雪風と風の旅人   作:サイ・ナミカタ

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第46話 祝賀と再会と狂乱の宴

 ――さすがは公爵家。しかも、国内でも大きな権勢を誇る家柄だけのことはある。

 

 風竜に四隅を持ち上げられた巨大な籠――竜籠に揺られ、上空から遙か下に広がる光景を眺めながら太公望は内心舌を巻いていた。彼の向かい側の席に腰掛けている才人などはこれを見て、

 

「日本の市くらいの大きさって……ルイズんち、金持ちとかってレベルじゃねェだろ」

 

 などとぶつぶつ呟いている。

 

「それはそうであろう。ヴァリエール公爵家はトリステイン王家の傍流にして、国内でも有数の大貴族だ。所謂本物のお姫さま、というやつなのだよ。彼女は」

 

 その太公望の言葉を聞いた才人はゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「これ見るまではイマイチ実感できなかったんだけど……ルイズって……」

 

 本物の貴族だのお姫さまなどというものは、地球にいたころの才人にとってテレビの中でしか見ることのない、遠い場所に住んでいる――それこそ現実味のない存在だった。

 

 しかし眼下に広がる領地を見て、なんとなくだが理解できた。ルイズは()()()()()()に住んでいる人間なんだと。そして、今まで見てきた彼女の態度やその他の事情がストンと頭の中に落ちてきた。ありていにいえば、しっくりきてしまった。

 

 才人は思わずため息をついた。もしも馬車で来ていたら、魔法学院からここまでまる2日もかかっていたらしい。さらに、領地に着いてから屋敷へたどり着くまで半日以上必要なのだという説明も受けていた。

 

「大貴族って、やべえ……」

 

 才人はなんだか猛烈に緊張してきた。落ち着かなげに籠の内部や外へ視線を這わせる。それから、縋るように目の前の友人へ声をかけた。

 

「ううっ、俺……こっちのマナー? 礼儀作法とか、いちおうルイズに教わってきたんだけどさ……なんだか自信なくなってきた。師叔はこういうの慣れてるんだろうけど」

 

「いや、わしだってハルケギニアの細かい流儀などわからぬ。よって……」

 

 ゴソゴソと懐を探る太公望。その手には、数冊の本が掴まれていた。

 

「貴族付きの従者の仕事やら、失礼のない作法の類いを魔法学院の従業員たちから聞いてまとめておいた。とりあえず一冊貸してやるから今のうちに読んでおくがよい」

 

「うは、助かるぜ! てか、いつも思うんだけどさ。その懐のどこにそんだけの物が入るんだ? ひょっとして、内側に亜空間に繋がってるアイテムでもつけてあんのか?」

 

 四次元ポケットみたいな? という才人の言葉に、太公望は頷いた。

 

「おぬしの予想は大当たりだ。着脱式の亜空間収納用ポケットがついておるのだ。箪笥の引き出し程度の小さな空間……例の『自分の部屋』の簡易版のようなものに接続するための道具だと思ってくれれば間違いない」

 

 ――縮めても最低50サントはある『NEW・打神鞭』がまるごと収まる上に、携帯通信機まで入っている。さらにはワインが瓶ごと一本出てきたこともある恐怖の懐。その謎の一端が明かされた瞬間であった。

 

「便利だなそれ! って、いつもだったら見せてくれって言いたいところなんだけど!」

 

「うむ。わしも念入りに確認しておきたいので、本に集中させてもらう」

 

「なんか籠に乗るメンバーの組み合わせで少しモメたみたいだけど、師叔と一緒の組になれて本当に良かったよ」

 

 ルイズとマンツー・マンの猛特訓をしたことが功を奏し、既にハルケギニア語を読むことについては問題なくできるようになっていた才人は、必死の思いで本のページをめくり始めた。

 

 ちなみに、いったい何をモメたのかというと。本来お客さまという扱いであった太公望が乗る籠についてである。当初はもっと良い籠に――というのが今回案内役を務めるエレオノールの提案だったのだが、これに太公望が異を唱えたのだ。

 

「お気遣い感謝致します。ですが、自分はあくまで従者でございますので、身分相応の籠に乗らせていただきたく……その、恥ずかしながら落ち着きませんので」

 

 ……などと、しきりに恐縮するふりをしながら。

 

 その結果、全員の中でいちばん身分が低い(と、いうより唯一メイジではない)才人と同乗することになったのだ。もっとも、太公望はこれを最初から狙っていたのだが。おもに自分と才人の復習時間を稼ぐ的な意味で。

 

 ――それから数時間後。

 

 夕日を背に受けながら、竜籠はラ・ヴァリエール公爵家の()に近付いていた。屋敷ではなく、完全に城と呼ぶべき建造物である。周辺に森以外何もないせいか、トリスタニア中央の王城よりも巨大に見える。分厚い城壁によって囲まれ、周囲には深い堀が巡らされている。壁の向こう側には高い尖塔がいくつも見えた。

 

 と、先頭をゆく籠のそばへ巨大なフクロウがばっさばっさと羽音を立てながら近付いてきた。中に乗っていたタバサは一瞬それに驚いたが、ほんの僅かに眉を動かした程度で内心の動揺を抑えた。

 

 フクロウは竜籠につけられた窓枠部分に止まると、優雅にお辞儀をする。

 

「おかえりなさいませ、エレオノールさま」

 

(喋るフクロウ。ヴァリエール家の誰か……もしかすると、わたしの目の前に座っているエレオノールさんの使い魔?)

