ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

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タイトル回収完了しました!が、書いている自分が暗い気分になってきました……

第4話にも足を運びいただきありがとうございます、もうまめだです。


少し長め、重めの内容になっています、多分あまり好きじゃない方もいると思いますが……


裏&息抜きで軽いグラブル話でも書こうかしら、、、

というわけでどうぞ!


誓約

「それにしても、どうしてグランはあんなことを言ったんでしょうか」

 

 商店街を歩きながらルリアは私に聞いてきた。多分、私についていけって言ったことだろう。その理由は私が誰よりも知っているのだが、それをごまかすように私は言う。

 

「グランにも何か思惑があったんじゃないかな」

 

ーーー

 

 アネバルテについて長老と依頼主に話を聞いた私たちはアネバルテの捜索を開始した。といっても、島民となるにふさわしい資格を持った者の前にしか現れない星晶獣であるから、いくら島をしらみつぶしに探そうとも見つかる可能性はほぼない。

 

 

 「だがな、島民になるにふさわしい者の前には来るのだ。だからそれを利用すればアネバルテに会うことはできる。今の時点で、この島に来てから1日経っていない島民希望者が全部で5人いる。残念ながら、その5人の居場所はわからないが。1日の間は自由に過ごしてもらっていいと話してあるからな。ここに5人についての簡単な情報が載ってある。その5人を見つけて、もしその者がふさわしい者であれば、アネバルテに会うことはできるかもしれん。すでに会ってしまった可能性もあるがな」

 

「どのくらいの割合の人が島民になるにふさわしいと認められるんですか?」

 

「島民希望者の中でか? 100人に1人いるかいないかだな。」

 

「けっこう渋いんですね……」

 

「そんなことはない。これは決してテストなどではないからな。自分の胸に、自らを高めんとする強い心があればたやすいことだ。だがそのような強い心の持ち主はそういないというだけだ」

 

「じゃあこの5人を見つけても会えない可能性は?」

 

「無論高い、可能性が0というわけではないが。だがまあ、今でも毎日2,3人の島民希望者が来ているから、いずれかは会うことができるだろう。見つけるのは時間の問題だな」

 

「分かりました。受けた依頼はちゃんとこなすので、それまでお世話になると思います。よし、じゃあこの5人の捜索にでも行こうか。ルリアとビィを合わせて全部で10人いるから2人で1組という感じで。あと……、ルリアはジータと一緒に捜索してもらえる?」

 

「えっ、はい!、わかりました!」

 

「ありがと。5人の誰かを見つけたらうまく話しをつけて一緒について行って。長老に頼まれて、とか言えば大丈夫だと思います。もしそれでアネバルテが現れたら……どうすればいいですかね」

 

「アネバルテは星晶獣ながら結構話すのが好きなようでな。わしも会ったときはその場で雑談をしたものだ。わしと瓜二つの存在と会話をするのは奇妙な体験だったが。だから話しながらどこかに連れていくことができよう。この家まで連れてきてもらうのが、あとのことを考えれば一番簡単だろうか」

 

「そうですね。ここまで連れてくるのは難しいかもしれないけれどそこは頑張って。失敗してもまた次があるから気にしないように」

 

「ここまで連れて来たらわしがこの島全体に響く鐘を鳴らそう」

 

「了解です。鐘が鳴ったらルリアとジータは戻ってきて。よし、それじゃ捜索を開始しようか!」

 

ーーー

 

「思惑ですか~。まあグランのことなんで、そうですよね」

 

 私は頷き、ルリアの手を引きながら歩いていく。私たちはドラフ族の男性を探すことになっていた。けれど写真を見た限りでは悪人面の彼は、長老から見ても島民にふさわしくなかったらしく、アネバルテとの遭遇は見込めないと言っていたが、グランはその人の捜索を私とルリアに任せた。依頼主と長老、カタリナを含めた団員たちはこの決定には首をかしげていたが何も言わなかった。これもグランに対する信頼のおかげだろう。私も何も言わなかった。こうすることで、ルリアがアネバルテに会う可能性は一番高くなるからだ。

 

 

 グランは気づいている。多分古戦場の前の日、私の部屋に来たあの日よりも前から。古戦場での私のがんばりも、その努力が空回りしたことも気づいている。そして、この島にきて、この島の島民となるための条件に、自らに自信がなく心を病みながらもあきらめることなく努力を続けている、という条件に私があてはまっていることにも。だからグランは、私にルリアを付かせ、いや、ルリアに私を付かせたのだろう。

 

