ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

8 / 28
短めの話が続く……


もうまめだです、第8話にも足を運んでいただきありがとうございます。


力不足を痛感してます、少しまきの方向で話を進めていこうと思います


ではどうぞ


追記:書き足したら結構長くなった、よかった( ̄▽ ̄)


知りたくない事実を探して

「ここが、デウス・エクス・マキナによって精神を抜き取られた者たちが運ばれてくる場所です」

 

「まるで眠っているみたい……」

 

 イオが地面に雑然と並べられた人たちを見てつぶやく。俺たちは、大将アダムに見ていただきたいと言われた施設に連れてこられた。薄暗く冷たい空気の中、被験者と呼ばれ今では人形のように動かない者たちが広い空間にどこまでも続いている。

 

「眠っているわけではありません。考えることも動くこともせず、ただ呼吸を繰り返して命を終える彼らは機械や人形の類です。彼らはもう二度と起き上がることはないでしょう。精神に干渉する力をもつ星晶獣、デウス・エクス・マキナは人の精神を破壊したり創造したりすることはできません。彼らの能力はただ、精神そのものを抜き取り、移動し、別の器に入れるということ。もちろん抜いた精神をもとの器に戻すことは可能です。しかし、彼らの精神が今ではどこにあるのか、それはすでに分からなくなっているので」

 

「そんな……」

 

「けれども、フリーシアはなぜデウス・エクス・マキナを? その能力はフリーシアの目的とはだいぶ違っていると思うんですが」

 

「フリーシアの目的はアーカーシャの起動、そして歴史の改変。そのためにはルリアとオルキス王女殿下の両方の力が必要なのですが、予想外の妨害にあったことで、別の方法も探し始めました。そして、デウス・エクス・マキナを使って大人数の精神を疑似的に星の力に変換する方法を見つけました。彼らはその実験の被験者、そして間もなく帝都の全住人の精神を利用することで計画を成功させようとしています」

 

「帝都の全住人ってことは……約百万人ってことか!」

 

 オイゲンが驚いて声を張り上げる。それに対しアダムは静かに首を縦に振る。

 

「それほどまでに彼女の決意は固いのです」

 

「あの子も全力でこの国の、いやこの世界の歴史を変えたがっているのね……」

 

「なぁ、アダム。さっき言っていた精神に干渉する星晶獣デウス・エクス・マキナのことなんだが、その精神っていうのは心と同じ意味なのか?」

 

 俺はさっきの話で気になっていたことをアダムに聞く。もしそうなのであれば……

 

「私は心についてはよくわかりません。しかし精神を抜き取られるということはただ肉体のみになったということ。思考もできずただ横たわる人形のような彼らには心は宿っていないように思えます。だから私は、精神への干渉は心への干渉と同じように考えても差し支えないと考えます」

 

「そうか、分かった」

 

 微かに希望が見えた俺に、突然ドランクが話しかけてくる。

 

「ごっめーん! 悪いんだけどさ、お話、終わった? 最後のほうは質問コーナーみたいになっていたけどさあ。まぁ、それはいいとして、どうも僕ら、見つかっちゃったみたいでね~」

 

「敵襲……。それもかなりの数……」

 

 スツルムが剣を鞘から抜く。と同時に、俺の耳にもだんだんと近づいてくる多数の足音が聞こえてくる。状況を判断したアダムがすぐに指示を出すが、それに黒騎士は反対するのだった。

 

「地下道に通じる裏口があります。そこから商店街まで行くことができます。あなたたちの艇には指示を出してありますので、そのまま我々が来た通りの道を戻れば彼らに会うことができるでしょう。私が時間を稼ぐので、あなたたちはそこから逃げてください」

 

「だが、ここから逃げたところでどうする? せっかく帝都への潜入に成功したのに、まだ我々は何も得ていないだろう。それなのにこんなに早く脱出してしまったら、それこそ何のために危険を冒してここまで来たんだか……。それに、再度潜入できるかどうかさえ怪しいんだ。私は……このまま強行突破する」

 

 黒騎士が剣を抜き、足音が近づく方を見据える。それに応えたのはオイゲンだった。

 

「アポロ、それは無茶だ。この人数じゃあさすがに戦力が足りない。ここは一度引くんだ……!」

 

「……そんなのはわかっている! だがやっとだ、やっとここまで来たんだ! やっとオルキスが人形になった原因が分かり、その解決策もわかった。それなのに、今ここで逃げたら……」

 