 

 タバサは大きなフクロウを見つめながら、そんな他愛のないことを考えていた。

 

「トゥルーカス、準備のほどは?」

 

 エレオノールの質問に、トゥルーカスと呼ばれたフクロウは淀みなく答える。

 

「はい、全て整ってございます。旦那さまも、奥さまも、皆さまの到着をお待ちかねです」

 

「そう。では、まもなく到着すると伝えてちょうだい」

 

「かしこまりました」

 

 再び一礼したフクロウは、城を目指して飛んでゆく。

 

 堀の向こうに城門が見えてきた。それから間もなく、客人たちが乗る全ての竜籠がその上をゆうゆうと越え、城壁の内側へと向かっていった。

 

 着陸地点と思われる場所には大勢の召使いたちが控えている。もちろん、彼らの到着を待っていたのであろう。竜籠が降り立つと、彼らはいっせいにその周りに取り付いた。竜使いの一同がそれぞれの竜をなだめている隙に籠につけられた扉が開かれ、緋毛氈(ひもうせん)が入り口の前までばっと敷かれた。

 

 自ら従者であると宣言していた太公望と、その連れという役柄である才人が急いでタバサの元へ駆け寄ると、すぐ側に控える。ちなみに今日の才人は指ぬきグローブではなく、白い布手袋をはめ、腰にレイピアを下げ、従者に相応しい礼服に身を包んでいる。デルフリンガーは可哀相だが荷物の中で解放を待っていた。

 

 地面に敷かれた赤い絨毯の左右には、ずらりと召使いたちが並んでいる。彼らは一斉に「お待ち致しておりました」という歓迎の挨拶を述べ、頭を下げた。

 

 と、そこへ王族もかくやと言わんばかりの豪奢な装束を身につけた、初老の貴族が近付いてきた。白くなりはじめたブロンドの髪と髭を揺らし、左目には片眼鏡(モノクル)をはめている。

 

 ルイズの父であるラ・ヴァリエール公爵であった。

 

 彼の姿を見たオスマン氏が驚きに目を見張る。主人自ら客人を出迎えに来るなど、大貴族としては異例と呼んで差し支えない対応なのだから、当然だ。

 

 娘の恩人に対し、自分自身が出向くという最高の礼をもって遇する。これが、ラ・ヴァリエール公爵が出した答えだった。

 

 

○●○●○●○●

 

 ――エレオノールから話を聞いたとき、もしやとは思っていたが。

 

 ラ・ヴァリエール公爵は即座に自分たちの予想が当たっていたことに気が付いた。自ら出迎えた少女が持つ、特徴のある蒼い髪。これは『ガリアの青』と呼ばれる、ガリア王家の血筋にしか現れない色だ。たとえ魔法の髪染めを使ったとしても、この色だけは絶対に再現できない。実際にやれたとしても、不敬罪で即刻重い裁きを受けるであろう。

 

 しかも、その側に仕える『東の客人』とおぼしき人物が身につけている略章は、誉れ高きガリア王国東薔薇花壇警護騎士団(エストパルテル)のものに間違いない。

 

(本来であればこういった席には略章ではなく、礼装一式でもって参加すべきところをあえてこのような選択をしているということは……つまり、目敏い者以外には彼女の身分を知られたくない。そして可能であればそれを明かしたくない。だが、国法を守るため身に付けないわけにもいかないという彼らなりの苦肉の策。我々へ宛てたメッセージなのだろう)

 

 わずか数秒にも満たない時間でそこまで察したラ・ヴァリエール公爵は、タバサたちをあくまで娘の恩人に対する礼でもって迎えた。いっぽうのタバサも、そんな彼の気遣いを察し、公爵本人にしか気付かれないよう、彼の素晴らしい歓迎に対する感謝の言葉とは別に、ごくごく小さな声でもって礼を述べた。

 

「ご厚意、感謝致します」

 

 それを耳にしたラ・ヴァリエール公爵の瞳の奥に、まるで一生懸命仕掛けた悪戯がうまく成功して喜ぶ子犬の目のような煌めきが、ほんの一瞬だけ現れた後……消えた。

 