 

 それがグランの作戦だろう。なら私もその作戦に従い、成功させないと。

 

 

「あれ?、なんだか星晶獣の気配が近づいてきます。それもこの島のみんなの周りにいつもいる小さな気配じゃなくて、もっと大きな……」

 

「ほ、本当に?」

 

 私もその存在に気づき始めていた。島に近づくにつれ私の心の奥底をつついていた謎の存在が、いままさに私のもとに向かっていることを。

 

「ど、どうしてでしょう。この近くにさっきの5人の中の誰かがいるのでしょうか、わぁっ!」

 

「ルリアちょっと急ぐけどいい?」

 

 

 私はルリアの手を引き小走りになる。星晶獣が暴走し、その力をルリアが吸収するときは戦闘になることが多い。人通りの多い商店街で、それはまずい。

 

「ジータ?、こんなに急いで、どこに行くんですか?」

 

「ちょっとね!」

 

 私は急いで商店街から出ようとするが、さすがに始めてきたばかりで道がわからない。視界の隅に薄暗い小道を見た私は、無理矢理に方向転換し、その小道に駆け込んでいく。ルリアも振り回されながらなんとかついてこれているようだ。

 

 

 残念ながら勘は外れた。長く薄暗い小道の先には明るく開けた場所が、中央にきれいな噴水のある円形の広場があった。商店街と同じくらいの人通り、けれどもその中で私はある一点に視線を奪われていた。少女が、噴水の淵に腰かけていた。

 

 

 声にならない息が口からもれる。足が止まる。急に止まった私に、ルリアは転びそうになったが、私はそれに気にすることもせずただその女の子を見ていた。

 

 

 白銀に朱と蒼を纏った煌びやかでドレスのような衣装、黒いショートパンツにすらっとした脚。その美しい姿には全く似合わない金の刺繍がほどこされた大きな剣。そして、いつも見慣れた顔が、いつも以上の笑顔をして、私に視線を向けていた。

 

 

『ようこそ私の島、再興の島へ。もっとこっちへ来て』

 

 その女の子は口を動かす。聞こえるはずのない微かな声が、私にははっきりと聞こえていた。

 

「ジータ!、いきなり走ったり、止まったりどうしたんですか? もう、無視しないでくださいよ、いったい何を見ているんで、えっ、あれ、ジータが2人いる……!」

 

 そう、噴水には私が座っていた。姿もそうだが、服装までもが瓜二つだ。服装は以前、バルツでディフェンドオーダーが発令されたときに私たちも参加して、その時にザカ大公にもらったものだ。一目で気に入り、剣を使うときは着ることにしていた。

 

 

 私は再びルリアの手を引き、ゆっくりと彼女のもとへ歩み寄る。服装や剣の細やかな刺繍が見えてくる。と同時に、目の前の私が本当の私とはまるで異なる存在であることが分かってくる。最も大きな違いは……自信だ。

 

 

 あふれんばかりの自信。他人から信頼されている、認められているという自信。団長という肩書きを裏切らない強さを持っているという自信。そして、私がいま最も切望しているもの。

 

 

「これが……私の理想の姿……」

 

『そうです。 そのためにあなたはここまで来たんでしょう』

 

 こうなりたい。こうなるためだったら艇を降りてもいい。唐突に頭の中に浮かんでいた思いがあふれる寸前、私の手が強く引かれた。

 

「ジータ!、あなたは私の、私たちの大切な仲間です! みんながジータのことを信頼してるんです、だから、だから自信を持ってください……!」

 

 本当に?、と尋ねかけた私は自分の過ちに気づいた。なんて馬鹿なんだろう。信頼されたい、認められたいと思うがあまり、私がみんなのことを信じることを忘れていた。それでいて勝手に疑心暗鬼になって、自信がなくなって、落ち込んでいたなんて。簡単なことだったのに……!

