目には、確かな決意が秘められているような気がした。

 

 

 

光「これだけやって貰ったのにこんな事言ってゴメン! ……でも、いつかきっと、実力で夢を勝ち取ってみせるから」

 

 

 

力強く言った後に、「望んだ仕事を出来るかは分からないけどね」と笑いながら言う。

 

眩しいくらいのその笑顔。

その笑顔を見れただけで、その言葉を聞けただけで、こちらとしては充分だ。

 

 

 

八幡「……“旅にも人生にも、無駄な事なんて無い”」

 

光「!」

 

八幡「たぶん、アイドルもな。……もし目的地と違う所に着いたとしても、また歩き出せば良い。そこで止まるか進むかは、お前次第だ。……だろ?」

 

光「……うんっ!」

 

 

 

旅も、人生も、アイドル活動も、まだ続いていく。

 

その先に何が待ち受けているかは分からない。

 

それでも、俺たちは、彼女はその歩みを止めはしない。

 

 

その自分の道を往く姿は、まさに昔憧れたヒーローと、一緒なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そう言や、変身したくはなかったのか? 折角の機会なのに」

 

光「言ったろ? それは自分で夢を掴み取った時に取っておくさ。それに…」

 

八幡「?」

 

光「たまには、ヒーローに守ってもらうヒロインも悪くないかなって。アタシも、女の子だからね」 ニコッ

 

八幡「!」

 

 

 

全く、これだから女子は侮れん。

 

要は今回の南条光は、南光太郎ではなく、光夏海だったらしい。

 

 

 

……不覚にも、ドキッとしちまったじゃねーかよ。くそ。

 

 

 

 

 

 

つづかない!

 


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