 それから彼らは豪奢な、それでいて品のある調度や絵画が飾られた部屋をいくつも通り抜け、晩餐会場である巨大なホールへと通された。中庭を臨むその部屋には複数の丸テーブルが置かれ、奥にはずらりと使用人たちが控えている。

 

 季節の花や魔法の灯りによって美しく飾り付けられた会場は、大貴族たる者の品位というものを具体的に表したらどうなるかという見本そのものであった。

 

 ……そんな場所で、彼女たちは待っていた。

 

 待ち人のひとりは、ラ・ヴァリエール公爵夫人カリーヌ。ルイズたちの母親である。

 

 桃色がかったブロンドの髪をアップでまとめ、落ち着いた雰囲気のドレスに身を包んでいたが、放つオーラが半端ではない。日本流に例えて言うなれば、アスファルトの遙か上空でギラギラと輝く真夏の太陽の、肌の奥まで刺し込んでくるような鋭い日差し……といったところであろうか。その迫力に思わずたじろいでしまった才人を、太公望が見えない角度からこっそりと指でつっついた。

 

 カリーヌ夫人からの歓迎の挨拶後、後ろに控えていた娘が前へと歩み出てきた。見た者全てがはっとするような可憐さを、顔中に滲ませた娘であった。

 

 蕩けそうな微笑みを浮かべているその娘が纏うのは、母とは正反対。雪解けを誘う春の柔らかくも暖かい陽光のようだ。ルイズにそっくりな顔をしたその女性の名はカトレア。ラ・ヴァリエール家の次女であると自己紹介をした。

 

 ――だが、その暖かい空気の中で唯一困惑している者がいた。

 

 太公望は戸惑っていた。

 

(この娘が纏う〝気〟は一体なんなのだ……? 〝仙気〟の類とは似て異なる、これは)

 

 内心の驚きをひた隠しにしつつ、普段のように『観察』を開始しようとした太公望だったが、それは彼女の家族たちによる再度の挨拶と礼、歓迎の宴開催を告げる声によって妨げられた――。

 

 

○●○●○●○●

 

 ――その後、歓待の宴は実に和やかな空気で進んでいった。

 

 その流れを突如変えたのは、さきほどカトレアと名乗ったルイズの姉であった。

 

「わたしの小さなルイズ! もしよかったら、あなたの魔法を見せてもらえる?」

 

 そう言って、彼女はランタンに照らされて幻想的な雰囲気を醸し出している中庭を指差した。

 

「カトレア! まだ宴の最中よ」

 

「まあ、姉さま。でしたら、どうして宴席をこのようなに円卓になさったの? わたしはてっきり、皆さまと一緒にあの子の成長を見たかったのだとばかり思っていましたのに」

 

 ころころと笑いながら行われた妹の指摘にエレオノールは頬を染めた。実はカトレアの言う通りなのだ。そのため、庭園を望むように複数の円卓が並べられており、かつ途中で席が移動できるよう配慮されていた。もっとも、彼女としては他にも理由があってこの形式を採用したのだが。

 

 ルイズは戸惑った。練習の成果――しかも家族たちが見守っているという、彼女にとって実に緊張する状況下で、いったいなにをすればいいのだろう……?

 

 と、そこへ声をかけてきたのは彼女の恩人である太公望だった。

 

「ルイズお嬢さま。差し出がましいようですが、そちらの中庭で空を飛んでみるというのは如何でしょうか。そうですな……池の上を何度か周回してみれば、皆さまに練習の成果をご覧頂くにはちょうど宜しいかと」

 

 この声にピクリと反応したのはルイズの両親だった。

 

 あの失敗続きだったルイズが〝飛翔(フライ)〟を使う。しかも……既に自分たちの目の前で、池の周りを飛びまわってみせられるほどに上達していると言うのだから当然だろう。

 

「……わかったわ」

 

 太公望の提案を受けたルイズは杖を取り立ち上がった。そして、ゆっくりと中庭へ続くバルコニーから外へ出た。しかし、彼女が極端に緊張しているのは誰の目から見てもあきらかだ。

 

 ――失敗したらどうしよう。

 

 屋敷の中庭。幼い頃、毛布にくるまって隠れていた小さな舟は、まだあの池の上にある。ここは、ルイズにとって思い出の場所であり、己の過去を強烈に刺激されるトラウマのひとつでもあった。

 

 だが。そんな彼女の心の内を見透かしたように、太公望が声をかける。

 

「いつも通りにやればよいのです、絶対に大丈夫。何せ風の『スクウェア』である我が主人に空で追いつくことができるのは、今や学院内の生徒たちの中ではルイズ殿ただひとりではありませんか! それは本日お招きに預かった全員が知るところです」

 