「アポロ、冷静になるんだ! 今ここで強行しても何も得るものはないかもしれない。いや、最悪お前の命が失われるんだぞ!、そうしたら艇で待つオルキスちゃんはどうなる? お前の野望は? 何も成し遂げられずに終わってしまうんだぞ」

 

「……くっ、こんな時ばかり父親の顔をするとはな」

 

「実の父親なんだ、娘の心配するぐらいしか能がねぇ。よし、グラン!、ここは一度撤退するぞ! 艇まで戻って仲間を連れて本番といこうじゃねぇか!」

 

「あぁ、オイゲン! 黒騎士、俺たちは必ずフリーシアの計画を止める。フリーシアも言っていただろ、戦略的撤退だって。まさにそれだよ。じゃあ俺がしんがりを務めるからみんなは先に裏口から外に逃げて! アダム、一番つらい役を任せてすまない」

 

「いいんです、それが私の、エルステ帝国のための役割ですから」

 

 アダムが裏口まで案内し、扉を開ける。だが間に合わず、帝国軍に見つかってしまう。

 

「見つかったか……、みんな先に逃げて! 俺もあとから行くから」

 

 最後のルリアとビィを裏口から逃がし、俺は剣を鞘から抜く。ここで少し時間稼ぎをすればみんなが逃げるのも楽になるだろう。アダムと俺の2人に対し、重装備に身を包んだ帝国兵らが50人ほどこちらに向かってきている。すぐに戦闘は始まるだろう。彼らが気にせず床に横たわった被験者たちを踏んでいくのを見て、剣を握る手に力が入る。

 

「アダム、さっき帝国兵を何十人も戦闘不能にしていたよな、ならこの集団にもできるのか」

 

「はい。しかし先ほどより私に対する警戒が強いので時間はかかるでしょう。さきほどのは不意打ちという面もありましたし」

 

「そうか……来るぞ!、んっ?」

 

 突然俺たちの後ろから光が差し、振り向くと一体の星晶獣が姿を現していた。美しい姿をしたその星晶獣は掲げた両手にエネルギーを集め、そして帝国兵に向けて放つ。一瞬の爆発音と閃光に身体が強張るが、おかげで十数人を戦闘不能にできたようだ。

 

「ユグドラシル! ありがとう!」

 

 ユグドラシルから鈴の響きのような音が発せられる。俺はその音から感謝の意を感じた。役目を果たしたのか、ユグドラシルの身体が光り輝いて消えていくの見届け、その後ろからルリアとビィが姿を現す。

 

「ルリア、ビィ、助かったけどどうして逃げていないんだ!」

 

「ジータがいないんです!」

 

「えっ、どうして? 裏口から逃げ……いや言われてみれば見てない」

 

「金髪の女性の方ですか? それならさっき施設の奥へと歩いていきました」

 

「アダム見てたのか? くそ、なんで……。アダム、すまないがこの場は頼む、俺はジータを探しに行く」

 

「私も行きます!」

 

「オイラも行くぜ!」

 

「まぁ、ダメだって言ってもついてくるんだよな。よし、俺のすぐあとを走ってくるんだぞ! アダム、頼むね」

 

「分かりました」

 

「よし、行くよ!」

 

 

 俺はユグドラシルの攻撃でできた帝国兵の隙間を縫って行こうとするが、そうはさせまいと俺たちに気づいた兵たちが集まってくる。やっぱり戦闘は避けられないか……

 

「キルストリーク」

 

 唱えると同時に魔力を込めて掌に風を集め、それを投げる。槍のように細長い凶器と化した風はさらに周囲の風を纏いながら直進していき、轟音とともに帝国兵へと襲い掛かっていく。ほかの魔法で敵を弱体させたほうが威力は高くなるが、今はそこまでの時間はなかった。けれどあまり精錬された兵ではなかったのか、あまり威力の高くない攻撃に多くの兵が身体の自由を奪われる。道は無事開けた。

 

 開けた道を、まだ無事な兵士が埋める前に俺とルリア、ビィは駆け抜ける。横たわり人形のように動かない被験者を踏まずに走るのには手間取ったが、なんとか走り抜け振り切った。部屋を出る扉まで着き、後ろを振り向くと必死に走ってきたルリアの後ろにいつの間にか移動していたアダムの背中が見えた。

 

「裏口にもこちらにも兵は進ませません。ご心配なく」

 

「ありがとう、アダム」

 

 

ーーー

 

 

「ねぇ、フリーシアってどこにいるの? 案内してくれないかなぁ」

 

「だ、誰が貴様なんかに教えるか! エル、ステ王国のて、敵なんかに……うわぁあ!……」

 

