ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

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お久しぶりです、兎が泥しなくて投稿が滞っていました(違う)

もうまめだです、第6話にも足を運んでいただきありがとうございます。

あらすじのほうにも少し書きましたが、物語の設定を少し追加です。

メインストーリー52話までが、第1話の前までに起こったことです。ゲームでは、そのままアガスティアに強行しますが、この小説ではいったん黒騎士たちと別れて時間をおいています。そして、メインストーリーの53話から、アレンジを加えて物語が進んでいくことになります。

というわけで第6話、あまり話は進んでいないのですが汗、少々重め?の内容になっています。

それではどうぞ。


何度も、何度も

「えっ?、もうこの島を出発されてしまうのですか?」

 

「はい。依頼は無事こなすこともできましたし、ほかの依頼や、それに俺たちにもやらなければならないことがあるので」

 

「けれども、ジータさんは目を覚まさないですし……」

 

「それはそうですが。医者には病気も傷も見られず、いたって健康といわれたので……いずれ目を覚ますと思います。それまで依頼もないのにお世話になるわけにはいかないので……」

 

「そうですか……分かりました、今日のいつごろ出発しますか?」

 

「夜まではいようと思います。それまでに食糧とか買わなければならないものもあるので。それとジータを艇まで運ばないと。こっちから団員を連れてきますので、彼らが来たら案内をお願いします」

 

「分かりました」

 

 

 ジータたち3人が倒れた次の日、俺は島を出発することを決心した。本当はジータが起きるまでこの島にいたかったのだが、そう悠長に過ごせない理由が郵便で来ていたのだった。

 

 団員たちに状況を説明しに、夜グランサイファーに戻ると、ある団員に宛名が不明の手紙が届いたことを伝えられた。中身を見てみると黒騎士からのものだった。帝都アガスティアでの動きが活発になっていること。重要な何かが港から帝都まで運び込まれた形跡があること。そして、これは推測だがという言葉の後にフリーシアが何らかの行動を起こす可能性がある、と書かれていた。ルーマシー諸島でロゼッタを助けた後、黒騎士、傭兵の2人、そしてオルキスは情報収集を続けるとして俺たちの艇を降り別行動をしていたが、いまここに手紙が来たということは急を要するのだろう。居場所はよろず屋にでも聞いたに違いない。

 

 ジータのことは心配だ。事件の真相を知りたいという気持ちもある。けれども、フリーシアはそれ以上に危険な存在だった。どちらが最優先なのかもわかっていた。それに、ジータが俺の立場だったとしても決断は変わらないだろう。

 

 その夜のうちに団員達には明日の夜には出発する旨を告げた。長老や依頼主には急になってしまうが明日告げることに決め、自室に戻った俺は予想外の疲労を自覚し、それに対抗することもできず、気が付けば次の日の朝を迎えていた。

 

 朝食も食べず真っ先に長老の家へと向かったが、ジータは目を覚ましていなかった。夜中まで様子を見ていたのだろう、ルリアとアネバルテが椅子に座ったまま静かに眠っている。俺は起こさないように部屋を出て依頼主を探し、今日の夜に島を出ることを伝えた。

 

 

 

 依頼主に伝えたあと朝ごはんを食べていないことを思い出し、艇に戻りながら商店街で何かを買おうかと店々を覗くと、すでに変化が現れていることに気づいた。照明を少し明るくしたかのように、商店街全体が明るく、暖かい。それは小さな変化、いやこの島での小さな再興であり、再び島が元の活気ある場に戻ることは明確だった。すこし気分が和らぎ、昨日ルリアたちが食べていたアップルパイを思い出し、店を見つける。一つ買い、その場で食べて感想を言うと、女店主は笑顔でお礼を言った。依頼は成功したんだな、という実感と達成感があふれ、艇にいる仲間へのお土産にさらに何個かパンを買っていく。女店主は笑顔で手を振りながら俺を送ってくれた。

 

 