 途端に、おおっという声が上がった。ルイズの家族と、宴席の後ろに控えていた召使いたちの声であった。ルイズはその声を聞いてまた心臓が飛び跳ねそうになったが……にこにこと笑いながら促す太公望の顔を見て、きゅっと手を握り締めた。

 

(そうよ、わたしはもうやれるのよ! 小舟の中に蹲って隠れていることしかできなかった、小さなルイズじゃない。箒に乗れば、タバサにだって負けないわ。乗らなくても……彼女と、ほとんど同じ速さで飛べるじゃないの! 自信を持っていいんだわ)

 

 彼女は宴席側へ背を向けると、中庭に視線を移す。杖を指揮棒(タクト)のように構え、放課後に行っている特訓のときと同じように呪文を唱え始めた。

 

「イル・フル・デラ・ソル……」

 

 小さな声で紡がれたそれは、最後までは続かない。何故なら彼女がこれから行おうとしているのは〝飛翔(フライ)〟に見せかけた〝念力〟(サイコキネシス)による飛行だから。

 

『〝念力〟はコモンだ。よって、口語で術者が好きなように発動用の文言(ワード)を指定することができる。己のイメージを手助けするために、自由にな。なればこそ将来〝念力〟以外の魔法を使えるようになるそのときまで、あえて使いこなせるようになった自分をイメージし、途中まで呪文を唱えて止め、やがて必ず訪れるその時に向け、備えるのだ』

 

 その太公望の言に従い、ルイズはこれまで〝念力〟による空中での物体操作を行う為には〝浮遊(レビテーション)〟のルーンを途中まで唱えて停止させるようにしていたし、単独で空を飛ぶときは同様に〝飛翔(フライ)〟の呪文を紡いでいた。もちろん、最後まで詠唱を続けず止めている。

 

 ……実のところ、これはイメージトレーニングなどではなく〝念力〟で空を飛ぶことに対して頭の固い連中が文句をつけてくるのではないか? と、危惧していた太公望なりの策である。事実、自分が同じように『唱えるふり』で誤魔化しているからこそ、あえてこの措置を採ったともいえる。

 

 それに、もしもこれが『ふり』であることを正直に伝えていた場合。生真面目なルイズのことだから、間違いなく葛藤したに違いない。だからこそ、あえて将来のイメージをつくるためというもっともらしい理由づけをして、彼女の注意を本質から逸らしてしまったのだ。

 

 ――少しの間をおいて、ルイズの『呪文』が完成した。マントをたなびかせ、ゆっくりと宙へ舞い上がった彼女は振り返って自分の家族と友人、そして先生たち全てに愛らしいとしか表現しようのない笑顔を見せると、そのままぐんっと空高く飛び上がった。それから高速飛行へと移る。その速度に再び居合わせた者たちの間からどよめきの声が上がった。

 

 華麗に宙を舞い続ける彼女の姿は、数多くのランタンの灯りにぼんやりと照らされて……まるで、物語の中から抜け出してきた妖精のようであった。

 

「わしの可愛い小さなルイズが、あのような姿を見せてくれるとは。父親として、苦しんでいたあの子に何もしてやれなかったというのに……いつの間にかこんなに大きくなってくれていた……!」

 

 愛娘の成長を目の当たりにしたラ・ヴァリエール公爵は我知らず熱くなった目頭を押さえた。

 

「すごい、すごいわルイズ! あの小さなルイズが……姉さま、ご覧になって?」

 

「ええ、もちろん見ているわよカトレア」

 

 手を叩いてはしゃぐ歳の近い妹を微笑ましく思いながら、エレオノールは改めて末の妹が舞い踊る姿に視線を移した。以前見せてもらった〝浮遊〟も素晴らしかったが、〝飛翔〟までこんなに上達しているとは想像だにしていなかった。

 

 空中で舞い踊るルイズの姿を観察しながら、彼女は認めた。これが『東方』流の教育による成果なのだと。

 

 それを行った人物はエレオノールが行っている研究と〝錬金〟に強い関心を示していた。東方にはこれらの概念がないので、詳しく教えていただきたいとまで言っていた。

 

 そもそも『西方』ハルケギニアと『東方』ロバ・アル・カリイエのどちらがより優れている、などという観点で物事を語るのは研究者として間違っている。

 

 それどころか、お互いの知識を交換しあうことで双方に大きな利益があるだろう。末妹の姿がまさしくその象徴なのだとエレオノールは実感した。

 

(彼だけじゃない。オールド・オスマンやミスタ・コルベールとの会話も非常に知的水準の高いものだったわ。この歓待行事は1週間続く。よって、彼らと会話する時間はたくさんある。自分の研究も大切だけれど、これはそれ以上に得難い貴重な機会。そのために、わざわざ円卓の座を用意したのだから。可能な限り、彼らと交流を深めなければ!)