 直後鮮血が飛び散る。地面に崩れ落ちこと切れた兵士を一瞥し、次の目標を探すべくあたりを見回す影が一つ。

 

「死ぬまでして守りたいことかなぁ。まぁ、いいや、まだほかにもスペアはいるし。さあ、誰が教えてくれるかなぁ」

 

 周りには武器を折られ、戦闘不能にされた帝国兵が数十人倒れていた。

 

 

ーーー

 

 

「そういえばさっき、ユグドラシルがルーマシーで本体の自分を魔晶から助けてくれてありがとう、って言っていました!」

 

「ユグドラシルが? そっか、なんか照れるな。あぁ、俺からもあるんだけどさ、さっきアダムから星晶獣デウス・エクス・マキナの話があったでしょ? あれの力でジータを救うことはできないかな」

 

「どうやってですか?」

 

「うーん、ジータの心に縛りついている星晶獣だけを移動させられれば一番なんだけれど」

 

「私にもまだ分かりません。けれど、ジータの心と星晶獣はすごく密接につながっているので、星晶獣だけっていうのは難しいかもしれません。もしかしたら、ジータの心ごと移動する必要があるかも……」

 

「でもそうなるとジータはあの被検体みたいになるんだよね?」

 

「そうですね。だからデウス・エクス・マキナに頼るのは難しいかと……」

 

「そうか、じゃあやっぱり……」

 

 

 アーカーシャを使うしかないのか……

 

 

 部屋を出た俺たちはジータを探すべく施設内を探索していたのだが、実験施設として使われているのだろう、多くの部屋と通路があるせいでなかなか見つけられないでいた。一度道に迷ってしまうともう外に出られそうなほど複雑な構造は侵入者を阻む意味もあるのかもしれない。

 

「なぁグラン、あれって……」

 

 ビィの言葉に俺たちは立ち止まり、視線の先に顔を向ける。細い通路に帝国兵が一人いた。壁に背を預け、首ががくんと下がっている。……死んでいた。

 

「ルリアは無理して見なくていいからな」

 

「は、はい……」

 

 つい先ほど亡くなったようだった。死人はあまり見たことがないし、見たいとも思わなかった。やむをえない帝国兵との戦闘は何度もあったが、怪我による戦闘不能や戦意喪失を狙うように心掛けていた。それらはすべて直接言われたわけではないが、ルリアが願っていることでもあった。特に俺たちと会ったその時に命の危機に瀕したわけだから、ルリアは普通の人以上に死を恐れていた。それは、仲間の死はもちろん、見ず知らずの他人の死に対しても同じだった。

 

 けれども今それが目の前にあった。それも亡くなったのはここ数分の出来事だろう。ここは軍の施設で侵入者といえば……俺たちだけなはず。考えられる選択肢はほとんど残っていなかった。

 

「ビィ、ルリア、最初にいた部屋までの道はわかるな。きっとまだアダムがそこで待っているだろうから、2人は先に行ってくれないか。ここからは俺一人で行くから」

 

「いいえ、私も……ついていきます」

 

「ルリア……もしかしたら……」

 

「それでも!……やっぱり仲間ですから……」

 

「オイラも行くぜ、目を覚ましてやらねぇとな」

 

「そっか、分かった。ありがとう」

 

 

 それ以上何も言わず、俺は立ち上がって道を進んでいく。帝国兵の死体は一つだけではなかった。目印のように進むたびにそれはあって、また血の跡までもが俺に道を教えてくれた。数分後、少し大きめの部屋へ入る扉の前に俺たちは立っていた。

 

 取っ手には血の跡がついていて、触った俺の手が赤く色づいた。それに気づくのと同時に、俺は手が微かに震えているのにも気づいた。ここを開ければ知りたくない事実が、けれど知らなくちゃいけない事実が俺を迎えるのだろう。たぶん俺の予想は、見当違いであってほしいと願う俺の予想は当たる。でもこの扉を開けるまではそれは単なる予想だ、しかし開けてしまえば事実に変わる。それが、嫌だった。俺は、知りたくなかった。

 

「グラン?」

 

「えっ、ああ何でもない、開けるよ」

 

「はい」

 

 鍵がかかっているという最後の願いも崩れ、扉がゆっくりと開いていく。奥には予想以上の事実が待っていることをまだ俺たちは知らない。

 

 

 

 

 




どうでしたか


この話で中間ぐらいです、本当は20話ぐらいまで行く予定でしたが……


考えていることを文字に書くのはむずかしいですね、もっと修行する必要がありそうです


次回も、どうぞよろしくお願いします



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。