 艇に着くと、俺は何人かに声をかけ買い物を頼んだ。さらに、オイゲン、ソリッズ、ジンの3人にジータのことを話し、艇まで運んでくれないかと頼んだ。3人はジータの容体を聞いて驚愕の叫び声をあげ、快く了承すると、艇にある余りのベッドを担いで長老の家へと走っていった。3人の騒がしさでジータが起きることを期待して頼んだのだが、運ばれてきたジータはやはり目を覚ましていなかった。買い物を頼んだ仲間も戻り、依頼主に報奨金をもらった俺たちは日が沈む頃に島を出た。島を出る直前に、アネバルテを刺したエルーンの女性が来て俺たちに泣きながら謝ったが、彼女の行動とジータの今の状況の関係が未だつかめていない俺は怒ることも許すこともできなかった。

 

 

 そして、長老、依頼主、アネバルテ、エルーンの女性らに見送られた艇は黒騎士たちの待つ、帝都アガスティアの近くの島、ネアル島へと向かった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 ノックの音にまどろんでいた俺は起こされた。夜中。再興の島を出発したグランサイファーが静かに空を進む中、俺は一人ジータの看病を続けていた。といっても看病とは名ばかり、時折苦しい表情を見せるだけで、熱はなく汗もかかないジータをただ見守っているだけで変化のない状況に、俺はうつらうつらとしていた。

 

「誰?」

 

「私です」

 

「ルリアか、どうしたの? 入っていいよ」

 

 ゆっくりと扉が開きルリアが入ってくる。ジータを一瞥して少し悲しい表情になり、俺の近くの椅子にちょこんと座る。

 

「ジータ、起きませんか?」

 

「うん。時々苦しそうな表情をするけど、あとは変わらないよ。熱もないし、本当に、ただ眠っているみたい」

 

「だとしたら……何で起きないんですかね……」

 

「分からない……」

 

 沈黙、というよりは少し気まずい空気になり俺はルリアに話しかける。

 

「そういえば今日の朝、昨日ルリアたちがアップルパイを買ったパン屋さんに行ってきたんだよ。あれ本当においしいんだね。俺も無意識でうまいって言っちゃってさ、そしたら店の女性が笑顔でお礼を言ってくれたんだよ」

 

「本当ですか!?」

 

 顔に笑顔が戻ったルリアに俺は大きく頷く。

 

「うん。俺もちゃんと依頼をこなせたんだ、島を救えたんだって思ってうれしくなったよ。騎空士になって良かったって思える瞬間だよね」

 

「そうですね! 私も少しうれしくなりました、ジータにも早く教えてあげたいですね、私たちが島を救ったっていうことを……あれ?」

 

 不意にルリアが少し驚いた表情になり、目をつむる。

 

「どうした、ルリア?」

 

「島にいるときは気づかなかったんですけど、ジータの中に星晶獣がいるんですっ」

 

「えっ?、でも」

 

「はい、この島に来る前はいませんでした。それに私の意識がなくなる直前もたぶん……」

 

「アネバルテが心を支えてるわけじゃ……ないよな」

 

「はい…、ジータは自分で自分を取り戻す方法を見つけましたから。星晶獣アネバルテもそれがわかっていたので、力をかすようなことはしませんでした。だからジータの中にいるのはアネバルテじゃないはずです」

 

「でも再興の島にはほかには星晶獣がいないはずだし……、ジータの中の星晶獣が何なのかわかるか?」

 

「それなんですが……ジータの心の深いところで堅く結びついているみたいで、よくわからなくて……。でも接触ぐらいなら……」

 

 ルリアが目を再びつむる。そして数秒間の沈黙の後、ルリアが突然驚いた顔をし、そして同時に、ジータが目を覚ました。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 ジータはただ2つのことを望むようになった。自分の死と、永遠の眠りだ。

 

 ザンクティンゼルでグランに無抵抗のまま殺されたジータは、気が付けばまた存在していた。頭上には青空が広がり、懐かしい記憶が脳を刺激する。そこは、ポート・ブリーズ群島だった。心地よい風の中にジータは見つけた。ルリアがいた、カタリナがいた、ラカムがいた……そしてジータは再び裏切られた。死ぬ間際まで心から信じた者たちから恨みともいえる感情を浴びせられ、最後にはグランに空高く翔ぶグランサイファーから果て無き地へと落とされた。

 

 そしてまた、目覚めた。記憶に懐かしい風景と、心を通わせた仲間がそこにはいて、そして裏切られ、ジータは殺された。そして……

 