 

 ――今まで名門貴族の出であるという極端に高いプライドが邪魔をしていたがために、自らが作る『始祖の像』とは異なり、己にも……他者に対しても厳しい姿しか示してこなかった『彫像』エレオノールに微細な変化が生じていた。

 

「あれがルイズの〝飛翔(フライ)〟ですか」

 

 カリーヌ夫人はその微妙な違和感に戸惑っていた。彼女は『伝説』とまで謳われた〝風〟の使い手だからこそ、離れていても僅かに異なる空気の流れにすぐさま気が付いたのだ。

 

(確かに、紡がれたルーンは〝飛翔〟のものでしたが……魔道具の類を使っているわけではないことも、わたくしの持つメイジとしての感覚で正確に掴める。あれは間違いなくルイズの内から生み出されたもの。では、この感覚の隅に引っかかるのは……いったいなんなのでしょう……?)

 

 そんなとき、飛び回っていたルイズと夫人の目が一瞬だけ合った。

 

(これ以上無粋な真似は止めておきましょう。可愛い娘にあのような顔を見せられてしまっては、もう……わたくしからは何も言えません)

 

 顔いっぱいに喜びを溢れさせ、沢山の灯りに照らされながら中庭の池上空を舞うルイズの姿を見ていたカリーヌ夫人の目に、家族の前でも滅多なことでは見せない、優しい光が宿っていた。

 

 ――それからしばらくして。

 

 もうじゅうぶん見てもらえただろうと判断したルイズは優雅にバルコニー前へと舞い降りた。途端にわっと巻き起こる歓声と拍手。家族と、友人と、先生……そして使用人達。その場に集っていた全員から祝福された彼女は幸福の絶頂にあった。

 

 と……そこへ、先程までは居なかった人物が拍手の輪に加わってきた。

 

 それは銀色に輝く髪と長い口ひげが凛々しい、精悍な顔立ちをした貴族であった。幻獣グリフォンの刺繍が胸に施された黒いマントを羽織り、礼服を着たその青年の歳のころは二十五~六といったところだろうか。

 

「ルイズ! 小さなルイズ! 素晴らしかったよ」

 

 彼の姿にはもちろん覚えがある。ルイズは思わず歓喜の叫びを上げそうになった。が、それはすぐに戸惑いの感情によって打ち消された。何故なら……現れた青年の顔には誰が見ても明らかな程、深い疲れの色が浮かんでいたからだ。

 

「ワルド子爵! いや、済まなかったね……せっかく来てもらったのに、いきなりで」

 

 ラ・ヴァリエール公爵が何やら申し訳なさそうな声音でその青年――ワルド子爵を労うと。

 

「まったくですわ! この日のために、わたくしが招待致しましたのに」

 

 眼鏡の端をキッと持ち上げながら、エレオノールが声を上げた。ただし、その内心で「うふふ……計画通り!」などと考えていたことは誰も気付いていない――はずであった。

 

「ええ、本当に」

 

 困ったような表情を浮かべたカトレアだけが、姉の真意に気付いていた。もちろん、彼女はそれを口に出すような真似はしない。

 

 そんな彼らの声を聞いて、小さく俯いていたのはカリーヌ夫人だ。母の様子を見たルイズは察してしまった。場の空気が読めないことで仲間内では有名な彼女が、である。

 

(母さま……ワルド子爵に『稽古』をおつけになられましたわね?)

 

 それを目だけで語る娘に、小さく視線を外すことで応えたカリーヌ。だが、ルイズに解明できたのはそこまでであった。

 

 そう……自分の母の気性を嫌というほど理解していたエレオノールは、ワルド子爵には本当に気の毒だとは思いつつも、母が間違って客人に対して何かをしでかさぬよう、かの青年を生け贄に選択したのである。彼が末の妹ルイズの婚約者であるという事実によって、自爆する危険を覚悟をした上で――わざわざ表舞台に引っ張り出してきたのだ。

 

 まあ、この母にしてこの娘ありといったところだろう。場に置かれた手札の中で唯一オープンしていたカードが風の『スクウェア』であるというのも、それを後押ししていた。

 

 ――もっとも『墓場送りの対象者』として選択されてしまったワルド子爵にとってはたまったものではないだろうが。

 

 と、そんな風向きを突然変えたのは、エレオノールの気遣いによって被害を免れた客人・太公望だった。彼はまじまじとワルド子爵を見つめると、さも心配げな声でこう言った。実際、彼は本当に気を遣っていた。

 

「新たにお越しの客人殿は何やら大変お疲れのご様子。そこで、ひとつご提案があるのですが」

 

「言ってみたまえ」

 

 ラ・ヴァリエール公爵の勧めに頷く太公望。

 