 

「あなたには大切な仲間がいるのですね。あなたなら大丈夫、この島に住まずともあなたならすぐに答えを見つけられる」

 

 いつのまにか噴水のところまで来ていたみたいで、目の前には瓜二つの私が優しく話しかける。そして手を強く握ったルリアが、目に涙を浮かべて私の顔を覗き込んでいた。心が軽くなる。奥底のもやもやした感情が抜けていく。

 

「ごめんねルリア。でもおかげで私は変われそう……」

 

「本当に? 私、ジータがすごいがんばっているの知ってますから。みんなのことを一番に思っているのを知ってますから。だから……」

 

「大丈夫。心配させてごめん、ほら、泣かないで。依頼をこなしちゃおうよ!」 

 

 目をぬぐい、ルリアは笑顔を見せる。

 

「はいっ! ……星晶獣アネバルテ。あなたがこの島の方々を支えているたくさんの星晶獣の本体ですよね。私たちはあなたのことを救いに来たんです!」

 

「私を?」

 

 

 私たちはアネバルテの横に座りこの島の実情を告げた。1年前から外にでていく島民が少なくなっていること。今いる島民たちが以前のように快活ではなくなってしまったこと。そして、みんなが自信を無くし島全体に疑心の空気が漂っていること。

 

 

 アネバルテは私たちの目をしっかり見て私たちの声を聞いてくれた。すべてを聞くと、悲しい顔をして数瞬言葉をためらい、そして開いた。

 

「申し訳ないです。私も気づいていたんです。けれどもどうにもできなかった。1年前にちょっとしたことがあり、それから私が少し心を痛めていたようです。その感情が、心を支えている私から島民の方々へ流れ出し、この島を変えてしまったのかもしれません。」

 

「やっぱり1年前に……。何があったんですか?」

 

「いえ、些細なことなので……。それで私は私のしていることに意味があるかわからなくなってしまって、何も改善しないままずるずると……」

 

「そんなことないです! この島のみなさんもすごく感謝しているんです! さっきアップルパイを買った店主の方だって、私がおいしいって言ったら一瞬だけすごくうれしそうな顔をしてました。だから、あなたのやっていることに意味がないなんて、そんなこと言わないでください!」

 

 ルリアの言葉に、アネバルテは微笑む。

 

「私はその言葉が聞きたかっただけなのかもしれません。他人に認められない人を助けようとしながら、私自身も誰かに認められたかった。ありがとうルリアさん、ジータさん」

 

 ルリアの表情も明るくなり、自然と私の表情も和らぐ。

 

「さっきまで悲しくうずくまっていたあなたの心が今はとても暖かく感じます。もう、この島は大丈夫でしょう。そうだもう少しおしゃべりしませんか? ねえ、いいでしょジータ?」

 

「うん、いいよ。私はグランに任務完了を報告してくるね」

 

 

 それに謝りたいこともあるし。

 

 

 ルリアとアネバルテの笑顔を確認して私は長老の家と戻る、はずだった。いつもなら気づく範囲の危険に、この時の私は気づけなかった。

 

 

 私のすぐ横を何かが過ぎ去った。驚いて振り向くと同時に、どすっという鈍い音がする。目の前の光景に私の頭は全く反応できず、理解もできなかった。

 

 

 エルーンの若い女性が震える両手にナイフを持ち、それを私の姿をしたアネバルテに深々と突き刺していた。

 

「な、んで……」

 

「おまえが、おまえさえいなければ彼は死ななかったのよ!」

 

「な、なにをしているんですか!」

 

 私はすぐに女性をアネバルテから引き離す。女性はほとんどの抵抗なく離れる。私はすぐにアネバルテの様子を見るが、星晶獣だからかナイフで刺された場所から血は流れてこない……。ほっとしたのもつかの間、悲痛な叫びが響きわたる。

 

 

「あ、あぁ、だ、だめです! そ、そんなっ!」

 

「ルリア!、どうしたの!」

 

「ア、アネバルテの心がすごく暗くなって、今にも壊れそうなんです! このままだと……」

 

「ナンデ。ドウシテ。ワタシハ、タダワタシハタスケタイダケダッタノニ……」

 

「アネバルテ!、私たちがいるからっ!」

 

「アネバルテ!、しっかりしてください! はっ!」

 

 直後アネバルテの様子が変わりだした。心の黒い感情があふれ出したかのように、来ていた銀色の服が黒みがかっていく。持っている剣は、離れていてもわかるほどの冷たく黒い空気纏っている。そして、瞳が何もうつさぬ虚ろな目へと変わっていく。

 

「あぁ、そんな……」

 

 ルリアが膝から崩れ落ちる。でも私はあきらめなかった、あきらめたくなかった。私を変えてくれたかけがえのない存在を放っておくわけにはいかない!