 何度も何度もジータは目覚めた。常に頭上には青空が広がり、目の前には思い出として記憶に残っている光景が展開された。それらの記憶は仲間と出会った場所、うまくいった依頼のような暖かいものであるはずだった。けれどもそれらは汚され、結末は変わらなかった。

 

 ジータはすぐにこれが夢だと気づいた。現実世界で気を失った瞬間に何をしていたかも思い出し、これが星晶獣アネバルテの心の闇が見せる幻覚であることにも気づいた。だからひたすらに耐えようと思った。耐えれば、本当の世界の、本物のグランやルリアが助けてくれる、そう信じて。

 

 けれども、現実と相違なく創られた夢の世界で、それが幻覚だとわかっていても、信じた仲間たちから重ねられる悪意はジータの心を蝕んでいった。いや最初から蝕まれていたのだった、アネバルテの心の闇を自らの心と結びつけてしまったその時から。純粋に人を助けようと願っていたアネバルテの心を傷つけたナイフの一振りは、ジータの思う以上の闇をアネバルテの心に産んでいた。

  

 最初のうちジータは抵抗を続けた。グランに、仲間たちに必死に声をかけた。この世界が現実ではないとも分かっていたので、自らが本当の世界で目覚めようと努力した。それが叶わないと知るや、ジータは自らで命を絶とうとした。いくら幻覚といえ、本物とまるで違わない彼らによって嘲られ、いたぶられ、そして殺されるのは耐えられなかった。そうなるよりは、とジータは思い、そして行動に移った。

 

 いつものように頭上には青空が広がり、そして目の前には記憶の片隅に残っていた思い出が展開されていた。腰に短剣がぶら下がっているのを確認したジータは、それを手に持って首に近づけた。まだ怖いという感情はあった。手が震え、けれどもこの後に起こるであろう状況を思うとやめることはできず、歯を食いしばり、一思いに……。

 

 一思いに、一思いに……!

 

 短剣は届かなかった。まるで魔法にかかったかのように手が動かなかった。そして、後方から聞き覚えのある足音が近づいてくるのを聞いていた。結末は……常に同じだった。

 

 誓約が彼女自身を縛っていることに、ジータは気づかなかった。永久にアネバルテの心の闇を持ち続けるという誓約。そして自殺はまさにそれを放棄しようとする行動、つまり誓約に反する。しかし殺される場合は、自分の意志ではないので誓約には反しない。ジータに自らの運命を決める自由はなかった。

 

 自殺をする機会があるたびにジータはそれを試みた。そしてそのどれもが失敗に終わった。救いはなかった。アネバルテは救ったが、ジータを救うものはいなかった。

 

 度重なる苦痛や悪意に、ジータは次第に慣れ始めた。身体は痛みを感じなくなった。心は何をも感じなくなった。まるで第三者であるかのように、ジータは自分自身が殺されていくのを見た、何度も見続けた。そのうちに願うようになった。自らの死を。そしてこのつまらない茶番劇が二度と繰り返されないことを、つまり二度と目覚めないことを。

 

 

 

 次にジータが目を覚ましたのはグランサイファーの自室だった。ベッドのそばにはグランとルリアがいた。すでに習慣となってしまった自殺を試みるため、ジータは身の回りを探し、壁に剣が掛けられてのを見るとベッドから立ち上がり、それを手に持って抜刀し、軽く手を振って首を刎ねようとした。そこにはもう、ためらいはなかった。

 

「ジータッ!!」

 

 やっぱり自殺できなかった。刃が首に当たる寸前で、グランが邪魔をしたのだった。弾き飛ばされた剣が壁にぶつかり大きな音を立てる。それを無表情のまま見下ろして呟く。

 

「今までは体が動かなかったけれど、こういうパターンもあるのね」

 

「ジータ、な、なにをしようとしたんですか?」

 

「ジータ……お前……」

 

 はぁ、また目覚めてしまった。今回はどうやって私を殺すんだろう……

 

 

 

 

 

 




ふう、いかがでしたかっ


質問等あればお気軽にどうぞ!


なかなか思うように話が進みませんが、これからもよろしくお願いします。


というわけでありがとうございました!

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