「我が国で祝賀の席でのみ使われる魔道具を解放することによって、ルイズお嬢さまへのお祝いと、こちらの御仁の疲れを癒やして差し上げたいと愚考致したのですが……如何でしょう?」

 

「東方の魔道具?」

 

 この発言にもっとも興味を示したのはエレオノールだ。ワルド子爵も一瞬だけ片眉を動かしたのだが、すぐにそれを元に戻した。

 

「ま、まあ。ミスタ、そ、それはどのような由来の品ですの?」

 

「はい、我が国には『御振る舞い』という風習がございましてな。王侯貴族にのみ許されたこの風習は、こちら『西方』でいうメイジが桃に数ヶ月間〝力〟を込めることで作られる特殊な魔法具を池に投げ込み、キーワードを唱えることで、水をとある品に変化させるのです」

 

 またさらりと嘘八百を並べる太公望だが、アイテムの効果や見た目などに関しては一切嘘をついていない。しかし当然のことながらその場に居合わせた者たちがそれを判断できるわけもなく。ただ、唯一才人だけがなんとなく理解していた。

 

「ああ、桃か。確かにそれっぽい」

 

「む、才人よ。さすがに知っておるようだな? 何に変えるか言ってみるがよい」

 

「はい師叔。それは……酒、ですよネ?」

 

「その通りだ!」

 

 頷いた太公望に、周囲から驚きの声があがる。彼は懐から1つの桃を取り出してみせた。一見するとただの桃にしか見えないそれを高々と掲げながら、太公望は言い放った。

 

「この桃は王や高位の貴族に対する貢ぎ物として、部下から献上する特別な品です。これによって、水は一晩だけ酒に変わります。受け取った者は家族や領内で大きな祝い事があった時だけ、自らの屋敷にある池にそれを投げて効果を解き放ち、屋敷にいる者――家族や招待客のみならず、使用人全てに至るまで振る舞うのです」

 

 ふむふむ……と真剣な表情で聞き入っている観衆に対し、得意げに語り続ける太公望。こうなってしまったら、もう完全に彼のペースである。

 

「この酒はいくら飲んでもほろ酔い気分になるだけで依存性はなく、身体に害を及ぼしません。しかも! 体力増強、疲労回復の効果があり! さらにその身に浴びれば肌が若返る効果がある上に、魔法による強い浄化作用があるため、もしも池に誰かが飛び込んでも一切汚れが残らないという優れモノなのです!!」

 

(本来であれば、ほろ酔いどころか泥酔してしまう程のシロモノなのだが――今回用意した〝仙桃(せんとう)〟は完全に熟成しておらず、ある意味祝宴に出す品としては丁度良かった)

 

 などと、とんでもないことを頭の隅で考えつつ、太公望はどよめく一同を尻目にラ・ヴァリエール公爵へと向き直ると一礼し……こう告げた。

 

「大変差し出がましいことであるとは承知の上でございますが、この桃をそちらの池に解き放ってもよろしゅうございますか?」

 

 うむ、よきにはからえ。重々しく頷くことで了承の意を伝えるラ・ヴァリエール公爵。実のところ彼も内心、少年のようにどきどきしていたのである。

 

「それでは早速!」

 

 公爵の許可を得た太公望はそっと池の中へ桃を沈めると、いつかラグドリアン湖でやったように、池の岸辺に座り込むと、気合いを発した。

 

 すると、突如中庭の池全体から勢いよく複数の水柱が立ち上った。それからすぐに眩い閃光が辺りを包み込んだかと思うと――水は静まり、ほのかな光と微香を放つものへと変化していた。

 

 使用人のひとりからグラスを受け取った太公望は、まず自分でそれを飲んで害がないことを示した後、別のグラスに〝仙酒〟を注ぎ、恭しく公爵へと手渡した。ラ・ヴァリエール公爵は、受け取った酒杯をワインテイスティングをするかの如く扱うと、中身を一口だけ含んでみた。

 

「これは……香りといい、口当たりといい……まろやかで、舌の上でさらさらと蕩けるようだ。それに甘い。ワインとは全く異なる味わいだが――非常に高価な酒だということは理解できる」

 

 うんうんと実に満足げに頷いた公爵は、早速執事長を呼びつける。

 

「ここにいる全員分のグラスを早急に用意せよ。もちろん、お前たち使用人を含む全てに行き渡る数をだ。これはそういう酒なのだろう? 東方からのお客人」

 

 命令をしつつそう確認してきた公爵に、嬉しげに頷いた太公望。

 

 ――そして。次の瞬間わき起こった歓声が、狂乱の宴の開始を告げる鬨の声となった。

 

 

○●○●○●○●

 

「こんな高貴な風味のお酒、今まで飲んだことがないわ! 香りも素晴らしいし」

 

「王侯貴族が祝いの席でしか振る舞わないというだけのことはあるね」

 