 

「ルリア!、あきらめちゃだめっ! 立って、何か方法があるかもしれない」

 

「方法ですか……、もしかしたら今の状態のアネバルテの黒い部分だけを吸収できれば救えるかもしれません……けど、できるかどうかは……,うわっ!」

 

「……ワタシハ……」

 

 黒く冷たい剣をルリアへと振り下ろそうとするべく腕を上げるアネバルテの間にすぐに私は入る。剣を抜刀し目の前に持ってくると同時に火花が弾けた。あまり戦闘が得意ではないのかそこまで力強い剣ではないが、傷つけることができないため、こちらから仕掛けることができない。

 

「くっ、ルリアやってみて! 私がアネバルテの動きを抑えるから」

 

「わ、わかりました!」

 

 両手を前に伸ばし目をつむるルリア。そのまま動かないが、だんだんと交わる剣からの力が弱くなってくる。

 

「どう?」

 

「大丈夫そうですけれど、うっ……」

 

 ルリアがいつも以上に苦しい表情を見せるが、私にはルリアを信じることしかできなかった。数秒間時が止まったかのようにすべてが静止し、そして突然意識を失って倒れるアネバルテを私はなんとか支えることができた。胸に刺さったナイフをゆっくりと抜き、先ほどまでとは変わって穏やかな表情をした身体を地面に優しく横たわらせる。ルリアも全力を尽くしたのか、荒い呼吸をしている。ルリアにお礼を言おうと近づく私はさらなる異変に気付いた。

 

「ルリア?……」

 

「来ないで……ください……来るなっ! だ、だめだって、違うんです……うわぁっ!」

 

「ルリア!、どうしたの!」

 

「アネバルテの暗い感情がっ……、……どうしてどうしてそんなことを思っているの、ジータ?」

 

「な、なにを言っているの……」

 

「私は……旅のじゃ、邪魔なんですか? 帝国軍に引き渡す? 存在が怪しい? そ、そんな、どうして……? 今まで一緒に旅をしてきたじゃないですか……」

 

「そんなこと思ってないよ! ルリアは私の大切な仲間で……」

 

「だってあなたの心がそう言っている……。今の言葉も全部嘘……。ジータ、そうだったんですか……、どうして今まで仲良くしてくれたんですか、これなら……」

 

 そんなこと思ってなんかいない! そう叫ぼうとした私は、すぐに異変の理由に気づいた。アネバルテの中に瞬間的に生まれた莫大な量の暗い感情を無理矢理吸収したせいじゃないか? そのせいで、存在しないはずのの悪意が聞こえてくるのかもしれない。だとしたら……

 

「ルリア!、今すぐ吸収したものを外に出して!」

 

「わ、私はあなたを信じることができない……。ち、違う、私は何を……。わかっているんですジータ……、なんで、ドウシテ……」

 

 いやそれじゃだめだ。外に出して私が倒せたとしても、この暗い感情はさまよい、また犠牲者を生む。ルリアは今にも意識を失いそうで、このままだと吸収したものが外にあふれてくる。このままだと、いや、手はある!

 

 

 不意に浮かんだ策を省みる時間はなかった。すぐに私は、ルリアに叫んだ。あとはルリアの意志の強さを願うだけだ。

 

 

「ルリア、とにかくミスラを召喚して! お願い!」

 

「もうやめて!、グランもそんなこと言うの……! ミスラ……。分かりました、いやだ、こっちに来ないで!、あぁ……」

 

 ルリアの身体が輝き、多数の歯車を組み合わせたような奇妙な恰好をした星晶獣が姿を現す。と同時に、力を使い切ったのかルリアの身体が倒れる。とっさに飛び出し、なんとか私は体を支えることができたが、その体から黒い瘴気が流れてくる。時間はもうなかった。

 

「ありがとうルリア……。ミスラ!、ルリアがアネバルテから吸収した暗い感情は私が受け持つ! そして永久に、外に出すことなく私の心の中に持ち続けることを誓約する!」

 

 歯車が高速で回り始める。ミスラが誓約を承認したのか、レンズのような場所が光から照らされるとともに私の意識は薄れていった。視界にぼんやりと、ルリアの身体から出てきた黒い、黒い何かが、私の元へと吸い込まれていくのを目にしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

意見感想あるかもしれませんが、もしよければ教えていただけるとありがたいですm(_ _)m



ちょっとした裏説ですが

次の話で出てきますが、ルリアが命を共有しているのはジータです

あとミスラ討伐戦がゲームにあるので、ルリアはミスラの力を吸収していることにします。


というわけでジータちゃんは無事(?)闇堕ちしました。今後はすこしゲームのメインストーリーと混ぜながら進めていきます。

あと、前書きにも書きましたが、すごく軽いグラブル話(るっ!、みたいなノリ)を書こうと思うので、目に留まったらご覧いただけるとありがたいです。

それではありがとうございました。

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