 ほろ酔い加減で言うモンモランシーに、ギーシュがそう答えていた席のすぐ側には。

 

「身体中に英気がみなぎってくるこの感覚……しかも、深みのある素晴らしい味わい。依存性はないと言われたが、正直クセになりそうだ」

 

「本当ですわ! わたしも、身体の調子がいつもよりずっと良くなっておりますし」

 

「まあ、あなたたちったら! あまり飲み過ぎては……いえ、たしかこれはどんなに飲んでも害がないどころか身体に良いお酒でしたわね。でしたら規律も何も関係ありません。カトレア、あなたは特にたくさんお飲みなさいね」

 

「はい、母さま!」

 

 笑顔でグラスをあおるラ・ヴァリエール夫妻と、それに追従するカトレア。

 

 それはそうだろう、家族の成長を目の当たりにできた上に、普段であれば絶対に手に入らない東方の……しかも王侯貴族にのみ出すことが許された酒を飲みながら、その姿を思い返すことができたとあれば親として上機嫌になれないほうがおかしい。しかも、病弱な娘の身体にも良いとくれば最高の気分になれることうけあいだ。

 

「さっき池に手を浸してみたら……ほら! お肌がピカピカのスベスベになりましてよ! 最高品質の化粧水でもこうはいかないわ。これがたったの一晩しか保たないというのは、本当に残念なことですこと!」

 

「ええっ、そんな効果が!? あたしも是非試してみないと!」

 

「今日のお風呂にこの酒を使うよう、使用人たちに手配させてあるから大丈夫よ」

 

「まあ、なんて素晴らしいご配慮ですこと! 痛み入りますわ」

 

 池のほとりではあのエレオノールが、よりにもよってラ・ヴァリエール家の仇敵であるフォン・ツェルプストー家の娘キュルケを相手にそんな報告をしていた。これが数ヶ月前であったなら、絶対にありえない光景だ! と、周囲が恐れおののくような光景が今まさに繰り広げられている。

 

「おいしい。でも、いつのまにあれを用意したの?」

 

「なに、いつものように厨房から桃をパク……もとい頂いて、この一ヶ月間毎日〝力〟を込めていただけのこと。良い機会でしたので、この場で解放したまで」

 

「あなたは『薬』の類は一切作れないと言っていたはず」

 

「はい、作れません。これはあくまで娯楽用の品ですから。ついでに申し上げておきますと、自作できる魔法具はあの桃だけです」

 

「前に依頼した件といい、本質を正しく伝えることが重要であることがよくわかった」

 

「さようでございます。下手な壁を作るのは、正しく物事を伝える上での障害にしかなりませぬ」

 

「なるほど、ためになる話だね。情報伝達の正しさは……と」

 

 グラスでは物足りないとピッチャーを拝借した太公望が『ご主人さま』であるタバサに酌をしながら説明している。その隣では、彼らと同席していたレイナールがメモ帳を取り出して、今の物事を伝える際に云々という発言を書き留めていた。

 

 国内でも非常に(外見その他の意味でも)レベルが高いメイドたちが、働きつつも交代でお酒を飲む姿を見ながら目尻を下げているオスマン学院長。懐に入れてあった試験管にこっそりと酒を注いでいるコルベール。彼があの酒を一体何に使おうとしているのかについては、あえて追求しないであげてほしい。

 

 ――このように誰も彼もが浮かれ騒ぐこの雰囲気の中、ただひとり……どんよりと暗い空気を纏う者がいた。彼は池のほとりに座り込み、ちびちびとグラスを傾けながら、じっとある一点を見つめ続けていた。池の中央にある小さな浮島――そこに立つ、ふたりの姿を。

 

「この酒……弱すぎて、いくら飲んでも酔えねえな。たしかに酒の味なんかわからない俺でも、これがスゴイものだってことくらいはわかる。けど……どうしてか、ちっとも美味く感じねえよ」

 

 そう小声で呟いたのは才人であった。

 

 彼は先程目の前で繰り広げられた光景に、激しいショックを受けていたのだ。

 

「トリステイン王国近衛魔法衛士隊・グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドと申します。二つ名は『閃光』。どうか宜しくお見知りおきのほどを」

 

 太公望が提供した酒の効果ですっかり元気を取り戻した彼――ワルド子爵はラ・ヴァリエール公爵から改めて来客者たちに紹介された。そこで突如飛び出た単語が、才人を激しく動揺させたのだ。

 

「ルイズの……婚約者!?」

 

 才人の口があんぐりと開いた。

 

(こいつが? この髭の貴族がルイズの!?)

 

 彼の身体――いや、全てが瞬時に硬直した。

 

「ワルドさま……」

 

 男の名を呼ぶルイズの声が震えている。

 

「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ!!」

 

 ワルドさまと彼女に呼ばれた若い貴族は、人なつっこい笑みを浮かべながらルイズの側まで駆け寄ると、ルイズの身体を逞しい両腕で軽々と抱え上げてしまった。

 

(僕のルイズ!? なにそれ)

 

 呆然としていた才人の目に映ったルイズの顔は、ほんのりと朱く染まっている。「君は、相変わらず羽根のように軽いよ!」などと言って笑う男と、彼女は視線を交わし合っていた。

 

 それを見ていた才人はなんだか居たたまれなくなって――彼を気遣ってくれようとした仲間たちの手を振り払い、その場から逃げるように立ち去った。

 

 ――そして現在へと至る。

 

 才人が醸し出す空気のせいで、仲間の誰もが側に近寄れない。いや、今あそこへ行ってはいけないと判断した結果、あえて普段通りの別行動を取っていた。

 

「婚約者、か……」

 

 婚約者。コンヤクシャ。もちろんその言葉の意味は知っているし、才人はそれを充分理解できる年齢に達している。そう、あのワルドとやらはルイズと結婚の約束をした相手……ということだ。

 

「そうか、そりゃあそうだよなあ……」

 

 再び池の酒をグラスに継ぎ足しながら、才人は思った。でかい城に……街どころか市レベルの土地持ち。由緒あるお家柄。ルイズは本物のお姫さまなんだ。

 

 日本にいた頃、自宅の居間に置かれた液晶テレビに映っていた――にこにこと笑顔を振りまきながら黒塗りのゴツイ車に乗って、SPやら報道陣だのを大勢引き連れていた外国の女王陛下や、自国の皇族、政治家たち。一般庶民である才人にとって、彼らは液晶画面の向こう側にしかいない――別の世界の住人だった。

 

 本当に別の世界――俺にとって異世界の人間だったんだな、ルイズは。

 

 ――最初は、可愛い顔はしてるけど、ひとの話を一切聞かないイヤな女だと思った。

 

 その考えが少しだけ変わったのはギーシュとの決闘の時だった。自分の名前を呼びながら、笑顔で駆け寄ってきた彼女を見て、こんな顔もできるんじゃねえか……と、心の片隅が暖かくなった。

 

 ――それが憧れに変わったのは、フーケのゴーレムを見たときだ。

 

 たったひとりで、あの巨大な化け物相手に立ち向かおうとした。それが貴族の務めだからと言って振り返った彼女の顔は凛々しくて、美しかった。あのとき初めて、手助けがしたいと思った。

 

 ――役に立ちたい。そう感じたのはあの日……舞踏会で、ダンスに誘われてからだ。

 

 踊ってくれませんこと? そう言って差し伸べられた手は白くて、か細かった。こいつの力になってやろう。そう誓った。

 

 ――絶対一緒に行く。そう決意したのは、あいつが初めて魔法に成功した日だった。ルイズに示された『道』は俺が手助けすることで開かれる。そう教えられたとき……俺の胸は高鳴っていた。

 

「わかってたけどさ……こうやって確認しちまうと、なんだかなあ……」

 

 答えなんて、あの時点でもうとっくに出ていたのだ。けれど、それを口にしたら全部壊れてしまいそうで、怖くて言えなかった。

 

「なあにが『伝説』だよ。誰が『神の盾』ナンデスカ? そんなご大層な名前貰っちまった俺は――ほらこの通り、ただの臆病者じゃねぇか」

 

 『竜の羽衣』を纏って空で戦う『大空のサムライ』? 笑っちまうぜ。あのとき、シエスタの父ちゃんに言った通りだ。俺は、そんな立派な男なんかじゃない。その証拠に、こんなところでいつまでも未練がましくあいつを見ながら、ウジウジグダグダしてやがる。

 

(俺……ルイズに惚れてたんだな)

 

 口には出さず、己の胸に問う才人。

 

(そうだよ、だから厳しい現実ってヤツを突き付けられて、こんなにショック受けてんだ。畜生)

 

 再び手にしたグラスを池の中に突っ込んで、なみなみとそれを満たした才人は、いっきに中身を飲み干した。

 

 だが、酔えない。ワインを半分も開けたら視界がぐるぐる回り始めるくらい弱いのに、潰れたい時に限ってそれができない。と、ここに至ってようやく才人は思い出した。これがどんなに飲んでもほろ酔い程度で止まってしまう『魔法の酒』だったことを。

 

「畜生……あんまりだぜ、伝説の大軍師さまよ」

 

 それがとんでもない八つ当たりだと、自分でもわかっている。だが……才人はハルケギニア世界に来てから初めて出来た友人を、この日――心の片隅で恨んだ。

 

 

 




恋愛話を書くのが苦手です。
書きたくないという意味ではなく文字通り。
読んでて「くわあああッ!」となれるお話が書ける方を心から尊敬します。


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